仮面ライダービャクア外伝 仮面ライダーマイヤ   作:大ちゃんネオ

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旅人 中編

 午後2時を過ぎた。  

 1時には執務室に戻り、パソコンやモニターなどの機材を準備して2時ちょうどから始まったオンライン会議には薫ちゃんとおばあさん。つまりは先々代のご当主が参加されている。

 会議の相手も岩手県本部の御偉方に、総本山の人間も一名参加しているという。

 そんな場に居合わせていいのかと思ったが、機材さえ準備してしまえばあとは案山子同然で会議の内容に耳を傾けていた。

 こうしてずっと聞いているが、会議の内容は極めて真面目でかつ、行き詰まっているもので鋭意調査中という科白を何度耳にしただろうか。

 しかし、そんな壁を壊すやもしれないことを薫ちゃんのおばあさんが話し始めた。

 

「松木晴美の死亡原因について、ある話を耳にしてね。キジュツという怨面を知っている者は」

 

 その質問に答えるものはいなかった。

 薫ちゃんですら困惑気味の表情を浮かべている。

 

「現在、行方知れずの怨面のようだが……。キジュツは狗噛神と呼ばれる術を用いていたとされる。その、狗噛神という術と松木晴美の死亡時の状況が一致する」

「それは、つまり。失われたキジュツという怨面を手にした者が今回の事件の黒幕だと」

 

 岩手県本部の青山という人がパソコン越しに身を乗り出していた。

 

「確証はないがね。だが、松木晴美は化神と戦う術を身に付けないかと何者かに誘われた。つまり相手は化神ではなく人間だろう。それも、化神と戦えるな」

 

 化神と戦える人間。

 つまり、御伽装士。

 相手も御伽装士の可能性が高い、というのは非常に厄介だろう。

 かつての海莉さんという例もある。

 化神を相手にする以上に、精神に来るものがあるはずだ。

 

「最悪、元身内とやりあうことになるかもしれない」

 

 その言葉に、空気が重くなるのを感じた。

 当然だ。

 彼等は人間に害する化神と戦うのであって、同じ人間と戦うことは本来の任務ではない。

 

「……私は、その供述の前の、訓練を受けた。という言葉が気になります。言葉の綾かもしれませんが普通、私達がよく言うのは修行や鍛練、稽古です。訓練というのは、こう……軍事的だと思うのです。御守衆の人間とは違う気もして……」

 

 そう語る薫ちゃんの口調はどこか自信なさげに見えた。

 自分と二回り以上歳の離れた大人達と会議をするのだ、いくら薫ちゃんが御伽装士で、夜舞家の現当主とはいえ、やはりまだ15、6の女の子なのだ。緊張もするはず。

 三つ子がこんなことをしている場面は見たことないが、霞澄でもここまで話せるだろうか。日依はこういう場は苦手だろうし、静久は論外。

 

「いや、どんな細かいことでもいいんだ。こういう時、フィーリングというのは重要だしね」

 

 液晶の向こう側。岩手県本部の部長という老年に差し掛かってきたぐらいの、柔和な雰囲気の男性が薫ちゃんに優しく声をかけた。

 こういう人がいると、とてもやりやすい。

 薫ちゃんもホッとしたようだ。

 

「……そういえば、以前、30歳を越えてから怨面に認められたという装士がいませんでしたか。たしか、失伝していた怨面を見つけて、そのまま認められたと」

 

 青山さんが記憶を慎重に辿り、そんな御伽装士がかつていたことを話した。

 本部長さん、おばあさんもそういえばといった様子で青山さんの言っていることはどうやら事実らしい。

 30を越えてから御伽装士になるとは、とてもじゃないが考えられない。

 厳しい修行を30代でこなすというのは、普通には無理だろう。

 しかしいま何故その話題が出たのだろう。

 疑問に思っていると、総本山から参加している若い装士が画面を共有して一人の男性のプロフィールを映し出す。

 

「この方でしょうか……」

 

 映し出されたのは浅黒い日焼けした肌に刈り込んだ短髪の男性。いかにも、体育会系といった風貌だ。

 名は……。

 

「高浪、武蔵……」

 

 画面がスクロールされ、高浪武蔵という男のプロフィールが明らかとなる。

 そこに記されていた情報に、目を見張った。

 

「防衛大卒業からの海上自衛隊……!? しかも33で三佐とか最短コースだぞ!」

 

 あっ、と口を覆った。

 あまりのことに声を出してしまったが、咎められることはなかった。

 

「ええ。事実、高浪は優秀でした。御守衆に属した後も最短で修行を終え、任務に就いていました。総本山付きの打診もあったようです。しかし」

「10年前、化神討伐後に失踪……」

 

 現在まで行方知れず。

 化神と相討ちとなり、海へ転落したと思われる。

 捜索するも、発見ならず。

 

