この一走に全てを駆けた   作:デーニッツ

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 新章開始なので初投稿です。

*追記
今回、タイタンちゃん自身の自虐表現として"駄バ"という表現が有ります。愉悦が好きでも、そう言う表現が嫌いな兄貴、姉貴は注意!
 



メイクデビュー
第一話~青い空の下で~


 空が青い。そんな中でメジロタイタンはサイサリスに追い立てられていた。トレセン学園の練習場で一番大きい、実際の競バ場を模したコース。通称"大レース場"だ。

勿論、そこで行われているのは後輩苛めではなくメイクデビューの為の練習だ。

 

 タイタンはメジロ家にいた頃、様々な走り方を学ばされて来たが、マックイーン達を追いかける事が多かった。その為、必然的に差し、または追い込みで走ってばかりであった。つまり、誰かが後ろにいる状況で走った経験が少ない。故に追い込みが得意なサイサリスを後ろに走っていた。

 

「どうしたんだタイタン?息が上がってるぞ?」

 

デビューすらしていないウマ娘に対して良くも言う。全力で圧をかけながら言う台詞ではない。サイサリスの激に苛立ちすら覚えながらも懸命に足を動かす。

 

「ペースが乱れてるなぁ!それがメジロのウマ娘かよ?」

 

サイサリスの言葉が飛んでくる。 

 

 "メジロのウマ娘"だと?

 

ペースを上げ、サイサリスを突き放しに掛かる。早く、ただ早く。ゴール板を目指し加速していく。周りの景色が流されて行く。そして、一人で走っているのではないかという妄想が頭を支配し始める。

 

「おい、待て!タイタン!待て!」

 

浦木トレーナーの声が聞こえる。関係無い。もっと早く。

更に加速を掛けようとしたところで、重いプレッシャーが飛んできた。浦木トレーナーの隣、チェリーブロッサムからだ。

  

        『そこまでだ』

 

ただ一言で、タイタンは頭に血が上っていたことに気が付く。

 

「バカ、なに考えてんだ!」

 

立ち止まった所に追い付いたサイサリスにポカリと頭を叩かれる。

 

「あんな走り方したら足壊すぞ!」

 

「すいません…。」

 

「お前なぁ…。」

 

先ほどの掛かり様と、立ち止まって話している今の様子に毒気を抜かれて言葉が続かないのだろう。

 

「確かに敢えて煽ってたが、あそこまで掛かるのは普通じゃないぞ?」

 

「すみません…。」

 

「ったく…。」

 

「大丈夫か二人とも。」

 

浦木トレーナーが割って入ってきた。まあ、当然だろう。監督しているのは彼であり、制止も聞かず爆走していたのだから。

 

 

「サイサリス。お前はブロッサムと並走だ。」

 

「ん。りょーかい。」

 

「タイタン、お前は残れ。」

 

「はい…。」

 

サイサリスは肩をすくめてからチェリーブロッサムの元へ歩いて行く。

 

「タイタン…。ブロッサムが止めなければ走り続けていたろう?どうしたんだ?」

 

「いえ…、その、熱くなってしまいました。」

 

「本当にそれだけか?」

 

「はい。」

 

浦木は渋面で頭を抱える。抱えながら言葉を紡ぐ。

 

「お前が色々と訳ありなところが有るのは把握している。言いたく無いならそれでも構わない。だが、取り返しの付かない事にならない内にどうにかするんだ。」

 

一度言葉を切り、顔を上げる。タイタンの目を見ながら続けられる。

 

「俺はお前のトレーナーだ。まだ至らないところは有るだろう。だが、出来ることは何でもする。トレーナー室の鍵はいつでも開いてる。良いな?」

 

「…はい。」

 

「分かったら頭を冷やしてこい。今日はそれで終わりだ。分かるな?」

 

「はい。」

 

「よし!行ってこい。」

 

皆から離れてタイタンは小走りで走り出す。走って大レース場から離れる。こんな自分が皆と一緒にいるのが場違いに思えたから。

 

 

 レース場から離れ、学園内に設けられた遊歩道へたどり着いた。そこは学園の生徒達の憩いの場となっており、大レース場が使えない時のトレーニングコースとしても使われている。そんな場所へ私の足は自然と向いていた。

 

「…。」

 

自身がどう思おうと、他人からすれば"メジロ"だ。それは変わらない。しかし、どうしてもそれを受け入れられない。

理由は分かっている。マックイーン達や、顔を見た事が有るだけであるが、アルダンやブライトと言った優駿達を知っている。

知識としてだけでなく実態として。

翻ってメジロタイタンはどうか。言葉は悪いが所謂、"駄バ"と言われる部類だろう。駄バでなかったとしても、あの面子に混じってターフに立つ所は想像出来ない。

思考のどつぼにはまっていく。

 

 

  何故、此処に有るのか。何故、走るのか。何故…

 

 

「あら、タイタンさん。ごきげんよう。」

 

聞き覚えの有る声がかけられる。

 

「ご機嫌麗しゅうございます。クロスレーン様。」

 

「そんな他人行儀にならなくても…。」

 

そう言う訳にもいかない相手だ。何故なら、彼女の推薦枠を奪い此処に居るのがタイタンなのだから。

 

「それは…、私は貴女を良く知りませんので…。」

 

         嘘をつくな

 

「そんなこと、わたくしは気にしていなくってよ。」

         

 ならば、なぜ私のメイクデビューに合わせて来るのか

 

 

二人の間を青い風が吹き抜けていく。

青い空の下、タイタンはライバルとなるウマ娘と対峙する…。

 




クイーンデンドロビウムやマックイーン達はどうしたって?

アイツらはラスボスであってライバルではないからね。
仕方ないね。
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