実技試験から1週間が経って、出久は不安でいっぱいだった。
筆記は自己採点でぎりぎり合格点を超えていたのだが、肝心の実技試験に合格したのかが問題だった。
必死に倒していたとはいえ、出久が頭の中で計算した中では40ポイントでそれが合格ラインに入っているのか分からなかったのである。
しかも試験日以降からオールマイトと連絡が取れなくってなっているのだ。いくら忙しいとしても一言でさえ返事が返ってこなかった……。
放心状態になり始めて、つい夕食の焼き魚と微笑み合うほどである。
不安すぎて茜に電話したがあちらも不安で電話の越しで弱音を吐いていたぐらいであった。
「0P巨大
「落ち着いて僕も倒しちゃったから!?」
それから出久が彼女を宥めるのが大変で落ち着かせるのに数十分かかったぐらいである。
流石に0Pを倒したらマイナスになるっていうことはないだろう…多分。
それに僕らは人を助けたという人として正しいことをしたんだ。間違ったことはしていない。と電話越しで茜にもそう伝えた。
それで八百万や花蓮に出久が試験の時を電話すると……
「流石お二人ですわ!あの
「相変わらず似た者同士だね、あんた達」
…とそれぞれの感想が返ってきた。
八百万はオーバーに喜ぶことはいつものことだから出久は乾いた笑いする程度だったが、花蓮からの台詞はなんか含みがある言い方でその場で「どういう意味?」と出久が聞き返すが「そのまんまの意味」とはぐらかされてしまった。
そんな感じで心配が募りつつ、いつ合格発表が来るか落ち着かずにいた時----
「出いずいずく、出久!!来た!! 来てた!! ―――来てたよ!!」
出かけたはずの母が雄英高等学校の封筒を持って戻ってきた。
その封筒は合格発表の結果が入ったもので間違いなかった。
▼▼▼▼
出久は合格通知の封筒を開けた。
そこには一枚のプリントと、機械が入っていた。
その機械から映像が出されて、そこに映っていたのは……
『私が、投映されたァ!!』
「うわぁ!」
そこに映像として現れたのは黄色いスーツを着こなすオールマイトの姿だった。
『諸々、手続きに時間がかかって連絡取れなくってね。いやすまない!!』
(もろもろの手続き?というより、何でオールマイトがここに!?)
『実は私がこの街に来たのは他でもない。雄英に勤めることになったからなんだ』
「オールマイトが雄英に!?」
あのオールマイトが雄英の、"教師"になるという事実に驚愕する出久を他所に、映像は続いていく。
『では、よく聞いてくれ少年…筆記試験ではギリギリ合格ラインを超えるぐらいだった。そして実技なんだが………ええ! 早くしてくれ!? いや、でも彼には話さなきゃならないことが…後がつかえてる!?……わかった。できるだけ早くするから、そこをなんとか……』
(もしかして受験者一人一人にしているのか!?マッスルフォームを保たないといけないわけだし、大丈夫かなぁ……)
受験一人一人に映像で合格発表をオールマイトがしていると映像を取っているスタッフとの会話でわかり、出久はオールマイトの体力は大丈夫なのかと不安を持っていた。
『少年、合格を告げる前にこのVTRをどうぞ!』
オールマイトは試験の結果を告げる前にとあるVTRが再生し、出久に見せた。
そこには、セーラー服を来た女の子。2度、個性によって出久を助け少女だった。
その少女が、プレゼントマイクの所に来ていた。
『分かりますか………? っと~~~地味目の~~~』
彼女は出久のことを話しているようだった。
『その人に
映像はそのまま、オールマイトの声がする。
『………覚えているかい。ヘドロ事件の時だ。私が動かされたのは無個性の君の勇気。―――個性を得て尚、君の行動は人を動かした!!』
『あの人、助けてくれたんです!!』
『先の入試、見ていたのは
少女とオールマイトの言葉を聞いて、出久は椅子から立ち上がっていたる
『分けらんねぇし、そもそも分ける必要がないと思うぜ、女子リスナー!!』
プレゼントマイクは少女の頭をポンと撫でる。
「
出久は武者震いが止まらなかった。自分がやってきたことが間違っていないことが証明されていったからだ。
「綺麗事!?上等さ!! 命を賭して綺麗事を実践するお仕事だ!!
