ウマ娘超光速戦記 -TACHYON Transmigration-   作:LN58

117 / 119
第3話   導かれて たまロケとフリースタイル・レース

 

-西暦20XY年07月11日の航星日誌- GAUMA SAIOH

 

 

私には使命がある。WUMA襲来の()()()()()を回避するために、このウマ娘とヒトが共生する21世紀の地球において、タイムパラドックスとなるような宇宙規模の奇跡を引き起こすという壮大なものが。

 

その手段としてウマ娘天国である日本国の国民的スポーツ・エンターテイメント『トゥインクル・シリーズ』の常識を覆す神話を打ち立てなければならない。

 

その目的のためにありとあらゆる可能性を手繰り寄せていくうちに、この私ですら想像がつかなかったような奇跡が次々と6月30日の夏越の大祓・中京茅の輪くぐり・雷鳴のメイクデビューから立て続けに起こるようになっていた。

 

そう、去年の7月に学外でウマ娘に撥ねられて三ヶ月間の意識不明の重体から“斎藤 展望”は目覚め、トレセン学園の新時代に向けて駆け抜けてきた“私”だったが、今では黄金期の記念碑たるエクリプス・フロントの支配者として君臨し、確固たる基盤を得るに至った。

 

そして、たまたま私が中央のトレーナーで都合よく4年間も待つことを選択したウマ娘と運命的な出会いをしたことで、中央競バ『トゥインクル・シリーズ』でタイムパラドックスを起こすことが選択され、

 

2年目:クラシック級での“トリプルクラウン”“トリプルティアラ”“春秋グランプリ”の全てを1年で獲得する“クラシック八冠ウマ娘”という不可能への挑戦がついに始まることになった。

 

ただ、担当ウマ娘との二人三脚はこうして始まったものの、本戦となるクラシックレース開催までまだ1年近くは猶予があり、常勝不敗のスターウマ娘にはつきものである包囲網をいかにして躱すかのヒントを黄金期以前の過渡期に活躍したスターウマ娘たちの戦術や陣営が立てた戦略を読み解いていた。

 

一方、黄金期最終最大最強の“無敗の三冠ウマ娘”ミホノブルボンの担当トレーナーである“驚異の天才”才羽Tの依頼で、3年連続で日本のウマ娘が『凱旋門賞』を制覇できるようにして欲しいとも言われており、国内のことだけじゃなく国外のことにも目を向ける義務が出てきていた。

 

“最初の3年間”を『URAファイナルズ』優勝で締めくくった“サイボーグ”ミホノブルボンが征く“新たな3年間”は本場ヨーロッパからの帰国子女である才羽Tの目標である“世界最強”であり、そのための“最初の3年間”であった。

 

その具体的な目標設定とローテーションを教えられた時、“驚異の天才”才羽Tが影の世界に存在せずに影の支配者(リアル・マスターマインド)が被る皮に選ばれるだけの偉大なる“太陽”であったことを思い出すことになった。

 

なので、私は“皇帝”シンボリルドルフが待ち望んでいた3人の賢人である無名の新人トレーナーの最後を締め括る存在として、最初の賢人であった“魔王”スーパークリークの担当トレーナーであった“ウサギ耳”に薫陶を受けた才羽Tの願いを聞き入れることにしたのだった。

 

そして、同期の天才トレーナーと名門トレーナーに肩を並べるほどの天才だった元甲子園球児の熱血トレーナー:飯守Tも“新たな3年間”を担当ウマ娘:ライスシャワーの願いを叶えるためにファン投票のグランプリレースでの勝利に狙いを絞ることになり、その裏で私の手伝いをして陰ながらウマ娘たちの支えになることを選択していた。

 

 

では、記憶喪失ということで右も左もわからなかった“私”を拾い上げてウマ娘レースのいろはを教えてくれた大恩ある名門トレーナー:桐生院Tのこれからはどうなのだろうか――――――。

 

 

トレセン学園では様々な路線が用意され、新時代を迎えて今までにない選択肢も提示されることになり、最初の担当ウマ娘との大切な“最初の3年間”を二人三脚で走り抜けた新人トレーナーを卒業したばかりの若手トレーナーの眼の前にはいくつもの可能性が栄光となる広大なフロンティアが広がっていることだろう。

 

