午前四時、秋川理事長と駿川たづなは朝の散歩に出ていた。
校内のレース用の芝の具合を確かめるというのもある。
その時、理事長とたづなはピーターがトレーナー室から飛び出してくるのを認めた。
「たづな、ピーターは何を急いで・・・」
いるのかという声は途中で消えた。
ピーターが一瞬でスパイダーマンの服に着替え、糸を射出し建物の間を飛んでいったからである。
「・・・・・・たづな、今のは幻か?」
「私も幻と思いたいです・・・」
「否ッ!。これは現実である!」
「帰ってきたらどうします?」
「無論ッ!。帰ってきたら聞き出すまで!」
「・・・眠い」
早朝に泥棒なんざするなと思った。
それでも行くのがスパイダーマンだが。
泥棒を発見し糸を射出。蓑虫状態にしておいた。
警官が近くまで来ているので後は任せよう。
最近はスパイダーマンの名前も有名になってきているし。
学校に戻りスーツを脱ぎトレーナー室に入ると、理事長とたづなさんがいた。
「待っていましたよピーターさん」
「質問ッ!。聞きたいことがある!」
「聞きたいことですか?」
「結論ッ!。お主はスパイダーマンであろう?」
「アハハ。そんなわけ・・・」
「私も理事長も変身する所を見ましたよ?」
「・・・・・・」
たづなの言葉に黙るピーター。
そして両手を挙げて降参のポーズをした。
「はあ・・・そうです。俺がスパイダーマンです」
「ふむ。それで理由は?」
「どこから話したものか・・・」
ピーターはかつて起きた事件からスパイダーマンになる決心を語った。
それを聞いた理事長は、「納得ッ!。そして立派!」と叫んだ。
「”大いなる力には、大いなる責任が伴う”・・・それがいかに難しいことか!」
「お二人ともこのことは黙っててください。お願いします」
「愚問ッ!。もちろんである!」
「でも無理はなさらないでくださいね?」
「ええ。それは気をつけます」
早朝の騒動を終え、図書室で、
スカーレットが不機嫌な表情で本を見ていた。
「どうしたスカーレット?。不機嫌な表情をして?」
「これ見て」
スカーレットが渡した雑誌には、スパイダーマンが表紙になっていた。
偶然撮影されたものだろう。
「この前のレース一番取ったのよ!。それよりスパイダーマンが表紙になってるの!
信じられる!?」
スカーレットが怒りを滲ませる。
「まあ、落ち着け」
スカーレットを宥めるピーター。
「おっ、例の雑誌か」
そこに一人のウマ娘がやって来た。
「ウオッカ!」
「はは。今、世間の注目はスパイダーマンだものな。
地方の一レースの一番になったってそりゃ無理ってもんさ」
「そんなことはわかってるの!。でも悔しいじゃない。
トレーナー、もっとトレーニングの量を増やして」
「・・・無理しない程度に量を増やすそれでいいな?」
スカーレットは頷いた。
「しかし、どんな人間なのかな」
「スパイダーマンのこと?」
「ああ。糸を使って空中を飛び回る機動力、鉄骨を受け止めるパワー、
超人的な反射神経。それでいてお金を取らず去っていく。
ヒーローの見本みたいな人だからな」
「私は普通の人だと思うな」
「へえ。根拠は?」
「多分だけど、普通の人と同じく悩みながら戦ってると思うの。
あれだけの力を手に入れれば、普通調子に乗るでしょ?
でも、ちゃんと抑制して戦ってる。トレーナーはどう思う?」
「スカーレットと同じかな。悩みながらそれでも戦っていると思うよ。
さて、そろそろトレーニングを始めようか」
「そうね。スパイダーマンに勝つわよ!」
スカーレット達は図書室を後にして、トレーニングに向かった。