「どうだった?」
全力疾走で走ったウマ娘ダイワスカーレットが、息を整えつつ、トレーナーに聞く。
「新記録だな。今までより一秒早い」
ストップウォッチを見つつ、応じるトレーナー。
「やった!」
スカーレットが笑顔で応じる。
「今日の練習はここまでだ。クールダウンに入ってくれ」
「わかった」
スカーレットはそう言うと、クールダウンに入る。
しかし、とトレーナー・・・ピーター・パーカーは思う。
自分が予想した世界とは全く違うことには困惑した。
このピーター・パーカー、転生者である。
道に飛び出た子供を助けようと道路に飛び出し、
子供は助かったが、自分は死んでしまった。
その後はテンプレのごとき神様転生である。
その時に選んだのが、スパイダーマンの能力である。
ハルクと殴り合える怪力、IQ250の頭脳、これならば早々死なないだろうとの判断だ。
だが送られた世界はウマ娘が競う世界だった。
これならトレーナーの能力をもらうべきだったと思ったが、どうしようもない。
幸いIQ250の頭脳があり、トレーナーの資格を取れた。
トレーナーを職業に選んだのは、給与がいいためである。
トレーニング用具を片づけ、トレーナー室へ戻る。
その時ちょうど警察無線の傍聴機器が鳴った。
どうやらウマ娘が強盗をし、大通りを逃げているらしい。
ウマ娘は基本いいウマ娘ばかりだが、時に犯罪に走る者もいる。
「やれやれ・・・」
ピーターは自身で作ったナノマシン製のスパイダーマンスーツに一瞬で身を包み、
大通りへむかった。
大通りに着くと、ウマ娘が全力で逃げていた。
時速にして80㎞近くは出ているのではないか。
無論公道でこのスピードはスピード違反である。
ピーターは手首から蜘蛛の糸を発射し、糸を足に絡めた。
ウマ娘は足を取られ、地面に倒れた。
それでもウマ娘は逃げようとするが、
ピーターは糸をさらに射出し、逃げられないようにする。
そうしている内に、警官がやって来たため、その場からそそくさと逃げるピーター。
後のことは警官が処理してくれるだろう。
ピーターが本物のように事件に首を突っ込んでいるのは訳がある。
当初、ピーターは単なるトレーナーとして生きることを選んだ。
本物のように戦う理由がないからだ。
ところがそれを覆す事件が起きた。
学園の生徒が、他のウマ娘に襲われたのである。
警察が周囲を見回っているし大丈夫だろうと思われた中である。
ピーターは警察の無線を傍受していたものの、楽観していたのだ。
そのウマ娘は足に重傷を負い、二度と走れなくなった。
ピーターは警察の無線を傍受し、犯人のウマ娘を捕まえた。
スパイダーマンの誕生である。
だが、ピーターの気は晴れなかった。
事件は結果的にこのようなことになってしまったからである。
この事件を通してピーターは学んだ。
”大いなる力には、大いなる責任が伴う”ことを。
スパイダーマンの力を人々の為に使うことを決意したのだ。
「ふあ~」
「トレーナー、寝不足?」
「ああ。ちょっと用事があって」
夜中に事件が起こったので、ピーターはそれに当たっていたのである。
「ちゃんと睡眠取りなさいよ?」
「わかってる。トレーニングには影響が出ないようにするよ」
「それならいいけど・・・」
「それじゃ今日のトレーニングメニューは・・・」
トレーナーとスパイダーマンの二足の草鞋を履きつつ、
今日もピーターは頑張るのだ。親愛なる隣人として。