ルパン三世~月下に女怪盗は笑う~   作:makky

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何だか一年以上振りな気がするよルナちゃん


黒猫は宵越しに鳴く ≪上の段≫

 

 ――けたたましいエンジン音を響かせて、二台のバイクが香港の夜を走り抜ける

 

 一台はピンク色に装飾された、世界でも有名なオートバイメーカーが作った傑作車――ハーレー

 

 もう一台は水色を基調とした、ドイツが世界に誇るオートバイメーカーの名車――BMW・F650ST

 

 

 

 香港島から九龍半島――すなわち中国本土へと高速で飛ばす水色のBMWをピンクのハーレーがぴったりとついていた

 

 

 本土へつながる道に至るまでにも、この二台は熾烈なレースを繰り広げており現地警察に追われる場面もあったが、この道にいるのはたった二台だけであった

 

 

 ――後方にいたハーレーが仕掛けたことで、この危険なチェイスにも終止符が打たれようとしていた

 

 一気に加速したハーレーとの間隔を保とうと左右に振れながら進んでいたBMW――その眼前に大型トラックが待ち構えていた

 

 

 道を防ぐように止まっているトラックを避ける術はなく、BMWはここで急停止せざるを得なかった

 

 長い長いチェイスはハーレーに軍配が上がる

 

 

 

 

 

「――まさか私とのチェイスをここまで続けられるとは思っていなかったわ」

 

 

 

 

 赤いライダースーツに身を包んだハーレーの操縦者はヘルメットを脱ぎながらそう言った

 

 

 茶色のロングヘアーを風に揺らし、妖艶な表情を浮かべる女怪盗――峰不二子

 

 

 

 

「――わたくしとしては、貴女様に追われるような覚えはございませんけれど…」

 

 

 一方BMWの操縦者は青いドレスを着て今までチェイスを繰り広げていた相手に応える

 

 金髪のロングヘアーを腰まで伸ばし、幼さを残しつつどことなく神秘的な表情をする少女――怪盗ルナ

 

 

 

「あなたとは一度お話をしておきたくてね…かわいい怪盗さん?」

 

 

「あら、光栄ですわ。あなた様のような有名な怪盗にそう言っていただけるなんて」

 

 

 

 ――まるで猫同士の喧嘩のようだ

 

 

 ここで彼女たちを見る人間がいれば、きっとそう評したに違いない

 

 互いに間合いを保ちながら、しかし最大限に威嚇を続ける

 

 この橋の上はさながら()()()()()()()()()()()()()()()であった

 

 

 

 

 

「じゃあ、よろしくってところかしら?――怪盗ルナさん」

 

 

「えぇこちらこそお願いいたしますわ――峰不二子様」

 

 

 

 

 

 香港の街明かりと橋の街灯に照らされ、まるで首輪のない猫のような2人の女怪盗は出会った

 

 

 

 

 

 

 

(もうやだだれかたしゅけて)

 

 

 

 

 

 

 ――少なくとも片方は現状に全く納得していなかったとしても

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

~Side:Luna~

 

 

 やぁみんな、本格的に自分が悪いものに憑りつかれているんじゃないかと思い始めてるルナだよー

 中央アジアでのやらかしの後大急ぎで東アジアに移ったはいいけど、この先またルパンファミリー(予定)と遭遇する可能性が高いと予測した僕は香港―今はまだイギリスの租借地だけど―で逃走用の乗り物をサクッと探すことにした

 

 そんな大きなもの買ったらあっちこっち行けなくなるんじゃないのって思うかもしれないけど、そこは無駄にハイスペックな僕の書類偽装能力で何とでもなるさ(現に今もどうにかなってるしね)

 

 いやーしかしイギリス領ともあってどこもかしこもイギリス企業だらけ、当然と言えば当然だけどね

 さてそうなってくると買うものもイギリス製品になるんだろうけど、一通り見てどうもしっくりこない

 いやいいものばっかりなんだけどね?僕の琴線に触れないというかなんというか…

 

 そうやってウィンドウショッピングしていると珍しいことにBMWのお店を発見

 え?ここ香港だけどいいの?まぁイギリス領って言ったって別に外国企業締め出しているわけじゃないからいいんだろうけど…

 

 そんなお店に入ってみると、これまた凄い品ぞろえ

 さすがドイツが世界に誇るバイクメーカーと思っていると――見つけた

 

 新商品と書かれた札、目を引く真っ青なボディ、運転しやすそうなシート、そして何より日本円にして約90万円というお手頃価格…!!

