仮面ライダービャクア外伝 仮面ライダーマイヤ   作:大ちゃんネオ

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邂逅 中編

 三人の反応からして、何かあったらしいけど。

 一体何があったのか。

 

「貴女は……東京駅で永春くんを誑かした!」

「え!?」

 

 沙夜さんの言葉に思わず驚いた。

 だって、薫が永春さんを誑かすということはつまり、BがLするってことだよ!?

 

「どういうこと薫!?」

「誑かす……?」

「沙夜さん! ボクは誑かされてなんて!」

 

 とにかく二人を問い詰めた。

 なんでも、東京駅で新幹線を待っている時に目があったのだという。

 まあ、それだけなら別に。

 

「ま、まあ、どうぞお掛けになってください。真姫、皆さんにお茶を。お部屋に合わせて紅茶で」

「かしこまりました」

 

 真姫さんは一度退室しお茶の用意へ。

 そういえば、私もなし崩し的に来たけどここにいていいのかな……。

 

「えーと、私いてもいいのかな? 出た方がいい?」

「いえ。咲希にもいてもらいたいのです」

 

 薫はそう言うと自分の隣に座るようにと促した。

 いいのかなって思いながら、失礼しますと恐る恐る薫の隣へ。

 永春さんと向かい合うが、それよりも気になったのはその隣の沙夜さん。

 明らかに、薫のことを警戒している。

 借りてきた猫のよう。

 永春さんも罰の悪い顔をしていた。

 正直言って、部屋の空気は最悪に近い。

 

「まずは自己紹介を……。既に聞いているとは思いますが、私が夜舞家現当主にして御伽装士マイヤ。夜舞薫と申します」

 

 そんな空気など気にしないどころか吹き飛ばしてしまいそうなほど丁寧な所作で薫は挨拶をした。

 こういうところを見ると、やっぱりいいところのお嬢様なのだと思い知らされるが、もう一つの顔は武闘派でツンデレがちょっと入った男の子である。

 沙夜さんも永春さんも、そんなことは予想していないだろう。

 

「ボクは常若永春といいます。その、御伽装士とか御守衆ってわけではないんですが一応、関係者ということでついてきてます。はい……」

 

 緊張気味に永春さんが挨拶するやいなや、薫は身を乗り出して永春さんに思いっきり顔を近付けた。

 ルビーみたいな薫の瞳が永春さんを映していた。

 

「常若さん、貴方は……どこか、不思議でございます……」

「え!? あ、いや、そ、そうかなぁ? あはは……」

「ふふ……。人徳でしょうか……」

「あの! 夜舞さん、近すぎです!」

 

 沙夜さんがそう注意すると薫は失礼しましたと席についた。

 で、その沙夜さんだが……。

 

「望月沙夜といいます。御伽装士ビャクアです」

 

 拗ねている。

 やっぱり東京駅でのことを引き摺っているみたい。

 気持ちは、分かる。分かるよ。同じ女として。

 私ももし、薫が他の女の子にデレデレしてたら嫌な気分にはなるだろうし。

 それに私の勘だと沙夜さん、初めてのお付き合いと見た。

 永春さんのことも大好き過ぎるぐらいだし、うん。

 私的には今の沙夜さん、乙女してて滅茶苦茶かわいいと思う。

 そう思えば少しは場の空気が良くなった気がする。

 あとは薫がさっきみたいに無自覚に地雷を踏まなければ大丈夫なはず。

 さて、私は薫のフォローに回りますかね……なんて思っていたら。

 

「ビャクア……。貴女が、ビャクア……」

「は、はい。そうですが……」

「その、一度お会いしてみたかったのです……!」

 

 珍しく、目をキラキラとさせた薫が沙夜さんに詰め寄った。

 沙夜さんはまさか自分まで詰め寄られるとは思ってもいなかっただろう。

 小さく「きゃっ」と悲鳴を上げていた。

 

「総本山でお話を聞いてからぜひお話をと……! 物部天厳討伐の報告書も、何度も読ませていただきました。一体どのような鍛練を普段なされているのですか? 戦った化神の情報を共有などいたしませんか!」

 

 ……なんだ、この薫は。

 えーと、あれだ。

 アイドルとそのファン、みたいな。

 つまり薫は沙夜さんのファンってこと?

