入試前日。
出久とオールマイトと茜は、受験前のワン・フォー・オールの出力の調整を行っていた。
場所は出久によってすっかり綺麗になった海浜公園で。そこはゴミが溢れていた頃がかなり昔だったように別物ようにきれいになっていた。これは出久1人が行って綺麗にしたものである。
「ふむ。フルカウル・最大30%、部分強化・最大40%と言ったところか…」
「………はぁ、はぁ。」
「どうですか?おじさん?」
心配する茜の言葉にオールマイトは考えていた。
正直な所、緑谷出久という少年の見積もりは少し謝っていたかもしれない。フルカウル・最大25%、部分強化・最大35%程度と予想していた。
出久はオールマイトの予想よりも少し上回っていたのである。
それでもオールマイトの笑みは崩れなかった。
出久の予想外の成長は彼にとって嬉しい誤算であったからだ。
「HAHAHA!流石だ…本当に君は
「出久……」
オールマイトはマッスルフォームになり、緑谷出久にハグをした。
出久は嬉しそうなオールマイトと茜を見て、様々な思い出が溢れてきた。
「いえ、僕一人だけじゃここまでやってこれませんでした…いろんな人たちが僕を支えてくれたからここまでこれたんです…」
そして涙を浮かべながら
「僕は、本当に……恵まれてる」
そう呟いた。
オールマイトをそんな出久を見て
(おいおい、何を言っているんだ。これら全ては……キミが勝ち取った"力"だぜ?)
そんな彼にオールマイトはハンカチを手渡した。
その姿を見ていた茜はもらい泣きのように目に涙を浮かべた。
彼女はそんな出久が今後も報われていくのを心から祈った。
▼▼▼▼
そして、入試当日。
今日出久達は”雄英”一般入試実技試験に挑むために試験会場に来ていた。
「ここが雄英……って茜ちゃん、僕の後ろに隠れるのはやめよう?」
「だ、だって…知らない人ばっかりだもん」
(この10か月、茜ちゃんも変われたかなって思ったのになぁ……遥くんと岬ちゃんは先に行っちゃったみたいだし…)
さっそく人見知り&恥ずかしさが発揮して出久の後ろに茜は隠れていた。
流石に出久も少し引いていた。ヘドロ事件以降、少しは昔に戻ったように感じたが茜は内気で人見知りのままであった。とはいえ、自分の力を鍛えるばかりで茜のことを細かく見てやれなかった出久にも責任があるために深くは言わないが。
身内で一緒に受けるつもりの遥と岬はすでに試験会場に行ってしまって茜が頼る相手が出久しかいないというのが現状であった。
「どけデク!!」
後ろから罵倒が聞こえて振り向くと案の定、爆豪がいた。
「かっちゃん……」
「俺の前に立つな。殺すぞ」
相変わらずの挑発に出久は怯まずに爆豪を見る。
茜の方はムッとしていたが出久が何か言いたさげなので黙っていた。
そして出久は爆豪の方へ歩き出す。
「かっちゃん」
「どけって言ってんだろ…」
「僕は君を超えて見せる」
「!」
近づいてきた出久の言葉に衝撃を受けて言葉を失う爆豪。近くにいた茜も出久がそんな行動するなんて思っていなかったのか同じように言葉を失っていた。
「お互いに頑張ろう」
爆豪は変わらない形相で出久のことをスルーして前に歩き出す。
反応は予想していたので出久は爆豪に特に何も言わなかった。
あの日以来、爆豪は出久に何もしてこなかった。その心境は出久や茜にはわかりかねるものであった。
「出久、あの爆豪によく啖呵切ったね。私、本当に驚いちゃった」
「うん…今までの自分じゃないって示したかったんだ」
「出久……」
成長した出久の言葉に茜は彼の成長を感じて喜ばしく思うが自分が知っている彼がいなくなってしまうことも寂しくとも思ってしまう。
「お二人さん、朝から熱いねー」
そんな2人に後ろから声を掛ける人物がいた。
振り返りその相手を見ると茜は笑みがこぼれる。
「あっ、花蓮。おはよう」
「おはよう、鮎ヶ瀬さん」
