仮面ライダービャクア外伝 仮面ライダーマイヤ 作:大ちゃんネオ
民宿に戻り、一人ではなんだと加藤さんのご家族とご飯を一緒に食べて今は部屋に一人。
沙夜さんもここに泊まるはずだったけれど、事情が事情だし仕方ない。
それにしても……困った。
沙夜さんが心配で心配で堪らない。
ボクにも何か手伝えることがあればいいのだけれど。
そんなもどかしさのせいで落ち着かないので、少し身体を動かそうと思った。
疲れれば眠くなって動きたくなくなるだろうと思って。
それで少しだけ外に出た。
すっかり誰もいないものだとばかり思っていたのだけれど、外には咲希さんがいたのだ。
「あ、永春さん。駄目ですよちゃんと待ってなきゃ」
「あ、あはは……。あんなこと言った手前、ちゃんと待つつもりなんだけど、なんだか落ち着かなくて。外の空気でも吸おうかなって」
「そうですか! じゃあ一緒に深呼吸! ここの空気は美味しいですよ!」
ということで一緒に深呼吸。
すう……はあ……すう……はあ……。
「あ、本当に空気が美味しい」
「でしょう! こう、湧水飲んだみたいな感じしますよね!」
その例えはちょっと分かる。
今の時間帯、涼しくなって身体の中にいい感じに冷たいものが入ったような気がする。
少しだけ、リラックス出来たかも。
それはそれとして。
「で、咲希さんも落ち着かなくて外出ちゃったの?」
そう訊ねると、咲希さんは首を横に振った。
あれ、てっきりボクと同じだと思ったのに。
「じゃあ、どうして」
「待ってるんです、私。薫のこと、沙夜さんのこと。ちゃんと、無事に帰ってくるって信じて」
まっすぐ、今まさに戦いが繰り広げられているだろう夜舞神社の方向を見て咲希さんは言った。
「君は……強いんだね」
「へ? いやいや私、薫みたいに戦えませんから」
「そう、じゃなくてさ。……実はボク、ちょっと普通じゃなくてさ、沙夜さんの戦いを手伝ったことがあるんだ」
この子になら、聞かせても大丈夫だと思った。
全てをまるっと話すつもりはないけど。
「だからかな、なんか手伝えるんじゃないかって思っちゃってさ。何かしてないと落ち着かないっていうか……。やっぱり沙夜さんのことは心配だし、力になりたいっていつも思うんだ。もちろん信じてはいるんだけどね。だから、咲希さんを見て、強いなって思った。信じて待つって、難しいから。思ってる以上に」
こんなボクの話を聞いて、また咲希さんは首を横に振った。
そうして、自信なさげに話し出す。
「そんな永春さんが思ってるようなんじゃないですよ。私はなんにも出来ないから。薫を助けられる力とかないですし。出来ることは本当に、待つことだけ……。でも、信じて待ってれば薫は必ず帰ってくるんです。それで、待ってた私を見て、薫が笑うのが好きだから。だから、待つんです」
語る彼女の瞳は輝いていた。
信じて待つ。
それはやっぱり、思ってる以上に難しいこと。
だけどきっと、それはボクと咲希さん二人がこれから先何回も経験しなければならないことだろう。
それが、御伽装士という人を守るために戦う彼女達を愛したボク達の運命。
だから、ボクも慣れといた方がいいかな。待つってこと。
……出来るかなぁ。
戦士達の戦いは続いていた。
黒い靄が大半なので、苦戦することはない。
心配すべきは体力のほう。
浄化の儀が終わるまでは続くこの化神の進撃を乗り切るため、体力を温存しながら戦う。
そのため二人の戦いは前衛と後衛を交互に繰り返しながらのものである。
前衛が化神を迎撃し、後衛が前衛のサポートを行いつつ体力の回復。
今ちょうど、ビャクアが前衛に切り替わる瞬間である。
「退魔道具 風神の風袋!」