 

 BMW製F650ST――僕は極東の地でもう一つの相棒と出会った

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 いやー即金で思わず買っちゃったけどいい買い物したと個人的には思ってるよ

 あ、ちゃんと変装して買ったからね?偽名も使って安心安全!

 

 さてせっかくだからこのままお宝さがしと行きましょうか

 事前にいくつかピックアップしてあるけどその中でも目を引いたのが北宋の龍を模した銀細工だ

 

 北宋って言うのは10世紀後半に中国にあった王朝なんだけど、この国160年位で北の民族に実質滅ぼされちゃったんだよね…

 その後12世紀前半に北宋から逃げてきた人たちが南宋を建国したりしたけど最終的に13世紀後半に滅んじゃったんだって、カナシイネ…

 

 そんな北宋の龍の銀細工なんだけど、一言で言うとお土産屋さんに売ってあるよく分からない龍のキーホルダーみたいなやつだよ

 剣とかついてはいないけど大きさ大体一緒だし、なんか知らないけど中国じゃああんまり目立たないお宝っぽいんだよね(似たようなお宝がその辺にいっぱいあるからかもしれないけど)

 

 持っているのはイギリス人実業家、近づいてきてる香港返還に先駆けて本国にいろんな芸術品や美術品送るつもりらしくその中にこの銀細工が含まれている

 そんなもったいない使い方するくらいなら僕が貰っちゃおうと言うことで、さっそく予告状送付DA!!

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 ちくしょう!ちくしょう!運命の馬鹿野郎!世界の馬鹿野郎!そして僕の馬鹿野郎!アホ!マヌケ!おたんこなす!

 

 状況を整理しよう

 侵入は上手くいった、間違いなくこれは言える

 予告状送付からお宝を盗み出すところまでに何一つ落ち度はなかった、問題はその後だ

 

 実業家の秘書さんと廊下でばったり遭遇しちゃって横すり抜けようとしたらいきなり回し蹴り食らいました、なんで?

 

 いきなりだったので両手で庇ったけど滅茶苦茶痛いと思っていたら追撃で飛び蹴りが飛んできました、なんで??

 

 思わず下を潜り抜けたら今度は掌底打ちをしてきました、なんで???

 

 え、待って本当に待ってなんでこの人こんなに殺意高いの?僕そんなに悪いことした?してたわゴメンね

 でもちょっとやりすぎだと僕は思うんだ、だからちょっと待とう?お話ししようよ?ね?ダメ?そっかー(´・ω・`)

 

 こうなってしまったらもう気絶させるつもりでやるしかない、対人格闘の経験ないけど

 そう思って色々技を繰り出すが、悲しいほど当たらない

 

 ば、馬鹿な…このハイスペッコゥボディ(ネイティブ)で以てして圧倒どころか互角だと?

 なんなのこの秘書さん?極東のチャンピオンかなにかなの?

 

「――噂通りいえ、噂以上の実力ね」

 

 最悪閃光手榴弾で目くらまししようかと考えていたら秘書さんが話し始める

 

()()()()()()()()()()()()()()()()という評価は間違いじゃなかったようね」

 

 ルパン三世――少なくとも英国人実業家の秘書の口から出てこない人物名を聞いて僕は察した

 

 

 ――あぁまたこのパターンかちくしょう

 

 

「初めまして、怪盗ルナさん?」

 

 

 黒色のカツラを取り茶髪のロングヘアーを靡かせて――女怪盗『峰不二子』ニヤリと笑った

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

~Side:Fujiko Mine~

 

 

 怪盗ルナが極東はここ香港にやってくる――裏社会に流れたその噂を真に受けた人間はそう多くなかった

 理由はここ香港が今最大級の警戒態勢だから

 返還の期限が迫っている関係でイギリスに向けて色々と送っているためそのどさくさで混乱が起きないようにあちこち警戒網が張られている

 そんな危険地域にお宝のためとはいえわざわざ危険を冒してやってくるか、ほとんどの人はNOと答えるでしょうね

 でも私は違う、確信にも似た直感でルナがここに来ると感じていた

 

