ライスシャワー×マンハッタンカフェ ウマ娘アンソロジー 作:ぴちかー党
そんな悩める彼女たちにタキオンが助言を・・・そんなお話
桜が咲き誇り、町全体を優しくそして暖かい桜色に染める季節がやって来た。
学校、職場様々な場所で新たな新入生がやってくる季節である。勿論トレセン学園もその例外に漏れず、今年も新進気鋭のウマ娘達が入校し、新生活に胸を膨らませていた。
しかし、そんな彼女たちにとって真っ先に直面するのは「あの」問題であろう。
======タキオン お悩み相談室======
「本日はありがとうございました。タキオン先輩!私、ようやく決心がつきました」
「それはよかった。僕でよければいつでも相談にのるよ。また、いつでもくるといいさ。」
「はい!失礼しました」
「・・・ふぅ。午前中だけで4人目か」
とある校舎の一角、元々は物置き場であった場所を急ごしらえで造り上げた教室。机が1つに椅子が2つただそれだけしかない殺風景な教室に彼女の呟きが虚しく消える。
「・・・お疲れ様です。どうぞ、今日は砂糖とミルク多目に入れてみました」
「ありがとう、カフェ・・・うん。疲れた頭には丁度いい。染み渡るよ」
「それは・・・善かったです」
「それにしても・・・まったくもってどうしてあんな下らないことを学園は毎年実施するのか。僕には理解しかねるよ」
タキオンがいかにも不機嫌そうに顔をしかめ、トレセン学園が新入生のために行っている「下らないこと」に不満を漏らす
「・・・下らないこと、ですか?」
「そう、適正検査さ。あんな紙切れ一つで自分の、ば場・距離・脚質を決めてしまうなんてふざけているよ」
「・・・そうでしょうか?自分の適正を知るには、とても便利なものだと思います」
「あくまで、参考にするだけならね。
でも中にはその結果を深刻に考えすぎて、自分の進みたい進路を変えた方がいいのかを本気で悩んで、相談にくる娘だっているんだ。さっきの娘のようにね」
適性検査。それは、トレセン学園に入学したウマ娘達がはじめて行う試験。
ウマ娘達はその結果に従い、己のば場・距離・脚質を決める。いわば、一般的な学校における「職業適性検査」と思っていただければ、イメージはつかめるのではないかと思う。
「それにだよ。僕はその検査では長距離適正は全くないという判定を受けたんだ。その結果にしたがって、短距離を選んでいたら・・・今ごろ僕はどうなっていただろうね?」
自虐的な笑いを浮かべカフェにそう訪ねるタキオン。その質問にカフェがどう答えようか?答えあぐねている。
「さらに付け加えるなら僕は今まで、僕を含めて検査通りの道に進んでいたら才能を潰したであろう、ウマ娘をもう一人知っているよ。」
「・・・それは、誰でしょうか」
カフェの問いかけにタキオンは軽く目をつぶり、おとぎ話でも読み聴かすように、あるウマ娘の話を語り始める。
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その日は、今日のように雲ひとつない晴天であった。アグネスタキオンにしては珍しく、皆が集まる談話室。その片隅で一人読書を楽しんでいた。
(いやー。やはり、世界大戦時の実験報告書を眺めるのは面白いね。どんな非合法、凄惨な人体実験も勝利という大義名分のもとに、なんの躊躇もなく行われ極めて客観的に纏められている。ここまで、残酷になれるのだから人類というのは本当に恐ろしく、そして素晴らしい)
「あ、あの、す、すみません」
不意に、誰かの。気弱そうな声が報告書に没頭中の彼女の意識を現実に引き戻す
「・・・なんだい?何か用かな?」
お楽しみを邪魔され、少し不機嫌ぎみにそして、素っ気なくそのウマ娘の対応をする。
「あの、始めて入学したばかりで、そ、そのタキオン先輩に相談しいたことがあるんです・・・」
「え~、僕に?もっと面倒見のいい先輩は一杯いるよ。そうだね、スーパークリーク君とかヒシアマゾン君。エアグルーヴ君も言い方はきついけれど、親身になってくれるいい先輩だよ」
「だめでしょうか・・・?」
相談などと言う厄介ごとの類いからは、極力関わりたくないのが彼女の性格である。しかし、頼りにしてくれるウマ娘を放っては置けないという彼女の短所・・・いや、長所が珍しく彼女をその厄介ごとに突き動かした。
「まぁ取り敢えず、座りなよ。コーヒーでいいかい?本当は本格的なものを振る舞いたいところだけど、あいにくカフェが外出中でね。これで勘弁してくれたまえ」
「あ、ありがとうございます」