マイヤが手にした退魔道具は袋とは言うが、見た目は砲である。
小脇に抱え、放つは砲弾ではなく疾風。
魔を払う風が黒い靄を一網打尽にし、化神の攻勢が一瞬止んだところでビャクアが前へと躍り出る。
「ハイヤァー! 退魔七つ道具が其の参! 雲薙ぎの大鎌!!」
ビャクアは身の丈ほどある蒼き大鎌を携え、前線へ。
その背にマイヤが放つ風を受けて加速し、大きな得物を持っているとは思えないようなスピードで化神達に向けて接近。
大鎌が一度に複数の靄を切り裂く。
ビャクアは追い風を利用し、目にも止まらぬ神速の斬で敵を屠り続ける。
白い疾風が吹き荒ぶこと20分。
マイヤは交代を申し出た。
「沙夜さん!」
「薫さん!」
交代のため、ビャクアが最後に大技を放つ。
「退魔覆滅技法 断邪!」
大鎌の一撃が化神の群体を叩き斬る。
化神の攻撃が止み、その隙にビャクアは退魔道具を切り換える。
「退魔七つ道具が其の壱、天狗の羽団扇! カンラ!」
羽団扇が振るわれると白い小さな竜巻が現れ、靄を吹き飛ばす。
そして、マイヤが舞い上がる。
ビャクアの肩を台にして飛び上がったマイヤは竜巻に乗り、更に舞い上がる。
「退魔覆滅技法 蝶絶怒涛」
上空から無数の蝶を放つマイヤ。
蝶は竜巻に乗り、白き竜巻は紫の光を放つ。
「────滅」
その言葉が起爆スイッチ。
周囲を赤く染めるほどの大爆発。
ビャクアの神通力により生まれた竜巻もあり、普段の蝶絶怒涛以上の爆発が化神を焼き尽くした。
「退魔道具 雷神の雷鼓」
マイヤの背に、鼓が連なる輪が備わる。
その姿は正しく雷神。
雷を自由自在に操り、化神を撃ち落とす。
雷鳴を轟かせるマイヤは雷の指揮者のよう。
優雅に、力強く。
雷のオーケストラは魔を焼き尽くし、聖なる音を奏で続ける。
『ケケケ! 御伽装士の肉も食らおうか!』
『勝負勝負ぅ!』
「薫さん! 肉体を得た化神です!」
「なにするものぞ! 化神! 退魔覆滅技法 雷電疾走!」
マイヤは神通力で束ねた雷の気を現れた化神バケザル、バケイモリに投げつけ、地面を殴り付ける。
上からも雷が放たれ、地にも電撃が走る。
上下からの雷撃が化神を討つ。
二人の戦いは数時間に及ぶ長丁場に。
だが、その戦いにも終わりが近付いてきていた。
「流れ出る穢れの気配が弱まっている……。沙夜さん! あともう一踏ん張りです!」
「ハイヤッ! 分かりました!」
退魔道具、裂空の快刀で靄を切り捨てたビャクア。
この報は精神的に余裕を生み、剣の冴えが増した。
また、穢れが弱まったことにより現れる化神の数は明らかに減ってきていた。
そして。
「伝令! 浄化の儀、滞りなく終了いたしました!」
「ご苦労様です! 結界、張り直してください!」
「承知いたしました!」
平装士の伝令に結界の張り直しを指示したマイヤは戦場を俯瞰。
この数ならばとまとめてなぎ倒すことに決めた。
「沙夜さん! まとめていきましょう!」
「はいッ!」
「「退魔覆滅技法ッ!」」
退魔道具、鎧下駄を纏ったビャクアが縦横無尽に飛び回る。
その数七人。
白き風となり、化神達を取り囲む。
荒れ狂う嵐から、七人のビャクアが蹴撃を放つ。
「乱鴉一陣!! ハイヤァァァァ!!!!!!」
半歩前に出した右足から、無数の蝶が飛び立っていく。
蝶はドーム状に固まって化神を取り囲み、動きを封じ込める。
そのドームへと向かい、優雅に歩くマイヤ。
ドームの前で足を止める。
そして力が集束し、輝く右足で蝶のドームを一蹴。
ドン!と強い衝撃が周囲を揺らすと、マイヤは蹴り込んだ姿勢のまま、その技の名を告げた。
「千蝶一蹴」
次の瞬間、蝶のドームから火柱が立ち上ぼり爆発。
蝶達はその火柱の周りを舞い飛び、明けの空へと旅立っていく。
