風の吹き抜ける切り立った崖の上で、2人の人間が相対していた
片や、すっとした出で立ちの男
腰に差した片刃の長剣――日本刀に手を添える時代錯誤な服装をした長髪の東洋人
片や幼さの残る金髪碧眼の少女
手には緑色のわずかに曲がった細身の片刃刀――シャムシールを構える欧州貴族のようなドレスに身を包んだ西欧人
互いに構えたまま三間――5.5mほどの間合いを保ち微動だにしなかった
「――そなたのような可憐な少女と相見えることになるとは」
「――わたくしも、あなた様のような方と出会うとは思いもよりませんでしたわ」
ざぁ、と一陣の風が通り抜ける
男の黒髪と、少女の金髪が相反するかのようにたなびく
「十三代目石川五エ門、女を斬るつもりはないが――お相手願おうか」
「怪盗ルナ、あなた様と手合わせする理由はございませんが――押し通らせていただきましょう」
男は少女を睨み、少女は男に微笑み返す
日が傾き夕暮れに染まる死合い場
2人の剣士の息遣い以外に聞こえるものはなく――
(あああああああもうやだああああああああ!!!)
――ここ最近不幸まみれなのはなぜかと絶望する少女の心中を察する者もいない
――――――――――――――――――――
~Side:Luna~
やぁみんな、ここ最近自分は厄年なんじゃないかと思い始めてるルナだよ~
さて、ロシアでの一件の後僕は大慌てでカフカース――グルジアとかアゼルバイジャンのある地域に逃げ出した
あのままロシアでお宝探しを続行するほど僕は神経図太くないよ
それに、あの騒ぎを聞きつけてルパンがロシアにまでやってきたら面倒とかそういうレベルじゃないからね、仕方ないね
じゃあどうしようかとカフカースからイランを経由して中央アジア諸国を巡っているとき、面白いお宝の情報を聞いた
13世紀末、騎兵を率いて東は朝鮮、西はポーランドを征服し、世界の2割を手中に収めた遊牧民族国家――モンゴル帝国
歴史の文化も民族も何もかも飲み込み、ユーラシアに戦禍を広げたかの国は同時に多くの恩恵も与えた
その一つに中近東の刀剣シャムシールがある
これはもともとまっすぐな長剣だったらしいんだけど、モンゴルとかほかの国の文化の影響を受けた結果ちょっとまがった形になったらしい
モンゴル帝国はこの後なんやかんやあってバラバラになっちゃうんだけど、中近東地域を支配する国は残って、ここが元――中国にあった国の皇帝への贈り物として翡翠製のシャムシールを作ったらしい
そしてそれは元の皇帝のところまで――届かなかったんだってさ
なんか輸送中に中央アジアでいざこざに巻き込まれて、つい最近まで「作ったのは分かるんだけどどこにあるのか分かんないお宝」になってたってわけ
ちなみにこいつにはちゃんとした名前があって、名を『宝剣 翠』という(そのまんまじゃん)
これを見つけたのはカザフスタンの鉱山経営企業、この辺レアメタルがよく取れるから最近繁盛してるみたいでそこの成金の一つが掘り当てたってわけ
当然カザフスタン政府はそれを回収したいわけだけどこの会社の社長ってのがなかなかの守銭奴って噂で、目ん玉飛び出るくらいのお金を要求したとか
これで終わればまだ一国だけの話なんだけど、ここに中国とロシアが口を挟んでもう滅茶苦茶
さながらルパン三世TVSPの1$マネーウォーのオークションである
どんどん上がっていく値段に最初は気をよくしていた社長も、値段が小国の国家予算を超えたあたりからさすがに恐怖心が芽生えたらしくとりあえず3ヵ国の代表集めて話し合いをすることにした
んでそれを近々ロシアに運ぶらしいのでこれを頂くことにした
どう考えても3ヶ国から袋叩きに合いそうだけどそんなの関係ない、僕は欲しいお宝を頂くだけさ
というか指をくわえて待ってるとお宝がどっかの国の博物館に放り込まれる、それは絶対ダメだ
