仮面ライダービャクア外伝 仮面ライダーマイヤ   作:大ちゃんネオ

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幕間 あんもーじーこ

 私の家は民宿を営んでいる。

 家族構成はお父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃん、私、弟、東京で一人暮らし中の大学生の兄。

 私の日常は昼は学校で勉強はそこそこに友達と遊んでばかり。帰ったら遊んだり民宿のお手伝い。そして……。

 

「退魔覆滅技法 千蝶一蹴」

 

 ドカーンと爆発が起き、川の水が飛び上がる。そして、一瞬の雨になって降ってきた。

 今日も今日とて薫の活躍で化神は倒され一件落着。

 岸に上がってきた薫はマイヤの姿から人の姿へ。人の姿へというとなんだか変な気もするけどとにかく人の姿に戻ったのだ。

 夜舞薫。

 私の友達以上恋人未満的なそれぐらい仲良しで好きな人。

 暗めの赤い髪と目は染めてるわけでもカラコンを入れているわけでもない天然物の赤い瞳。

 髪は艶々だし目も大きいし絶世の美少女。だが男だ。

 今も、向けられた人は恋に落ちてしまうこと間違いなしな笑顔を私に向けている。

 あ~美少女!

 と、思っていたのだが。

 豹変した。

 

「おい咲希お前はなんだってこんなに化神遭遇率高いんだ。普通、化神と出会すってのは通り魔殺人に合うぐらいの確率なんだぞ、ええ! ここは確かに化神が出ることが他よりも多い土地とは言えだ! なにをどうしたら一週間の半分を化神に襲われるなんてことになるんだ!?」

 

 滅茶苦茶怒られた。

 ひどい。

 私はなんにも悪くないのに。

 被害者なのに。

 

「私を怒らないでよ。悪いのは化神なんだから」

「そりゃ、そうだけど……。怒ってるのはその、心配、だから……つい……」

 

 頬を赤く染め、そっぽを向いた薫がそう弁解するが、へえ、私のことが心配。ふへへ。

 

「へえ~心配なんだ、私のことが。へえ~~~」

「な、なんだよ!」

「私のことが心配なら、ずっと私の傍にいていいんだよ」

「────」

 

 固まった。

 薫は驚くと固まるのだ。

 そして数秒後に動き出す。

 

「な、な、なにを言って!」

「なにって、本心だけど」

「────」

 

 また固まった。

 かわいい。

 

「ば、ばーかばーか! 知らないからな!」

 

 あ、行っちゃった。

 流石に攻め過ぎたか。

 

「ごめんって薫~。一緒に帰ろうよ~私この辺りの道分からないからさ~!」

 

 私、加藤咲希は彼女であり彼、夜舞薫に恋をしている。

 ぶっちゃけ交際秒読み。なんなら既に付き合っているんじゃないかってぐらい一緒にいる。

 クラスメイト達は私に向かって「東京もんに夜舞さんを盗られた」と言う。

 しかしまだ友達以上恋人未満な関係が続いている。

 私から告白するのはなんてことないんだけれど、私は薫から告白されたい。

 好きな人から好きだと言われたい、求められたい。

 だから私からは言わない。

 もう私の気持ちはたくさん伝えているしこれからも隙あらば伝えるし、だから伝えてこい薫。私の準備はいつでも出来てるぞ。ついでに言っておくと好きだと言われたって、私は薫みたいに固まりはしないんだから。

 

 

 

 

 ただいま~と帰ると、いつものように啓太がお母さんから叱られている。

 今度はなにしたんだ?と思いながら母の怒鳴り声に聞き耳を立てながら居間に行くとおばあちゃんがテレビを見ていた。

 

「おかえり咲希ちゃん」

「ただいま。啓太、今度はなにやったの?」 

「病院の隣に古い病院だった建物あるでしょ、あそこの窓ガラスを野球してて割ったんだって。廃墟だからいいだろうって黙ってて怒られてるんだよ」

 

 古い病院だった建物。

 ああ、あの廃墟の。

 あそこの目の前は確かに数人で野球ごっこするならちょうど良さそうな広さだった。

 まあ、廃墟だから確かに割っても特に問題ないかもしれないけど……。なにがあるか分からないので報告は大事だな。

 うん。

 報連相は大事。

 いやーけど私も小さい時なら同じことやってそうだな~と考えていたらおじいちゃんが居間にやって来た。

 また怒られてんなぁと笑いながらテレビの前に座るとチャンネルを相撲に変えた。あ、見てたのに。

 

「あんな怒られてばっかだと、()()()()()()()が来るぞ」

 

 ……はい?