ビャクアとマイヤ。
戦いを終えた二人の御伽装士を、昇る朝日が見つめていた。
「ありがとうございました沙夜さん。沙夜さんがいてくれなければ、この数はきつかったと思います」
「いえ、こちらこそ。薫さんと一緒に戦うことが出来て光栄です」
薫と沙夜は握手をした。
共に戦った友情の証が眩しく、煌めいていた。
浄化の儀と戦いが終わり、神社の本堂へ。
沙夜さんは咲希の家に戻られ、無事に儀式が完了したことを二人に伝えに行きました。
今回の浄化の儀、おばあ様が執り行いましたが他にも参加したのは年配のベテラン装士の方が大勢。
夜通しは、もうかなりきついでしょうに……。
「皆さん、お疲れ様でした。本当に、ありがとうございます。皆さんのおかげで浄化の儀は無事に完了いたしました。これで、未来に御伽装士エンラが蘇るでしょう。本当に、皆さんありがとうございました」
礼をして、皆さんに感謝を。
本当に、お疲れ様でした……。
「薫」
おばあ様に呼ばれて近付くと、浄化された猿羅の怨面を手渡された。
「これを、わらす(子供)さ聞かせてきな」
「聞かせ……?」
その瞬間、突然頭に何かが響いた。
よく聞き取れなかったので集中して聞くと、それは────。
朝早くに沙夜さんが戻り、儀式は完了し戦った二人も怪我なく無事という報告を受けて私達は薫の家に向かった。
薫は勝人の部屋の前にいて、扉をちょっとだけ開けて中の様子を見ているようだった。
「かおるっ。お疲れ様。なにしてるの?」
「咲希……。猿羅の怨面の浄化が無事に終わったことを、勝人に伝えようと思って……。あと……。沙夜さん、こちらを……」
「はい……?」
猿羅の怨面を手渡された沙夜さんは最初不思議な顔をしていたが、何かに気付いたような顔をしてから優しい笑みを浮かべた。
?
なんだろう、御伽装士にしか分からない的な?
「……父ちゃん?」
「勝人! ごめんね、起こしちゃったね」
「ううん。なんか、父ちゃんの声がした気がして……」
勝人の、お父さんの声?
夢でも見たのかと思ったけれど、沙夜さんから猿羅の怨面を返してもらった薫が今度は勝人に怨面を手渡した。
「勝人、無事に猿羅の怨面は浄化いたしました。貴方のお父様の怨面が真に取り戻せたのです。そして、その声を……。貴方に伝えたいことがあるようですから、しっかりと聞いてください……」
「え……」
勝人に、伝えたいこと……?
「沙夜さん、何か怨面から聞こえたの?」
「はい……」
「え、なんて言ってたの薫!」
「それは……」
『強くなれ、勝人』
短く、それだけ。
死の間際に遺せる言葉はきっとそれぐらいのものだろう。
けれど、死の間際だからこそ本当の想いが籠っている。
だから言葉以上の意味がきっとこの言葉には宿っている。
「とう、ちゃん……。うっ……ううぅ……!」
泣いた勝人を、薫が優しく抱き締めた。
父から子へと受け継がれる想いはきっと、この子を強くする。
薫がお母さんやおばあちゃん、ご先祖様達の想いを受け継いだように。
だから私には怨面というものが単なる変身の、戦いのための道具ではなく、想いを運ぶものでもあるんだと、そういう風に見えていた。
勝人くんが泣き疲れて寝てしまった後、薫さんが「温泉に行きませんか?」と提案した。
温泉。
今の私には魅力的が過ぎる言葉。
戦いに疲れた体を癒すのには最適。
そういうわけで反対意見が出るわけもなく四人で行くことに。
お屋敷の裏山、修行場の中にある露天風呂だという。
大自然の中で温泉……。(もちろん仕切りはあるそうです)
ああ、風情。
永春くんには申し訳ありませんが、お一人で男湯に入っていただき、女三人で楽しく癒されましょう!
