僕と王女のヒーローアカデミア   作:たきな大好き0802

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第3話:ワン・フォー・オール継承と修行

 

 

君はヒーローになれる!!

 

 

 

No.1ヒーローにそう言われて、声にならない声をあげながら歓喜の涙を流す出久。オールマイトは、そんな出久を見ながら口を開く

 

「君なら、私の“力”受け継ぐに値する!!」

 

と、先ほど話した要件の最後の1つ『提案』を口にする。

出久はオールマイトの突然の発言に面食ってしまう。

 

「なんて顔をしているんだ!?「提案」だよ!!本番はここからさ。いいかい少年……」

 

「私の“力”を、君が受け取ってみないか…ドバァ!!」

 

少しばかり思考が停止する出久。それほどオールマイトの発言は突拍子ものがないものであったが少し落ち着いた1つの可能性に直ぐに辿り着く。

 

「力…って、まさか”個性”!?」

 

オールマイトは血が出た口を拭きながら出久の話に頷く。

 

「写真週刊誌には、幾度も怪力だのブーストだのと書かれ、インタビューでは、爆笑ジョークで茶を濁してきた。平和の象徴オールマイトは、ナチュラルボーンヒーローでなければいけないからね。だが少年少女、君達には真実を伝えておこう…」

 

 

「―――私の個性は聖火の如く引き継がれてきたものなんだ」

 

 

「引き継がれてきた…もの?」

 

「そう、そして次は君の番と言うことさ」

 

あまりの話の突拍子さに出久は頭がパンク寸前だった。そこに今まで黙ってみていた茜が口を挟む。

 

「ま、待って!おじさん!受け継がれてきたって、個性を!?確かにお…オールマイトの個性については世界七不思議の1つとして議論されているよね?出久の後ろで静かに聞いていただけど、個性を他人に引き継がせる個性なんて、そんな個性、聞いたことがないよ!」

 

茜の至極まともな考えを聞いて出久は頷く。

 

「茜ちゃんの言う通りだ。有史以来そんな個性は確認されていないはず。そもそも”個性”というのは生まれつきの固有の身体的特徴であってそれを譲渡できるなんて個性そのものを否定することになってしまって……」ブツブツブツブツブツブツブツ

 

「君はとりあえず否定から入るな…ナンセンス!!!」

 

「私は、隠し事は多いが嘘はつかん。個性(ちから)を譲渡する個性(ちから)! それが私の受け継いだ個性! 冠された名は―――」

 

 

 

『ワン・フォー・オール』

 

 

 

「ワン・フォー…オール」

 

「1人が力を培い、その力を1人へ譲渡。その1人が更に力を培い、また新たな1人へ譲渡。この繰り返しにより、極限まで磨き上げられた、まさに力の結晶!!」

 

「そんな大層なものを、なんで…なんで僕にそこまで」

 

「元々、後継は探していたんだ。そして、君になら渡してもいいと思ったのさ。無個性でただのヒーロー好きな君は、あの場の、あの時の、誰よりも、”ヒーローだった”!」

 

「っっっっっっっ!!!」

 

「っ!」

 

出久にオールマイトの言葉が刺さる。そして誰よりも出久がヒーローになれると思っていた茜にとってもその言葉は何よりの救いだった。

出久は()()()()によって自己犠牲の精神とヒーローになりたい思いが強くなっていた。()()()()()()()()()()()()()()()()()の彼女からしたら自分のせいで彼をヒーローになりたくさせ、”無個性”なのにヒーローの真似事をして無茶を繰り返すのではないかと心配していた。

自分が信じていたせいでヒーローに囚われているのではないか?ヒーロー以外の可能性があるのに縛り付けているのではないか?と。

しかし、オールマイトの言葉は、ヒーローになりたくてもなれない少年と、その少年を信じていた少女の、2人を救ったのだ。

 

 

「まぁしかし、結局は君次第なんだけどさ。どうする?」

 

(ここまで言ってもらえて…僕なんかに大事な秘密を晒してくれて…あるか?いや、ないだろ。あるわけない!断る理由なんて!)