 

「おじいちゃん、今なんて?」

「なにぃ?」

「その、いまおじいちゃんが言ったえっと、お芋のジーコみたいなやつ」

「あんもーじーこ?」

「それ! なに、あんもーじーこって!」

 

 そう訊ねるとおじいちゃんはおばあちゃんと顔を見合わせた。

 テレビから宮司さんの声が響いている。

 

「あんもーじーこはあんもーじーこだがすか」

 

 ちょっと時間取ったわりにはそれかい!

 

「だからあんもーじーこはなんなの!」

「あんもーじーこはあんもーじーこだ」

 

 余計に分からない。

 脳内であんもーじーこがゲシュタルト崩壊を起こしてきている。

 あんもーじーこって、本当に……なに?

 

 

 

 

 夕飯の時間。

 家族みんな揃っていたので、まずはここ出身のお父さんにあんもーじーこのことを聞いた。

 

「あー、懐かしいなあんもーじーこ」

 

 やっぱり知ってた!

 これで解決!

 

「え、なにお父さんあんもーじーこって」

 

 お母さんも私と同じあんもーじーこ知らない仲間。

 さあ、一緒に奥深い方言の世界を堪能しようではないか。

 

「あんもーじーこは……あんもーじーこだよ」

 

 え。

 お父さんまでそれ!?

 

「あんもーじーこ……うーん、あんもーじーこはあんもーじーこだな」

「あんもーじーこはあんもーじーこだ」

 

 お父さんもおじいちゃんも同じことしか言わない。

 本当に、あんもーじーこってなんなんだ。

 引っ越してきてからいろんな方言と出会してきたけど今回のこれ、あんもーじーこは本当に謎過ぎる。

 あんもーじーこって、本当になに……?

 

 夕食後、薫に聞こうと思ったのだけれど薫は夜忙しいので(鍛練とか化神退治とかで)連絡しても朝に返信という感じだからだったら明日、薫の家に遊びに行った時にでも聞こうとその日は布団に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あくびを噛み殺しながら山道を歩く。

 山道と言っても石階段があるので歩くのは容易いが。ここは夜舞家の所有する山で屋敷の裏にあるから単純に裏山と呼ばれている。この裏山には家が作った修練場があり、俺はそこで鍛練を積んできた。東北の御伽装士達もたまに利用しにくることもあるぐらいには広く、厳しい修練場なのだ。

 そんな裏山への道を歩いている理由は修練に行くためではなく我が家の慣習のせい。

 山の神様のお参りをするのだ。

 朝、お供え物をあげて拝むだけ。

 それをマイヤを受け継いでから毎朝、基本的には俺が行うことになっている。夜舞家当主である俺が。

 これは当主の仕事なのだ。もうかれこれ三年以上はやっている。

 

「真姫、別についてこなくていいんだぞ」

 

 普段は一人で行っている仕事だが、ここ一週間は真姫が同行していた。朝は真姫もいろいろと忙しいので同行しなくていいということにしていたのだが。

 

「いいえ薫様。そのお怪我がしっかり完治するまでは同行させてもらいます」

「別に大した怪我じゃ……」

「強がりはいけません。薫様、私の前では強がらなくていいんです」

 

 むう。

 真姫は俺にとって姉のような存在であり真姫もそれを自認している。

 数少ない『俺』を出せる人。

 そんなだから真姫には弱いのだ。

 

「今日も掃除、お供えは私がやりますので」

「……任せた」

「はい、薫様」

 