そう意気込んで、脱衣所の中に入ろうとしたところ薫さんのスマホが鳴りました。
「あ、総本山の方から……。すいません先に入っていてください」
「は~い。それじゃ沙夜さん行こっ」
「はい。永春くん、一緒に出ましょうね」
「一緒に出たらのぼせちゃうかも」
そうして咲希さんと二人、身体を軽く流していざ入浴。
ああ、と声が漏れる。
いけない、身体が一気にお休みモードです。
このまま、眠ってしまいそう……。
暖かくて、心地よくて……。
「沙夜さーん。温泉で眠っちゃ駄目ですよ~」
「そうはいってもやはり夜通し戦うのは……きつ……」
うつらうつらとして、もう寝るとなった時だった。
「うわぁぁぁぁぁ!!?!?!?!?」
ああ……これは、永春くんの悲鳴ですね……。
永春くんの悲鳴!?
「か、薫さんなんで男湯に!?」
薫さん……?
はっ!
まさか、やっぱり永春くんのことを狙って!?
眠気なんてどこへやら。
永春くんを狙う毒牙をへし折りに温泉から出る。
「沙夜さん!?」
タオルで身体を隠して隣の男湯へ。
緊急事態ですので気にしません。
「薫さん! あなた永春くんに一体何を……! え……」
私は目を疑った。
いや、だって、え?
「沙夜さん。こちらは男湯ですよ。女湯はあちらです」
あっけらかんとそう言って女湯の方を指差す薫さんはタオルで下だけ隠していました。
上半身は堂々と出して、意外と筋肉あるなとか……いやいやいや。
「薫さん! 君は女だよね!?」
永春くんが訊ねると、薫さんは「言ってなかったでしたっけ」と言って……。
「私、男でございます」
そう衝撃の事実を私達に告げるのでした。
「癒しのはずの温泉が一番疲れた気がします……」
「あはは……。私も薫が男ってこと最近慣れすぎてたからなんか周知の事実って感じで……。言えば良かったですね、ごめんなさい」
いえいえ咲希さんが謝ることではと言いつつ、なんだか薫さんが男である方が実は危機的状況なんじゃないかと思い始めている自分がいる。
「咲希さんは薫さんが男ってことを何故知ったのですか?」
「えっとね、化神に襲われて助けられて~、戦ってるところを見てたらそれが薫で~みたいな感じで。薫、最近はどうか知らないけど戦うぞって時は上半身裸になるから。それで知ったって感じ」
「記憶を消されなかったのは何故ですか?」
「それは~その~言っていいのかな~。にへへ、薫、私のこと好きだったからかも~みたいな~」
なんと。
仲がとっても良いとは思ってましたが、男女となればまさか二人は……。
「お付き合いなされているのですか?」
「いやーまあーえへへ。お付き合いどころか、もう婚約者みたいな~」
「婚約ッ!?」
予想以上の進行状況。
高校を卒業したら籍を入れる予定でいるらしい。
「私達のことは話したので~沙夜さん達のこと教えてくださいよ~。どこまで行きました? ABCで言うと?」
「それは秘密です! 秘密ったら秘密です!」
「ええ! ずるいですよ沙夜さん! 言わないとこうです!」
「咲希さん何を、きゃっ!? ちょっ、咲希さん!?」
「ふふ、あちらは楽しそうですね永春さん」
「え! あ、そうだね!?」
薫さん、こっちはそれどころじゃちょっとないんだ。
薫さんはボクに気を遣ってか、またその反対かボクに背を向けて入浴していた。
入浴のため、髪をまとめている薫さんはうなじを露出させている。
肌とか、すごい白くてきめ細かい美肌。
正直に言おう。
薫さんと一緒に温泉入るのは混浴風呂にでも入っているかのようで精神的にやばい。
ただ誤解しないでもらいたいのは決して薫さんに興奮してるとかではなく、罪悪感のようなものを非常に感じるというわけだ。
とりあえずまずは落ち着け精神統一しろ常若永春!