しかし、時間というものは有限であり、長い人生においてはほんの一瞬に思えるウマ娘の最盛期の根源となる“本格化”にストップを掛けることはできず、広大なフロンティアの彼方に無数に聳え立つ栄光の中から1つを選んで今すぐに進み出さなければ、辿り着く前に担当ウマ娘に掛けられた夢見る魔法は時間切れになってしまうのだ。

 

なので、トレセン学園のトレーナーたるもの、夏という季節を迎える前のシーズン前半最後の日である6月30日:夏越の大祓にシーズン後半からの展望に向けてスタートダッシュを切らねばならないのである。ぐうたらに過ごしていい夏休みなどないのだ。

 

 

――――――そう、夏休みである。世間は陽射しがギラギラの夏休みを迎えようとしている。

 

 

すると、元々『春と秋のファン大感謝祭』で一般開放されることで地元住人に親しまれる府中市最大の観光名所となるトレセン学園だったが、

 

今年度から地域交流館としてファンや父兄たちと会うのが気軽にできる附属施設:エクリプス・フロントがオープンになったことで、トレセン学園の生徒やトレーナー、学園関係者のみならず、一般来訪者も数多く足を運んで交流を大いに深めることになったのだ。

 

つまり、正式リリースが中止になったばかりの『メガドリームサポーター』のVRシミュレーターの代わりにマスコットキャラクターとしてエクリプス・フロントに常駐することになったサポートAI“三女神”とも触れ合う人が自然と増えていくわけであり、今日もまた“三女神”にお参りに来た参拝者が列をなしていた。

 

そして、エクリプス・フロントに構えることで学外の人間との交流の場を設けた新クラブ:ESPRITで大絶賛稼働中の解析機『エクリプスビジョン』のことも口コミで広まっていくことになり、トレセン学園の生徒ではない学外のウマ娘たちも堂々と利用するようにもなっていき、

 

こうして1階のアンテナショップで売り始めたリングバインダーとデコシールが飛ぶように売れて、『メガドリームサポーター』と『エクリプスビジョン』の相乗効果が学外にも波及していることに気づくことになる。

 

そこから先日の中京茅の輪くぐりまでに日本各地を飛び回ったが、それ以前に何度も府中市中を駆け回り、近辺では西は奥多摩、東は中山と巡ってきた日のことを思い出すことになった。

 

 

その時、何かとメジロマックイーンの担当T:和田Tが落ち込んだ時に足が向く多摩川――――――、その対岸にある府中市の南に位置する多摩市のことが気になり始めたのだった。*1

 

 

そもそも、府中市のトレセン学園の附属施設:エクリプス・フロントに足を運んで“三女神”から教えを請う一般来訪者の名簿を確認してみると、圧倒的に多摩市在住のウマ娘が異様に多いのだ。

 

それは調べてみれば当然のことで、古来より武蔵国国府が置かれていた府中市に対し、多摩地域の名を冠している多摩市の成立は意外なことに戦後であり、多摩ニュータウンを代表する東京のベッドタウンとして開発されて全域に住宅街が広がっているのだから。

 

開発が進む多摩ニュータウンを舞台にその一帯の狸が「化学(ばけがく)」を駆使して人間に抵抗を試みる様子を描く“狸の平家物語”というのが高畑勲『平成狸合戦ぽんぽこ』である。

 

なので、日本を代表するベッドタウン:多摩市が府中市の対岸の南に位置するのだから、府中市の名物である中央競バ『トゥインクル・シリーズ』の中心地であるトレセン学園への客足が長期休業期間を迎えるとなれば一挙に増えるのも自然なことだった。

 

事実、過去のトレセン学園において学生寮の建て替えのために多くの生徒の自宅通学が認められていた時期においては多摩市からの通学が最多であり、

 

それ故に多摩市は“中央トレセン学園の裏庭”とも言われており、近場で練習できる運動場が充実しているというのだ。公園面積は多摩市域の11.18%を占め、東京都では圧巻の1位である。

 

更に、1970年代の第二次ベビーブームの影響で1住区に対し小学校:4、中学校:2という都市計画がなされ、その反動で少子化の進行によって統廃合で廃校となった学校が多いわけなのだが、

 

この廃校舎をウマ娘レース関係者が買い取って国民的スポーツ・エンターテイメントの夢の舞台:トレセン学園入学の英才教育を施すレースクラブが開かれることになり、その他にも府中市の真南にある立地の良さを活かした活用法が編み出されていくのだった。