 

出久は自分の涙を服の袖で拭き、答える。

 

「お願い…します!!」

 

「即答…か。そうきてくれると思ったぜ」

 

こうして最強の師弟関係が結ばれた。

この時、茜は出久が変わり始めたことを嬉しく思い、同時に寂しく思った。

 

 

▼▼▼▼

 

 

それから2日後、出久はオールマイトに言われて早朝の海浜公園に来ていた。

 

「ぐぅぅぅぅぅぅぅっ!ぐっ!」

 

そこでマッスルフォームのオールマイトが座った冷蔵庫を縄で縛りつけて全力で引っ張っていた。

冷蔵庫は揺れながらもオールマイトが指定した場所にゆっくりと動き出す。

 

「君、意外と鍛えているね。おかげで冷蔵庫の乗り心地は最悪だよ」

 

「ぐっ!ぐぐっ!ぐおっ!」

 

そうして出久は冷蔵庫を指定された場所までもっていき、はぁはぁ…としながら地面に膝をつく。

 

(まさか指定した場所までもっていくとは…彼の力を見違えていたようだ。人を見た目で判断してはいけないと言うが彼は想像以上だったようだ)

 

オールマイトの出久の実力を見てニヤっと笑う。

 

「緑谷少年、上着を脱げ!」

 

「へっ?」

 

オールマイトの突然の申し出に出久は目を丸くする。

オールマイトは少しして自分の発言に問題があったことに気が付き、訂正をする。

 

「すまない、言葉が足りなかったね。君の体つきを一度見ておきたくってね」

 

「ああっ…そういうことでしたか」

 

オールマイトの意図が分かり、出久は上着を脱ぎだす。

 

「ほぉ…今のご時世によくここまで鍛えて……んんっ!?」

 

オールマイトは出久の良く鍛えられていて腹筋が割れている体をじっくり見るが、そこで腹の少し左下辺りで小さな手術痕を見つける。

 

「どうしましたか!?オールマイト!?」

 

オールマイトが驚きの声を出して出久はなにか致命的な部分を見つけたと思って身構える。

 

「いや、君の腹の少し下に手術痕があるんだが……これは?」

 

「ああ…それは昔友達が強盗に襲われそうになったことがありまして、その時に無我夢中に飛び込んで怪我した時の傷です」

 

出久はオールマイトの驚きは自分の腹にある傷だと知り安堵し、彼の質問に大したことがないようにあっさりと答える。

その態度にオールマイトは対して冷や汗が出てしまう。

 

「イヤイヤイヤイヤ!君、そんな『そういえば、そんなこともありましたね』と言う風に言われても困るよ!?体に支障はないのかね!?」

 

「大丈夫ですよ。医者からは後遺症にはならないって言ってましたし、庇った相手の両親から治療代は出してもらっていて、話は終わってますから」

 

「うむむむっ……そうか」

 

腹の傷について出久から後遺症もなく、話も終わっていると聞いて、オールマイトはもう少し詳しく聞きたかったが、出会ってまだ日にちが浅い関係ために深く聞くことは躊躇ってしまう。

結局、その話はここでやめて本筋に入ることにした。

 

「君の体は服の上だとわかりずらいが、思った以上に鍛えてあるようだね。てか、結構着やせするね!」

 

「はい!ありがとうございます!さっき見せた傷の事件以降、人を守れて自分が傷つかないようなボディを目指して鍛えていたので!」

 

「それはいい心がけだよ」

 

「…でも本当にただ鍛えるだけに集中しちゃって、武道とか喧嘩とかそういうのは全然…逃げ足はちょっとある理由で早いほうですけど」

 

今まで体を鍛えるとことばかり優先していて、戦い方などを学んでこなかったことを恥ずかし気に告白する出久。

一応、突きの練習や蹴りの練習などはしていたがそれを人に振るったことがなかった。

オールマイトは出久が最後に付け加えた「逃げ足がちょっとある理由で早い」ことについて少し首を傾げつつ、話を続けることにした。

 

「いや、十分だよ。そういうのは追々経験を重ねていけばいい。今大事なのは君が私の”個性”を受けつぐ、身体(うつわ)を持っているということだよ」

 

「身体?」

 

「あぁ、個性を受け入れる為の身体(うつわ)さ。生半可の身体(うつわ)では受け取りきられず、個性を受け継いだ時、四肢が爆散してしまうんだ!!」

 

爆散!?四肢が!!!