『緑谷出久70pt!! ついでに麗日お茶子45pt!!』
「む…むちゃくちゃだよ…」
言葉とは逆に出久の目には涙があふれていた。
今までどんなことしてきても報われてこなかったものが報われたような実感が沸いてきたからだ。
『そういうわけだ、緑谷少年。つまり
『来いよ、緑谷少年!
オールマイトの言葉に出久は涙が零れそうになるが袖で拭く。
「っっはい!!!」
力強く返事をした。
▼▼▼▼
そして、合格通知開封が届いた翌日の8:00。
オールマイトから連絡を受けて海浜公園へ来た出久だった…。
「オー…八木さん!!」
「待っていたよ、緑谷少年!!」
出久はつい喜びのあまりにオールマイトの名前を呼びそうになったが、周りには自分達以外の他の人がいたために慌てて、事前にオールマイトと決めていた八木さん(オールマイトのトゥルースの姿時の呼び方)と呼び直した。
ちなみにオールマイトの本名は『八木俊典(やぎ としのり)』で、そのことを知った出久は『オールマイト…日本人だったんだ……』と何やらショックを受けていた。
海浜公園はあれからデートスポットに最適な場所になって人も集まるようになった。
新聞では"綺麗にしたのは一体誰か?"という記事が取り上げられていたこともあった。
茜は出久に『名乗り出ようよ』と提言したが、出久は『誰かに褒められるためにしたわけじゃないよ』と断った。茜は不満そうだったが、出久の頑固さは知っていたのでそれ以上は言わなかった。
「合格おめでとう」
僕とオールマイトはハイタッチをして合格を喜んだ。
「一応、言っておくが学校には君との接点は話していないし私自身、審査もやっていないよ。君、そういうズルを気にするタイプだろ?」
「お気遣い、ありがとうございます…」
自分の性格を見抜きつつ、配慮してくれたオールマイトに出久は素直に感謝した。
出久はたくさん話したいことがあったがとりあえずに一番気になっていたことを話題に出すことにした。
「それにしてもオールマイトが雄英の先生だなんて驚いちゃいました。だからこっちに来てたんですね……だってオールマイトの事務所は東京都港区六本木6-12――「やめなさい」
つい熱くなってしまってオールマイトの事務所の住所まで言おうとしていた出久をオールマイトは呆れ気味に止めた。
「学校側から発表されるまで他言は出来なかったからね。後継を探していた折に雄英側か偶々、ご依頼があったのさ」
―――『元々後継は探していたのだ』
出久はヘドロ事件のあったあの日の言葉を思い出した。
(本当は生徒の中から選ぶ予定だったんだ。僕みたいに”無個性”ではなく、
“個性”が溢れる実力者から……)
そう考えると自分が継承者でよかったのかもっと適任の人物がいたのではないだろうか?という気持ちが出てしまう。
「『ワン・フォー・オール』………オールマイトのような力で使えば一振り、二振りで奏さんからもらった手甲を使っても指が壊れました。僕には上手く扱いきれない………」
「それは仕方ない。1年程度で尻尾の生えた人間に『芸みせて』と言っても尻尾をぶんぶんと動かせる程度で細かい芸を見せられるわけがない。例えるなら、尻尾を使って体を浮かせてみろと言ってるようなものさ」
「はぁ………」
「まァ…君がここまでやるとは正直驚いたよ。こっそり明かすが君は実技試験の結果では2位だった。上位に入ると思っていたがここまでやるとはねェ。腹の傷のことやヴィジランテの件といい毎度、驚かせられるよ」
「その件は申し訳ありませんでした……」
オールマイトがヴィジランテに活動について触れた時に出久は申し訳なさそうに謝った。
出久はある日、とうとうオールマイトに自分が今までヴィジランテ名『レッド(警察が付けた。出久は一度も名乗ったことはない)』としてヴィジランテ活動をしていたことを話した。その気になれば隠して通せるものであったが、オールマイトが秘密を自分に話してくれたのに自分だけ秘密を隠したままなど出久にはできなかった。
最悪、『ワン・フォー・オール』の返却や後継者でなくなったとしても後悔はなかった。自分は正しいことをしたと思ったからだ――――。