「彼が所有していた斬鮫の怨面も見つかっていません」

「……高浪が生きており、今回の首謀者だと」

 

 青山さんが冷静に尋ねる。

 それに答えたのは、おばあさんであった。

 

「調べる価値はあるだろう。今回の件、かなり組織だって動いているように思える。元自衛隊の幹部というなら、組織の指揮も取れるだろうさ」

「ただ、もしそうだった場合……キリサメ、あるいはキジュツ。あるいはその両者と戦闘になる可能性が高い……」

「……この件は重大事案として上層部に報告します。岩手支部だけで対処する問題とは、最早言えないでしょう」

 

 時刻は3時を回っていた。

 今回の会議はひとまず更なる調査が必要ということで幕を閉じた。

 会議が終わり、薫ちゃんとおばあさんも一息ついてソファーに深く腰をかけている。

 休憩のひとつもそりゃ入れたいだろう。俺は二人の湯飲みに日本茶を注いだ。

 二人は俺に礼を言い、お茶を啜りまた一息。

 そして、おばあさんが口を開いた。

 

「……紫に調査を頼んでいる」

「紫様に?」

「ああ。今回の件、御守衆内部に内通者がいる可能性も考慮して奴等にも伏せている」

 

 ……なんと用心深い。

 その、紫という人物は当然知らないが、おばあさんがわざわざ調査を頼む辺り信頼はしていそうだということは分かる。

 それにしても、そんな話を俺が聞いて良かったのだろうか……。

 

「高天原から来たのなら、信用もする。雪蔵の下にいたんだろう」

「雪蔵さんをご存知で?」

「まあ、多少な」

 

 御伽装士はその特性上、なかなか管轄からは出られない。

 そのわりに、横の繋がりは強いようだ。

 また一つ勉強になった。  

 もしかしたら今後も意外な場所で意外な縁と出会うこともあるかもしれない。

 

「さて、片付けが終わったら鍛練の時間です。手早くやっちゃいましょうか」

「よし、ぱぱっと片付けるから待っててくれ」

 

 オンライン会議で使った機材類の片付けに着手。

 片付けは簡単だ。出した逆順にやればいい。

 我ながらてきぱきと働いていると、背後でおばあさんと薫ちゃんの話し声が聞こえてくるので、つい聞き耳を立ててしまった。

 

「真姫を数日休ませたって?」

「ええ」

「三日後にはあいつの誕生日だからな。たまにはいいだろう」

「そうです。真姫はもっとプライベートを充実させるべきです」

「……まあ、付き人には優しくな」

 

 そう言い残し、おばあさんは部屋を出ていった。

 誕生日、か。

 

「プレゼントは用意してるんだろ?」

「えっ……」

「真姫さんの誕生日なんだろ? だったら、プレゼントのひとつやふたつ……」

「それが……まだなんです」

 

 それは、意外な答えであった。

 いや、意外なんてたかだか数時間一緒にいるだけの自分が思うのも烏滸がましいが。

 

「真姫は欲を見せないので……。いつも、悩むんです。欲しい物とか、望むことが分からなくって。何をあげても喜ぶんですけど、本当に喜んでもらえているのか不安で……」

 

 視線を落とす薫ちゃん。

 本当に不安なのだろう。

 

「なので、たまにはまとまった休みでもと思ったのです……。そのことで喧嘩までしてしまって。……内人さんを利用するようなことをして、申し訳ありません……」

「いや、いいんだよ」

 

 それぐらいお安い御用だと言ってみせる。 

 付き人業務はほんの少し前までやっていたのだから。

 ……とはいえ、自分が真姫さんレベルの仕事がこなせるかといえば、無理だと断言出来る。

 少しだけだが、この執務室の中を見るだけで彼女のきめ細かい仕事ぶりが随所から分かった。

 かなり仕事がしやすいように整えられている。

 まだ高校二年生だというが、かなり仕事が出来る人だというのを実感して止まない。

 若くしてベテランの域。俺なんて、密度の濃さはあったが付き人として勤めたのはたかだか数ヶ月。

 見習うべきところが多々ある。

 

「……さて、それでは鍛練と参りましょうか。内人さんにも、少し付き合ってもらいますよ」

「付き合うって……まさか、組手の相手しろとか、まさかそういう……?」

「いえ。これから行うのは……」

 

 

 

 

 