 香港にルナが来ること前提で私はいくつか彼女が盗みそうなものをピックアップした

 そう、盗んでも大した価値の無いようなお宝ばかりを

 

 私が彼女を追う理由の一つが『見せしめ』

 このまま彼女が世界各地で名を上げていき、そのうち価値のあるお宝を盗むようになればきっと私の邪魔になる

 

 困るのよね、そう言うの

 私としては目立たない泥棒として生きてくれるのがうれしいけれど、彼女相当な目立ちたがり屋さんみたいだし

 

 そうしてお宝にあたりを付けていくと、古い龍の銀細工が目に入った

 持っている実業家が近いうちにイギリスに戻るようで、手に入らなくなると知れば狙う可能性は高い

 

 

「ふふふ、ちゃんとお話ししないとね――」

 

 ――かわいい怪盗さん?

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 イギリス人実業家の秘書として潜入した数日後、私の思った通り彼女は予告状を送ってきた

 ヨーロッパでの彼女の活躍を実業家さんも知っていたようで、搬入作業を止めて用心棒を雇ってまで阻止するようね

 盗まれても大して懐も痛まないでしょうに、それとも()()()()()()()()()()()()()()()()()()が明るみになるのが怖いのかしらね?

 とはいえこの程度じゃあ彼女を止めることはできないでしょうけどね

 

 

 

 

 そしてやってきた当日、それまで過剰なほど警戒していたにもかかわらず彼女が下見に入った形跡はない

 時間になり、私は金庫室に向かう

 彼女がいつも通りのやり方で侵入しているとしたら――

 

 ――いた、黒いライダースーツに身を包んで金庫室のほうから走ってくる小柄な人影

 

 私を認識したらしく小さな体をさらにかがめて脇をすり抜けようとする

 油断かしら?少しがっかりしながら回し蹴りをする

 しかし彼女は体を捻り両腕でそれをいなしてきた

 後ろに後ずさった彼女目掛けて今度は飛び蹴りをすればそれをくぐり抜けて避ける

 それならと掌底打ちを繰り出すと彼女も避けるのをやめてこちらに技をかけてくる

 

 洗練された動き、とは言えないけれど素人とは思えない動き

 常に私に対して有利なポジションを取ろうとしてくる

 ――どうやら彼女へ対する評価を変えなければいけないようね

 

 

「噂通りいえ、噂以上の実力ね」

 

 

 私が動きを止めると彼女も構えを解く

 

 

「あのルパン三世を出し抜いた女盗賊という評価は間違いじゃなかったようね…初めまして、怪盗ルナさん?」

 

 

 微笑んでそう言うとしばらくこちらをじっと見ていた彼女も頬を緩め――

 

 

「…同業の方とはとんだご無礼を、少々急いでおりましたので」

 

 

 ライダースーツを脱ぎ去り青いドレスに身を包んだ怪盗――ルナは微笑みながらそう言った

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

~Side:Luna~

 

 

 分かってた、あぁ分かっていたさ

 なんとなくこうなるんじゃないかってね!ちくしょう!

 

 状況を整理しよう、目の前にいるのはルパンファミリー…ルパンファミリーでいいんだよね?の峰不二子

 見た感じいつものようにお宝目当てで潜入していたっぽい

 そこに僕が予告状を送り付けて…なるほど

 

 つまり今度こそダブルブッキングだな!(名推理)

 

 …いやどうすんのよこれマジで

 よりによって一番面倒な人とブッキングしちゃった感じじゃんこれ

 狙った獲物がブッキングしたとは考えにくい…というか峰不二子がこんな銀細工のために秘書に成りすますとは思えない

 大方もっと別のもの、例えばそれこそイギリス向けに運び出されている美術品のどれかだろう

 しかし僕が先に動いてしまったせいで計画がご破算、そこで僕をっていやちょっと待て

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 確かに彼女はお宝――というかお金や美貌――に対する執着心はあるが邪魔された程度で報復するような人間ではない

 何かしら不都合なことがあってもその段階で計画を変更して盗み出すなんてお手のものだろう

 

 そう――相手はあの峰不二子だぞ?

