「阪神で」
そんな約束を交わしてから3日。メジロタイタンはサイサリスと共に、学園外に有る神社の石段にて坂道トレーニングに励んでいた。
「っ、はぁっはぁっ、くっ!」
「オラァ、どうした!たかが三往復程度でへばってんじゃねぇ!デンドロビウムはもっと持ったぞ!」
「くっ!」
歯を食い縛り脚を上げる。踏み出す。レースで走る距離を考えれば短い距離。しかし、見上げて登る距離は遠く果てない様に思える。
「うわぁぁ!」
こんな所では立ち止まれない。メイクデビューまではまだ時間がある。しかし、他のウマ娘達も今、この瞬間にも勝つためにトレーニングを積んでいる。自分だけでは無いのだ。皆が勝つために走り続けている。思いだけで勝てるものでは無いのだ。
「休むなぁっ!走れ!春天はもっときついぞ!」
しかし、こうして自身を追い込み先を目指してみてもそこまで辿り着くのは容易では無い。分かっていた事ではあるが、そこまでの道のりに挫けそうになる。
必死に脚を動かし、石段を登り切る。息をつく間もなく長い石段を駆け下りる。
登る時よりも早く景色が過ぎ去って行く。眼下の街の景色が急速に迫って来る。自身が街の中へ呑み込まれそうな錯覚を覚える程に。もっと、もっと速く。と、身体が動き出そうとした所で地面に足が着く。
「インターバルは1分だ。」
「っくっ、はいっ!」
インターバルの中で息をを整えようと深呼吸をする。しかし、熱の入った身体がそれだけでは足りないと酸素を求め、短く呼吸が続く。それが呼吸を乱し、咳き込む。
咳き込みながらも、大きく息を吸い込み、深呼吸をする。
それは長距離を走るなら必要な技術だ。熱く熱された身体のギアを落とさず、呼吸を整える。呼吸で無駄な体力を消耗させない。このトレーニングにはそんな技術の習得の意図があった。
「10秒後にスタートだ。」
サイサリスの言葉で、直ぐに飛び出せるよう体勢をつくる。
「3、2、1、今っ!」
強く地面を蹴って再び石段を登りだす。
流れ行く景色を横目に五往復目を走り出すのだった。
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「何でタイタンは春の盾を取りたいんだ?」
地獄とも思える坂道トレーニングを終えての帰り道、歩きながらサイサリスから問いかけられた。タイタンの目標、春天の制覇。その根元に対しての問いかけである。
「…。それがメジロの悲願だからです。」
「ん、まぁそう言う話が有るのは知ってる。が、本当にお前はそれが目標なのか?」
「どういう意味ですか?」
「まぁ、私たちが走る理由は色々有る。走るのがとにかく好きな奴、デカイレースで勝ったウマ娘のそれを見て自分も勝ちたいって奴、憧れのウマ娘の様になりたいって奴。そして、お前のように一族の悲願だか、使命だって奴。」
言葉を切ったサイサリスは立ち止まり、タイタンの目を見る。
「でもお前はそのどれでも無い様に思えるんだ。」
「…、…。」
タイタンは答えない。答えられない。何故レースを走るのか、自己の証明の為だと答えるのは簡単だ。しかし、本当にそれだけなのか、メジロという血族への意趣返しの意味も有る。が、現実を改めて見せられたタイタンには、それが理由だと自信を持って答えられなくなっていた。
「ま、私はお前の先輩であっても友達じゃねぇ。チームの仲間として気にはかけるが、踏み込むつもりもねぇ。」
「はい…。」
「だけどな、先輩として言わせて貰うなら、どうしたいのかはハッキリさせるべきだ。
意志の無い奴や、弱い奴はどんだけ走っても勝てねぇ。走る前から無意識の内に手前ぇで諦めちまってるからだ。」
「私は…。」
「直ぐにどうしろとは言わない。だけどな、折角仲間になった奴が、そんなツマンねぇ理由で辞めてくってのはクるものが有るんだ。それは忘れんなよ?」
「…はい。」
「さ、帰ろうぜ。門限過ぎるとメンドくせぇ。」
それ以上はその話題には触れず歩いた。互いに無言であったが、タイタンにはそれが有り難かった。
帰宅後、寮の談話室でタイタンは一人考えていた。走る理由は何なのか。それが揺らぎつつある。
最近、過去話を見返しましたが、描写が飛んでいる部分がちらほらありますねぇ…。何だこれは…、たまげたなぁ。
手を入れる専門家を呼んで書き直しやるからなぁ…?
それはそれとして、タイタンネキも青春してるねぇ。(暗黒微笑)
仮初めの何かを手に入れさせて、そこから落とすって最高じゃないですか?
上げて落とす時は落差が有れば有るほど良いんだよなぁ。
(上手く書けるとは言ってない)