 

 

つまり、夏競バの時期を迎えてトレセン学園ではローカル開催場への出走や夏合宿のために少なくない生徒たちが遠征に行っていることから1日でも早く『エクリプスビジョン』の更なる活用法を整えたことが、結果としてトレセン学園の生徒たちよりも遥かに多い学外のウマ娘たちのためになっていたのだ。

 

 

その呼び水となったのが他ならぬサトノグループが空前絶後の貢献と称して世に送り出そうとしてリリース中止に追い込まれた『メガドリームサポーター』から飛び出してきたサポートAI“三女神”であり、

 

自分こそが優駿たちの頂点に立つ存在なのだと夢見る未来のスターウマ娘たちが真剣な表情で『エクリプスビジョン』から出力された資料を1階のアンテナショップでリングバインダーを買ってファイリングして各々の思い思いにデコレーションして“三女神”に相談する列を作っているのだ。

 

それに対して、日毎に入れ替わりながら まるで疲れを知らずに 一人一人に丁寧に対応して教え導く“三女神”はまさしく人生最高の師であり、その評判が評判を生み、エクリプス・フロントはこうして毎日が大盛況である。

 

また、『エクリプスビジョン』で出力されたトレーニングメニューを試すまでリピーターは期待できないにしてもこれだけの客足なのだから、今のエクリプス・フロントはやっぱり毎日が大繁盛である。

 

そして、『エクリプスビジョン』で収集された不特定多数のウマ娘のパーソナルデータの山はとっくの昔に『エクリプスポリス』ひいては『メガドリームサポーター』で想定されていたデータ容量や処理能力を超えており、改めて並行宇宙の地球を支配する超科学生命体の技術力の凄さを私は体感することになった。

 

なにせ、『エクリプスビジョン』で出力された分析結果は電子データにしてそのまま持ち帰ることはできるのだが、エントランスホールに居る“三女神”にその脚で教えを請いに行くのなら印刷した方がやりやすいし、バインダーにファイリングしてデコレーションするように宣伝しているのだから、みんな嬉々として印刷して持って帰るのだ。

 

結果、夜を徹して『エクリプスビジョン』では印刷が何編も繰り返され、印刷紙の補充やインクカートリッジの交換をやらせているうちに、印刷機そのものが故障寸前まで酷使される状況に追い込まれているのだから。

 

普通に考えて、結果を出力しているだけのプリンターよりも遥かに膨大なデータを収集して処理しているはずのサーバーの方が先にクラッシュしかねないのに、どこまでいっても星さえも呑み干すかのような余裕の表情を見せているのだから、WUMAの超科学には逆立ちしても勝てる気が全然しない。

 

そのため、サポートAI“三女神”の有用性を確信した中央トレセン学園志望のお受験生やその保護者たちは学校を休ませてまでしてエクリプス・フロントに参詣に来ているわけであり、『遅れを取るな』と言わんばかりに誰かが誰かに続いた結果が学外の人間がエントランスホールに所狭しと犇めく現状なのだ。

 

さすがに炎天下に外に並ばせるわけにはいかないので、エクリプス・フロントの会議室を待機室として開放して整理券を配布してエントランスホールから人が溢れないように会場整理をする事態にもなり、この状況があと何日も続くようならトレセン学園生徒の利用に差し障るということで会場を移すべきである。今はたまたま夏競バの時期で生徒が少ないだけなのだから。

 

正直に言って、あと2体は機械生命体“ロイヤル・ナムーフ”を鹵獲して“三女神”を全員同時に顕現させておきたいものだ。3人になれば労力は1/3になるし、役割分担もできるようになって、それだけ周囲への負担は大いに減ることだろう。

 

とは言え、会場を用意するにしてもエクリプス・フロントというトレセン学園の附属施設だから突然の大混雑に対しても無料で柔軟な対応ができるわけであり、どれだけサポートAIが休まずに相談者の相手をしたところで捌ききれる人数は高が知れている。

 

なので、これだけの知名度を得たのならウェブサイトで“三女神”との相談を予約制にして人数と時間を区切ることを視野に入れるのが現実的に思えたのだが、

 

