美しいと表現されるものには様々な形がある。
可憐な容姿。
相手を魅了する造形美。
他者を圧倒する存在感と強さ。
それら一つを持って生まれるだけでもその人物が特別であるとされるなか、目の前に現れた女性はそれら全てをその身に纏っていた。甲冑鎧を着ながらも女性らしい扇情的な体躯に加えて兜を脱いで露にした素顔は絶世の美女そのもの。一目でもその素顔を見たら性別関係なく視線を奪われるに違いないだろう。
俺も例外ではない。端正な顔立ちをしたその女性に一目惚れしていた。だから街を去って行く彼女の後を勝手に追いかけた。世間的で言うストーカー行為である。もちろんスニーキング能力などあるはずもなく、街から程なく離れた場所で声を掛けられた。
「姿を見せなさい」
女性の声に呼ばれて俺は姿を見せた。ストーカー行為が悪いこと。その自覚が自然と両肩を落とさせて、顔を俯かせる。
「顔をあげなさい」
どこまでも凛として透き通った美しい声に誘われるように顔を上げた。
「どうやら先程寄った街から私のあとをつけてきたようですが、何かご用ですか?」
叱責はなく、変わりに届けられたのは理由の問い質すものだった。ストーカーであることは明白だが、万が一にも理由があるかもしれない、その僅かな可能性に女性は一方的に決めつけることをしなかった。
対して俺は言葉を詰まらせる。ここでストーカーであることは認めるべきだろうし、認めるつもりだ。問題はその後。このまま別れるのは勿体ない。どういう形であれ会話する機会が出来たのなら繋ぎ止めなければ。
思考を最大限に巡らせた俺はストーカーの謝罪をした後に、こう付け加えた。
「俺を貴方の傍に置いてください」
子供ながら下手くそな口説き文句だと思った。だが本心でもあった。その熱意が届いてくれたのか、甲冑の女性は了承してくれた。それからは大陸の様々な場所を巡り、そのなかで武芸を鍛え困れ、いつしか彼女の隣に立っても恥ずかしくない腕を手にいれていた。
そして時は流れ、エレボニア帝国の一角。一つの屋敷の前、建物の陰に隠れて一つの家族を俺と甲冑の女性、アリアンロードは優しい眼で見届けた。
「どうやら大丈夫のようですね」
「ですが、あの呪いは消えたわけではありません。やはり根本から絶やさなくては」
「ええ……。これもよき機会かもしれません。あの方の誘いに応じることにしましょう」
あの方とはとある組織の長に当たる人物のこと。アリアンロードとは違った形で浮世離れした人物である女性だった。
「もちろん貴方も変わらずついてきてくれますね、フレン」
「愚問です。その為に俺は強くなり、その為に俺は俺の
そうして俺とアリアンロードは新興勢力、結社〝身喰らう蛇〟に足を踏み入れたのだった。