さっき男湯に乱入してきた沙夜さんの姿を思い出せ!
脳裏に焼き付けろ!
「……んさん。……しゅんさん。永春さん」
「はいっ!?」
精神統一している間に、薫さんがすぐ目の前にいた。
「大丈夫ですか? のぼせてしまってはいませんか?」
心配そうにボクを見つめる薫さんは少し身を乗り出してきた。
あ、胸が……。
いや待て薫さんは男なんだ『薫さん』じゃなくて『薫くん』なんだ胸を見たってどうってことない。
「体調が優れないのですか? 私、いまタオルをお持ちいたしますので……」
立ち上がった薫さん。いや、薫くん。
ただ、その姿勢はちょっとやばい。
ボクに背を向けて、ちょっと臀部を見せつけるみたいなのはとてもよくない。
だからボクはこうすることにした。
「集中ッ!」
ザバンと頭までお湯に浸かった。
そしてそのまま薫さんを見ないよう泳いで温泉から出たのだった。
出会いがあれば、別れもある。
それが道理である。
夜舞邸の門の前で、沙夜と永春の見送りが行われていた。
「短い間でしたが、色々とありがとうございました。大変、貴重な体験となりました」
「こちらこそ、薫さん達と出会えてよかったです」
「ありがとうございます。機会がありましたら、またいらしてください」
「そうですね……。それか、もしかしたら薫さんが任務で名古屋に来ることがあるかもしれませんね。その時は、みんなで歓迎いたします」
再び薫と沙夜は握手を。
芽生えた絆の証である。
「永春さんも沙夜さんと仲良くですよ!」
「うん。二人もだよ」
「もちろん!」
咲希と永春も言葉を交わす。
あの夜、互いに待った者同士の友情があった。
「それでは、またいつか」
「はい……。それでは、またおでんせ(また来てください)」
その別れは爽やかなものであった。
同じ御伽装士、御伽装士を愛した者同士。
通じあい、生まれた絆がそこにあったからだ。
いつか、彼等の物語が再び交差することがあるかもしれない────。
邂逅 完
険しい岩山で、四つん這いとなって滝のような汗を流す少年がいた。
息も絶え絶えで、非常に激しい運動をしたようであった。
そんな者に、暢気な口調で話しかける中年の男が一人。ボサボサの金髪をてきとうに束ねて、ちょうどいい岩に腰かけたワイルドな男だ。
「ったく、配属するって決まってからまた修行やり直す羽目になるなんてな。あがりすぎなんだよお前は。もっと肩の力を抜け、俺みたいに」
男のその言葉に対して、少年は途切れ途切れながらも言い返した。
「うっせぇ……ぞ……くそ、親父……」
「まったくその口の悪さは誰に似たんだか……。それより行くぞ、薫のとこに」
男の言葉に疲れなど忘れたかのような速さで反応した少年は男に目をやった。
「会えるのか、薫に……!」
「ああ。10年ぶりくらいか? 向こうはとっくに御伽装士やっててもう総本山付きなんかになってるみたいだぜ。はぁー俺の後輩ってことか、いやー嬉しいね~。ま、そんなわけでお前も頑張ってくれよ。新しい鱗牙としてな」
そう言われ、少年は指輪を見つめる。
これが、少年の持つ鱗牙の怨面の待機状態。
いよいよ、自分が実戦に出る時が来たのだと思うと胸が熱くなる。
頑張って疲れた身体を奮い立たせる。
耳を隠す少し長めの金髪が風に靡く。
顔立ちは中性的。
身長は175cmほど。
まだまだ成長が止まる気配はない。
少しきつい胸に手を当てて、少年は呟いた。
「待ってろよ、薫……!」
牙が光る、爪が裂く。
唸れ、吼えろ。
次回「鱗牙」
新たなる御伽装士。
その名は、鱗牙。