 

「失礼します。お茶をお持ちしました。……薫様、お客様に失礼なことはしていないでしょうね?」

 

 お茶を持ってきた真姫さんが薫に釘を差すと薫は申し訳なさそうなのと恥ずかしそうなのを合わせた顔でするすると姿勢を正した。

 

「失礼いたしました、望月さん……。同年代の御伽装士と会う機会はなかなかないので……。つい興奮してしまい……」

「いえ……。でも、たしかに同年代の御伽装士と顔を合わせることはそうありませんので気持ちは分かります。あと、私も夜舞さんのバケゲンブ討伐の報告書はよく覚えています。古の化神に打ち勝つなんて、現代においてそうありませんから」

 

 薫と沙夜さんはそう言い合って笑いあった。

 よかった、ちゃんと仲良く出来そう。

 そうしている間に真姫さんが紅茶をテーブルに置いていく。カップを置き終わった真姫さんは薫の後ろに立ち、待機。服装は袴だけれど、メイドさんとしてパーフェクトだろう。

 そして出された紅茶は香りがとても強く、美味しそうだ。

 早速、一口……。

 

「おいしっ」

 

 思わず、そう漏れた。

 恥ずかしい。

 しかし、永春さんと沙夜さんも同じような反応をしていたので救われたような気分になる。

 それにしてもこんな紅茶を飲んでしまったら、自販機でいつも買う紅茶を紅茶と思えなくなってしまいそうだ。

 

「お口に合ったようで、良かったです。私のお気に入りの茶葉でして、ストレートでいただくのが香りも楽しめて、落ち着きます……」

 

 薫といえば和! みたいなイメージあったけど、紅茶も好きなんだ。

 また、新たな発見と。

 みんなでお茶を楽しみ和んだあたりで、薫が話題を切り替えた。

 

「さて、本題に入りましょうか。猿羅の怨面は」

「こちらです」

 

 沙夜さんがテーブルの上に置いたアタッシュケース。

 開けると、中にはお札が貼られた木箱が入っていた。

 この中に、怨面が……。

 

「これは……」

 

 薫の顔が厳しいものとなる。

 

「これでも、こちらまで運べるようにと処置は施されています。それでも、これです」

「薫、これって……?」

「……咲希、常若さんもです。もし、体調が悪くなったらすぐに言ってください。これはそれぐらいのものです」

 

 体調……。

 そういえば、少し寒気がしてきたような気がする。

 このアタッシュケースが開いてから。

 もしかして、これのせい?

 

「このケースにも防護の術を施してきたぐらいなんです。私も、ここまでの穢れとは思わず……」

「この木箱、開けたらやっぱりヤバいのかな沙夜さん?」

「ここは結界もありますし聖域ですから、そう大きな事態にはならないと思いますが、もし外でこれを開けてしまったら……。この穢れを感じ取った化神達が、これを求めて集まってくるでしょう」

 

 そんなに、ヤバいやつなんだ……。

 薫もあんな顔をするぐらいだし、相当に危険なんだということは理解した。

 これを、どうにかする。

 それが、薫の次の仕事?

 帰ってきたばかりなのに?

 きゅっと胸が締め付けられる。

 だって、薫が大変だから。

 

「じゃじゃじゃ……。これはまた、想像以上だ……」

 

 ノックもせずに入ってきたのは、薫のおばあちゃんだった。

 薫が沙夜さんと永春さんにおばあちゃんを先々代ですと紹介すると二人、特に沙夜さんは居直った。

 薫のおばあちゃんは確かに雰囲気が鋭くて厳しいけど、沙夜さんからしたら御伽装士の大先輩みたいなものなのだから余計にそれを感じるのだろう。

 

「お前さんが、ビャクアか」

「は、はい。望月沙夜といいます……」

「そうか。けんど、これは本当に想像以上だ。薫にも浄化の儀をやらせたかったところだけんど……。これは私がやるしかない。薫、お前は今晩周辺の警護にあたれ。これだけの穢れ、儀式が始まれば結界を貼っていても漏れ出る。そうすれば化神どもが集まってくっけぇに、お前は儀式を守れ」

「かしこまりました」

 

 薫は即答した。

 けど、けど!

