『ウラスト配合は浪漫しかないんよ
しかも産まれてきた3頭が3頭とも個性しかないのは奇跡なんよ』
【2ch競馬掲示板名馬を語るスレにて】
8月。チームスピカは合宿の為、海辺の旅館に来ていた。初日は軽い練習を行い、二日目に毎年恒例となっているトライアスロンを行うのだ。
今は初日の練習を終え、旅館の温泉に入っている。
「こういった旅館にお泊まりをするの、私初めてですね」
そうディープインパクトは湯船につかり、顔を手ぬぐいでぬぐいながらそう言う。
隣にいるトウカイテイオーが答える。
「へー、あまり旅館に泊まった事ないんだ」
「ええ、幼い頃は体が弱かったので、旅行に行く事がなかったんです」
合宿ですけどなんだか楽しいです、とディープインパクトは笑う。
「じゃあいっぱい遊ばなきゃね!みんなでウノしよう!」
賛成!とチーム全員が手を挙げ、その後トランプで大富豪しよういやブラックジャックだと部屋で遊ぶ話で盛り上がる。
楽しいなとディープインパクトは心から思った。
温泉から上がり、わいわいと廊下を歩いていた時だった。
「でぃっ!ディープインパクトさん!?」
そんな叫び声が後ろから上がり、みんなが振り向くと小学生ほどの一人のウマ娘がこちらを指さして立っていた。
「あの、あなたは…?」
「あ!お!おれ!皐月賞でディープインパクトさんの走りを見て憧れたんです!出会えてすっごく嬉しいです!」
そのウマ娘は小走りで近づいて、握手してください!と手を差し出してくる。ディープインパクトはおずおずとその手を握る。
「うわぁ…!うわぁ…!」
「あ、えっと…」
「あー、きみ、きみのお名前は?」
苦笑を浮かべているトウカイテイオーにそう尋ねられると、感激して眼をキラキラ輝かせていたウマ娘はしまったと顔色を変え、手を放して名のる。
「ご!ごめんなさい!おれはウララエクスプレスって言います!」
謝罪するウマ娘、ウララエクスプレスは本当にごめんなさい!と腰を深く曲げておじぎをする。
「ウララエクスプレスちゃん、ね?大丈夫、怒ってないから、ね?」
「えっ、でも、迷惑かけちゃって…」
「少し戸惑っただけだから、迷惑だなんて思ってないよ。私のファンなんだし、嬉しいよ」
あ、ありがとうございます!とウララエクスプレスは顔を上げて笑顔を浮かべる。
「ディープインパクトさんはどうしてここに…?」
少し不思議そうな顔をしてウララエクスプレスは尋ねる。
「ディープでいいよ。私たちはチームの合宿に来てるの、あなたは?」
「おれは毎年ここのお手伝いに来てるんです。まさかディ、ディープさんに出会えるなんて思ってなかったけど…」
「そうなんだ、お仕事お疲れ様」
「ありがとうございます!あ、そろそろ戻らないと…」
「そっか、頑張ってね」
そうディープインパクトが言って、部屋に行こうとする。
「あの、最後に一ついいですか?」
「なにかな?」
「おれ!ディープさんみたいなすごく強いウマ娘になります!だから!名前、覚えていてくれますか?」
ディープインパクトは見た。ウララエクスプレスの不安げな瞳、しかしその奥には小学生とは思えないほど強い力があったのを。
「――もちろんだよ。きっと君は私に負けないほど強いウマ娘になる」
ありがとうございます!と大きくお礼を言って、ウララエクスプレスはかけだして廊下の向こうへ消えて行った。
トウカイテオーは優しいまなざしを彼女が消えて行った廊下へ向けながら、ディープインパクトに声をかける。
「僕もあの子は強いウマ娘になると思うよ」
「はい」
私のようなつよいウマ娘になると言われた。
頑張ろう、私を憧れてくれたウララエクスプレスのその眼差しに答えられるように。