 任せた以上はもうなにも言わない。

 あとは拝めば俺の仕事は完了だ。

 

 

 

 

 祠に新しい水と米が数粒供えられる。

 不思議なことに昨日のものはいつも綺麗になくなっているのだ。鳥や獣が食べたにしては綺麗すぎる。痕跡もないし器もずれたりしていないのだ。

 なのでここには本当に神様がいる。

 私達が帰ったあとに現れて米を食べ、水を飲むのだろう。

 真姫が全てやってくれたので、最後に夜舞家当主である私が拝む。

 夜舞家の当主は女であると決まっているので、今は『私』として振る舞う。

 拝む時は一般的な二礼二拍手一礼。

 決まって何かお願いごとをするように私はしている。

 ここのところはずっと、この地の平穏を祈っているので今日も変わらず……。

 ……むむ。

 うーむ。

 ……よし、決めた。

 

「……薫様?」

 

 真姫が私の様子に気付いたようだ。

 ちょっと、個人的な願いをお祈りしてしまったのだけれどたまにはいいだろう。

 

「……行きましょう真姫。神様のお食事を邪魔しては駄目です」

 

 立ち去ろうとした瞬間だった。

 木々の向こう側から強烈な気を感じた。風が吹き始め、空気は張りつめる。

 化神ではない。

 化神なんて邪なものではないがこれは……。

 ドシン、ドシンと大きな音が近付いてくる。

 そして、それは現れた。

 私は、あまりのことに固まってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝食を食べて薫の家へ行く準備をする。

 着替えて、持ってくものを……。

 ふと、風が頬を撫でた。

 窓は開けてないし、なんだろうと思って振り向くとそこには……。

 

『『あんも~~~~!!!!!!』』

「きゃあぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」

 

 な、な、なんだこいつらは!?

 どこから入ってきたの!?

 

「あ、あんた達なに!? もしかして化神!?」

 

 いや、絶対にそうだろう。

 簑で全身を覆い、手には鉈を持っていてなによりこれだ。

 顔がめちゃくちゃ怖い。

 鬼の形相とはこのことだ。

 てか角生えてるし!

 鬼だ鬼!

 化神だからバケオニ!

 

『ぬぁんだ娘っこ! おらたつを化神扱いが!?』

『あんなんと一緒にするでねぇ!!!』

 

 あ、コミュニケーションは取れる!

 化神と一緒にするんじゃないと言っているようだけど……。

 

「じゃあ化神じゃなきゃなんなのさ!」

 

『おらたつは山の神だ』

 

「自分で言う? 神って」

 

『んだどもそうだからそう言うしかねえんだ』

『んだ。神様って言われてっからよぉ、おらたつは神。そういうこと』

 

 いやいやそう言われましても……。

 こんな神様がどこに……いや待て。前にお兄ちゃんの本で読んだことあるけどナマハゲも神様らしい。

 そしてこいつらはナマハゲに似ている。

 もしかして?

 

「あなた達ってナマハゲ?」

 

『ナマハゲさんとはおともだつだぁ』

 

 おともだつ。

 お友達か。

 こっちの訛りは『いの段』が『うの段』に変わるのだ。

 『箸』も『はす』って言うし他にもいろいろ。

 

「ともかく、神様が何の用? 私、これから遊びに行くんだけど」

 

『最近の娘っこはおらたつ見ても泣きもしなえんだな』

『ええ時代になっだな』

『これがモテ期ってやつかもしんねぇ』

『んだぁ!』(歓喜)

 

 神様がモテ期とか言うな!

 それより用件、用件だ。

 

『まあ落ち着けぇ』

『んだんだ。くつろいでけぇ』

 

「いやここ私の家!」

 

 なんなんだこの神様は。

 本当に神様なのだろうか。

 なんか親しみやすいぞ。

 

『ほら、そうこうしてだらやってきたぞ』

 

 やってきた?

 誰が?