 立ち上がり、おばあちゃんと向かい合い叫んだ。

 

「待っておばあちゃん! 薫はさっき帰ってきたばっかりで……」

「咲希。私は大丈夫ですから」

「けど!」

 

 私が食い下がると、薫も立ち上がって……。私を抱き締めた。

 私よりも、小さな身体のくせして……。

 

「咲希。心配してくれてありがとう。けど、大丈夫です。私は必ず勝ちますから。勝って、必ずあなたの所に帰ってきますから。信じて、待っていてください」

 

 私よりも、小さな身体のくせして。

 私よりも、強いんだから……。

 そうだ、薫は必ず帰ってきてくれた。

 だから、今回もきっと大丈夫だと自分に言い聞かせた。

 

「……うん。分かった、信じる。けど、無理しちゃ駄目だよ」

「はい……。無茶は、するかもしれませんが……」

「無茶も駄目!」

「ふふ、はい……」

 

 薫を信じることにした。

 薫は強いから、大丈夫。

 

「あの、私も戦わせていただいてもよろしいでしょうか」

 

 そう声を上げたのは沙夜さんだった。

 

「お客人に戦わせんのはね……」

 

 おばあちゃんはそう言って遠慮したけれど、沙夜さんはあのおばあちゃんに向かい合って自分の意思を伝えた。

 前髪で隠れて見えない目も、真っ直ぐとした目をしているはずだ。

 

「これは物部天厳との戦いの後始末のようなもの。私に、最後まで戦わせてはいただけませんか」

「……分かった」

 

 おばあちゃんはそう返事をして、儀式の準備をすると部屋を出た。

 許しを貰えたので、沙夜さんもホッとした様子だ。

 

「ありがとう沙夜さん! 薫一人で戦うよりも二人で戦った方がいいもんね!」

「はい。……夜舞さん、望月沙夜微力ながらお手伝いさせていただきます」

「微力だなんてご謙遜なさらず……。望月さんが加われば百人力。百鬼夜行でも難なく乗り切れてしまいそうです」

「流石にそこまでは……」

「いや、沙夜さんは強いからね。咲希さんも夜舞さんのこと心配しなくていいよ」

「永春くんまで……!」

 

 みんなで沙夜さんを持ち上げる。

 二大御伽装士による戦いとか、なんかすごそう。

 

「夜舞さん。沙夜さんのこと、お願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いいたします……。咲希と常若さんは今夜は夜舞の家と神社から離れていてください。危ないですから」

「分かりました。ボク達、咲希さんの民宿に泊まってるからそこでおとなしく待ってるよ」

「はい……。あと、そうだ……咲希に、これを預けます」

 

 薫が私に手渡したのは、お守りであった。

 神社で売られてるようなやつ。

 魔除け的な?

 

「それは、私のお母様がご友人のために作った物になります。お母様が亡くなったばかりの頃、そのご友人の方から譲られたのです……。効果はばっちりですので、今晩は念のため持っていてください」

「うん。ありがとう薫」

 

 薫のお母さんが作った物か……。

 なんだか、緊張しちゃう。

 今晩だけ借りる物だけどなくしたりしないようにしないと。

 

 そうこうして、ひとまず四人での話は終わった。

 私と永春さんは家に戻って今晩はおとなしく待つことに。

 薫と沙夜さんは儀式を行う夜舞神社で待機することになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜舞家仕えの平装士の皆さんが浄化の儀の準備を粛々と進めていく中、夜舞さんと私は待機しつつ作戦を立てていた。

 夜舞さんのおばあさんの発案で結界を一箇所、わざと開けることに。開ける場所はこの夜舞神社へと続くこれまた長い石階段。

 そこから漏れ出た穢れを感じ取った化神が、ここ一箇所に集中して集まれば私達も戦いやすい。あちこち移動する手間が省けるからだ。

 私達は地の利も得て、戦う。

 行うことは少ない防衛戦、準備に余念はない。

 実際に現地を確認して、周囲の景色を脳内に叩き込む。

 そして、脳内で戦いをイメージする。

 ビャクアとマイヤの情報をお互いに開示して、どのような退魔道具を用い、どのような技を放つのかも計算する。

 神社の外で軽い組手を行い、互いの呼吸を測ることもして一旦休憩。

 夜舞さん付きの平装士、真姫さんが軽食を持ってきてくださったのでお腹に入れておくことに。

 塩むすびと漬物という簡素なものであるが、個人的にはちょうどよかった。

 

「ごちそうさまでした。美味しかったです」

「ありがとうございます。儀式は間もなく始まるとのことでしたのでそろそろ山門で待機を」

 

 分かりましたと返事をして、夜舞さんと山門に向かおうとしたところ、男の子の声が響いた。

 

「ししょー!」

「勝人……? ごめんなさい望月さん。少し、待っていてください」

 

 夜舞さんはそう言って声がした方へ。

 夜舞家のお屋敷から直接神社に繋がる道の方へ駆けていった夜舞さんが気になり、私もそちらに行くことへ。

 少し離れた木陰から、盗み見るような形にはなってしまったけれど夜舞さんと小さな男の子が話しているのを見ることに。

 