 

「それ程までに力を秘めた"個性"なのさ」

 

オールマイトの説明を受けてワン・フォー・オールという個性がどれだけ強力なものか改めて実感する出久。

とはいえ、No.1ヒーローのオールマイトが持つ個性なのだから当然だと思える。

 

「だが、君の場合はすでに私の”個性”を受け継ぐに値する身体(うつわ)だ。……少しギリギリだがね」

 

「えっ、じゃあ…」

 

「ああ、今からでも君に私の”個性”を君に譲渡しよう」

 

「え、ええっ!?いいんですか!!?こんなに早く!?」

 

「何を言っているんだい。君の努力は体を見てわかる。ヒーローになりたい…人を守りたいの一心で体を鍛えていたんだろう?」

 

彼―オールマイトの言葉に出久はまた目頭が熱くなってしまう。

元々、涙腺が弱いほうだったがオールマイトが自分を認める言葉を聞いてしまうとついつい涙が出てしまう。

 

「まだ泣くのは早すぎるぞ、少年。寧ろ君にとってはここからが本番なのに…全くその泣き虫は治さないとな!」

 

「はい…クラスメイトや茜ちゃん—もとい櫻田家のご家族によく言われてます……」

 

(言われてるんかい!しかも櫻田家に!全く……)

「さぁ、かなり早いが授与式だ、緑谷出久!」

 

「………はい!」

 

「いい返事!さて、これは受け売りだが、最初から運良く授かったものと認められ譲渡されたものではその本質が違う!」

  

「肝に銘じておきな。これは君自身が勝ち取った力だ」

 

オールマイトの激励の言葉に出久は身と心を引き締める。

 

(それにしても力の譲渡って、どんな風なんだろう?コミックでよくあるように手が光って力を手渡すのかな?…いかんいかん!これから僕はコミックもびっくりの現実をその手に掴むんだから!浮かれちゃ!)

 

“個性”の譲渡なりつい浮かれてしまう出久。そんな出久の心境を知らずにオールマイトは髪を一本抜いた。

 

 

「食え」

 

「へぁ!?」

 

 

オールマイトが自分の髪の一本を差し出して食えという予想外の行動に出久は変な声が出てしまう

 

「別にDNAを取り込められるなら何でも良いんだけどさ!まぁ、これが手っ取り早くて確実さ」

 

「思ってたのと違いすぎる!!!」

 

この後、夢を見ていた自分が悪いのだけど!と出久は心の中で自分の非を認めながらオールマイトの毛を飲み込んで力を継承するのであった。

 

 

▼▼▼▼

 

 

「よし!これで君の体に個性が宿った!」

 

出久が髪の毛を飲んだのを見て、オールマイトを高らかに宣言する。

 

「でも体に個性が宿ったような実感がないんですけど?」

 

「2時間くらいもすれば、髪の毛が消化されて変化が起きる筈さ」

 

「じゃあ、その間にこの浜辺の周りを少し綺麗にしておきますね。元々トレーニングを兼ねてやっていたボランティアですけど」

 

出久の何気ない言葉に目を丸くする。

 

「……君、まさか前からこの浜辺のゴミ掃除をしていたのかね?一部のゴミが妙に一点に集まっているなと思ったが」

 

「はい。僕は”無個性”ですからできることが少ないですから、ボランティアとか自分から積極的にやることにしているんです。人の助けになりますし、その空いた間に体を鍛えることになりますから」

 

出久の真っすぐで『当たり前』のことのように話す出久の言葉を聞いて、オールマイトは体を震えさせる。

 

 

「君は偉い!!」

 

「うわぁ!」

 

 

オールマイトは声と共に体を出久の前に近づけて褒めた。

いきなり距離感を縮められ、大声で言って来たので

 

「最近のヒーロー(若い者)には、派手なヒーロー活動にばかり目を向ける輩が多いが、ヒーローの基本は奉仕活動。それはブレちゃいかんが…君がそこまで理解しているとなぁ。私の目も曇ったものだ」

 

「……周りに恵まれただけですよ。僕がこうして奉仕活動をしていけるのは櫻田家のおかげですから……」

 

オールマイトの称賛の嵐も出久からしたら過大評価だった。

自分は自分ができることをしただけだし、それをしようと思ったのも櫻田家の支えがあったためである。彼らの出会いがなかったら、自分はただヒーローに憧れているだけの何もしない無個性の少年だっただろうという考えが出久には合った。

そんな出久の心境を知らずかオールマイトは「櫻田家」という言葉に一つのことを思い出していた。

 