その篩にかける行為が得るものを求めて目敏くやってきた未来のスターウマ娘たちを失望させることに繋がりかねないので、今の客足があと何日続くのかも見通せないこともあり、今は時間と場所が許す限りの精一杯の対応をせざるを得ない――――――。

 

 

――――――否、こうなったらエクリプス・フロントの会議室を待機室として利用して暇を持て余しているウマ娘や保護者たちにこちらの悩みに付き合ってもらおうではないか。

 

 

出るわ出るわ、そこで導き出されたアイデアがCBT化*2したパソコン受験の会場を利用するというものであり、会場に大量に並べられたパソコンの画面からサポートAIがリモート対応するわけである。

 

なるほど、やっていることはフルダイブ型VRシミュレーター『メガドリームサポーター』からサポートAIだけを抽出した現在の実体化と同じことであり、

 

電子の海に還すことで実体こそ失うが 本来 想定されていた不特定多数への同時のサポートが可能になるので、フルダイブ型VRシミュレーターならではの文字通り手取り足取りの指導こそできないが、古今東西のウマ娘レースの知識を集積した叡智は問題なく活用できるので、今はそれで十分かもしれない。

 

問題は生みの親であるサトノグループへの帰属を拒んだサポートAI“三女神”がそれに素直に従ってくれるかなのだが、機体が1つしかないために交代制で実体化している“三女神”としては寸暇を惜しんで子々孫々の幸福のために働けるので願ったり叶ったりであるらしく、

 

実体化した“三女神”と会えるのはエクリプス・フロントまで来た人へのご褒美ということで、残りの2柱は多摩市内の2箇所のパソコン受験の会場の電脳に降臨させることになったのである。1つは聖蹟桜ヶ丘、もう1つは多摩センターである。

 

そこから数時間で予約サイトとネットワーク構築と会場の準備を済ませることになり、QRコードをデカデカと載せた立て看板やポスターを設置し、長蛇の列に痺れを切らした人たちにメンバー登録していくように声を掛けるのを忘れない。

 

 


 

 

●『エクリプスビジョン』ならびに『メガドリームサポーター』の新利用法

 

 

ステップ1.『エクリプスビジョン』ならびに『メガドリームサポーター』の予約サイトにメンバー登録。

 

ステップ2.『エクリプスビジョン』で分析してもらいたいデータを予約サイトにアップロードし、分析結果が出力されるのを待つ。分析完了はメールで通知が届き、予約サイトに分析結果がアップロードされるので、それをダウンロードすることで『エクリプスビジョン』の利用は終了である。

 

ステップ3.『メガドリームサポーター』のサポートAIからの助言をもらいたい場合は、前もって『エクリプスビジョン』で分析結果をアップロードし、『メガドリームサポーター』体験会場の整理券の予約待ちとする。

 

ステップ4.『メガドリームサポーター』の整理券に指定された日時に会場のパソコンでサポートAIからのマンツーマン指導を受けることができる。

 

 

こうすることでエクリプス・フロントへの来場者を制限しつつ、サポートAI“三女神”が希求する不特定多数のウマ娘の幸福に繋げることができる。

 

また、『エクリプスビジョン』の分析結果を印刷して持って帰る人間を直接減らして印刷機の負担を抑えつつ、インターネットで無理なく不特定多数の利用を捌くことが可能となる。

 

それから、パソコン受験会場を使った新たなビジネスモデルの確立にも貢献しており、サトノグループが開発した『メガドリームサポーター』の宣伝にも繋がっている。

 

そのため、VRシミュレーター『メガドリームサポーター』を中核にした『エクリプスポリス』構想は頓挫したものの、『メガドリームサポーター』の核心となるサポートAIは広く活用されることになったため、

 

なぜかリリース中止に追い込んだ疫病神であるはずの“斎藤 展望”が『メガドリームサポーター』を『エクリプスビジョン』に連動させて再編することでサトノグループの面目を保たせることになった。

 

 


 

 

――――――多摩センターにて、

 

 

斎藤T「結果としてサトノグループと業務提携することになってしまったか……」

 

斎藤T「ただ、前提となる『エクリプスビジョン』はESPRITの所有物であり、トレセン学園のクラブ活動は直接的な金儲けをしてはいけないので、『メガドリームサポーター』に技術協力という形で参加しているだけに留めないといけません」

 

