この一走に全てを駆けた   作:デーニッツ

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ッシャア!

筆がのったので初投稿です。

地の文が多め、背景の説明的な語りが多いかも。

成人の日だぞ、上等だろ?(意味不明)



第ニ話~好敵手と布告~

 豊かな金髪に女性らしいフォルム。クロスレーンは生まれ持った美貌を持つウマ娘だった。そして彼女は美貌だけでなく走る才能も与えられていた。

その微笑みはイタズラ盛りの男子達ですら魅了し、走ればURA関係者達から称賛の声が上がった。まさに天より二物を与えられたウマ娘だった。

家はメジロ家と太い繋がりが有り、メジロのウマ娘達と競い合う良き好敵手として、そして将来の栄光を期待されたウマ娘であった。世代が合わなかったが、それ故にクロスレーンはメジロ家の持つ特別推薦で"日本ウマ娘トレーニングセンター"へ通えるはずだった。互いにURAを盛り立てる実力者のそれとして、メジロ家を中心とする派閥の重鎮の代表が彼女だった。

 

 しかし、彼女にとって初の挫折、或いは思い通りにならぬ事がその推薦で起きた。土壇場での推薦枠の変更。それ自体が派閥の中で大きなさざ波となって広がった。が、総帥の鶴の一声でそれは収まった。或いは"収められた"と言うべきか。

 

曰く、本家の"至宝"とまで言われる令嬢に仕えるウマ娘に推薦を与える。

曰く、そのウマ娘はメジロ家にとって良く仕え、かつ血族で有ること。

曰く、それに値するだけの働きをしたが故に。

 

と。総帥自らがそこまで言うのであれば否を唱えられる者などそういない。しかし、半ば決定していた推薦を、血筋の者とは言え、今まで名前すら上がらなかった娘に与えるという事に疑問を持つ者や、憎悪とも言い換えられる嫉妬を持つ者が出る事だけは避けられなかった。

何とか不和が出ぬ様、総帥周辺が走り回った事で事態は収まってはいるが、それはあくまで表面上の話だ。

 

幸い、クロスレーンは頭の出来も一流であった為、一般入試枠でも問題はなかった。が、自身の覇道に意を唱えたウマ娘への注目は当然有る。持たざるを得ない。それは派閥を形成するウマ娘達共通の話題でもあった。

 

口さがない言葉を吐くウマ娘達もいる中、クロスレーンだけはメジロタイタンを見極めようと思っていた。

しかし、タイタンは平均よりも下。地方ならば上位にも入れるだろうが、中央ともなればデビューすら危ういと言わざるを得ない。そんなウマ娘だった。しかし、彼女は己の前に立ちはだかった。どんな思惑があれ、肯定しかされてこなかったクロスレーンにとって初めての対立者がメジロタイタンであった。

だから、その日、メジロタイタンとの邂逅でクロスレーンは彼女へ宣戦布告をする事にしたのだ。

 

 

 たまたま、本当に偶然だ。その日の彼女は休養日であり、友人達とお茶を楽しみ、帰ってきた所であった。だから、帰り道でメジロタイタンと出会ったのは彼女にとって予期しない事であった。

 

「あら、タイタンさん。ごきげんよう。」

 

「ご機嫌麗しゅうございます。クロスレーン様。」

 

確かに使用人として仕えていたというのは本当らしい。実際、メジロ家本邸でのパーティーで、給仕をする姿を見かけた覚えがある。それに彼女は覚えていないかもしれないが、一度だけ彼女の走りを目にし、言葉も交わした事が有ったはずだ。 

 

「そんな他人行儀にならなくても…。」

 

「それは…、私は貴女を良く知りませんので…。」

 

嘘ではないだろう。しかし、真実でもない。

メジロタイタンというウマ娘の評判は使用人としてのものが殆んどだ。同い年のウマ娘達と比較すれば、その振る舞いや仕事振りは大人達と遜色がないと。抜け目ない彼女なら知らないという事だけは無いはずだ。