「そういえば…茜くんは結局、来なかったね。あの時に声をかけたんだが…遠慮したのかな?」

 

「いえ、この時間帯だと多分まだ寝ていると思いますよ。茜ちゃんって一度寝たらなかなか起きませんし、あの家で家族に気づかれずに出てこっちに向かうなんてかなり難しいですし……」

 

オールマイトの疑問に出久は茜の生活リズムを考慮したうえで冷静に推測して答えた。

そのまるで詳しく知っている態度にひっかかりを感じていた。

 

「緑谷少年、君がなんで茜くんが寝たらなかなか起きないのを知っているんだい?」

 

「あっ、えっ…それは」

 

「ヘイヘイ!白状しちゃいなよ~このこのこの~」

 

オールマイトから彼女の睡眠に対して知っていることを指摘されて出久はつい、しどろもどろになってしまう。

その反応を見て、青春的なあまずっぱさを感じたオールマイトは軽い口調で追及してくる。

 

「べ、別にやましいことがあるわけじゃないですから!ただ、友達として櫻田家に泊まったことがあるだけですから!!!!」

 

「…いや、すまなかった。恋バナの雰囲気かな~って勝手にテンションが上がってしまって、気分は女子高校生になってしまったよ。申し訳ない」

 

出久はオールマイトに茜との関係を聞かれて、声を荒げて全力で否定する。

その気迫に押されてオールマイトは自分が大人げなかったことを自覚して、彼に邪在する。

 

「あ、あの謝らなくって結構ですから。…ただ、このことはオフレコでお願いします。このことが『茜様ファンクラブ』の耳に届いたらどうなるかわかりませんので…」

 

「彼女にファンクラブなんてあるのか…」

 

「基本的に次期王候補には個々にありますから。特に茜ちゃんの所はファンクラブ会長が私情というか欲を挟んで度々暴走しますから。ちなみに僕は無理やり会の一員に加わえさせられました…たださえ、肩身が狭い思いをしているというのに……。」

 

「何が何だかわからないけど、とにかく大変だね。君は」

 

出久から「茜ファンクラブ」という王族に対してのファンクラブがアリ、自分の弟子が何やら大変なことに巻き込まれているようでオールマイトは苦労を察した。

事実、茜ファンクラブの会長の福品創という男は茜のクラスメイトで副委員長しているが、茜が学校移動中にスカートが破けてスカートをはき忘れてしまった茜に対してスカートを履いていないことを言うのではなく、パンツまで履いていないことを確認しようとしていた変態である(しかも他のファンクラブの人達もほぼ同じように行動していた)

そのこともあり、出久のアドバイスで茜がスパッツを履くようになるのだがそれはまた別の話。

 

 

 

 

それからゴミ掃除を行っているとふいに体に異常が起きだす。

 

「わぁっ!」

 

体全体に電流が流れるような感覚が襲ってくる。

 

「お…オールマイト!」

 

「来たか! 緑谷少年! 今、君の全身を緑色の電気とでも表現できるオーラが走り始めている。それが『ワン・フォー・オール』だ!」

 

「こ、これが…」

 

体全体に流れる力、想像以上の力に出久は押されることができずにこのままでは暴発しそうな勢いであった。

 

「ここからが肝心だ! いきなりグワァッ! とやったら体は壊れる。グッ! と締めて、ジワァッと広げていく感じで流していく。わかるかな?」

 

(すいません…オールマイト、全っっっっ然わかりません!!!)

 

感覚派のオールマイトの説明に出久はわからずに困惑する。

出久はオールマイトの説明の理解をあきらめて自分で力の制御方法を模索することを考える。

 

(ワン・フォー・オールは言ってしまえば…身体強化系の個性だ。身体強化系のように扱えばいい。確か僕の知り合いで身体強化系の個性を持つのは…輝くんだ!)