「2人ともおはよう。爆豪に啖呵を切るのはいいけど、まずは受からないと話にならないよ」
2人があいさつしたのは茜の幼馴染の鮎ヶ瀬花蓮だった。
数日前に本人の口から雄英のヒーロー科に受験すると2人は聞いたばかりだった。
10か月前は普通の学校に受験するつもりだったが、2人の仲が心配になり、雄英に受験に受けることを決めたのだった。ちなみにもう1人の茜の友達の白銀杏は普通の高校に受験しに行った。
花蓮自体はあまりヒーローに興味がないのだが、2人がヒーロー科に入るので自分もヒーロー科に入った方が色々とサポートできると思ってヒーロー科を2人と共に受験するのであった。
ちなみに花蓮の目的の出久と茜は、花蓮が雄英のヒーロー科に受験することを不思議がっていたが、茜は上手くいけば花蓮と同じクラスになることを期待して、出久は茜の知り合いがいれば茜の不安を軽減できるのではとそれぞれ花蓮がいるメリットを優先しているので疑問は頭から消えていった。
「そうだね。今は試験会場に――――」
次の瞬間、出久は近況のあまり足をもつれさせて倒れてしまう。
(――――頑張ろうとして、これだよ!!!)
後悔しながら倒れる覚悟で衝撃を待っていたが、それは永遠に来なかった。
それはなぜかって?出久は宙に浮いていたからだ。
「浮いてる!?」
驚く出久の隣に女の子が隣に立っていた。
その子は赤いほっぺたとショートボブにした茶髪の子だった。
「大丈夫?」
出久に心配してくれている女の子はそう言ってゆっくり立たせる。
「私の"個性"。ごめんね、勝手に。でも転んじゃったら縁起悪いもんね」
「た、助かったよ。ありがとう」
「やっぱり緊張するよねぇ」
「うん。色々背負ったものがあるから緊張しちゃって」
「分かる。私も背負っているものがあるから。お互いに頑張ろう!!」
そう言って、少女は行ってしまう。
出久はそれを見ながらいい子だなぁ…としみじみ思いながら彼女を見送った。
「むー……」
「早速ライバル登場といったところ?」
「ら、ライバルってなに!?べ、別に私なら同じように助けられたとか思っていないし!」
(思っていたんだ……でもこれなら3人とも受かっていたら2人の中の進展にいい刺激になりそうね)
むくれている茜を見て、珍しく表情だと思った花蓮は彼女の恋心を焚きつけようとする。
彼女は動揺しながら嫉妬心を抱いているのを見て、花蓮はもし3人とも受かったらさっきの少女が、出久と茜の恋路にいい刺激を与えるではないかと思っていた。
受かればの話だが。
▼▼▼▼
『今日は俺のライヴにようこそー!! エヴィバディセイヘイ!!』
誰も反応せずにシーンと静まり返っている説明会場。多くの受験者が雄英の大講堂に集まっていた。ちなみに席は爆豪、出久、茜、花蓮の順番で座っていた。遥と岬は別の場所に座っているのが確認できていた。
『こいつぁシヴィー!! 受験生のリスナー! 実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!! アーユーレディ?』
またも誰もが反応なしで会場は静かのままでプレゼントのマイクの話は滑っていた。
「ラジオ毎週聞いてるよ。感激だなぁ…」
そんな中、出久だけは一人で生の本物のボイスヒーロー【プレゼント・マイク】を見れて感激していた。爆豪には「うるせぇ」と吐き捨てられたが。
そしてプレゼント・マイクの説明で分かった試験のルールは、
1:制限時間10分の間に、市街地を模した演習場で仮想
2:仮想
3:他人への妨害などアンチヒーローな行為はご法度。
4:アイテムの持ち込みは自由。
…と事前にネットなどで情報収集したのと同じような内容であった。
「質問、よろしいでしょうか!」
そこで声を上げたのは眼鏡を掛けた真面目そうな少年だった