ひとまず自室につれていき、冷蔵庫から缶コーヒーを二つ取り出し彼女に手渡す。そうして、リビングの彼女のお気に入りのソファにそのウマ娘を座らせ、彼女の悩みを聞き始める。
「で、悩みというのは?」
「は、はい。今日の適性検査で、私は長距離、追い込みが適していると診断されました。先生もトレーナーさんも君にはピッタリだというんです。でも・・・」
「でも?」
「私は、短距離を・・・誰よりも速く、スタートからゴールまで誰にも先頭を譲らず風のように走りたいんです。でも、それを言っても皆からは長距離を進められて・・・私はどうすればいいのでしょうか?」
「なぁんだ。そんなことで悩んでいたのか。下らないね」
「・・・下らない・・・ですか」
彼女の悩みを「下らない」と一蹴し、そうしてタキオンはとあるウマ娘の昔話を始める。
「くだらないね。昔あるウマ娘も長距離を走りたいのに、適性検査とやらで、長距離は不適と出たんだ」
「そうなんですか・・・その娘はその後どうしたんですか」
「勿論そんな結果一蹴して、長距離を選んだよ。周りからの反対は酷かったらしいけどね。でもね、僕・・・じゃなかった。
そのウマ娘は短距離なんていうもって生まれた才能、脚の速さだけで決まるレースより。体力・スピード・位置取り、そしてスパートをかけるタイミングそれらすべてを、コースや相手に合わせて戦略的に変えていき一位をもぎ取る。そういうレースをしたかったから周りの意見をすべて無視して、長距離を自分の進みたい進路を選んだのだよ。」
「自分の進みたい進路・・・」
「そうさ。人生なんて一度きり、周りの意見、結果に流されるより自分の気持ちに素直になるのが一番いいと僕はおもうよ。それに」
「そ、それに?」
「かりに失敗して転んでも、諦めず立ち上がれば道は拓けるものだよ。あのミケランジェロでさへ芸術の勉強を始めたのはお爺さんになってからなんだからね。つまりはそういうことさ」
「自分の気持ちに素直に・・・転んでも立ち上がる・・・あ、ありがとうございます!すこし勇気が沸いてきました。私も自分の気持ちに素直になります。短距離を誰よりも速くバクシンします。」
「うん、そうしたまえ。自分の気持ちが一番だよ。どうせほぼ一生ついて回ることなんだ、苦しいより楽しい方がいくらかましだろうさ」
「・・・はい!!ありがとうございます。本当にありがとうございます」
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そうして、この件が学園中にしれわたり晴れてタキオンは、新入生の相談役という立場を半ば強制的に与えられたのだった。
「はぁ・・・あのとき、もっと適当に答えてたらこんな面倒事を頼まれないですんだかもしれないのにな~」
「・・・過ぎたことを悔やむほど無駄なことはない。・・・タキオンがいつもいってることです」
「まぁそうだけどさ、そうなんだけどさ・・・どうしてこうなっちゃったかなー」
「・・・そういえば、タキオンさん」
「うん?なんだい」
「そのウマ娘って誰なのでしょうか?」
「秘密さ♪でも君もよく知っているウマ娘だよ」
「・・・私が知っている?誰でしょうか」
「秘密さ。でも」
(あの娘昔はあんなはっちゃけた性格ではなかったと思うんだが・・・、ウララクンといい、あの娘といいどうして短距離にはああも個性的な性格の娘が集まるのかね?)
そうして誰にも聞こえないよう彼女はそっと静かに呟く
「鶏が先か卵が先か・・・難しいね」
「・・・なんのことでしょうか?」
「なに、独り言さ」
====おまけ=====
今回参考にした原文
選択したのはだれか。私はそれを問うてみる。だれも選択したのではない。私たちはみな、はじめは子供だったからだ。だれも選択はしなかった。しかし誰もがまず第一に行動したのだ。
こうして、職業への適性は自然と環境とから生ずる。それゆえ、あれこれ思案するものは決して行動しないのである。
学校でやる分析ほど馬鹿げたものはない。動機だの動因ばかり詮索する。
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一航海全体が最初の舵の動かし方一つで左右されるなどと言ったら、船乗りに笑われてしまうだろう。ところが、世間では子供たちにそう信じこませようとしている
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*都合よく解釈しているため、多いに自信の独断と偏見が入っています。ご了承ください。
*ウマ娘の年代も物語重視で創ったため、時系列なぞひっちゃかめっちゃかになっています。合わせてご了承ください。