 

力を暴発させないために出久は直ぐに身体強化系の個性、怪力超人(リミットオーバー)を持つ櫻田家の第三男の櫻田輝(さくらだ てる)との会話を思い出していた。

出久は茜の友達として度々、櫻田家を訪れており、そこで櫻田家の人々の仲が良くなっていた。特に第三男の輝と第六女の櫻田栞(さくらだ しおり)とは出久が年上のためか仲良くやっていた。

 

 

 

 

『えっ、個性をどんな感じで使っているかですか?』

 

『うん、輝くんの個性ってシンプルでわかりやすい個性だけど使うときにどんな感じで使っているかなー……ってね』

 

ある日、櫻田家の家族に任されて出久が輝と栞の2人の面倒を公園で見ていた時に出久はなんとなく輝の個性について聞こうと思った。

出久は度々、櫻田家の個性について調べて、その詳細や活用方法や応用法などを当人が見つけられなかったことを見つけて示していた。

別に出久が言われてやっていることではなく、”無個性”だった彼が自分ができることを考えて勝手にやっていた。それで相手には喜ばれていたので出久にとってはお安い御用だった。

 

「うーん…自分が個性を使うときはこう…体から気が一気に高まり、そして爆発して体が放出される…っていう感じで」

 

「そ、そう……」

 

ちょっと抽象的な輝の説明に出久は相槌を打つしかできなかった。

小学生の少年に分かるように説明しろという方が無理な話だが。

 

「お兄ちゃん…それじゃあ、出久さんが分からないから。何かに例えて言った方がいいよ。例えば…蛇口とか」

 

「なるほど!出久殿には選ばれたものとしての説明は理解できなかったか……」

 

(相変わらず早すぎる中二病って言う奴を発症しているなぁ……)

 

栞の助け舟で輝は彼女からもらった蛇口を例に再び出久に自分の力を使う時を伝えようとしていた。

出久は輝の年齢よりかなり早い中二病発症しているのを見て少し呆れていた。

ちなみに輝は個性をまだ完全に制御できないため母からのいいつけで個性の使用を制限しているが、彼は右手の甲に魔法陣を書いてそこに包帯を巻いたりその右手に「ジャッカル」と名付けるなど6歳ながら早すぎる中二病を発症していた。

 

「うーん…栞が教えてくれた例で言うと蛇口のハンドルを目いっぱいひねると一気に力があふれ出して、少しずつひねりだすと徐々に力が出て来てそれが全体的に回る感じっすかね。…自分は徐々に出すときの加減が上手くできないときがありますけど」

 

「なるほど…身体強化の個性はあふれ出す力を体に纏わせるのが課題か。ただ、力を出すだけじゃなくて体に纏わすようにしないと暴走もとい暴発の危険性があるから使うときには細心の注意を払わないと…いや、でも実戦に使う時に一々気にしていたら使い物にならないわけで……」ブツブツブツブツブツブツブツブツ

 

先ほどと違い例えがあったためにある程度理解でき陽になった出久はさっそく身体能力系もとい怪力超人(リミットオーバー)に力の出し方を考えだし始めた。

考えすぎて口からブツブツと漏れていたのでそれを見て栞は怖がってしまう。

 

「こ、こわい…」

 

「あ、あのー…出久殿?栞が怖がっているんですが…」

 

「あっ、ごめんごめん!考え事しちゃって。でも参考になったよ、輝くん」

 

輝の言葉で出久は意識を現実に戻す。

付き合いもそこそこ長いためか出久の癖のブツブツ言うのは2人も前から見ているが怖いものは怖いものだ。

謝りながらきちんと輝へのお礼を忘れない出久。こういう所が子供に好かれている1つの理由かもしれない。

 

「いえ、出久殿は姉上の将来の夫になる身。力になるのは当然のことですから」

 

「……?」

 

輝の台詞に引っかかりを感じる出久だったが、すぐ視点を栞に向けた。

 

「栞ちゃんもありがとう。君が輝くんに例えで教えるように言ってくれたお陰で助かったよ」

 

「ど、どういたしまして……」

 

出久は身体強化系の力の出し方を知るのに手助けしてくれた栞に感謝の言葉を贈った。

彼女が例を出すことを輝に言ってくれなかったから出久はそれがわからないままで終わっていただろう。

出久に感謝された栞は顔を赤くしてうずめていた。

その後、三人は仲良く公園で遊んで楽しんでいた……。

 

 

回想終了。この間、0.5秒。

 

出久は直ぐに回想で掴んだことを実戦していく。

まず深呼吸して自身の体を落ち着かせる。そうすることで一瞬だが暴発しそうだった力も落ち着いたように思える。

その瞬間を逃さずに力を掴み全体に流し纏うようなイメージで力を制御していく。

蛇口を少しずつ捻るような感じで徐々に力を流していく。

 