 前方を走るその背に必死に食らい付く。

 タイヤは泥を巻き上げ、身体は風を切り、エンジンが唸りを上げるも、無理だと叫んでいるようにしか聞こえない。

 逆に、前を走る黒いバイクの駆動音は溌剌としてまだまだ走れると言っているように聞こえた。そんな先頭車両の目の前に黄土色の山が現れる。

 横から見たら山だろうが、前から見ている俺達からすれば壁と表現するより他ない角度の急斜面。

 それに向かい、黒いバイクは更に加速。難なくといった様子で斜面を駆け上がったバイクはその頂上で、軽やかに車体を翻して反転。

 その挙動の美しさに、運転中ということも忘れて魅せられる。

 そして、黒いバイクは一気に斜面を下って────こちらへ突撃してきた。

 思わずバランスを崩し、転倒しそうになるもフブキホッパーが制御して黒いバイクを回避する。

 心臓がバクバクと震え、一旦ブレーキ。

 走り去ったと思った黒いバイク、アラシレイダーも停車していて、薫ちゃんがこちらを向くとヘルメットのシールドを上げた。

 

「大丈夫ですかー?」

「いやあの……! いきなりはやっぱ無茶ですよ!」

 

 今回の鍛練はバイクの鍛練。

 裏山とまたその隣の山の間に作られたトライアルコースを走るというのに、俺も付き合わされていた。

 薫ちゃんはアラシレイダーを方向転換させ俺のもとへ。

 一旦休憩にするらしい。

 ヘルメットを脱ぐと汗が跳ねるのを首筋で感じた。

 ただ道路を走るのではなく、作られたとはいえこんな悪路を走るのはそう経験がない。

 トライユキオロシであちこち走り回るのとはやはりわけが違う。

 

「フブキホッパーはアラシレイダーで培われた技術が使われています。これぐらいの悪路は、なんのその」

 

 薫ちゃんがそういうと、フブキホッパーはカウルを薫ちゃんに向けてライトをチカチカと点滅させた。

 続いて俺の方を向くとただジィ……と見つめるのみ。

 フブキホッパーの言葉は分からないが、抗議しているのだろうということは分かる。

 もっと自分を上手く使いこなせとでも言いたいのだろう。

 そう言われても、なかなかないぞ。こんな道を走る機会は。

 機会がなければどうしようもない。

 考えたことが通じたのか、フブキホッパーは拗ねたようにプイと顔を向けてしまった。

 そんなフブキホッパーに、アラシレイダーが何か声をかけるようにライトを点滅させていた。

 願わくは、この生意気な弟分に注意してもらいたい。

 

「無茶を承知で付き合わせてしまい申し訳ありません。あの子の性能を見てみたくて」

「はあ……。とはいえ、今のあいつはリミッターがついてるんですよ。今は俺が使うってんで。御伽装士が乗るなら外れるんでしょうけど。あいつ的にも本気の走りが出来なくて辛かったりするかもしれませんね」

 

 それでも、市販されているバイク以上の性能ではあるが。

 

「それならオレに貸してくれよ」

 

 どこからか見ていたのか、樹羅ちゃんが茂みを揺らしながら現れた。

 

「お、樹羅ちゃん」

「だからそう呼ぶんじゃねぇ! ……ちょっと乗せてくれよ、そいつに」

「駄目ですよ樹羅ちゃん。まだ免許取ってないんですから」

「道路走るわけじゃないし、いいだろー? 親父の見て分かってるからさ」

「ダメです。ちゃんと免許取ってからにしてください」

「ケチー! 薫だって免許取る前からここでアラシレイダー乗り回してたんだろ!」

 

 やいのやいのと言い合いが始まる。

 そんなに口喧嘩するぐらいなら乗せてもいいんだけど……。

 それにしても、仲が良いな。

 普通の子供らしい、友達とつるんでいるような。

 薫ちゃんがそんな風に普通の女の子らしいことをしているのが、なんだか無性に嬉しかった。

 

 

 

 

 

 夜になり、夕食を食べ終えると今日の付き人業務から解放されてしまった。

 てっきり薫ちゃんが寝るまで業務と思ったが、残りは自由時間ということでとニッコリ笑顔を浮かべて言われてしまい、ありがたく自由を頂戴することに。

 とはいえ、自由を与えられたからといって何をするというわけでもない。というより、何も出来ない。

 体力の限界だ。

 割り当てられた部屋のベッドに倒れ込み、ぼうと睡魔に身を委ねる。

 脳だけ湯船に浸かっているような感覚と、押し寄せた疲れから全身が重い。

 横になったのは失敗だ。

 もう、身体を起こすことは出来ない────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 交通網は日々、進化していく。