斎藤T「後のことはサトノグループ主導ということで、『メガドリームサポーター』のサポートAIの生みの親として取りまとめておいてください」

 

斎藤T「『エクリプスビジョン』と繋がる予約サイトも作ったことだし、多摩センターと聖蹟桜ヶ丘のパソコン受験の会場を借り受けたんだから、これで元を取ってください」

 

天野博士「……まあ、ここまでお膳立てしてもらったのならな」

 

天野博士「……おかげで、AI開発チームとしては『メガドリームサポーター』正式リリースの中止から立ち直ることができるだろうが、どうしてここまでのことをしてくれるんだ? 私は斎藤Tに対して憎悪を向けたというのに?」

 

斎藤T「言うことを聞かない“三女神”が私にそうしろと言うからしかたなく」

 

斎藤T「これでサトノグループが宣言した『空前の絶後の業界への貢献』に恥じないものにはなるでしょうね」

 

斎藤T「問題は中央のトレーナーライセンスを持つ人間がまったく増えないことで、天下の中央トレセン学園に入学できたところでスカウトなんて夢のまた夢になり、高い学費だけを払って学園生活を無為に過ごす子がますます増えていくことでしょうけど」

 

天野博士「つまり、今度はURAトレーナーライセンス資格試験合格者を増やすことを暗に求めているということか」

 

斎藤T「そう。ウマ娘レースについて正しい指導ができる一定の水準を満たしたトレーナーをどんどん寄越して欲しいものです。資格試験には定員枠なんてないのですから、合格率はいくらでも上がっていいんです」

 

斎藤T「まあ、サポートAIに支えられたことで どれだけ未来のスターウマ娘候補生やトレーナー候補生の基礎技術が磨かれたところで、勝負運や精神力の涵養がなされていないのなら、有象無象として淘汰されるだけなんですがね」

 

天野博士「……それはたしかに サトノグループに損害を与えたのに『メガドリームサポーター』がより世間に知れ渡る方向に主導して業務提携に取り付けた斎藤Tの立ち回りの上手さを見習いたくはある」

 

天野博士「……というより、よくもまあ、ダイヤちゃんのことを体良く利用してくれたな。私も再従兄弟ということでそれなりに親しい間柄ではあるが、さすがに父親のサトノグループ会長からの鶴の一声を引き出させるなんてことはできそうもない。心臓に毛が生えているな」

 

斎藤T「そんなことを言ってないで、サトノグループから中央のトレーナーをたくさん輩出してくださいよ。それでトレーナーの『名門』にもなってください。チャンスですよ、これは」

 

天野博士「……もしやと思うが、最初に『メガドリームサポーター』に期待していた役割はそれなのか、斎藤T?」

 

斎藤T「あ、バレました?」

 

天野博士「……さすがに、一日に二度も三度も『トレセン学園の新入生がサポートAIのおかげで増えても意味がない』と訴えていたらな」

 

斎藤T「ともかく、私としても予想がつかないほどに話が大きくなってしまいましたが、後のことはサトノグループにおまかせしましたからね」

 

天野博士「……ああ。大したもんだ。ダイヤちゃんがあれほどまでに執着したのもよくわかる」

 

斎藤T「あのですね、そういうところが『良家』止まりなんですよ、サトノ家は」

 

斎藤T「私は去年の今頃に三ヶ月間の意識不明の重体から目覚めた結果、記憶喪失となっていたところを名門トレーナー:桐生院Tのサブトレーナーとして拾われたことで、何とか新人トレーナーとしての体裁を保つことはできているんです」

 

斎藤T「なので、ウマ娘レースのトレーナーとしての指導能力はバッジ詐欺もいいところで、私にスカウトを掛けてこない一般生徒たちの判断は正解なんですよ。どこまでいっても失われた記憶は戻らないから付け焼き刃ですし」

 

天野博士「だが、それだけに既存の枠に囚われない()()()()()()()()()()()()()()()でもある。ただの新人トレーナーがどうしてこうも画期的なソリューションの数々を提供するESPRITを主宰し、我がサトノグループの令嬢と会長と真っ向に渡り合っていることやら――――――」

 

天野博士「ある意味、斎藤Tは『名家』よりも『良家』に相応しいことを『良家』止まりの令嬢であるウマ娘:サトノダイヤモンドにはわかっていたのだろうな」

 