それから数分経っただろうか。力の波というべきというものは落ち着いた状態になり、ワン・フォー・オールの力も安定していた。

とはいえ、体に長期間抑えていることはできないので直ぐに蛇口を閉めるイメージで力を落ち着かせて自分中に戻す。

 

(はぁ…はぁ……なんとか力を制御することができたぞ!輝くん、栞ちゃん…ありがとう)

 

「見事だ!緑谷少年!!」

 

「でも、僕は現に”個性”が暴走しそうでした…なんとか抑えられましたがこれでいいんですか?」

 

「君の気持は分かるが、仕方ない!そもそも初めから上手くいくなんて都合の良い話はそうそう無い。だが、君の先程のコツを続けていけば『ワン・フォー・オール』もさらに君の身体に馴染み、更なる力へと変わるさ!」

 

「更なる力……」

 

「緑谷少年。焦りは禁物だよ。今の君の個性はさっき体験したように諸刃の剣の状態だ。使い方を誤った君の体に負荷が来て体にダメージを受けるかもしれない。あまり無茶せずに一歩ずついこう」

 

「……はい!」

 

ワン・フォー・オールは絶大な力でありながらそこに繊細な一面もあり、上手くコントロールしなければならないことが出久にも分かっていた。そのため『焦ることも着実に一歩ずつ』と考えで進んでいくことを決めた。

修行で一歩ずつ進んでいこうと考えていく中、出久の心にはオールマイトに言えない秘密を抱えて罪悪感という気持ちに締め付けられていた…。

 

 

▼▼▼

 

 

(あー…暇だなぁ。折角、クジで珍しく何も家事が当てられなくって『お休み』になっていうのに……)

 

出久がオールマイトに”ワン・フォー・オール”を譲渡された日の午後、茜は家で不貞腐れていた。

櫻田家では毎日、クジで家事の割り当てを決めていた。参加するのは、長女の葵、次女の奏、三女の茜、四女の岬、長男の修、次男の()()()の6人(五女、六女、三男は年齢的に外されている)

クジの内容は、掃除、洗濯、料理、買い物とそして休み2人になっていて、茜は何か作為があるかと疑うくらい買い物のくじを引いていた。

そんな中、この二日間に買い物のくじを引かずにいた。今日は珍しく休みを引き

ゆっくり羽伸ばし…とは彼女はいかなかった。

 

 

(あー…数日間、学校の時以外は外出を禁止だと暇だなぁー……)

 

茜は2日前のヘドロ(ヴィラン)事件で現場に入って(ヴィラン)と応戦したことが全国のテレビに映ってしまい、それが櫻田家の目にも届いてしまうのは当然だった。

その時に一部は家族の一部は「(ヴィラン)に立ち向かうなんてカッコいいよねー!」「流石の姉上!」などと褒める声もあったが半分以上は彼女が(ヴィラン)に立ち向かったことに怒っていた(特に奏。家に帰ったらねちねちとお説教されていた)

そしてその日の家族会議によって茜は今日から数日は『学校以外は外出を禁止する』と決められた。家事決めのくじ引きで買い物が出たとしても他の人とくじを交換する条件付きだった(ただ、今の所は買い物のくじを茜が引いていないので問題はない)

茜に反省してもらう意味合いがあり、大人数が賛成だった(これでも最初は1ヶ月や1週間など期間が長かったので数日になったのは温情だろう)

茜も家族に不安や心配させていたのは分かるので、この罰を素直に受けることにした……のだが。

 

(出久、本当に大丈夫かな?LINEだと無事に”個性”受け継いで修行しているって言う話だけど……)

 

LINEで連絡とって出久と進行具合を聞いていたほっとしている茜だが、やはり実際に会わないとなにかと実感が沸かなかった。

今日も早朝に起きて、オールマイトに指定されていた場所に行こうと思って時計のタイマーを入れていたが結局、起きられずにいた。そもそも家族にバレずに外に出て行くということ自体茜には無理の話なのだが。

ちなみに茜の外出制限は出久には話していない。話すと彼は自分のせいだと責めることを彼女が予測していたからだ。

それほど出久は優しく、茜は彼との付き合いが長く理解があった。

 

(やっぱり気になるな…こっそり行こうにも勝手に出て行ったことがバレたら外出制限解除後の家事1週間、買い物は私だからいけないし~)

 

出久の動向が気になる茜で出来ればいま直ぐに外に出て行きたいのだが、それを予測していたのか勝手に出て行ったら『外出制限解除後の茜の家事は1週間買い物にする』と約束を決められていた。

人見知りであり、カメラに映って目立ちたくない茜からしたら1週間家事が買い物なのは地獄だった。そのため、彼女はこっそり家を抜け出すことができなかった。

 

「茜、お客さんよ~」

 

(お客さん?誰だろう?花蓮?)