とりあえず輸送される日時と保管場所を探り当てないと
――――――――――――――――――――
お目当てのお宝の保管場所はあっさりと見つかった
所有してる鉱山会社の廃坑の一つに隠してあった
隠してあったのはいいんだけど…うーん
下見してて思ったんだけど、なにこの滅茶苦茶ゆるい警備体制
廃坑周辺にフェンスなんて無いし、監視カメラの一台だって設置してない
変装して中に潜り込んでも身分証の確認すらしないし何の障害もなく廃坑に入れた
肝心の廃坑には警備員はいるのに全員妙にやる気なさげだし、見えないところでトランプやったりしてさぼってる始末
極めつけがお宝の翡翠製シャムシールで、金庫かなんかに入れているのかと思ったら運搬用のケースに入れて床に直置き
なにこれ僕を舐めてるの?こんなスリルもなにもない下見は初めてだよ
とキレるのは簡単なんだけど、ここで僕の「ルナちゃんセンサー(命名:ルナ)」がビビット反応した
――これはダミーなんじゃないかと
本物はどこか別の場所に保管してあるんだ、というかそうじゃないと色々と心が折れそう
一回目の下見が空振りに終わり、僕は本物のお宝のありかを探し始める
ここじゃないとすればあとは本社か社長の自宅だろう、基本的にそういう場所に厳重に保管されるものだ
と最初は思ってたんだけどダミーの廃坑からちょっと離れたところにある掘立小屋を見た瞬間僕は確信した
――あれじゃん絶対
もし泥棒が来てダミーだとわかった時、もっと厳重な場所にあるに違いないと思うものだ
しかし!僕の『ルナちゃんアイ(命名:ルナ)』は誤魔化せないのだよ!
滅茶苦茶地雷埋めてますやんか(顔面蒼白)
うわっえっぐ、見たところ百個近くが掘っ立て小屋周りに埋められてる
いくら私有地の一角だからって従業員がうっかり踏んだりしたらどうするんだこれ
連鎖的に周りの地雷まで吹き飛ばすんじゃないの?
地雷の方はまだ何とかなるとして、問題は掘立小屋そのものだ
外側は木の板を張り付けただけの装甲板で、窓からは重機関銃っぽい銃身がコンニチハしてる
常駐してる人間も結構な数いるみたいだし、ハードモード超えてルナティックモード入ってないこれ?
ま、やりようはいくらでもあるんだけどね~へへ
――――――――――――――――――――
あたり一面に充満する煙
咳き込みながらもなんとか視界を確保しようとする警備員たち
それを見下すかのように鋼鉄の箱は白い気球に吊るされ離れていく
「天下の名剣が一つ『宝剣 翠』確かに頂きましたわ、では皆様
青いドレスに身を包んだ金髪の少女を載せたまま――
あーーースッキリした!!
こういう大掛かりな仕掛け一回はやってみたかったんだよねぇ僕
まーその分準備にちょっと時間かかっちゃったけど
結局掘立小屋にはどう頑張っても近づけなかったので離れた場所から観察して分かったことがいくつかある
まずあの小屋にはセンサー類の警報装置はない
鳥が小屋に留まっても何の反応も示さなかった、少なくとも接触系センサーは備わってないだろう
え?重量センサーとかはどうなのかって?急ごしらえっぽい掘立小屋にあんな大掛かりな装置取り付ける暇はないよ、多分
次に地雷は遠隔操作である程度つけたり切ったりすることができる
交代要員の屈強なお兄さんたちが出入りしていたけど歩く場所に規則性はなかった
つまりある範囲の地雷を時間になったら切って交代要員と入れ替わっているんだ
最後に、あの建物は床と壁が別々――いや壁が地面に食い込んでいる
重機とかで引っこ抜かれないようにそこそこ深めに突き刺してあるっぽい
壁周りの土から見えたのが土台じゃなくて壁の端だったのでこれも間違いないはず
それを踏まえて今回の計画を立てた
名付けて「怪盗ルナちゃんの空飛ぶお宝」作戦だ!
