モンスターハンター 〜狩場に駆け出す一人の双剣使い〜 作:団子狐
〈伝説世代〉と謳われるハンター。
彼らは歴代のハンター達よりもあらゆる狩場に現れては驚異的な成長を遂げ、各々経歴を上げる。
そのハンター達の一人カエデは三年を経て上位へと昇格し、ギルドからある特殊な依頼を受けて砂漠に来ていた。
依頼では、数ヶ月前から大型モンスター達の活動が繁殖期でも無いのに活発である事を知ったギルドは実力のあるハンターの一人カエデに現地の調査依頼を出された。
現地に到着した砂漠は不気味なほど静かなで小型モンスターすらそこに居ないほど異様な場所を調査しながらカエデはギザミSシリーズを装備し夜天連刃【黒翼】を背中に納刀しながら歩いているとあるものを発見した。
「ディアブロスが…死んでる?」
広大な砂漠の岩陰で息絶えたディアブロスを発見したカエデはすぐに調査を始めた。
(焼け焦げたり、打撃の様な攻撃を受けた跡…密猟者? でもギルドが狩場を閉鎖状態にするほど警戒網を引いている砂漠で密猟者の線は低い。それに死んでからまだ数刻前、なら犯人はディアブロスも凌ぐモンスター)
ディアブロスの死体を分析したカエデはこの砂漠で強力なモンスターと争いの末に敗北した事を理解し次のエリアの調査へと立ち上がった。
「次のエリアをーーッ!」
悪寒を感じたカエデは瞬時にディアブロスから飛び離れると風の塊の様な一撃が直撃し、砂埃を上げる。
「そういう…こと」
カエデは自身に向けて攻撃してきた敵に目を向けた瞬間、鎧越しから汗が流れ出る。
何故なら彼女の前方には、炎天下の砂漠地帯で鋼の身体を反射させ、蒼い瞳を持つモンスターが堂々と砂埃を上げながら地面に着地した。
『グルルル…』
カエデは気付かないうちに自身の手に夜天連刃【黒翼】を抜刀して構えていた。
本能的に息絶えたディアブロスはこの古龍種にやられたのだと、理解した上で武器を抜いたのだ。
また、いつも以上に緊張感を走らせるモンスターの名をカエデは知っていた。
「古龍種…クシャルダオラ」
それはギルドが…いや、この世界において、あらゆる国々が危険視どころか、災害の象徴として謳われた一体のモンスターの名だった。
『古龍種』それは一体存在するだけで天災をもたらすモンスター。
古代の文献でも古龍種と呼ばれた一体が繁栄した街を通り過ぎた事で壊滅したと記されるほど古龍種は危険で禁忌とされた存在。
その存在を前に身体中から危険信号を出す中、背後を取られないように目を合わせる。
クシャルダオラも武器を抜いたカエデから目を離していなかった。
(あの目…まるで『かかって来い』と言わんばかりの目)
「なら、遠慮なく……挑むまで!」
カエデは夜天連刃【黒翼】を手にクシャルダオラに迷いなく鬼人化し攻撃を仕掛ける。
クシャルダオラを雄叫びを上げながらカエデに襲い掛かる。
ギリギリを交わしながら、クシャルダオラの前脚を斬り込むもあまりの硬さに腕が痺れそうになる。
(硬い…それに戦う度に感じる。いままでの大型モンスター達とは比べものにもならない圧倒的なプレッシャー)
「これが……死への恐怖」
一分一秒と流れる感覚が遅く感じる中でカエデはいままでの経験を活かして、冷静に対応しながら避ける。
しかし、クシャルダオラの猛攻は容赦なく続く。
カエデはクシャルダオラの強力な一撃入れる為にも胸に飛び込むーー
「シッーーッ!?」
カエデは一瞬、目に見えない何かにぶつかった様な感覚に尻もちを着いてしまう。
「ぐっ!?」
すぐに立ち上がるもクシャルダオラの攻撃が肩を掠る。
そのままクシャルダオラから離れて態勢を整えながら先程起きたことを思考する。
(見えない壁?いや、コイツ自身が風を纏ったもの…)
クシャルダオラはどういう原理なのか不明だが自身に風を纏っていることに気が付いたカエデはいままで戦って来たモンスター達とは、違う異質な強さに小言を漏らす。
「…化け物」
カエデは双剣を天に掲げて鬼人化を発動させ、風が纏われていない部分を片っ端から斬り込む。
そんなカエデの攻撃を受けるクシャルダオラは一度、飛び上がり頭部の一部を赤く染め上げて咆哮を上げる。
「怒り状態…」
クシャルダオラはそのまま地面へと着地すると風の色が黒く染め上げる。
明らかにヤバいと気付いたカエデは、瞬時にポーチから閃光玉を出そうとする。
だが、クシャルダオラは黒い風を纏ったままカエデに突進され、それを阻止されてしまう。
「ぐっ!」
(風圧が強くなってる!)