 この国を端から端まで巡る血管とも言える道路は、毎日どこかしらでより効率的に、より速く行き先に辿り着くようにと新たな道路が作られている。

 ここはそんな、新しい道路の誕生により忘れ去られようとしている道。

 山々の間に作られた、細く、歪に曲がりくねった旧道。

 あたかも、誰からも忘れ去られてしまったから性根が歪んでこのようになってしまったかに思えるが、かつてはここも生活道路として多くの人、車で賑わった。

 今、わざわざここを走るのは陸の孤島とも呼ばれる点在した家々の人間ぐらいのもの。

 街路灯もほとんどなく、この時間は文字通り暗闇に包まれる。

 そんな道路の途中に、営業をやめて何十年にもなるドライブインだった建物が佇んでいる。

 屋根や壁の塗装は剥げ、店内は遊びで侵入した者により荒らされ、スプレーで落書きまでされていた。

 普通わざわざ来るようなところではない、が。

 トラックも数台停まれる広い駐車場に、必要以上の駆動音を鳴らし、やたら眩しいライトを輝かせ走るスポーツカーの群れが雪崩れ込んでくる。

 

「んだよここ、薄気味悪ィなァ~」

 

 窓を開け、廃墟を覗き込んだ若いドライバーがそう洩らした。

 ひとまずそれぞれの車から降りたドライバー達は各々、煙草を吹かしたり身体を伸ばすなどして休憩。

 

「自販機ないじゃん」

「あるわけねえだろこんなとこに」

「マジかよ。コンビニは」

「あるわけねえって二度も言わせんなよ!」

 

 この集団の年長者らしき初老の男が若いドライバーの不平に声を荒げる。

 事前に用意しておけと言っておいたのに、これだ。と、男は最近の若い奴はと年寄りめいたことを言いかけて、飲み込んだ。

 それよりも、楽しい話題だ。

 

「ここはさ、誰も来ねえから女連れてくると楽しめるぞ~」

「また出たよ……。女とかどうでもいいんで、オレ達」

「そんなこと言って、女いたら実際ヤる気満々だろ。なあ? がはは」

 

 初老の男は下品に笑った。

 この人はこれだから、と若い世代は呆れていた。

 車と酒と女しかない年長者を見て、若者達はああはなりたくないと思いつつも、心の隅では羨ましいとも思っていた。

 所詮は過去の栄光にすがっているだけだが、過去に美味しい思いが出来ているだけ自分達よりよっぽどいい。

 だが、そんな風に思っていることは恥だと若者達は口にしない。  

 それでもこの男のもとに集まるのは、もしかしたらいつか美味しい思いが出来るかもしれないという、ほんの僅かな希望を幻視しているからだ。

 

「おい、誰かいるぞ」

 

 初老の男が、駐車場の出入口を指して急に言った。

 誰もが、いつもの下らないネタだろうと思った。

 しかし、初老の男のすぐ隣にいた若者が「いる」と指を指してようやく男達はその方向を見た。

 暗闇の中、たしかに人影が動いている。

 こんな時間に、こんな場所を歩く?

 全員が疑問と不安を抱く。

 普通ではないと。

 

「お、おーい」

 

 若者の一人が、スマートフォンのライトを向けて人影に声をかけた。

 

「バッカ! なにやってんだよ!」

  

 隣の金髪の男がスマートフォンを持つ右手を叩く。

 スマートフォンから発せられた光はブレて、人影の姿をぼやけさせる。

 だが、たしかに。

 コツ、コツ。

 足音。

 コツ、コツ。

 近づいてくる、足音。

 そして。

 

「こんばんは。クルマ、かっこいいね」

 

 宵闇の中から現れたのは、にこりと笑顔を浮かべた黒いセーラー服姿の少女であった。

 長い髪は染めているのか雪のような白、白い肌と合わさり闇の中から頭だけ浮かんで見えるような錯覚。

 発せられた声は明るく、楽しげで、男達の緊張を解すのに一役買った。

 長い睫毛とその色合いから、男達は少女に白百合を重ねた。

 

「これ、お兄さん達のクルマじゃないの?」

「え、いや、そうだよ」

「そっかー。クルマ、いいな~。楽しそう」

 

 少女は自分達の愛車に興味津々といった様子。

 こうした趣味に生きる男達にとって、趣味を褒めて、認めてくれる異性というのは、喉から手が出るほど欲しいものである。

 

「おい」

 

 初老の男が、傍らの若者達にひっそりと声をかけていた。

 

「あれ、ヤれるぞ」

 

 その言葉を聞き、若者達の心に邪な蛇が鎌首をもたげた。

 もしかしたらと夢想していたことが、現実となった。

 それに、この少女はかなり顔が良かった。

 大きい瞳に長い睫毛。自分達がよく関わるタイプの女にはない透明感。それに、出るとこは出ていてスタイルも良さそうだ。

 なにより、制服姿というのがそそった。

 生物として、雄として、若い雌を求めることは不自然なことではない。

 そうした本能の前に、こんな夜遅くに、車でもなければ来られないような場所に、少女が一人でいる、という不自然を誰もが忘れてしまった。

 

「手本を見せてやる」

 

 初老の男が前に出て、笑顔で少女に話しかける。

 