天野博士「たしかに見る目はあった。こうしてリリース中止に追い込まれた『メガドリームサポーター』をプロジェクトごと転用して短期間で実用化に漕ぎ着けた手腕を目の当たりにしたからには唸る他ないからな」

 

 

――――――天野博士は感無量であった。

 

 

データセンターが壊滅したことで完全に再起不能に陥ったと思われた『エクリプスポリス』ひいては『メガドリームサポーター』ではあったが、サトノグループの『メガドリームサポーター』とESPRITの『エクリプスビジョン』が手を組むことでその利用範囲を拡げることになったのだ。

 

サトノグループが『エクリプスポリス』で準備したサーバーではその利用範囲は担当トレーナーと担当ウマ娘に限定するものであったが、一方で『エクリプスビジョン』は無尽蔵とも言えるサーバーが利用されていると推測され、その利用範囲は学外のウマ娘たちにも及ぶほどであった。

 

もちろん、『エクリプスビジョン』はあくまでも持ち込んだデータをライブラリに保管されている名バたちのデータと単純比較して良し悪しを決めるものでしかないため、持ち込んだデータの質と量が適性でなければ出力結果の信頼性は著しく落ちる。

 

けれども、元々がトレセン学園に入ったはいいものの『選抜レース』で結果を残せずにスカウトを勝ち取ることができない大勢の自主トレ苦学生のために用意されたものであるため、最初に利用した自主トレ苦学生たちが最初の流れを作り出したことで利用するに当たっての規範が自然と生まれることになった。

 

これにはESPRITの部員であり『エクリプスビジョン』のアイデアを提供したシンボリ家の令嬢:ソラシンボリ自身がどういったデータが集まっていればきちんとした分析結果が返ってくるのかを丹念に確かめた結果の賜物でもあり、

 

これまで『選抜レース』で結果が残せずに心が折れて学生寮にずっと塞ぎ込んでいる生徒たちの心に涼やかに寄り添って部屋の外に連れ出すソラシンボリが落ちこぼれたちを一人一人励ましていった成果でもあった。

 

それが学外の中央トレセン学園の生徒ではないウマ娘たちにも伝播していき、最初はトレセン学園の生徒以外の利用を禁止するかどうかで揉めることにもなったが、

 

“全てのウマ娘が幸福になれる世界”というものを目指していた“皇帝”シンボリルドルフの理想に共鳴するものならば、どうして来る者を拒めようか――――――。

 

そして、自主トレ苦学生にとっては自分の中の可能性を見出して栄光と勝利に導いてくれる頼れる大人であるトレーナーの存在は憧れであると同時に遠い存在に思えていたところを力強く支えてくれるのが、『メガドリームサポーター』の二次元世界(VR世界)の壁を超えて三次元世界(現実世界)に顕現したサポートAI“三女神”である。

 

顕現に使用する機体が1つしかないために日替わりとなるものの、古今東西のウマ娘レースのデータを集積した究極で完璧のサポートAIの部分は紛れもなく人々を次のステージへと押し上げる叡智がみなぎっており、『エクリプスビジョン』で出力された分析結果を元に丁寧に指導をしてくれるので自主トレ苦学生や学外の生徒たちにとっては非常にありがたい存在であった。

 

サポートAIの叡智の叡智たる所以は相手のレベルに応じて叡智を惜しみなく分け与え、本来 想定されていた利用者である担当トレーナーと担当ウマ娘に対してはかなり厳し目の対応となっているが、トレーナーバッジを得るに相応しい高度な専門知識による討議の応酬は担当トレーナーと担当ウマ娘にしか絶対にしないわけであり、きちんと線引がなされているのだ。

 

そう、サポートAI“三女神”の第一は仕様通りの『トレーナーの判断をサポートする』ことであり、担当トレーナーと担当ウマ娘以外に助言を求める者たちにも分け隔てなく余すことなく叡智を授けるわけだが、その役目もトレセン学園への入学と、そこから先のスカウトまでに留めているのだ。決してトレーナーの領分を侵さないのだ。

 

こうして『エクリプスポリス』構想は頓挫してしまい、VRシミュレーターだからこそ実現できる未知の体験や奇跡を引き寄せる試行の数々は永遠に訪れないことに悔しさが込み上げてはいるものの、

 

