これは世界観を共有した外伝です。
タイタンちゃんが現役を退いた後の世代の時間軸の話です。
あっ、そうだ。
プロローグを少し改稿しました。マックイーン世代にスペちゃんが現役だと時空が捻れ過ぎちゃうからね。仕方ないね。
ターフを駆ける黄金の残光
SIDE トレーナー 安堂勝利
"有馬記念で勝ちたい"
彼女のトレーナーとなった日、最初のミーティングで彼女の目標を語ってもらった時の言葉だ。
私が担当した娘達は皆、お世辞にも勝てるウマ娘ではなかった。しかし、夢を持ち志を持ち、勝負の場に立つことを選んだ"強い"娘達だった。だからこそ、歴史に大きな蹄跡
を残せる様な活躍こそ出来ずとも、重賞で何度か勝利し、そしてターフを去っていった。
故に私はいつの間にか、"重賞入着バ請負人"と呼ばれる様になっていた。勝てないウマ娘達を重賞で勝負出来るまでに育てられるトレーナーという訳だ。そんな2つ名を戴いてしまったせいか、私の元には勝てないウマ娘達が集まる様になってしまった。どれだけ走っても勝てない、担当トレーナーに見捨てられた。でもせめて一勝したい。
そんな理由で私の所へやって来る。全員を見てあげられた訳ではない。全員を勝たせてあげられた訳ではない。
それでも見捨てられなかった私は、傲慢にもすべてに手を差しのべた。そしていつの間にか、トレセン学園からも最後の受け皿として見られる様になっていた。
それ自体に不満があった訳ではない。しかし、こんな事の為にトレーナーになった訳ではない。様々な名の有るトレーナー達のようにG1レースを何勝も出来る様な才能有るウマ娘達を育成してみたい。野心があった。夢があった。
彼女達が夢や目標を持つように、私にもそれが有ったというだけの話だ。
だから、彼女が門戸を叩いてきた時も"またか"という感情を持ってしまっていた。既にスカウト等せずとも良いとされ、落ちこぼれのウマ娘達を勝たせてあげるだけの思い出作りをさせる"何か"になってしまっていた。既に私はトレーナーとしては死んでしまっていた。
しかし、彼女は勝ちたいと言った。G1を何勝もしたいと言ったわけではない。しかし有馬記念に出るという事はそういう事だ。
その日、私はトレーナーとして生き返った。彼女も例に漏れず、勝てないウマ娘だった。しかし、後ろ向きな考えから私の所へきた訳ではない。明確に目標があり、夢の為に私へ逆スカウトをかけてきた。その意思の強さに、その走りに私は救われたんだ。
常に彼女のすべてを見てあげられた訳ではない。しかし、自分の全てを持って彼女を育て上げた。
今日がその集大成だ。この三年間で勝ち星を挙げられたG1レースは二つ。たった二つ。しかし一つ取れるだけでも、取ることすら出来ずに終わる中で二つだ。
「必ず勝ってこい」
ターフへ征く彼女へ最後にかけた言葉。情緒も何も有ったものじゃない。でも、彼女は必ず帰ってくる。一着の栄誉を持って帰ってきてくれる。私はそう信じて彼女を送り出した。
SIDE ウマ娘 クリムゾンワールド
私には何も無かった。皆に称賛されるような才能も、皆に振り向かれるような容姿も。いつだって私は競争では下から数えた方が早いぐらいで。いつだって男の子達から声をかけられるのは最後の最後で。
諦めたく無かった。
あの日、私はメジロタイタンというウマ娘の走りに魅せられた。有馬記念で彼女は歴史に残る走りを見せた。五人がもつれあってのゴールなどケイバ史上、類を見ない大接戦だった。
あんな走りを、あんな闘いを私も…
必死の思いでトレセン学園へと入学した。そこで改めて思い知らされた。私の存在など小さなモノなのだと。
入学して直ぐにあるトレーナーの話を聞いた。
"重賞入着バ請負人"
どんなに勝てないウマ娘でも勝たせてくれるトレーナーが居るという噂話。周りがトレーナーとの契約を済ませる中、選抜レースでも結果を出せず、一人取り残されるだけの私はそんな噂話でもすがるしかなかった。
結論から言えば噂は真実だった。私のトレーナーは普通のトレーナーの何倍ものウマ娘達を育成し、重賞へ送り出していた。私は受け入れらるか心配だったが、受け入れられた。私の三年間は辛いものだったと言える。でも、トレーナーとの二人三脚で、そして他の皆からも助けてもらいながらここまできた。
G1二勝、G2三勝、G3二勝。それが私の三年間だ。ここに居る他の娘達はもっと勝っている。でも私は此処に立っている。
「必ず勝ってこい」
何気なく言われてきた言葉がここまで重いものだとは思っていなかった。このレースはトレーナーだけじゃない。チームの皆の思いも込められた言葉だ。
「16番人気クリムゾンワールド。」
「勝ち星こそ少ないですが、安定した走りと驚異的な末脚がこの娘の持ち味です。」
「根強いファン人気から有馬記念への初出走となります。」
「"黄金の残光"の二つ名の通り、レース中の時止めが見れるのか。この目で見てたいですね。」
私の紹介が終わり、ゲートへの入場が終わる。後は走るだけだ。
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ガタン
「各ウマ娘一斉に飛び出しました。ハナを奪い合うのは4番ストレングスゴールドと、3番シルバーホィール。二バ身後ろから一番人気タワーオブナイト。それを見るように5番キングオブマジシャン。続いて6番ブレイクデビル。外から2番ラブ・ラバーズ。ここまでが先頭集団を形成。」