「なに、車好きなの? 乗ってみる?」

「あはっ。いいの?」

「いいのいいの。俺のはね、昔の車だけど色々弄ってるからさ、走ると面白れぞ~!」

「そっか~。でも、残念だな~」

 

 少女の言葉に、初老の男は肩透かしを食らった。

 

「ざ、残念って?」

「待ってた子が来たみたい」

  

 なんだ、連れがいるのかと内心で毒づいた時だった。

 

 聞き慣れない、ギチギチ。

 

 音が、ギチギチギチギチ。

 

 聞こえてくる。

 

 ギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチ。

 

 それは、光沢のある赤黒い身体をしていた。

 百本はある白い足。形、大きさ様々な車輪が音を上げ、曲がりに曲がった道を暗闇の中というのを関係なく、滑らかに疾走していた。

 そして、廃墟となったドライブインの駐車場に侵入すると瞬く間に男達が乗ってきた車を、男達を囲う。

 

「ヒイッ! な、なんなんだよこれぇ!」

 

 男の一人が悲鳴のような声を上げていた。

 大の男がそんな状況だというのに、黒い少女はニコニコとした笑顔を崩さないまま。

 

「教えてあげよっか、わたしが」

 

 団子となって震えている男達に少女は一歩近付く。

 コツ。

 男達は来るなと叫ぶ。

 コツ。

 少女は笑顔である。

 コツ。

 男達は意味を持たぬ言葉で泣き喚く。

 コツ。

 少女は笑顔である。

 コツ。

 

『あれはね、ううん。ユリ達はね』

 

 化神って、言うんだよ。

 

 黒の少女に真白い影が重なったのを見たのが、男達が見た最期の景色。

 気が付けば、車も男達も一つの団子となっていた。

 誰に知られることなく、車と男達は化神達の月見団子として腹に納められたのである。

 

『ねえ~。それさ、車って、おいしいの?』

 

 黒の少女が赤黒く細長い化神の胴体に腰掛けながら問い掛ける。

 化神の胴を遡り、頭の方へ目を向けると、頭があるべき場所には上半身裸の男の姿があった。

 そこだけ人間態となって、食事に勤しんでいる真っ最中。

 色白で、不健康そうな痩せ身の男は死んだような目をしながら白いサイドミラーを骨付き肉のようにかぶりついていた。

 およそ食事らしからぬ音を発し、これで塵ひとつ残らない。

 

『車は……味じゃなくて喉ごしを楽しむんだよ。あと、食感』

『へぇ、そうなんだ! ユリにもあとで食べさせてね?』

『どうだろう……。他の奴等はみんな、ペッてしてたから……。あんまり、ウケは良くないかも』

 

 男は存外、子供っぽい話し方をした。

 

『そっか~。でも、君は車を食べて強くなったんだもんね』

『うん……。車、面白い。一個襲えば、人間が四人いたりする。そういえば、この間はボクみたいな長い車を襲ったら、いっぱい人がいたんだぁ』

『よかったね!』

『うん……! ところで、お姉さん』

『うん?』

『お姉さんは、誰?』

 

 仲良さげに話していた二人だが、初対面であった。

 そういえば、自己紹介してなかったっけ?

 そう言い、化神の胴から降りた少女は男を見上げながら名乗りを上げた。

 

『わたしはバケザクラ様が華、桜花伍化神が一片。────純白零冥(じゅんぱくれいめい)、バケユリ』

 

 男はその名乗りをぼうと眺めていた。

 

『もう~あんまり見ないでよ恥ずかしいから~。名乗る時はこれやる決まりなの~』

『そう、なんだ。すごいね。あ、僕はバケムカデです……』

『あはっ。知ってるよ~。ユリは、君を探しに来たの』

 

 少女、バケユリに言われバケムカデは自分を指さした。

 

『ちょっとね、御伽装士と戦ってくれない?』

『ええ……? あんまり乗り気しないなぁ。怖いし、車襲う方が楽しいし』

『そこをなんとかお願い~!』

 

 両手をあわせ懇願するバケユリにバケムカデは困った様子。

 バケムカデはあまり自信がないのだ。

 戦闘はもちろん、なんにだってそう。

 現状、唯一自信があると言っていいのは、走ることだけ。

 

『君はさ、御伽装士と戦ったことある?』

『え、ないけど……』

『じゃあ一回経験してみよ? 何事も経験って言うし……今の君なら、そう怖い相手じゃないかもしれないよ?』

 

 バケムカデは考える。

 こんな初対面の相手から御伽装士と戦えと頼まれるなんて、どうかしている。

 

『こんなにおっきいんだもん。君は強いよ~』

『……そう、かなぁ』

『うん~。君なら、御伽装士をたっくさん殺せると思うから。自分を信じて!』

 