言葉を交わす為、クロスレーンは言葉を続ける。

 

「そんなこと、わたくしは気にしていなくってよ。」

 

「…。恐れ入ります。クロスレーン様。」

 

「止めてくださいな。そういうのをここで出すのは不粋よ?ところで今日はトレーニングを?」

 

「…。そうよ。」

 

「貴女はチームに入ったと記憶していたけど…。」

 

「私は早めに上がるのよ。」

 

「まさか…、怪我とか…。」

 

「そういうのじゃないわ…。ただ、身が入っていないならトレーニングの意味がないってだけ。」

 

「…そう。貴女の評価を聞くと手を抜く様には思えないわ。」

 

「誰からどんな話を聞いたのかは詮索しないけど、買い被りも良いとこね。私は別に木の又から生まれた訳じゃないし…。」

 

「ちょっと変わってるわね、貴女。」

 

「"そうあれかし"と、母の教育の賜物ね。貴女とは見ている世界が違うだけよ。」

 

「でも、同じターフを駆ける者よ。」

 

「…。それは…、なら…、違うわね…。私からも良いかしら?どうして私のメイクデビューと合わせてきたの?」

 

「偶然よ。」

 

「本当に?」

 

「貴女がどう思おうと、私は貴女に勝たなければならないわ。派閥がどうとかではなく私自身の誇りとしてね。」

 

「…、謝る事はしないわ。でも開き直るつもりもない。私はただ、与えられた機会を活かすだけ。」

 

「貴女に勝ちますわ。そしてホープフルステークスを獲得る。それがわたくしのジュニア級における目標よ。」

 

クロスレーンは宣言する。自らにとって疚しい事など無いのだと誇るように。勝利を得るのは自身であるのだと声高に。

 

少なくとも、メジロタイタンというウマ娘は噂で語られる様に、総帥やその周囲に取り入って此処にいるというわけでは無さそうだ。ならば、同じ競技者としてレースで闘うのだ。クロスレーンにはそうする甲斐のある相手だと思えた。

 

「貴女と走れるのを楽しみにしていますわ。まずは阪神で。」

 

「そう…ね。阪神で。」

 

その言葉を最後にクロスレーンは歩き出す。走りたい気分だ。トレーナーからは休養日のトレーニングは禁止されているが、少し走るくらいなら良いだろう。先ずは許可を取らなければ。足取りは軽くその場を後にするのだった。

 

 

**********************************************************

「…、…。」

 

 メジロタイタンは立ち尽くすほか無かった。

 

クロスレーンは少なくとも、表面上はこちらを恨む様な素振りはなかった。あくまで表面上は。

実際の所は分からない。否、分かる必要は無いだろう。競技者として闘おうと言われたのだ。これは言葉通りに受け取って良いだろう。

 

タイタンにとっては眩しいウマ娘だった。自分の持っていないものを全て持ったウマ娘、クロスレーン。負けたくない。負けられない。

しかし、タイタンは進むべき先を見据えられないでいた。

春の盾と秋の盾。その獲得。物心が付いた時から仕えてきた。ずっと仕えてきた。そんなメジロという血族へ、あるいは自身への反逆。それがたった一つの冴えたやり方なのだと思っていた。

しかし、それは果たしてターフに立つ理由になるのだろうか。それが成った時、果たして何が残るのか。

 

後ろ向きな理由で走る自分は、果たしてレースを走る者として相応しいのか。少なくともアルビオンのメンバーは走る事に誇りを持っている。

 

夢を否定され、持つものは全て捧げてきた。その結果与えられたモノ。それはタイタンを怒らせるには十分なモノだったはずだ。『何を今更』と。

 

 そびえ立つ壁に巨人は立ち尽くす。プロメテウスの火は何も語らない。

 

青空の下で投げかけられた布告は、大きな重しとしてタイタンの双肩へ科せられた。

 




新章に入ってから二話も使ってこの体たらく。

恥ずかしい、やだこんな恥ずかしい。

アイアンマン!(羞恥の叫び)

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