 

葵から自分に客人が来たという話を受けて、茜は首をかしげる。

自分に用があるような人物が家に訪ねてくることが珍しかったし、友達の花蓮や杏なら学校で会っているし、そもそも連絡ならLINEとかで出来るはずなので意味がない。

知り合いなら来る時に連絡してくるだろうし、そもそも葵が名前を言うはずだ。

とりかくリビングのドアまで行くと葵が「私は席を外しているから」と言ってその場を去っていく。

姉がここまでの態度をするなんて誰だろう?と茜が思ってドアを開けると――

 

 

「お久しぶりですわね、茜さん」

 

「百ちゃん!?」

 

 

リビングのソファーに座っていたのは、黒髪を前髪の右側だけを下ろして、ストレートの長髪をポニーテールにまとめていて、黒い瞳、凛とした振る舞いをした少女。

彼女は、八百万百(やおよろず もも)。茜とは友達の間柄である。

 

「久しぶり~!元気にしていた?」

 

「ええ、おかげさまで」

 

八百万との再会に茜は大変喜んだ。

彼女はお嬢様で、王族のパーティーで家族全員呼ばれるくらいの地位が高い家育ちで昔とあるパーティーで茜と彼女は出会い友達になったのである。

 

(一年ぶりくらいかな…あんまり変わっていないな――――胸以外は)

 

「?」

 

茜は座っている八百万をじっくり顔から見て、胸当たりに目線を向けると茜はしかめっ面になっていた。

なんせ八百万の胸は普通より大きく、胸の小さいことがコンプレックスの茜からしたら羨ましい限りだった。

もっとも八百万は茜の羨ましがる理由を知らないので「?」が頭によぎるだけだが。

 

「そ、そういえばなんで急にうちに?」

 

胸のことばかり気にとられずに茜は気になっていたことを八百万に問いかける。

八百万の家は隣の県にあるためにそうやすやすと尋ねられることはなかったために急にこちらに尋ねてきたことに疑問に思ったのである。

 

「それはですね――――茜さんの勇士をテレビで見て、いても立ってらいられずに来てしまいましたわ!!」

 

「ああ……」

 

八百万は家に訪れた理由を歓喜しながら告げている。それを聞いて茜は態度が一気に冷めてしまっていた。

茜からしたらあの時のことは2日前に家族に厳しく怒られたためか話題に出して欲しくはなかった。

八百万はそんな茜の気持ちを露知らずに話を続ける。

 

「毎日、『サクラダファミリーニュース』を見ていますが、2日前のニュースで茜さんが出久さんを助けるシーンを見た時は観天喜地でしたわ」

 

「うううっ…あんまり見ないで欲しかった」

 

テレビのニュースでは毎日、櫻田家の様子が話される『サクラダファミリーニュース』というものがあり、二日前は茜がヘドロ(ヴィラン)に立ち向かったことが大々的にニュースに流れた。

人前で目立つことが嫌いな茜からしたら友達に知られて直接言われることは恥ずかしかった。

 

「?なぜですの?確かに茜さんがしたことは法律的には間違っていたかもしれませんが人として正しいことをしました。もっと誇っていいと思いますわ」

 

「百ちゃん……」

 

ネットでは茜の行動に否定的なものもいたが、基本的には王族のことを毎日テレビ放送していることもあって、国民から好感度高いために彼女の行動を賞賛する声もあったという。

八百万も同じようで『法的にはダメだけど人として正しい』という考えらしく、彼女の行動に讃えていた。今回の件をあまり直接褒められていなかった茜は更に気恥ずかしかった。

 

「それにしても出久さんも流石ですわ。ヒーローの方々が動けない時に友を助けるために向かって行くなんて…」

 

「…百ちゃん、訂正するけれどあいつ(爆豪)は友達じゃないからね。ただのいじめっ子!」

 

茜を褒めた後に出久も褒めだす八百万。八百万は前に櫻田に訪れたこともあり出久とも面識があって、出久のヒーロー知識に対して尊敬していた。実際はヒーローオタクなだけなのだが、天然な彼女にはわからなかった。