 たしかに、人と車を食べて自分はかなり大きくなった。

 こんなに大きい化神は、今は他にいないと思う。

 もしかしたら、本当に……。

 

『やってみる……!』

『わ~。ありがと~。御伽装士を殺せたら、ご褒美あげるからね』

『ご褒美……?』

『うん~。なんでも叶えてあげるから、遠慮しないで言ってね。この道を行けば、御伽装士も現れると思うから』

 

 そう言われては、俄然やる気が出るというもの。

 バケユリは小走りしてから振り向き、バケムカデへと笑顔で手を振った。

 バケムカデは手を振り返すと、バケユリは闇の中へと溶けていくように消えていく。

 

『御伽装士……殺す……!』

 

 バケムカデの人間態が月を背にして変態。

 胴体と同じ赤黒い細身の身体に白い脚が全身に生え揃い、両肩にはタイヤのような部位が備わっていた。

 鋭い顎と長い触角を持ち、頭はバイクのカウルのようにのっぺりとしており、闇夜を照らす光を放つ。

 バケムカデは道路へ出ると南下していく。

 御伽装士を探すために。

 御伽装士を殺すために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 宿泊させてもらってる身で寝落ちだなんて。

 目を開けたら時刻は深夜1時。

 部屋の明かりはついたまま。何もかもがそのままだ。

 

「ああ、くそ……。いっそ寝るならそのまま朝まで寝てしまった方がいいんだけどな……」

 

 今からシャワーを浴びるのは寝ている住人達を起こしかねない。

 朝、手早く済ませるより他ない。

 

「……喉が乾いた」

 

 独り言を洩らし、そっと部屋を出た。

 目指すは台所。

 スマートフォンのライトを頼りに、足音を出来る限り殺し、廊下を渡る。

 古い床のせいか、どれだけ注意して歩いてもキィ、キィと軋む音がする。

 それにしても、いや、やはりと言うべきか。

 雰囲気がありすぎる。

 ひどく俗な言い方をすれば、幽霊でも出そう。

 築何百年と経っていそうなお屋敷だ。暗くなるだけで最恐のお化け屋敷。

 

「いやいや、ここは神聖な土地だし」

 

 夜舞神社もすぐ近くだし、化神対策で結界も張られているという。

 幽霊なんて出るわけ。

 

「何をしているんです」

「うおっ!?」

 

 突然、背後から話しかけられたのだ。

 こんな声が出ることを許してほしい。

 それより、今のは……。

 恐る恐る振り向くと、何故か真姫さんがいた。

 

「えっ、真姫さん……? なんでこんな時間に?」

「質問しているのはこちらですが」

 

 表情を変えず、そう切り返される。

 それもそうだな……。

 

「えっと、目が覚めてしまって。水でも飲もうかと台所へ……」

「そうですか」

 

 たったの五文字だけの返事。

 あとは用はないと真姫さんは俺を横切り進んでいった。

 

「あ、あの」

「……なんですか」

 

 声をかけると、真姫さんは半分こちらへ振り向いてくれた。

 

「真姫さんこそ、こんな時間に何を……?」

「……こちらの部屋に忘れ物をしたので取りに」

「こ、こんな時間に……?」

 

 夜中の1時過ぎだぞ。

 未成年が出歩くような時間じゃない。

 忘れ物が、よほど大事なものなのかもしれないけれど。

 

「……いま屋敷にいると、薫様から色々言われてしまうので」

 

 なるほど。

 休みを与えたはずの真姫さんがいたら何をしているのかと思われてしまうから、というわけか。

 こちらの質問に答えてくれたのでまた素っ気なく行ってしまうかと思ったが、真姫さんはその場に佇んだままでいる。

 そして、俯きながら彼女は二言目を紡いだ。

 

「……その、今日、薫様は……」

「あ、ああ、特別なことは何もなかったと思う。しっかり会議に参加されて、鍛練にも打ち込んで……」

「……そうですか」

 

 感情を感じさせないよう呟かれた言葉には、寂しさが滲んでいた。

 薄々思っていたけれど、真姫さんはやはり……。

 

「休みを与えられたのが不満?」

 

 目を見開く真姫さん。俺の予想は当たっていたらしい。

 いや、こう分かりやすいと当てるも何もないけれど。

 

「……いえ、休むのも務めですので」

「隠さなくていいさ。別に恥ずかしいことじゃないし」

「隠してなどいません。本心です。……失礼します」

 

 背を向け、歩き出す彼女の背を俺は追いかけていた。

 俺は、彼女と話してみたい。

 たんにそう思っただけだ。

 

「なんですか」

 

 迷惑そうな顔が振り向く。

 

「いや、こんな時間に女の子一人で出歩かせるのは良くないと思って」

「問題ありません。むしろ、見知らぬ男に付け回されてると思われる方が迷惑です」

 