 そう思うと同時に扉が開いた。

 薫だ。

 

「あ、薫! なんか神様が遊びに来た!」

「おはよう咲希……よかった、失礼は働いてないみたいで……」

 

『いんや結構失礼だったよな?』

『んだ』

 

「咲希?」

「いやいや! 普通いきなり部屋に入られたら誰だってそうなるって! それより早く用件を言ってよ! 何しに来たの!」

 

 薫まで来た今、本当はやっぱりこいつら化神だった!とかもあるかもしれない。

 いやけど薫も失礼をしてないかと聞いてきたので本当に神様……?

 

『用件はただひとつ』

『そこの坊の願いを叶えにやっできた』

 

 そこの坊。

 え、薫の願いを叶えに?

 

「あの、山神様。その、そのことはいいですから……」

 

『んだ坊! 久々に違う願いごどすでだがらでばってきだんだぞ』

『それにだ、惚れた女のためになぁ? おら泣げてきただ。感動じだぞぉぉぉ!!!!!』

 

 !?

 

「や、山神様そんな言わないでください!!!」

 

 なになに!?

 なにを願ったの薫!?

 ちょっ、えー、まじ?

 神様頼みはちょっと減点だぞ。

 許すけど。

 

「ねえねえ薫はなんて願ったの!? 神様教えてくださいませ!」

 

『坊はなあ、おめさんが化神と当たりやすいがらって厄除けしでぐれっでだ』

 

 ……え?

 厄除け?

 

『あっはっはっ! いづもおなずお願いばっかだったからよぉ、飽きてたんだぞぉ?』

『んだ、たまには違うのもねえどなぁ?』

 

「それにしたってはりきりすぎです!」

 

 こんな薫は珍しい。

 誰かに振り回されてる薫。 

 いつも私が振り回しているから、こうして誰かに振り回されてるところを見ると新鮮だ。

 薫がかわいい。

 けど少しだけもやっともしたり。

 

「ともかく! 咲希、この方達がいらっしゃった場合の作法を知らないでしょうから私に倣って」 

「う、うん」

「よし……それじゃあ、真姫!」

「はい、ただいま」

 

 すたっと、天井裏から現れた真姫さん。

 ちょっと待ってずっとスタンバってたの?

 てか今日、私の部屋侵入されすぎじゃない?

 そしてその両手に持ってる膳はなに?

 

「ようこそおいでくださいました。ささ、どうぞ」

 

『おお、かたじけねぇ』

 

 真姫さんと薫が神様に御酌をする。

 そして神様は膳に供えられた料理を平らげた。

 早い。

 

『最近はどうだ、化神が出てくんのが多いんでねえか?』

 

「そうですね……。やはり、蝶祭りが近いのか化神の出現が多いように思います」

 

『んだかや。んで、そこの娘っこがよぐ化神に会うんだな?』

 

「そうなんです。今週だけでも三体の化神と出会して……」

 

『それは多いなぁ。だけどももう大丈夫だ、おらたつが来たがら厄は祓ってやっだからな』

 

 え、来ただけで厄が祓われたの?

 すご。

 デリバリー厄払いじゃん。

 

『けどよ、坊。なによりおめさんが頑張らないといげねぇがらな?』

『んだんだ。これがらも励めよ』

 

「はい。しっかり務めを果たします」

 

『おう。んでは、おらたつは帰る』

『今度は夫婦になっどき呼んでけで』

 

「はい……はい? な、なにを仰ってらっしゃるんですか!?」

 

 威勢のいい笑い声が次第に遠くなっていき、いつの間にか神様は姿を消していた。現れる時は嵐のように現れて、消える時はこんなに静かだなんて、なんか意外。

 

「……ふう、まさかこんなことになるなんて……」

「お疲れ様です薫様」

 

 薫は珍しく疲れた顔をしている。

 全力で走ってきたようだし、それであんなに振り回されてたら無理もないだろう。

 それにしても……。

 

「へ~私のこと心配してくれたんだ薫~」

「当然だ。薫様はお前を好いているからな」

「やめて真姫……本当にやめて……」

 

 両手で顔を覆う薫であるが耳が真っ赤なのがちらりと見えた。神様からも色々言われちゃったもんね~。照れる薫も可愛いね~。

 流石にこれ以上照れさせるのもあれなので話題を切り換えてあげよう。

 