…あ、やめて石投げ付けないで、ピ〇サーに通報するのもやめて
コホン、改めて説明しよう
今回は大掛かりな作戦になりそうだったから前日の夜の段階で準備をある程度終えておいた
小屋の周りに小型爆弾をセットし、気が付かれないように埋めて隠す
次に屋根と装甲版の間に大型バルーンを仕込む
準備が終わったらワイヤーで元の場所に戻ってその日の仕込みは終了
予告当日はこれまた難しいんだけど、警備がかなり厚くなっているところを潜り抜けて小屋に行く必要がある
サーチライトとか警備犬とかその辺だ
まあそこはこの怪盗向けの身体能力が役に立つってわけさ
時間ギリギリまで崖で待機して直前にタイミングを見計らってワイヤーを射出
屋根の上に到着すればこっちのもんよ
予告時刻になったら一斉に爆弾を起動――と同時にスモークグレネードをこれでもかとばら撒く
壁が完全に土から出てきたらバルーンを起動、壁ごと小屋を引っこ抜いたら部屋に置いてあるお宝のケースを手持ちのワイヤーで回収
そして後はフラッシュグレネードやスモークグレネードを落としたり投げたりしながら小屋に括りつけてあるワイヤーを巻き取るだけ
前世でルパンたちがやってできたんだ、このルナちゃんに出来ない道理はぬぁいのだ!!
お宝は頂いた!さらば!警備員諸君!ぬぁっはっはっはっは!!あーっはっはっはっは!
――あれ、なんかまた見覚えがあるような
「――でぃやぁぁぁ!!!」
そう思っていた僕目掛けて銀色に光る何かが襲い掛かる
咄嗟にお宝を掴んで崖の上目掛けて飛び降りる
――次の瞬間僕の乗っていた掘立小屋は真っ二つになった
これもう厄年とかそんなじゃなくて死神か祟り神にでも取りつかれてるんじゃないかな?
着物に身を包み長髪を垂らしながら鋭い目つきで睨んでくる東洋人――石川五エ門を見て僕はそう思った
――――――――――――――――――――
~Side:Goemon Ishikawa~
修行の一環として世界を巡って幾星霜、いまだに悟りを得ることなくこのカザフスタンという国にたどり着いた
修行の合間に路銀を稼ぐのが拙者の生活であったが、ある日とある鉱山会社に雇われた
お宝を守ってほしい――会社の代表にそう言われて訳を聞くと、鉱山を掘っている最中に見つけた物が想像以上の高値になりそうなのだという
俗物的ではあるが人は霞を食べ生きているわけではない、現に拙者もこうして雇われの身となっているのだから
そのお宝とやらは今は使われなくなった廃坑近くに隠してあるという
地雷で周りを囲み戦車の砲弾にさえ耐えられる壁で四方を囲み、中には兵士と言って差し支えない部下を配置して守りを固めている
そこまでしておるのなら拙者は必要ないのではないか、そう返すと「保険はいくらかけても十分ではない」そうだ
よほど大切なものと見えて報酬もかなりの額を払ってきた、これならしばらくは修行に集中できるであろう
そうして雇われの身となってから2日後、会社に奇妙な文が届いた
『明日の午後9時に天下の名剣を頂きに参上致します 怪盗ルナ』
それを見た代表はこれまでになく狼狽していた、いや他の者たちも大なり小なり似たような状況であった
怪盗ルナ――欧州を中心にあらゆるお宝を盗み出している女怪盗の名だ
その手口は恐ろしいほどに手慣れており、これまで予告されて盗まれなかった宝はないという
予告を見た代表は警備員の増員と怪しいものが近寄ったら警告なく撃てという命令を部下たちに出していた
拙者も保管場所で待機しておくようにと命令されその場所へ向かった
予告された日は朝から快晴であり、それは夜になっても同じであった