早く態勢を立て直そうとして、ポーチから早く閃光玉を取り出そうとするが中々取り出せずに焦っているとクシャルダオラが息を吸い上げて黒い竜巻ブレスを吐いた。
「竜巻ーーぐぁ!?」
黒い竜巻を食らったカエデは空中に吹き飛ばされ、そのまま地面に叩きつけられると同時に吐血する。
「ゲホゲホ…はぁはぁ」
回復薬グレートを無理矢理口に流し込み、入っていた瓶を投げ捨て、震える手で双剣を再び握りしめる。
「はぁはぁ」
(痛い。回復薬を飲んだのにふらつく。これが古龍種…いや、天災と謳われる事だけはある)
クシャルダオラは鋭い眼でカエデを睨んでくる。
いままで狩ってきたモンスター達とは全く別もののプレッシャーを前にカエデは武者震いが止まらない。
「どうすれば…」
カエデは戦慄の中、ある人物の言葉を思い出す。
『飯を食う為にハンターになるなら。己自身も喰われる事を覚悟しろよ腹ペコ娘』
それはハンターになる前…訓練所に入る前に出会った男はカエデにとって、師匠だった。
その時の言葉をカエデは思い出す。
『危機的状況時こそ、己自身の全てを天秤に賭けろ。そして、獣の如く駆け抜けろ!』
偶然か必然なのか…訓練所に向かう時、カエデの師匠は手向けの言葉だった。
『この弱肉強食という名の不条理な世界を生き抜いてみせろカエデ!』
師匠の手向けの言葉に手の震えが少し和らいだ。
「あの口の五月蝿い…師匠の言葉を思い出すなんて」
古龍…クシャルダオラを前にカエデは小さく微笑んだ。
「この世は弱肉強食……フッ…でも古龍であろうと糧になるのは…あなた」
カエデは双剣を逆手に持ち替えると鬼人化…否、鬼人化【獣】に切り替えた。
そして、クシャルダオラに向かって一直線に走り出し、跳び上がる。
「私の糧になれ…クシャルダオラ!!」
『鬼人空舞』…過去に多くの双剣使い達がモンスター達に鍛錬の積み重ね続けて生み出された〈狩技〉と呼ばれる奥義だ。
この技をカエデは二年前、カムラの里で起こった百竜夜行後に取得した技…〈空中回転乱舞〉をクシャルダオラの頭から背中を越えて尻尾まで体を回転させながら斬り刻んだ。
『グァアアア!?』
「いまの私が出し切れる全力の力と速度でお前を狩る!」
全身全霊の力と速さに叫びながら双剣を振るい続ける。
自身の身体に激痛が走ろとも、カエデはクシャルダオラに向かって駆け抜ける。
『ゴァア!』
「浅い、もう一度…ーーッ!!」
クシャルダオラが一瞬、怯みを見せた時、カエデはこの好機を逃さないようにもう一度、狩技を仕掛けようとしたその時、カエデの脚は硬直した。
灼熱の砂漠にいるにも関わらず、寒冷地の様な背筋が凍えるほどの光景を目にしたからだ。
「あり…えない…」
それは不運と言葉で表すには、あまりにも悪過ぎた。
『グルルル』
カエデと相手してたクシャルダオラも新たに現れた敵に敵意を向ける。
そこには、紅蓮に染まる一体のモンスターがゆっくりと向かって来た。
「古龍が…」
カエデの身体中から『逃げろ』と危険信号をさらに上げていた。
そして、クシャルダオラと戦う前に息絶えたディブロスの状態を思い出した。
焼け焦げたり、打撃の様な攻撃を受けた跡ーー
クシャルダオラの風ブレスを見た時、打撃の様な攻撃は理解できた。
その為、ブレスから警戒は怠っていなかったが、急に現れたクシャルダオラの事で思考が回せなかったというのもある。
故に…焼け焦がす脅威の存在に気付けなかった。
「古龍が…二体」
紅蓮の炎の化身と言わんばかりの存在感を出す古龍がクシャルダオラに敵意を向けた。
「…テオ・テスカトル」
カエデは二体目の古龍種…その名を口にした。
テオ・テスカトルと…。
ベルナ村を立ち去る際に古龍種の情報がある事に興味本位で読んだ文献に記された情報と重なる存在が目の前にいた。
『『グルァアア!!』』
クシャルダオラはカエデからテオ・テスカトルに目標を変え、二体の古龍種がぶつかり合い、その余波にカエデは吹き飛ばされる。
「ぐっ!」