「後方集団を見ていきましょう。三バ身後ろから二番人気エンペラーオブサン。少し後ろから10番ムーンスター。続いて8番ジャッジメント。外から11番エンプレスジャスティス。13番デッドライン追走。三番人気ハイエロファントここにいた。並んで15番ハーミットハングドマン。内から14番テンパランスザフールー。続いて12番ハイプリエステス。最後尾は16番クリムゾンワールド。」
「激しい先頭争い。制したのは三番シルバーホィール。タワーオブナイト追走。1コーナーから2コーナーへ向かうウマ娘達。おっと!ここで2番ラブ・ラバーズが仕掛けた。」
「長丁場のこのレース。仕掛けるには早すぎますね。場所も悪い。完全に掛かってしまっていますね。」
「向こう正面に入って2番ラブ・ラバーズが先頭に。タワーオブナイトと3番シルバーホィール並んでいる。五番キングオブマジシャン追走。4番ストレングスゴールド後方に下がる。」
「後方集団を見てみましょう。あぁっと?16番クリムゾンワールドが後方集団先頭を走っている!後方集団が先頭集団へ追い付いてきた!」
「早速、黄金の残光が見れましたね。これは一波乱有りそうですよ。」
「三番人気ハイエロファントと二番人気エンペラーオブサンが並んで猛追!少し後ろから13番デッドラインが追い掛ける。」
「レースの展開が読めなくなってきましたね。」
「残り1000mを通過。16番クリムゾンワールド不気味に息を潜めている。先頭は変わらず2番ラブ・ラバーズ。タワーオブナイトが内で脚を溜めている。」
「これは…クリムゾンワールドの時止めが見れるかもしれませんよ!」
「団子状態のまま、第四コーナーへ。」
「ここが仕掛けどころ!最後の直線で全てが決まります!」
「抜け出したのは一番人気タワーオブナイト。二番人気エンペラーオブサンと三番人気ハイエロファントが猛追。中山の直線は短いぞ!後ろの娘達は間に合うか?」
「今世代の三強はやはり強いか!タワーオブナイト、世代最強を魅せてきます。」
「残り400mを通過。先頭はタワーオブナイト。2番手争いにエンペラーオブサンとハイエロファントがしのぎを削る!」
「残り200m…。なんとぉ!16番クリムゾンワールドがタワーオブナイトに並んだぁ!」
「これが"時止め"…。圧巻です。」
「二人並んで苦しい展開。2番手との差は僅か。エンペラーオブサンとハイエロファントもこの闘いに参戦するか!?」
「栄光まで残り50m。四人が並んだ!並んだ!ハナを譲らない!」
「これは手に汗握る展開だ!」
「もつれ有ったままゴールイン!タワーオブナイトが体勢有利か?」
「いやいや、エンペラーオブサンとハイエロファント、クリムゾンワールドの体勢も変わりませんよ!これは史上初の四人同着の可能性が有りますよ!」
「今、順位が出ました!……、これはぁ!タワーオブナイトとクリムゾンワールドが同着!ハイエロファントとエンペラーオブサンは同着で2着だぁ!」
「今年が最後のクリムゾンワールド。執念の同着一位でした。」
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同着であっても一着。それは変わらない。私にしては頑張ったと思う。それでも、先頭の景色を我が物には出来なかった。相手が強かったと称えれば良いのか、誰も寄せ付けない一着を取れなかった自分を責めれば良いのか分からない。
あの三人とは互いの健闘を称えあった。いや、参加していた全員と健闘を称えあった。二着以下もタイムはほぼ変わらず、非常に白熱したレースだったのだ。それ自体を否定する事は出来ない。
しかし、でも、と思ってしまう。私にとってはこれが最後で、これが集大成だったのだ。URAファイナルやドリームリーグでの栄誉とは違う。この三年間でしか得られないモノだった。
「入るぞ。」
トレーナーが控え室に入ってきた。いつもの優しいトレーナーが泣いていた。
「お前はよくやった…。やったんだ…。」
「トレーナー、私…私。」
そんなトレーナーを見て、冷静になるどころか自分も涙が止まらなくなってしまった。
「夢が叶った!叶ったのに…。このレース…、惜しいと思っちゃうの。私は…。」
思わずトレーナーに抱きついて泣いてしまう。
夢は叶ったのだ。しかし、満足は出来なかった。今まで、走り続けてきた。ずっと走り続けてきた。
レースに"でも"や"もしも"は無い。どんな結果だろうと等しく走った者は称えられ、同時に一番強かった者が勝者となる。それがレースなのだ。だからこの感情はレースに出ていた他の娘達への侮辱になってしまう。しかし、思う事が止められないのだ。自分が一番早いと証明したかった。
「お前は聡い娘だ。分かってるんだろう。仕方ない。でも、この栄誉はお前の物だ。お前だけの物だ。お前は俺をトレーナーにしてくれた。勝利を運んでくれたんだ。お前は立派だよ。」
「私、私…。」
誰にも顧みられることなどなかった。父や母でさえ私の勝利を本当の意味で信じてくれていなかった。だからこそ、この有馬記念で証明したかったのだ。
私はここにいると。私は誰よりも早いのだと。
ライブが終わり、熱が退きつつある中山で二人は泣き続けた。勝利の喜びと、そして一抹の後悔を洗い流すように…。
繁忙期って何だよ!忙し過ぎるんじゃい!
ほんへも執筆してるから心配するなって。安心しろよ!
エタらないよう頑張るからなぁ。応援よろしくぅ!
ぶっちゃけちょっとスランプです。誰か助けて…。