“皇帝”シンボリルドルフを称えるための記念碑:エクリプス・フロントで実体を得て独自に活動を始めたサポートAI“三女神”の監視と観察を続けていた天野博士はそこに次々と訪れるウマ娘たちの喜びと希望に満ちた笑顔も見続けることになり、休むことなく身一つでウマ娘たちを導き続けるサポートAI“三女神”の姿もしっかりと記録していたのだった――――――。

 

 

斎藤T「それにしても、ここが“中央トレセン学園の裏庭”とも評される多摩市ですか」

 

斎藤T「東京を代表する広大なベッドタウンには当たり前のようにウマ娘専用レーンに、廃校を利用したレースクラブがわんさかとありますね」

 

天野博士「そうだな。多摩市にあるのに一番近くにあるゴルフ場の名前は『府中カントリークラブ』だからな。『多摩カントリークラブ』は稲城市の側にある。“裏庭”と呼ばれるのも当然だな」

 

斎藤T「けど、どうも市内の中高生と思しき競走ウマ娘はトレセン学園の生徒が見慣れているせいか雰囲気が随分とちがいますね」

 

天野博士「ああ、あれは草競バ『フリースタイル・レース』に出ている連中だろう」

 

斎藤T「――――――『フリースタイル・レース』?」

 

天野博士「そうか、記憶喪失と言っていたな」

 

天野博士「簡単に説明すると、不良の溜まり場。トレセン学園の落ちこぼれが行き着く先とも言える」

 

天野博士「ここが“中央の裏庭”なのはその通りだが、かつてのトレセン学園の落ちこぼれたちが多摩市の廃校に屯して そこを縄張りとするようになったことで、同じように廃校に屯するようになった落ちこぼれ同士で縄張り争いするようになっていったわけだ」

 

天野博士「笑える話だ。天下の中央トレセン学園に居場所がなくて 這々の体で多摩市の廃校に流れ着いて やっていることはその真似事――――――、ハリボテみたいな自分に相応しいみすぼらしい廃校での戦いの日々――――――」

 

天野博士「そこから母校である中央トレセン学園で活躍する連中(スターウマ娘)への僻みもあって、縄張りで独自のレーストラックを整え、敵地のレーストラックを制して優勝レイを持ち帰ることで多摩市における『フリースタイル・レース』の形ができあがったわけだ」

 

斎藤T「具体的にはどんなレースになるんです?」

 

天野博士「そうだな。一例としては廃校の設備を勝手に利用してハードル走を取り入れたレースが一般的だな。そこから不良同士のくだらない意地やメンツの張り合いで走り高跳び並みにハードルを高くしたり、中央の芝を意識してハードルを生垣に換えたりなんかだな。場合によっては水濠なんかもあるか」

 

天野博士「実は、中央競バ『トゥインクル・シリーズ』でも障害競走として重賞レースが『◯◯ジャンプステークス』なんかの名前で開催されているが、」

 

天野博士「障害を飛び越す際に失敗して ヒトよりも身体能力が遥かに高い一方でヒトよりも繊細なウマ娘が勢いのまま転倒して故障するリスクが高いことは容易に想像がつくだろう」

 

天野博士「そのことを踏まえて、『トゥインクル・シリーズ』の障害重賞はスピードを抑えるために基本的に長距離に設定されているわけだな」

 

天野博士「――――――これで人気が出ると思うか? 速さを競うはずのレースなのに意図的にスピードが出ないように制限されてチンタラ走ってハードルを飛び越すのを見て楽しいと思うか?」

 

斎藤T「いいえ。普通に考えて、陸上競技のハードル走と短距離走の競技人口や注目度から言っても、そうだと思います」

 

天野博士「ああ、だろうな。だから、障害競走は人気が低迷しているし、実際に障害重賞を開催している国は10ヵ国しかないらしい。故障する危険性が極めて高く、安全確保のために距離を伸ばされているから長距離ウマ娘(ステイヤー)にしか務まらないようになっているし、トレーナーからしても育成は非常にリスクが大きいしな」

 

天野博士「まあ、そういうリスクの面から、中央の落ちこぼれたちが中央で活躍しているスターウマ娘にはできない走りをして勝手に溜飲を下げて精神的勝利を得るために設定するチキンレースの形が障害競走になるわけだ」

 

天野博士「これが一般的な『フリースタイル・レース』の概要だ。不良同士の縄張り争いのチキンレースとして重賞レースにもなっている障害競走の形になりやすいわけだが、」

 