オールマイトは出久の話を最後まで聞いて、少し考えては彼に『すまない』と謝罪した。
『私達、ヒーローが不甲斐ないばかりに路地裏など見えにくい犯罪に気が付かなく人を危険にさらしてしまったのは事実だ』
『君はそんなヒーローに目に届かない人達を助けたくって
『君の行為はヒーロー公認制度が確立した今の現代社会じゃ私的なヒーロー活動
『だが、君の活動によって救われた人がいたのは事実。私は人助けをしたものが報われないのは間違っていると思っている』
『だから妥協案として、君はもう2度と
オールマイトの提案に出久はすぐに頷いた。
ヴィジランテまたは自警団ともいう彼らはまだヒーロー活動が社会に認められていなかった頃にヒーロー活動した者のことであるが、今では私的にヒーロー活動している者を示していて、少し変わった
出久はオールマイトがまさか自分の功績を受け入れてくれて、それで妥協案を提案してくれるとは思わなく唖然とした。もっと怒られると思っていたから。
『あっ、言っておくけれど君がやったことは危険な行為だからね!”無個性”からやっていると聞いた時は口から血だけじゃなくって心臓も出そうになったよ!!』
その後にオールマイトに叱られて、出久は現実から戻って来れた。
このまま褒められていることが多かったら現実味がなく、唖然しっぱなしだったかもしれない。
ただ、オールマイトの言葉はいつも喀血している人物が言うと冗談抜きで怖いものを感じるためやめて欲しい…と思う出久であった。
そんなことをあって出久はヴィジランテの活動を禁止する代わり御咎めなしであった。
そしてヴィジランテとして出久が活動していた地域のヒーローに裏道などのパトロールをしてもらうように声を掛けておくというアフターケアもしてもらったのだ。流石にこれには出久は感謝するしかなかった。
とはいえ、噂の協力者については「相手に迷惑かけたくない」と1点張りで出久は話さないでいた。
流石に王族に手伝いをしてもらっていたということをオールマイトが知ったら本気で喀血だけではすまないと出久は感じていたからである。
手伝ってもらっていた葵、奏、修に迷惑が掛かるし、王族がヴィジランテ活動をしていたことがバレれば、櫻田家自体が国民からどんな目で見られ酷い事が起きるか…。
出久がヴィジランテ活動をやめる際に〈櫻田家の皆に迷惑かけないように例え、ヴィジランテ活動がバレたとしても櫻田のことは絶対しゃべられない〉と心から決めていた。
例え、罪に囚われたとしても全てを背負いこむつもりだった。
「いや、謝らなくっていい。君のヴィジランテの話を聞いた時に納得したよ。腹の傷の件やヘドロ事件といい君は後先を考えずに人を助けることができる生粋のヒーロー気質だということがよくわかったよ」
「そんな…僕はただ、自分ができることをしているだけですよ……」
「君は本当に謙虚だね…それが君のいいところであり、悪い所でもあるんだが……」
出久の謙虚な態度にオールマイトは一長一短だと感想も口にしながら改善できないものかと少し頭を悩んでいた。
「そういえば、茜くんは?LINEでは『行けたら行きます』と書いてあったんだが…」
「茜ちゃんなら今頃、家族と合格祝いのバーティ―の二日目だと思いますよ。王様の提案で。多分、五日ぐらいはすると思います」
「相変わらずの親バカぷりだね…総くんは……」
ふと、呼んでいたはずの茜が来ないことを気にしたオールマイトは出久に聞くと彼は茜が家で行われているパーティーがあって来れないと伝えた。しかも2日目。
王様であり、茜の父である櫻田総一郎と交流があるオールマイトは彼の相変わらずの親バカプリに若干引いていた。
「仕方がないと思いますけどね。だって、実技試験では1位で主席合格なんて凄いじゃないですか…僕と比べ物にもならない……」
「コラッ!卑屈になるんじゃない。忘れてはいけないが、君も2位で通過しているんだ。焦ることはない。器を鍛えれば鍛える程、力は自在に動かせる―――」