出久を褒めるのは別に異論なかったが、爆豪を友達扱いされるのは癪に障ったので訂正を求める。

彼女からしたら爆豪は百歩譲って()()()幼馴染だが決して友達ではないという気持ちは強かった。

 

「なら猶更、出久さんはいじめっ子にも救い手を差し伸べることができるほどの立派な人ですわね!」

 

「うーん…それはどうなんだろう?出久が立派なのは確かだけど、爆豪を助けようとしたのは考えてるより体が動いたって言っていた」

 

爆豪が友達ではなくいじめっ子だと聞いた八百万はそんな相手に助けに行く出久に対しての評価が高くなった。

そんな八百万に茜は立派なのは否定せず、出久から聞いていた助けに行った理由は体が勝手動いたことを話した。茜的には誤解されたままでもよかったのだが、八百万の性格的に出久と出会った時に話して出久が反応に困るのは容易に想像できたので情報共有しておいたのだ。

 

「やはり、彼はヒーローとしても素質はありますわね。……個性が現れてくださればいいのですが」

 

(実はNo.1ヒーローから個性を渡されてます…とはいえないよね。おじさんからも釘刺されているし)

 

茜から出久が助けに入った理由を聞いてなお、彼の評価が変わらずヒーローになる素質があると称賛する。ただ、”個性”社会である現代ため無個性である点に関して懸念していた。

実はNo.1にヒーローのオールマイトから個性譲渡のことを八百万に話たかった茜だが、ワン・フォー・オールについてはオールマイトから念入りに話さないように言われているので話すことができなかった。

とはいえ、出久から『個性が発現した』と周りに言うだろうから今は言わなくっていいと茜はすぐに考え、話題を変えることにした。

 

「そ、そういえば百ちゃんは来年、どの高校受けるとかもう決めている?」

 

「ええ、勿論雄英のヒーロー科ですわ!ヒーローを目指す者、憧れの最高峰の養成学校を目指すのは当然ですわ!茜さんもそうですわよね?」

 

「私は……ちょっと迷っているかなぁ……目立つの嫌だし」

 

お互いに中学三年であり、そろそろ受験のことを考えないといけないために茜はなんとなく話題として挙げたが、八百万は高揚した様子で雄英高校に受験することを話して、茜も受けるかどうか聞いてきた。

八百万のテンションに少し引きつつ、茜はまだ雄英に受験することを決めかねていた。

出久と一緒の高校は良いと思っているが雄英とは言えば『雄英体育祭』など目立つものなどが多いため入ったら王族であることや自分の強個性により隠れて過ごすということができないため悩み所であった。

茜の話を聞いて八百万はテンションが高いまま彼女の手を握る。

 

「そんなのもったいないですわ、茜さん!あなたの実力なら受かること間違いありませんわ!」

 

「私、茜さん、出久さんの3人で雄英を受かってPlus Ultra!!(プルス ウルトラ)!!更に向こうへいきましょう!!!」

 

(そ、そんなこと言われたら断れないよ……でも、これで雄英に行っても百ちゃんに誘われたとか言い訳できるよね?出久のことを茶化されたくないし)

 

ハイテンション八百万は茜の手を握ったまま上に上げては、雄英の校訓のPlus Ultra!!(プルス ウルトラ)(更に向こうへ)を叫んで、自分と茜と出久を入れた3人で雄英に行くことを勝手に宣言していた。

八百万のテンションについて行けない茜は困っていたが、これで彼女に誘われたからという言い訳をすることができたと少し安堵する茜であった。

 

 

その後、落ち着いた八百万がテンションが上がっていたためとはいえ、勝手に宣言したことを茜に深く謝ったのは言うまでもない。




ヤオモモちゃんのキャラ崩壊は気にしないでください。
作者は彼女のことが好きで茜と知り合いにしたくこのような設定になりました。
百ちゃんの家はかなりの金持ちぽいのでありえると思いまして。
友達の一人として書いていく予定なので出番は多いと思っています。

描きたいことまとめていたら長くなってしまって申し訳ない。

あと次の投稿は櫻田岬の能力名の変更の要望が多いので活動報告にて彼女の能力名の変更案を募集しています。
次の投稿はそれが決定してからしようと思っていますので協力お願いします。
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