「―――プリントには四種のヴィランが記載されております! 誤載であれば日本最高峰たる雄英において恥ずべき痴態!! 我々受験者は規範となるヒーローのご指導を求めてこの場に座しているのです!!」
言われて出久達はプリントを見ると確かに4種類の
「―――ついでにそこの縮れ毛の君!」
眼鏡の少年は出久の方を指差して言った。自分に言われたのに気が付かずに最初は困惑する出久だったがすぐに自分のことだと気が付いた。
「先程からボソボソと………気が散る!!物見遊山のつもりなら即刻
「すみません………」
クスクス。クスクス…と出久はそんな風に周りから笑われてしまう。
それを見て、茜は今でも眼鏡の少年に突っかかりそうな勢いだったが花蓮が必死に止めていた。
『オーケー、オーケー。受験番号7111君ナイスなお便りサンキューな!4種目のヴィランは0ポイント!そいつはいわばお邪魔虫。各会場に1体、所狭しと大暴れしている『ギミック』よ。倒せないことはないが倒しても意味はない。リスナーにはうまく避けることをお薦めするぜ!』
「有難うございます!失礼致しました!!」
眼鏡の少年は礼儀正しく礼を言って席をついた。
出久は話を聞きながら0ポイントについて引っかかっていた。いくらポイントが入らないとしても無差別に暴れる怪物を"ヒーロー"として放っておいていいのか?と――――
『俺からは以上だ! 最後にリスナーへ我が校、校訓をプレゼントしよう! ―――かの英雄ナポレオン・ボナパルトは言った『真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者』と!!』
―――Plus Ultra《プルスウルトラ》〈更に向こうへ〉!!』
『それでは皆、良い受難を!』
出久はその言葉聞いて気持ちが高ぶった。
このために
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茜side
(うううっ…緊張するなぁ……しかも知っている人が誰もいないよぉ……)
茜は途中で事前に言われていた動きやすい服---ジャージに着替えて、 実技試験の会場の模擬市街地にいた。
200人くらいの他の受験者は敷地内に街があることに感嘆の声を漏らしていた。
スタート地点では受験生が各々の個性に合わせた装備なんかをしちゃったりして、自信に満ちた表情をしている。
そんな中で茜はガチガチの緊張をしていた。
(違う高校の遥か岬のどっちかは一緒の会場になると思ったのに!…辺りを見回してもいないし…私、1人だけで試験にやらないといないの……?)
今の試験会場に行く前に出久や花蓮に涙目になりながらも助けを求めていたが、2人共『雄英が決めたことたがら仕方がない』『これを機に少しでも人見知りを直した方がいい』と言ってきて茜は益々弱気になってしまった。
ところでミナ、試験に集中しすぎているためか誰も王女の茜のことに気が付いていない様子であった。茜にとっては不幸中の幸いである。
『ハイ。スタート!』
「えっ」
いきなりのスタートの合図に茜は思わず素っ頓狂な声を出す。
『どうしたあ!?実戦じゃカウントなんざねえんだよ!!走れ走れぇ!!賽は投げられてんぞ!!?』
プレゼントマイクの声で受験者達はやっとスタートアイズを知らされたことに気が付き、急いで模擬市街地に向かって行った。茜も一歩遅れて向かう。
(一歩遅れた~~~!!早くしないと
心の中で慌てながら茜は模擬市街地を歩きながら必死に仮想
そしてビルの角に至ると仮想
「標的捕捉!! ブッ殺―」
「えい!」
仮想
あっさり倒せたことに茜は少し唖然とするが、すぐに1Pを手に入れたことを実感する。
「標的捕捉!!」
「標的捕捉!!」
「標的捕捉!!」
すると何かしらの反応を察知したのだろう。近くに潜んでいた3体の仮想
「遅い!」
茜はさっき倒した仮想
そしてすぐさま近くの仮想
(よし!思ったより簡単に倒せた!これならいける!)