 そう来たか。

 なら、こちらは切り札を出そう。

 

「今日の薫ちゃんの話、聞きたくないか」

「……特に何もなかったのでは」

「大きな問題は。ただ、小さな悩みを打ち明けてくれたよ」

 

 その言葉に、彼女は食い付いたようだ。

 だが、焦るな。

 まだ、完全に針に引っ掛けたわけではない。

 

「解決してあげたいけど、今日出会ったばかりの俺には難しい。真姫さんの意見が聞きたいところだ」

「……分かりました、聞きましょう」

 

 内心ガッツポーズ。

 我ながら、少しばかり悪どい気がする。

 だが、付き人業務のためだ。悪いことではない。

 

 

 

 真姫さんの忘れ物とは教科書の類いであった。 

 明日、もう今日だが月曜日となれば普通に学校があるわけだ。

 真姫さんは緑と白のチェック柄の手提げ袋に教科書を仕舞い、屋敷を出る。

 東北も、夜の秋風は冷たい。

 だが、月は暖かい色をしていた。

 

「深夜の信号は無視するタイプ?」

「……深夜出歩く範囲に信号がありませんので」

 

 たしかに、この辺りに信号はない。

 走る車もない。

 真っ直ぐ家に帰るだけとなれば、話せる時間は短いだろう。緊張を解す雑談は無駄だ。

 

「それで、薫様の小さな悩みとは。反抗的な付き人がいて困るとでも言っていましたか」

 

 薫ちゃんを非難しているよう聞こえるその言葉は、真姫さん自身に向いているように思えた。

 自虐をこめた、ため息のよう。

 

「いや。でも、真姫さんに関することだったよ」

「私に……?」

「誕生日、近いんだろう? なにプレゼントしたらいいか分からないって」

 

 俺がそう言うと、真姫さんは信じられないような目でこちらを見てきた。

 

「そんなことのために、わざわざこんなことを?」

「そんなことなんかじゃない。薫ちゃんは真剣に悩んでたよ」

「……なんでも嬉しいですよ、薫様からいただく物なら。大事に保管していますし」

「……これまで、なに貰ったんだ」

 

 挙げられたのは、ネックレスや栞、石鹸などなど。

 ひとまず、幼い頃にもらった物は除外するとして。

 

「その貰ったもの、保管してるってことは使ったことはないってことか?」

「……」

 

 無言が、なによりも力強く「そうです」と主張していた。

 話を聞いてみれば、極々単純明快なものである。

 

「プレゼントなら、使ってあげないと」

 

 渡したものを身に付けたり、使った感想を言わないとプレゼントした方はお気に召さなかったろうかと不安にもなる。

 

「……薫様は、私のことなら分かっているはずです。姉弟同然に育ったのですから」

「そうかもしれない。けどさ、言葉にしたり行動に移した方がさ、何倍も伝わるんだよ」

 

 真姫さんはしばらく無言でいた。

 だから、俺も無言でいた。

 そうして、しばらく虫の声だけが耳に入る。

 この沈黙を破るのは、彼女だろうと信じていた。

 

「……私は、薫様のために生きてきました。それは、これからも変わりません。薫様の、あの子の一番近くにいたのは私です。ですから……私は、薫様の半身足り得ている。そう、傲ったんですね」

 

 一番近くにいて、一番薫ちゃんのことを見てきて、一番薫ちゃんの役に立ってきた。

 それは、真姫さんにとっての真実だろう。

 傲りだなんて、責められるものではない。

 ここまで一人の人に尽くすというのは、愛がなければ務まらないし、事実二人は互いのことをよく理解している。

 だからこそ、近すぎて見えなくなってしまった物があるのだろう。

 

「……俺は高天原の付き人やってたけど、本来の付き人だった人が戻ってきたのもあって、いい機会だなと思って旅に出たんだ」

「本来の……?」

「ああ。あいつらにとっての姉貴分みたいな存在で、その人も真姫さんが薫ちゃんの事を想うように、あいつらを妹みたいに大事に思って……だからこそ、過ちを犯してしまった」

 

 脳裏にはあの時の戦いが浮かぶ。

 愛したがゆえの凶行。

 紛れもない大罪であるが、彼女がいま付き人をしているのもまた、愛によって赦されたからだ。

 色々と、制約こそついたが。

 

「……私は、その方の気持ちが分かります。幼い頃、私も大人達を憎みましたから。どうして薫様にそんな酷いことをするのだと」

「……」

「ですが、私は子供でしたから。御守衆を抜けて、薫様を助けようだなんてこと、出来ませんでした。ただ近くで、薫様が立派な御伽装士となるところをこの目で見続けてきた」

 

 だからこそ、立派な御伽装士となられた薫様をしっかりお助け出来るようにと励むことが出来た。

 そう語る真姫さんの顔は晴れ晴れとした、いい顔だ。

 