また卑屈になりだした出久を叱りながらオールマイトは落ちていたペットボトルと缶のゴミを拾って手に握りしめて―――
「こんな風にね!!」
マッスルフォームに変わり、ペット缶のゴミはぺちゃんこになった。
「まあ、君は順調に力を付けているから心配は――「待ってアレ、オールマイト!?」「何時の間に!?」やっべ!」
つい、マッスルフォームの姿になって周りの人に見られてしまう。
オールマイトは砂浜逃げるように早足で歩き、出久もその後について行く。
(聖火の如く―――譲渡した火はまだ火種。これから多くの雨風に晒され大きくなっていく)
(そしてこっちはゆっくりと衰え消え入り役目を終える………)
「ううん、シブいね!!」
「?」
オールマイトの急な独り言に出久は首をかしげるのであった。
▼▼▼▼
時は戻り、入学試験終了後の雄英のとある一室にて。そこでは実技試験での様子がモニターに映し出されていて、雄英関連の人達が集まってそれを観戦していた。
「実技総合成績出ました」
1人の教員の声と共に、上位合格者10名の審査結果がスクリーンに映し出され、全員の視線がそれに集中する。
順位 氏名 VILLAN RESCUE 合計
1位 櫻田茜 51 77 128
2位 緑谷出久 40 70 110
3位 爆豪勝己 77 0 77
4位 切島鋭児郎 39 35 74
5位 麗日お茶子 28 45 73
5位 塩崎茨 44 29 73
7位 拳藤一佳 30 40 70
8位 飯田天哉 52 9 61
9位 鉄哲徹鐵 49 10 59
10位 常闇踏陰 47 10 57
結果を見た教師陣からも次々と声が上がり始めた。
「まさか
「2位の少年は不意打ちのスタートにも瞬時に対応しては、仮想
まず注目されていたのは2位の出久だった。
彼の活躍がスクリーンに映し出されるとあちこちから感嘆の声が上がった。
「この緑谷出久は何度見てもすげぇな! あのデカイ奴を一撃粉砕! 最初見た時は思わず
「まるでオールマイトさんのような力でしたね……」
「ねぇ、そろそろ大本命を語らない?」
1人の女性、ミッドナイドの言葉に周りに緊張が走る――――。
なんせ彼女はこの国の王女なのだ。いくらここに王族関連のものがいないとしても下手なことはいえないのは事実だったからだ。
「茜様……ですね。テレビなどで活躍を拝見したことはありましたが、さすが王族だけのことがある。あそこまでの重力個性の使い手は中々いませんよ」
「さすが姫様と言ったところだな。仮想
セメントスとスナイプは実技試験での茜の行動をモニターで見ながら賞賛している。
「僕としては、2人の
「ソシテ、コレダケノ高得点ヲ獲得シタト言ウコトハ、素早イ判断力ト周囲ノ状況ヲ見ル事がデキル広イ視野ヲ持ッテイルトイウコトダ。将来、有望ノ逸材ダ」
雄英教師の13号、エクトプラズムは茜様だけではなく2位の出久に対しても高い評価をしていた。
そんな中、黒髪のロングヘアーの男は黙って茜が映るモニターを見ていた。
(……この雄英に王族が3人も受験し、ヒーロー科の定員がA、B組共に21人になったことを合わせて、最初は七光りかコネでヒーロー科に無条件に合格させるものだと思っていたが…まさか3人ともヒーロー科に一般受験するとはな……)
(3人中、2人は滑り止めで
男からして、櫻田茜という少女は『強個性に恵まれていて後先を考えずに動く』という評価だった。
噂のヘドロ事件からしても彼女はそういう評価を一部の世間からもらっているところもあるため男の評価は的外れともいえないだろう。
(さて、
心の中で愚痴っていると他の教師陣が3位の爆豪に注目し始めていた
3位の爆豪少年に先生方の視線が集まる。
「
「正直、上の2人を見た後だと見劣りしますな…
上の2人の評価が高いためか爆豪に対しての評価はあまり芳しくはなかった。
それから4位以降の受験生の評価も行われつつ、話し合いの時間は過ぎていくのであった……。
今回は試験後の話をまとめて終わります。茜サイドは後々。
あと雄英の関係者の評価のシーンは後々追加したのでなんかおかしかったりしたら連絡ください。調整や最悪消します。