仮想
そうしていると次々と仮想
茜は向かって来る仮想
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
彼女の暴れぷりにより仮想
「よし!次は――」
一呼吸を置いて、新たなる敵を探して周りを見回すと1人の男が6体の仮想
「…ヒーローであるもの困っている人を助けるのは当たり前」
自分を鼓舞するように言葉を呟きながら、茜は個性を使って男の所まですっ飛んで行き、仮想
そして間を置かずに同じように繰り返し。周りの仮想
「大丈夫?周りの敵を倒しちゃったけど迷惑だった?」
「い、いや…あのままだったやられていたぜ。助かったぜ、ありがとうな」
「どういたしまして。私はこれで―――」
「その前にあんたの名前を教えてくれよ!俺は鉄哲徹鐵(てつてつ てつてつ)。アンタは?」
「え、あっ、うーん……茜」
仮想
せめて反抗心か苗字を言わなかったのは賢明であったかもしれない。
「そうか、茜か。お互いに頑張って受かろうぜ!」
「う、うん…」
(あれ?私が櫻田茜って、気が付いていない?)
鉄哲は茜の名前を聞いても特に驚いた反応をしなかった。彼女は少し拍子抜けをしたが同時に安堵をした。
試験中に『櫻田茜』と知られたら大騒ぎになるし、目立ちたくない茜からしたら気が付かなくってよかったと思っている。
鉄哲の言葉を聞いて安心した後に直ぐにその場を離れた。
そして残り時間が6分近くになり、茜は個性を全開にして、市街地を駆け巡り仮想
途中で戦闘系ではない個性を持っていて苦戦している受験生を見かけたらついつい手助けしてしまい、個性で強化した石や町中にあるものを投げてのサポートや仮想
を触っては重力で負荷を与えて動けなくしたりしていた。
(…いくら同じ受験者だからって困っている人がいたら放っておけないよね!……今更だけど、こういうのって問題にならないよね?妨害じゃないし……)
何人か人を助けてから茜はもしかしたらまずいことをしたんじゃないと思い始めたが、助けることを禁止させられていたわけないのではないので自分の中ではセーフという結論を出した。
そんなに気にするなら最初からやらなきゃいいのに…と思うがお人好して正義感が強い茜はついつい手を差し伸べしてしまう。彼女は根っこからヒーロー体質なのだ。
そうこうしている間に制限時間は残り2分を切り始めた頃…試験会場に変化が起きた。ビル並の大きさをした仮想
「なんだよ、あれ!?あんなのアリかよ!!?」
「あのデカさは、普通じゃねぇ!!」
「あれって0Pなんだろう!?だったら無理に戦う必要はねぇ!!」
その巨体を恐れだして受験者たちは散り散りに逃げ出す。茜も逃げ出そうと走り出そうとしていた時に巨大仮想
「お、おい! 何やってんだ!?」
「馬鹿野郎!あんな奴、ほっとけよ!今は逃げることが大事だ!!」
「でも、彼女どこかで見たことが……」
他の受験者は彼女が自殺志願者のような眼で見てロクに顔も確認せずに逃げ出す。彼らは気が付いていない。少女が巨大仮想
「大丈夫?」
「……申し訳ありま――――あ、あなたは!?」
「?私の顔に何かついて――――」
茜は少女に声を掛けながら自分の個性で瓦礫を浮かせて撤去していた。
茨の少女は茜に謝ろうとするが彼女の顔を見た瞬間、口をあんぐりさせていた。
その姿を見た茜は疑問に思い彼女に尋ねようとするが――巨大仮想
「マジかよ……雄英で死人がでるなんて……」
「おいおいおい!スプラッター映画みたいなグロ死体はごめんだぜ!?」
「危険だと聞いていたけど…実際に死人がでるなんて聞いていないよ!!」