「ねえ! 父ちゃんの怨面あるんだろ!」

「……ええ」

「夜、戦うんだろ! おれも戦う!」

「今の貴方に出来ることはありません」

「ししょー!」

「いいですか、勝人。今の貴方には戦う力はありません。そして、今の貴方が戦うべき時ではありません。貴方が戦うのは、今ではなく未来です」

「未来?」

「ええ。今夜、私達が戦うのは貴方の未来のため。貴方がいずれ守ることになる未来のため。ですから、今夜は家で待っていてください。ね?」

「……うん」 

「ありがとう。それじゃあ、おやすみなさい」

 

 男の子はおとなしく家の方に戻っていき、振り向いた夜舞さんが私に向かって微笑みかけた。

 気付かれていたようだ。

 

「すいません、つい気になってしまって……」

「いえ、大丈夫ですよ」

「師匠と呼ばれていましたが、あの子は……」

「私の弟子でございます。いずれ、猿羅の怨面を継ぐことになる子です」

 

 ああ、やっぱり。

 父ちゃんの怨面があると言っていた。

 御伽装士エンラは天厳により殺害されたと聞いていた。そんな子がここにいるということはつまり、身寄りもなかったのではないだろうか。

 夜舞さんのお家で引き取り、未来の御伽装士エンラとなるべく修行中というわけなのだろう。

 そう、未来の。

 

「私達が戦うのは未来のため、ですか。恥ずかしながら、私はそんな風に考えたことはありませんでした」

「それが普通だと思います。私達が生きて戦うのは今ですから。……私も、あの子を引き取ったこと。そして、現代までマイヤとして戦い続けてきたご先祖様達の思いを知るまでは、そんな風に考えたことはありませんでした」

 

 今を生きて、今を守ることに精一杯であるから。

 けれど、その今を精一杯生きるから未来があるのだと。

 山門の前まで、歩きながら夜舞さんはそう語った。

 若くして総本山付きとなり、弟子を持ったからこその視点なのだろう。

 私も、未来のために戦いたい。

 天厳との因縁のことだけではない。

 むしろ、それよりも大きな意味がこの戦いにあるのだと胸に刻んで私は戦う。

 

「戦いの前に、あまり関係ないかもしれませんが……」

 

 唐突に、少し気恥ずかしそうに夜舞さんがそう話しかけた。

 

「どうか『夜舞さん』ではなく、名前で呼んではいただけませんか? 名前で呼ばれる方が、実は好きなのです」

 

 予想外の申し出にいいのだろうかと一瞬思ったけれど、彼女の人となりは理解した。

 悪い人ではないですし、信頼も置けます。

 断る理由はありませんでした。

 

「分かりました。それでは、私のことも沙夜と呼んでください」

 

 そう返事をすると、夜舞さん。いいえ、薫さんはにこりと笑顔を浮かべた。

 

「ありがとうございます。沙夜さん」

「ふふ、はい」

 

 私も沙夜さんと呼ばれて思わず顔が綻んだ。

 新しい仲間が出来たみたいで、本当に嬉しい。

 

「結界開きます!」

 

 平装士の方の声で私も薫さんもびしっと引き締まる。

 ここから先はしばらく、戦いの時間。

 

「始まりますね」

「はい……。未来へ繋ぐための戦いが……」

 

 結界から穢れが流れ出るのを感じる。

 厭な気。

 天厳を思い出させる残り香のようだ。

 そうして少しすると、まだ身体を持たない化神である黒い靄が無数に現れた。

 

「沙夜さん」

「はい。いきましょう!」

 

 二人、それぞれの怨面を手にし戦うための姿へと変わる!

 

「オン・カルラ・カン・カンラ 白鴉の怨面よ、お目覚めよ……」

 

「オン・ビシャテン・テン・モウカ 舞え、マイヤ……」

 

『変身────!』

 

 ビャクアの変身時に生じる白い風に乗り、マイヤの蝶が月夜に羽ばたいていく。

 御伽装士ビャクア。

 御伽装士マイヤ。

 二大御伽装士見参!

 

「我が名はビャクア! いざ、お覚悟を!」

「我が名はマイヤ。あなた方、化神を滅する夜の蝶でございます……」

 

 化神に対し、それぞれの口上を言い放ち戦士達は化神に立ち向かう。

 魔を断つ一陣の風となり、吹き荒れる。

 

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