容易く吹き飛ばされた地面に転がされ、カエデは二体の古龍種のぶつかり合いを目にして、頭の中にある言葉が過ぎった。
それは『死』だ。
「死ぬ?」
カエデは吹き飛ばされて地面に転がされて硬直する身体にムチを打って、無理矢理立ち上がり動く。
「冗談…生き足掻いてやる!」
自身の未来が『死』という予想しか出来ない中でカエデは双剣を手に二体の古龍種へと武器を構えた。
「生き…残る!」
カエデは双剣を手に二体の古龍に向かって駆け込んだ。
それは逃げ切れるか分からない状況で出した答えは古龍…引いては災害に挑む事が生存への道と考えた故の選択だった。
それからどれくらいの時間が経った把握して出来なかったが、争っていた二体の古龍種がいつの間にか砂漠から去っていった。
しかし、その場に古龍種が二体いた事実にまだ安心は出来ない中、カエデは生きて…否、生き残った。
「はぁはぁ…生きている?」
自身が生き残っている事にカエデは実感を感じると緊張が解けて、そのまま砂漠の地面に倒れ込む。
防具はどこもかしこも傷だらけどころか左肩の部分が外れたり、手に持っていた武器も切れ味は最悪な状態だった。
(身体中が痛い…骨の何処か折れてそう)
地面に倒れ込んだカエデは緊張が解けて早々に身体中の痛みが走り、仰向けの状態で痛みを感じていた。
今の状態であれば、小型モンスターですら簡単に命を取られてもおかしくないが古龍の出現により砂漠に生態が戻るには、まだ時間がかかる。
ある意味『不幸中の幸い』と言っても過言では無い。
「それにしても……負けた」
カエデは日が沈む砂漠の空を見上げながら、古龍を倒しきれなかった事を口にした。
身体中に激痛が走るほどのボロボロになるまで戦ったというのに勝てなかった事に悔しさを感じてきた。
「強くならないと…次は無い」
カエデはたった三年で上位へと昇格したが、古龍との戦いで圧倒的な力を受けて実感した。
この世は広く、カエデの師匠言う通り、『弱肉強食という名の不条理な世界』であるということを改めて実感したのだった。
「それにしても」
ぐぅううう…
「お腹空いた」
これは伝説世代の一人、カエデが初めて古龍と出会い、挑み生き残った物語。
古龍種二体から逃げるどころか片方だけでも挑み生き残った彼女の偉業は伝説世代の名をさらに広げる事となる。
その後、彼女はギルドから派遣されたギルドナイト達に救出された。
また、そのカエデの負傷を知った伝説世代の同期である数人が二週間かけて見舞い集まり、ギルドの医務室に向かうとそこには包帯でぐるぐる巻きにされたミイラ状態のカエデがココットライスで作られた熱々のお粥をガツガツと一心不乱に食べていた。
それも鍋二つ分を軽くペロリと食べ終えて三つ目の鍋に入ったお粥をお椀に入れる中でだ。
「モグモグ…皆んな、久しぶり」
無論、そんな光景を見て見舞いにきた者たちは呆れたり、心配をして駆けつけてみれば普通にご飯を大量に食べているという始末に説教する者もいれば「カエデらしい」と苦笑いするなどその場は同期の生存に少し和んだ。
だが、カエデはそのあと病人食とはいえ、食べ過ぎるところをクリスティアーネに指摘されるだけでなく長時間の説教が始まる。
「た、助けーー」
身体中包帯で撒かれたカエデは説教から逃れる事が出来ないので同期に助け船をお願いするが見舞いにきた同期たちは口を揃えてこう言った。
「「「「「自業自得!」」」」」
そういうと、同期たちはさっさと医務室から去って行き長時間の説教をされるのだった。
そして、身体の調子が良くなるとカエデは大荷物を気球船に乗せてある場所へと向かおうとしていた。
「あ、カエデさん次はどちらへ行かれるんですか?」
「師匠の故郷…エルガドに」
伝説世代の一人、カエデ…彼女はのちにエルガド出向いて師匠の家名を背負い伝説のページを増やすことを知らない。
ライズやってて、古龍二体出てきた時は泣きそうになりませんでした?
竜巻出すわ、爆破するわでクエスト失敗しました。