「……話してくださり、ありがとうございます。一応、感謝します」

「一応か」

 

 思わず苦笑する。

 

「そんなに気を遣わない関係だろうけど、気の遣いすぎも失礼だからな」

「……はい。ひとまず、貰ったアクセサリー類を身に付けるところから始めようかと」

「そうか。ところで、プレゼントは全部保管してるのか?」

「当然です。食べ物以外は全て保管しています。薫様の付き人となった時からずっと」

 

 それを聞いた時、妙な予感がした。

 薫様の付き人となった時からずっと。とは。

 

「真姫さんが薫ちゃんの付き人になったのって……?」

「五歳の時です」

 

 そんな時から……!?

 五歳に何が出来るんだと思ったが、身近に子供がいるというだけで薫ちゃんの心は救われていたのかもしれない。

 

「……えっと、薫ちゃんから最初に貰った物とか覚えてる?」

「河原の石です」

 

 即答だった。

 

「……今も保管してるのか?」

「そう言いました。硝子ケースに入れて、貰った日時、場所を記録して部屋に飾っています」

「へ、へぇ……。他にはどんな物を……?」

「道端で摘んだ花などは押し花にしてあります。カブトムシなどは昆虫標本に。いただいた絵は額縁に入れています。他には……」

 

 そこから先は流し聞いていた。

 てっきり、俺は遠慮しているからプレゼントを身に付けたりしないで保管しているのかと思ったが、どうにもこの人、コレクター癖というかなんというか。

 ちょっと遠慮しないで言わせてもらうと、変!

 薫ちゃんはこの事、知っているのだろうか……。

 なんとなくだが、知らない気がする。

 そして話し出したら止まる気配がない。  

 恐らく、自慢したい欲求があったのだろう。だが、なかなか誰にも話せなかったものが今、こうして聞き手がいるという状況になって暴走している!

 ここは話題を切り換えるしか。

 

「……そういえば、さっきキョウダイ同然って言ってたけど、姉妹同然の間違いじゃないか」

「…………申し訳ありません。私、兄がいるものでつい」

「お兄さんがいるのか。お兄さんも屋敷に?」

「いえ、兄達は警察や消防、市役所、教育委員会などに」

「? 御守衆じゃないのか?」

「五十鈴の家は代々、夜舞家に仕える家です。明治以降、マイヤがこの地域で活動しやすくなるように、五十鈴家は警察などに身内を忍ばせ、影からサポートしています」

 

 それはまた、思わぬサポートの形だ。

 地域の人からは公務員一族と思われているはず。

 更に驚いたことに真姫さんのおじいさんは市議会議員だという。

 夜舞家も名家だが、表向きは五十鈴家の方が名家じゃないか。

 

「真姫……真の姫なんて名前も、付き人には過ぎた名だとは思いませんか?」

「……ああ、まあ、たしかに」

「これ、私を薫様の影武者にしようって思惑があったらしいです」

 

 な、なるほどと声を震わせた。

 真の姫とは、たしかにそっちが夜舞家の当主感がある。

 だからこそ、幼い時から付き人として付けられたのだろう。 

 

「……もう、この辺りまでで大丈夫です」 

 

 立ち止まり、真姫さんが目を合わせて言った。

 そこに、拒絶の色は見えなかった。

 これなら、大丈夫だろう……。

 

 

 

 

 ギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチ。

 

 

 

 

 

「なに!?」

 

 謎の音。

 徐々に大きくなっていく音が、それの到来を告げる。

 一点の目映い光に顔を伏せる。

 それは、道路のど真ん中を駆けていた。

 

「くっ……」

「うおっ!?」

 

 真姫さんに首根っこを引っ張られて歩道から山の斜面へ。

 息を潜め、それが通り過ぎるのを眺める。

 赤黒い、長い身体に無数の脚。

 あれは、ムカデだ。

 化神、バケムカデ。

 

「薫様、化神です! 化神バケムカデと思われますが……かなり大きいです。10m以上はあるかと」

 

 真姫さんは冷静に薫ちゃんへと連絡していた。

 そうだ、こうなれば薫ちゃんに連絡するものだ。

 

「ええ、ええ。内人氏は私と共にいます。お気を付けて……」

 

 通話を終え、真姫さんは斜面を滑り落ちた。

 俺もそれに倣い、歩道へと戻る。

 

「仕事です。戻ります」

「ああ! よし、フブキホッパー!」

 

 急いで夜舞邸まで戻らなければいけない。

 金属板からフブキホッパーを呼び出し、真姫さんに予備のヘルメットを渡し、自分もヘルメットを被り急発進。

 見るからに並の化神よりヤバい奴だ。

 気をつけてくれよ、薫ちゃん────!

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