 

 じゃあ一体何のためにここにいるんだ?まさか僕に会いに来たとかそんな理由ではない、よね?

 

 無いと信じたい、いや無いに決まってる、そうだそうに違いない、うん(自己暗示)

 

 状況確認という名の現実逃避をしつつ、さてどうしようかという話だけれでやることは変わらない

 しかしこうなってしまうと脱出も面倒になる、目の前の峰不二子を無視できないし

 いつもみたいに閃光弾か煙幕弾使うってのもありだけど…絶対手の内バレてるよねぇこの様子じゃあ

 

 しかたねぇ、一か八かでやってみよう

 

 まず不二子ちゃんに殴りかかるふりをします

 そうすると不二子ちゃんはいったん避けてカウンターを入れてきます

 そのカウンターを空中一回転で回避してその流れで不二子ちゃんの方を支点にして飛び越えます

 あとはいつも通り

 

 

 

 

 逃げるんだよォ!全速前進DA!

 

 

 

 

「えぇ?!」

 

 驚いている不二子ちゃんを尻目に猛ダッシュ、僕の目的はとっくに達成されてるんだから長居は無用だ!

 うおォン、僕はまるで人間蒸気機関車だ

 

 あらかじめ仕込んでおいた催涙弾をあちこちで作動させ視界を奪いつつ正面ホールへ

 騒ぎを聞きつけた警備員や地元警察、あとついでに実業家さんたちが勢ぞろい

 

 

「こ、このコソ泥…!」

 

 

 懐から銃を取り出して撃とうとしたのでジャンプで華麗に避ける

 着地と同時に相棒(エンフィールド)を取り出して実業家さんの銃を撃ち落とす

 

 

「たしかに、北宋の龍の銀細工頂きましたわ――それでは皆様Au revoir(ごきげんよう)

 

 

 そう言って残ったすべての仕掛けを作動させるとあたり一面煙だらけ

 懐から取り出したガスマスクを被って正面玄関…ではなく裏口から逃走

 

 近くに隠してあった新しい相棒(BMW)にまたがり逃☆走

 

 

 青いドレス着た少女がBMWに乗って逃げるとなればいくら地元警察が無能でもすぐ見つかるだろう

 そこで僕は全力でここ香港を脱出し中国本土へと逃げることにした

 警察は、まぁ途中で撒けばいいでしょ

 

 と言ってる間にもさっそく4台ほどのパトカーが追っかけてきた

 フフーン!でもこの僕に隙は無いんですよ!

 

 道を右へ左へ移動しているといつの間にかパトカーのおかわりが来ているけど小さな問題だ

 

 いい感じに距離が詰まってきたところで細いわき道にそれる

 さすがのパトカーもこんな細道には入ってこれない、きっと出口を封鎖しようとするだろう

 しかーし!僕は事前に逃走経路を頭に叩き込んでいるのさ!

 

 案の定封鎖が間に合っていないようで難なく撒くことに成功する

 

 いやー色々あったけど今回も無事に仕事を終えられる――

 

 

 

 

 

 

 ――真後ろから鳴り響くエンジン音に気が付くのにそう時間はかからなかった

 

 

 いつの間に――そう考える暇もなく僕はそのエンジン音の正体が思い浮かんでいた

 

 

 この状況でバイクを使って追いかけてくる相手、それは――

 

 

 ――ピンク色のハーレーに跨った彼女しかありえないのだから




キャラクター紹介 

・ルナ(15)
 ルパンファミリーの三人衆と出会いいよいよ逃れられぬカルマを背負っていることを実感しつつもお宝の欲には逆らえずやっぱり厄介ごとに出会ってしまった怪盗
 新しい相棒との出会いを喜ぶ暇もなく逃げの一手を打つがどうやらお相手さんは逃してくれるつもりはないようで…

・峰 不二子(??)
 皆さんご存知の女怪盗、自分と同じ女怪盗のルナが気になったというか邪魔に感じているというかまあ商売敵になられても困るので早いうちに芽を潰してしまおうみたいな感じで接触してきた
 思った以上に実力があることは認めているっぽいけど最初の目的は忘れていないご様子
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