周囲をサーチライトで照らし、鼻の利く犬も数多く巡回している
これでは近づくことさえ困難であろう
――予告時間直前になり、拙者は何か違和感を覚えた
何かが空を切る音、そして滑車が回る音も聞こえる
あたりを見渡すが、サーチライトの照らされたところには何もない
小屋の方はとそちらに目を向け――拙者はしてやられたと直感した
小屋を照らしていたサーチライトの一つが消えていたのだ、先ほど見ていた時は確かに小屋を照らしていたものの一つが
――出し抜かれたか!!そう考える間もなくことは始まった
爆音とともに小屋が白煙に包まれる
同時に周囲を照らしていた照明が一斉に消える
暗闇の中目を凝らして小屋を見ると
――巨大な気球に吊り上げられて今まさに飛び立とうとしているところであった
なんと大胆な、拙者は柄にもなくそう感じた
周りの者たちは何とか状況を把握しようとしているが、空を飛ぶ小屋からは白煙筒だけではなく閃光弾もばら撒かれ夜目に慣れていない者たちの目をつぶしていく
どうにか追おうとする者もいるが、小屋は地雷原の中を悠々と飛んでおり迂闊に手が出せないだろう
――拙者はその小屋を真っ二つにした
崖の上に到達するかというところで崖上に登り斬鉄剣でもって切り裂く
またつまらぬものを――そう考えるより先に小屋から何かが飛び降りる
青い西洋ドレスに身を包み、
これが怪盗ルナかと、正直に言ってしまえば驚いた
女怪盗とは聞いていたが、あまりにも幼い
手元には翡翠色の長剣――あれが代表の言っていたお宝であろう、小屋を斬った時にケースも斬ったか
まだまだ修行が足りぬか
「――そなたのような可憐な少女と相見えることになるとは」
「――わたくしも、あなた様のような方と出会うとは思いもよりませんでしたわ」
透き通るような声で眼前の少女は言葉を返す
「十三代目石川五エ門、女を斬るつもりはないが――お相手願おうか」
「怪盗ルナ、あなた様と手合わせする理由はございませんが――押し通らせていただきましょう」
斬鉄剣を構える拙者に臆することなく、怪盗ルナは翡翠の長剣を構える
「――でぃやああ!!」
「はっ!!」
相手の獲物をはじけば早々に決着がつく、そう考えた拙者は一気に踏み込む
だが怪盗ルナはこれをいなした
逆手持ちで斬鉄剣を受け止めるとすぐに後ろに向かって飛びのいた
それを追い再び剣を振るうが、右に左に流れるように流される
――どの剣の流派とも合わない、いやそもそも型とも言えないような動き
読めぬ、この少女の動きが
まるで流水を斬っているかのような、そのような感覚だ
「おぬし、剣の腕はどこで知った?」
「生憎ですがこれが初めてでございますわ剣士様!」
振り下ろされた長剣を受け止めた時拙者は抱えていた違和感の正体に気が付く
――まるで舞を舞うかのように剣を振るっている
相対する者を斬るのではなく魅了するかのような剣捌き
空を舞い地を滑る
斬り上げ、そして振り下ろす様もまるで西洋の精霊「妖精」と見間違うような軽やかさがある
かような身のこなしを独学で身に着けたというのか――
ふと少女の動きが止まる
「……」
手元の長剣に目を落とし暫し思考する素振りを見せると
「――ふふっ」
その長剣をこちらに投げてよこした
「……何のつもりだ?」
「いいえ、ただ予定が少しだけ狂ってしまいまして――お暇させていただきますわ」
言うや否や少女は服の袖から大量の筒のようなものをばら撒き後ろに跳ねる
それを追おうとして――視界が白一色に塗りつぶされる
またしても閃光弾か!――だが拙者に二度同じ技は通じん!