「待て!あそこを見ろ!」
巨大仮想
だが、受験者の1人が声を上げて指をさす。みんながその場所を見ると巨大仮想
「怪我はない?」
「…はい。貴方様のおかげで清浄な体のままです」
茜は少女の怪我はないかと問うと少し変わった言い方で無事だということがわかった。
それを聞いて茜はいまだに動きを止めない巨大仮想
「それならよかった。…それで悪いけど、これからあのロボット倒すからそのまま捕まって貰ってていい?少なくても下に降ろすよりも安全だから」
「えっ……私はあなたに命を助けられた身、あなたに命を捧げますわ」
「そこまで言われると困るけれど……それじゃあ、いくよ!しっかり捕まっていてね!! 」
「は、はい!」
茨の少女の重い返答に若干引いてしまうがすぐに気持ちを入れ替えて重力をコントロールして巨大仮想
そして――――
「だあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」
個性によって出量大の重力を追加されたかかと落としを巨大仮想
喰らった瞬間、足を落としたとこからヒビが拡散していき、十数秒後に巨大仮想
それを確認した茜は地面まで下りて来て、茨髪の少女を自分の腕から降ろす。
「もう大丈夫。残り時間がどれだけあるかは知らないけど、試験頑張ろう!」
「!ああ…まるで太陽ごとくのその笑顔……
「えっ、それってどういう――――「茜―――!!!」
茨の少女の意味深な発言に尋ねようとした時に茜は後ろから自分を呼ぶ声を聞こえて振り向く。
「鉄哲くん!?」
「お前スゲーじゃねーか!あの巨大ロボを一撃で破壊しちまうなんて!!」
「そ、そうかな……」
そこには先ほどの少年の鉄哲がいた未だに自分の正体に気が付かずに純粋に評価して接していた。
それ反応に茜は騙しているようで申し訳なくなった。
「凄い個性だったな。あんな強個性かなり珍しいぞ」
「プロヒーローでもあの巨大ロボを破壊するのは難しいんじゃないか?」
「でもどっかで見たことがある顔だな……」
「今、あの男…『茜』って言っていなかったか?」
(ひぃ~~~!!頼むから気が付かないで~~!!!)
鉄哲が大声で名前を読んだせいで周りが茜について気が付き始めていた。
大騒ぎで持ち上げられたくない茜からしたらこのまま気が付かずに試験が終わるのを待っていたいのだ。
『試験終了―――!!!』
試験終了の声が試験会場に響いた。
それを聞いて茜はほっとした。
ギリギリだが自分の正体を気が付かずに試験が終わるのだから。
「本当に助かりました。あなたは慈愛の神」
「あはははっ……そうだ、あなたに聞きたいことが――「私の名前は塩崎茨(しおざき いばら)と申します」
「は、はぁ……」
勝手に人のことを好きなように読んだかと思ったらいきなり自己紹介というかなりのマイペースな行動する茨に茜はすっかり唖然としていた。
気が付くと茨は茜の耳元まで近づく。
「運命の導きがありましたらまた会いましょう。櫻田茜様」
「ちょ、ちょっと!」
茜のフルネームをなぜか本人に言って茨はその場をささっと立ち去る。
自分のフルネームを知っているのはまだいい。だが、明らかに前から自分を知っているような態度をとる茨に茜は詳しく話を聞きたかったが彼女はもういなかった。
(いったい誰なの…?)
試験が無事に終わったというのに茜の心にはもやもやが残ったままであった。
▼▼▼▼
出久side
「敷地内にこんなんがいくつもあんのか」
「雄英スゲー!!」
「なんかあったらここで住めるな!」
(みんな凄いな…緊張してないのか?)