「ねえ、さっきの人達って本当に神様なの?」

 

 そう聞くと顔を隠していた両手を離して薫が質問に答えてくれた。顔にまだ残った赤みが可愛らしい。

 

「はい……。あの方々は神様、こっちの言葉で言うとあんもーじーこのひとつになります」

「え!? あんもーじーこの正体なの!?」

 

 まさか昨日からの疑問の答えが向こうからやって来るとは夢にも思わなかった。

 薫の方も私があんもーじーこを知っていることに驚いていたので昨日のことを話す。

 

「なるほど……。そうですね、おじいさんの世代でしたらあんもーじーこのことを聞かされていてもおかしくありませんね。あんもーじーことは神様……というよりはお化けといった意味合いの方が近いです。子供が怖がるような、お化け。なので小さい子の躾によく使われるのです」

 

 なるほど。

 確かにさっきの神様は子供受けは悪そうだ。

 

「あんもーじーこのひとつって言ってたけど、他にもいるの?」

「そうですね、私が会ったことがあるのは山神様達だけですが、他にもいらっしゃるようです。そういった方々をまとめてあんもーじーこと言いますね」

 

 へ~。

 まさか、神様に会うことになるなんて思ってもみなかった。

 化神と出会わなくなるように厄除けもしてもらったみたいだし、なんか身体が軽くなった気がする。今ならなんでも出来そうだ。

 

「よーし薫! あんもーじーこ巡りしよ!」

「そんなパワースポット巡りみたいなノリで言わないでください。神様もいますがお化けだってあんもーじーこなんですから」

「じゃあパワースポット巡り! 薫ならいいとこ知ってるでしょ!」

 

 パワースポット巡りという言葉から既にパワーをもらっているような気がするがこの際あやかれるものにはあやかりたい。

 化神とは会いたくないし。

 渋る薫を引っ張り早速おでかけ! ……しようとしたのだが。

 ぱたぱたとお母さんが廊下を小走りする音がした。

 ノックもなしに扉を開けると同時にお母さんの口も開いた。

 

「咲希、急に団体のお客さん入ったから手伝ってちょうだい」

「ええー!? 今から薫と遊びに行くとこだったのにー!」

「とにかく人手が足りないのよ。薫ちゃんもごめんなさいねぇ」

 

 まさか家みたいな民宿に急遽団体の客が入るだなんて一体なにが起きたのやら。

 儲かるのはいいことだけど薫と遊べなくなるなんて……。

 ちらりと薫に目線をやると、なにやら薫は楽しそうに微笑んでいた。

 

「お母様、私もお手伝いさせていただいてもよろしいでしょうか?」

 

 薫の言葉にお母さん共々驚いた。

 

「あるばいと、というものに興味がありまして。お給金は、結構ですので。お手伝いさせてください」

「人手が足りないからお手伝いしてもらえるなら嬉しいけど……」

 

 急にこんなことを言われてお母さんも戸惑っている。

 夜舞さんの娘さんをうちなんかで働かせていいのかと悩んでいるようだった。

 

「他ならぬ薫が手伝いたいって言ってるんだからいいじゃん。私も薫がいるなら素直に働くし」

「うーん……じゃ、お願いしようかしら。看板娘が出来たということで」

「そうそう、看板娘看板娘……。って、私は看板娘じゃないの!?」

 

 そもそも薫は男だから娘じゃないし!

 とは言えず、今日は薫に看板娘の座を譲ろう。

 

「……これも、山神様からいただいたご利益。大切にしていきましょう」

「そっか、これも神様のおかげなんだ。じゃあ、しっかり働こ」

 

 神様からのお恵みはしっかり受け取らなければ罰当たりだ。

 

 余談であるが、この後しばらくはこのご利益は続いてお客さんが途切れることはなかった。

 おかげでなかなか忙しい毎日を送ることになったけれど、閑古鳥が鳴いてお金がないと泣くよりは断然マシ。

 そして私も、薫と共に山神様を御参りするようになったのだった。

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