「イヤァッ!!」
後ろに飛んだであろう少女目掛けて剣を振るう、先ほどの動きを見る限りこれも躱して――
「・・なっ?!」
斬鉄剣が空しく空を切る、その事実に拙者は一瞬我を忘れた
その場にいるはずの少女に掠るどころか少女自身がその場から消えていた
咄嗟にあたりを見渡す
先ほどまで金髪を風になびかせていた少女は忽然と消え、彼女が狙っていた翡翠色の長剣のみがその場に残されていた
――見失った、あの一瞬のうちに人一人を
「……くっ」
なんという失態、なんという未熟さ
斬り合いの最中に相手に隙を作られ見失うとは…!
「怪盗ルナ…此度は拙者の負けでござる」
潔く負けを認める、それほどまでに拙者は自分自身に怒り震えていた
これまでの修行のすべてを否定されたかのような胸中
女子であるという慢心が心のどこかにあった証拠であろう
もし
もし再び相まみえることがあれば
次こそは必ず…!
不甲斐ない拙者を見せぬと誓おう
――――――――――――――――――――
~Side:Luna~
ルナは激怒した
必ずかの邪知暴虐の社長を除かねばならぬと決意した
ルナにはお宝の価値が詳しくは分からぬ
だが適当に作ったシャムシールを翡翠色に塗っただけの偽物を掴ませようとした挙句、サムライに細切れにされそうになったのでとりあえず一発殴っておこうと思った
まさかの二段構え、小屋においてある方すら偽物とか用意周到過ぎるだろ
あからさまに翡翠より重かったし斬鉄剣受け止めていないところにさえ傷はあるし一目見れば分かるレベルで偽物だよちくしょう
咄嗟に真っ二つにされた小屋を使って忍法隠れ身の術していなかったら今頃上半身と下半身が永遠にさようならしてたよ
だけどこれで本物はほぼ間違いなく社長さんが持っていることが分かった、ここまでやってさらに別の場所に隠すとなれば自分で持ってると相場は決まってるんだ
偽物が盗まれそうになったけど無事守られたと聞いて油断したのか社長さんは自宅でお宝を眺めながら晩酌してました、キレそう
今すぐ突入してやってもいいんだけど、部屋にいた秘書にベラベラ今回の計画話し始めたので聞き終わるまで待つことにした
曰く「一つの国に貸すとそこからしか金貰えないけど全部に貸せば三倍の金が入るんじゃね?うはwww俺って天才www」とのこと
金額にビビったというのは真っ赤な嘘で、3ヶ国全部を騙して金をふんだくろうという魂胆だったのだ
ぜ、銭ゲバにもほどがあるでしょ…さすがの僕もドン引きだわ…
まぁ本物は僕がいただくので関係ないんですけどね!!というわけでガラス窓から失礼するよ!!
盛大にガラスが飛び散る中、今回の黒幕である社長さんに愛銃突きつけてこれでもかと嫌味をぶちまける
スッキリしたら『宝剣 翠』を掴んで退散、早くしないとあのサムライが後を追ってきかねないもんね!もう嫌だよあんな死ぬほどつらいこと
何とかカザフスタンから逃げ出すことに成功したが、今回も色々と酷い仕事だった
そして僕は思った――とりあえず移動手段を用意しよう
単車でも四輪でもなんでもいいけどこればっかりはないとさすがに辛すぎる
どうしようかなぁ、なんかいい感じの車種探してみよう
――次の目的地、香港で
――――――――――――――――――――
~Side:?? ???~
『いけませんわね、油断されるなんて…泥棒に慈悲などございませんことよ?』
『私はこう見えて執念深いものですので、獲物は必ず頂くことにしておりますの』
『あなた様の事情など露ほど興味がございませんが…お約束の品は頂きますわね』
『――ふふっ、それでは
部屋の窓を蹴り破り入ってきたドレス姿の女は、すべてを知っているような口ぶりでわたしの仮の雇い主に銃口を突き付けてそう言った
手際の良さ、素早い判断力、そしてあの誰を前にしても啖呵を斬る豪胆さ
噂通りの…いいえ、噂以上のおてんばちゃんってとこかしら
まさか下見をしていた会社に予告状を送り付けてくるなんて、狙い澄ましたかのよう
いいわね、貴女
抱えているヒミツが多いほど、女は美しくなるものよ
「いつかまたどこかで会いましょう――その時はきちんと面と向かって、ね」
かわいいかわいい子猫ちゃん?