試験会場に付いた出久は周りが全然、緊張せずに余裕にあるのに少し疑問に思いつつ、周りを見ると今朝に自分を助けてくれた少女を見つけて声を掛けようと考えるが――――。
(……いや、やめよう。見たら精神統一しているぽいし、邪魔したら悪いよな……彼女を見習って僕も精神統一しよう)
彼女の様子を見た出久は声を掛けることをやめた出久は彼女に倣って精神統一しようと緊張をほぐす為に深呼吸を繰り返して精神を落ち着かせて…
「あいつ校門前でコケそうになってたヤツだよな」
「注意されて畏縮しちゃったヤツ」
「少なくとも1人はライバル減ったんじゃね?」
(……ラッキーと思われているよ)
出久を見かけた他の受験者が彼にワザと聞こえる声でしゃべりだす。
これも受験に受かるために精神妨害…というより素で思っている奴もいそうな口ぶりであった。
「君達、彼に聞こえるようにワザと言ったな?彼は今精神を落ち着かせている最中だ。妨害はやめたまえ」
「「「ぐうっ……」」」
そんな時、説明会場で出久を叱った眼鏡の真面目の男が現れて、出久へ妨害行為を指摘したうえで彼らを叱った。
出久に対して色々言ってきたやつは図星を突かれたのかうめき声を発する。
(さっきの人…怖い人だと思ったけど、単に真面目なんだなぁ)
それを見て、彼は眼鏡の少年の印象を変えた。よく考えてみると説明会でも自分がうるさかったから注意しただけで悪気はなかったんだろうと気が付く。
とりあえず、彼のおかけで少しは気分が落ち着いた。
あと試験の会酢の合図を待つだけ――――
「ハイ、スタートー!」
プレゼント・マイクの声に反応して、誰よりも早くスタートする事が出来た出久は、ワン・フォー・オール--フルカウル20%、敵の撃破と探索に向かった。
「標的捕そ―」
「はぁっ!」
早速遭遇した1Pの仮想
「僕の狙った獲物を先に倒すなんて凄いじゃない…でも
(ごめん…その台詞、コミックだと再会するフラグだよ……)
キラキラした感じの少年は悔しい顔をしながら捨て台詞を言ってその場を去っていった。
本当は自分が仮想
出久は彼の言葉を聞きながらフラグのようなものを感じながら、試験に意識を戻す。
「標的捕捉!!」
「標的捕捉!!」
「標的捕捉!!」
(他の仮想
出久の周りには3体の仮想
もう弱虫のデクではない。彼はヒーローとして目指している立派な少年に変わっていった。
それからどれくらいたったのだろうか…出久は手に入れたポイントが40ポイントだと認識しながら更に仮想
探し回る途中で身長190cm以上の異形型の腕が6本の男が後ろから仮想
「お前は確かヘドロ事件の……そうか俺を助けてくれたのか、ありがとう」
「いや、大したことはしていないよ」
6本腕の男は出久がヘドロ事件にテレビに映っていた少年だと気が付いた。
その後、出久が自分に助けてくれことに礼をいう。
出久は何でもないように平然な態度をとる。人を助けることは出久にとって当たり前のことだった。
「そういわれても俺の気が済まない。代わりに
「えっ、そんなこと僕に教えていいの!?ポイント稼ぐなら教えないほうがいいんじゃ……」
「気にするな。助かったお礼だ。それに俺は事前にいくつか
「ありがとう。君も試験頑張ってね!!」
助けてくれたお礼だと六本腕の男が出久に仮想
出久は男が自分に仮想
「あれが…茜様の数少ない男友達の緑谷出久か……」
六本腕の男は姿が見えなくなっていく出久を見てそうつぶやいた。
ここまで出久は手と足をワン・フォー・オールで強化して倒していた。
本来はロボを倒すために第二王女、櫻田奏に作って貰ったものを使うつもりだったが
その代わりに出久はもう一つ、自分の”個性”を補助のための物を貰っていた。……ただ、その分、出費が高くついたのはまた別の話。
そうこうして会場の中心あたりに辿り着くとたくさんの受験者が仮想
そこにはこけそうになった出久を助けた女の子がいた。
「ふー…28ポイント……」
(あっ、僕を浮かせてくれた人だ。辛そうだけど大丈夫かな?)
それと先ほどの説明会で出久を入したメガネの男もいた。
「45ポイント!!」
(うおっ!抜かれてる!何ポイントで合格かはわからないけど他の受験者より高い点数を取らないと…)
周りを見ると仮想
出久は仮想
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!逃げろ!!」
「あんなにでかいとか聞いてねぇよぉ!」
「倒しても意味がないなら逃げるべきだ。戦術的に正しいだろう!」
迫ってくる巨体を見て、一目散に逃げていく受験者達。
誰かが言ったように戦術的にこの仮想
「いったぁ………」
その時、出久の視線には瓦礫で足を挟まれて動けなくなっていた自分を助けてくれた少女がいた。
そしてすぐそばには巨大仮想
『でも転んじゃったら縁起悪いもんね』
脳に彼女が助けてくれた記憶がフラッシュバックする。
その時には出久は既に彼女を助けるために巨大仮想
周りからは止める声が聞こえるがそんなものは無視して、ワン・フォー・オール・フルカウル20%を発動し、高く飛ぶ。
(奏さん、今使わせてもらいます!)
出久は右腕に茜の姉の奏に渡されたブレスレットにあるボタンを触り、起動させる。
そうするとブレスレットが形を変えて右腕を覆う銀色の手甲に変わっていく。
『これはあなたが”個性”の強い力で体がダメージを受けるのを和らげるための手甲よ。あなたの個性のフルパワーはどれだけあるか不明だから耐久度をどれくらいにすれば分からなかったけど、できる限り高いのにしておいたわ』
この手甲は自分の個性のパワーが強く、完全に操れていないことを聞いた奏が彼を心配して作りだしたものである。
奏は出久に対してキツイ態度を出すことが度々あるがなんだかんだ彼を気にかけている。その証拠に彼のヴィジランテの活動を知ると呆れながらも手伝ってくれたぐらいである。
櫻田奏の個性『
ただし、生成されたものの価値に等しい金額が自動的に貯金から引かれていく。
明確に欲しいと思ったときに生成され、後からキャンセル不可能。彼女の貯金額を超える物体を生成した場合、担保として現物資産で支払ってしまう。
飛んで巨大仮想
そして彼女の個性で作られた手甲に包まれた右手で目の前の巨大仮想
ワン・フォー・オール……100%!!
「
彼の渾身の一撃は巨大仮想
同じように彼の右手にはめてあった手甲はさっきの一撃で同じようにヒビ割れが発生して粉々になってしまった。しかも完全に衝撃を防げたわけではなく、人差し指にダメージが来てしまって痛みを感じていた。
(くそっ…なんとかあのロボットは破壊できたけど、この後を全然考えていなかった!!しかも右手は完全にダメージを防げなかったからかなり痛い!いや、そんなことよりもいまはどうやって着地するかだ!この高さからだとフルカウルを今出せる全力で体を強化してもダメージはくるだろうし、何かに捕まって減速しようとしても近くのビルから結構距離があるし……)ブツブツブツブツブツ
出久は落ちていき中で色々試行して考えていたが具体的な答えは出ていなかった。
そして地面が見えてきたところで……
「くそっ!こうなったら一か八かで殴って落ちる衝撃を減らすしか…」
出久は右腕を強化して地面に向けて殴る態勢を構えるが……!
バチンッ!
頬に鋭い痛みが襲い掛かる。
それに気を取られ、地面にそのまま激突!!……はしなかった。
なぜなら朝のように出久は”浮いていた”
周りを見るとさっきの機械ヴィランの破片が浮いており、そこにさっきの彼女がいた。どうやらさっきの痛みは彼女によるビンタらしかった。
「……解、除」
彼女の一声で、浮遊は解除され出久は地面に激突するのを避けられた。
(はぁ~~~~助かった!!!……いや、助けられたんだ。それよりもあの子は大丈夫か?見たところ蹲っているみたいだけど…身体には怪我はなさそうだな…よかった)
出久は一息して落ち着いた。
だが、彼女の様子が少し心配になったので近づいて様子を見に行こうとしたが――
『試験・終了〜!!!』
そこで、試験は終わった。
結局、40ポイントしかとれなかった。もっとたくさんポイントを取って安全範囲内に入りたかったが出久は仕方がない。後悔はしていない。
その後、出久は試験中にあった六本腕の男に手を貸してもらい立ち上がり、高齢で雄英の看護教諭の『リカバリーガール』の個性により痛み感じている人差し指を治してもらった。
出久は助けてくれた少女に一言お礼を言いたかったが、単価に運ばれてできなかった。
入試試験終了。
コミック見直したら障子くんがいたので登場させました。
出久くんが映画のフルガントレットの試作品みたいなもんです。
作中で受験者達が茜に気が付かないのは不自然だと思う人もいるかもしれませんが、皆さん受験に集中していましたし、茜様達が雄英を受ける情報を知らなかったということでお願いします。