――――――――――――――――――――
~Side:?? ??~
部屋一面に飛び散った窓ガラスを横目に、この国の警察があわただしく動き回る
先日の盗難事件の現場となったこの場所で、国家警察の威信をかけた捜査をしている姿を見て――俺は全く違うことを考えていた
怪盗ルナ――ICPOにその名前が出たのはフランスの古物商からブルボン王朝の秘宝が盗まれた事件からだ
その後はヨーロッパ各地を転々としながらオランダでの事件で――奴の名前と並んだ
奴と一緒に盗みに入ったのかそれとも予告が被ったのか…どちらかだと思っていた俺は面食らった
そう――奴は怪盗ルナに会うためだけにあの日オランダに向かったのだ
今の今まで女関係こそ確認されていたが、1人の泥棒に会うために予告を出さずに行動したのはこれが初めてだった
奴と怪盗ルナには何か関係性がある――俺の勘がそう言っている
ならばそれを利用するだけだ
奴を――
それが俺のやり方なのだから
「覚悟しておけ…怪盗ルパン三世…」
例え地の果てであろうと、あきらめたりはしない
キャラクター紹介
・ルナ(15)
大泥棒の次はガンマンに出会っちゃったので思い切ってアジアに逃げたら東洋のサムラーイに見つかって死合い(本人にとっては)をしちゃった怪盗
自分の超人的身体能力で適当に剣を振り回して、お宝が偽物だとわかったらサムライそっちのけでいなくなっちゃう習性がある、猫かな?
例に漏れず今回も目を付けられた(というか武士的なあれを刺激しちゃった)とは露ほど知らず次のお宝探しに向かったのであった
・十三代目石川五ェ門
ルパンファミリーで多分一番ヤバい奴
物理法則を文字通り叩き斬るのでルパンや他の人のピンチを結構あっさり解決してる
今回自分の不甲斐なさを寄りにもよって年下の女の子見られちゃって(見せつけられたともいう)次あったら全力で手合わせする気満々のヤバい奴、もう事案とかそういうレベルじゃないよこれ
・?? ???
シャムシールとは別のお宝のうわさを聞きつけてこの掘削会社の秘書に成りすましていたとある怪盗
部屋から出てしばらくして滅茶苦茶デカい音するんで覗いてみたら激おこぷんぷん丸のルナちゃんに遭遇
あの手この手の搦手を多用してお宝を盗むわ同業者騙して自分だけおいしい思いしようとするわでちゃっかりというかしたたかというか、まぁそんな感じの人種
ちなみに出し抜いたと思ってその実全部とある大泥棒の掌の上だった――ということばっかりなので多分天敵は彼に違いない
同性にしか分からない感性的なものがあるのか興味が出ちゃったらしく、ルナちゃんの苦悩はまだまだ続きそう
・?? ??
もうやめて!ルナちゃんの精神力はゼロよ!と言われようが何しようがルパン逮捕(排除ともいう)のためなら文字通り何でもするヤバい刑事
はるばる日本から世界へ飛び出し寝ても覚めてもルパン一族を滅するために努力を怠らない日本男児の鑑だけど人間性を失っちゃダメだよ
ルパンに繋がる何かを握っている、もしくは夏の夜の蛍光灯よろしくルパンが誘き寄せられているのかと結構近いところまで推理しているので、ルナちゃんは今後安心して寝れるのか心配である