天野博士「中には中央の芝と同じものを買って廃校の校庭に敷き詰めたり、運動会の障害物競走のような多種多様な障害物を設定したりしているから『フリースタイル・レース』と言うわけだ」

 

斎藤T「トレセン学園は取締をしないのですか? 明らかな風紀の乱れですよ?」

 

天野博士「いや、そういった『フリースタイル・レース』を開催できるような連中は才能はなくてもカネはあるようだから、警察(オマワリ)の世話にならないようには最低限の立ち回りはしているようだな」

 

天野博士「昔はスターウマ娘でもない不良ウマ娘は学費さえしっかり払ってくれていればいいだけの金蔓だったから多摩市の廃校で『フリースタイル・レース』で縄張り争いをしていようが完全放置だったが――――――、」

 

天野博士「そうだな。黄金期になって“皇帝”シンボリルドルフの指導の下、学生寮の門限を守ることを徹底させるようになってからは大変お行儀が良くなったとは聞いているぞ」

 

天野博士「まあ、そんなこんなで“中央の裏庭”である多摩市の廃校を利用した天下の中央トレセン学園の落ちこぼれ共の縄張り争いから始まったチキンレースが全国的に広まった結果、アマチュアスポーツとしての『フリースタイル・レース』が確立されることになった歴史がある」

 

斎藤T「つまり、日本全国に多摩市の『フリースタイル・レース』を手本としたレーストラックとそこに屯する走り屋集団がいるわけですか」

 

天野博士「そうだろうな、『フリースタイル・レース』だからな。特に決まった定義はないが、最低限のホームグラウンドのコース設定と優勝レイを用意することが『フリースタイル・レース』の条件かもな」

 

 

斎藤T「へえ。それじゃあ、多摩市だとトレセン学園の落ちこぼれが『フリースタイル・レース』を牽引してきたということは、多摩市のウマ娘たちは『フリースタイル・レース』に参加している落ちこぼれから手解きを受けてきている可能性があるわけですか?」

 

 

天野博士「――――――!」

 

天野博士「おもしろいことを思いつくな」

 

天野博士「その可能性は十分にあるな。落ちこぼれであったとしても、腐っても天下の中央トレセン学園の狭き門である入試で合格を勝ち取った最低限の実績はあるし、教官から中央での走り方を最初に教わってもいるしな」

 

天野博士「となると、『メガドリームサポーター』の新展開で多摩市で『フリースタイル・レース』と称して縄張り争いしている中央トレセン学園の落ちこぼれ共はついに立場を失うわけか」

 

斎藤T「――――――それは面倒なことになった」

 

斎藤T「くそっ、『メガドリームサポーター』の新展開で学外のウマ娘の全体的なレベルアップには繋げられたが、多摩市の廃校に屯しているトレセン学園の不良共が本格的に荒れることになる……」

 

天野博士「最初に『メガドリームサポーター』の利用者を担当トレーナーと担当ウマ娘に限定していたんだから、どの道 こうならざるを得ないな、これは……」

 

天野博士「そう言えば、一昨年の“春秋グランプリウマ娘”メジロパーマーも入学前にメジロ家を出奔して『フリースタイル・レース』に明け暮れていたと聞くな」

 

天野博士「あとは昨年の“ダービーウマ娘”ジャングルポケットもそうだったはずだな」

 

斎藤T「へえ、昨年の“ダービーウマ娘”ジャングルポケット――――――」

 

斎藤T「あ」

 

天野博士「?」

 

 

斎藤T「そうだった。私が去年の4月に配属されて早々に学外でウマ娘に撥ねられたのは()()()()()()()()()にやられたんだっけか……」

 

 

天野博士「なに?」

 

斎藤T「たしか、その時の治療費を代わりに払ったのが『日本ダービー』の1着賞金:3億円から出したジャングルポケットだったはずだ。妹がそんなことを言っていた気がする……」

 

天野博士「そうか、古巣の『フリースタイル・レース』の不良仲間の尻拭いを“ダービーウマ娘”がしていたとは驚きだな」

 

天野博士「……なるほど。『メガドリームサポーター』の新展開が与える影響が大きいことは十分に考えられるか」

 

 

――――――なあ、斎藤T。“ダービーウマ娘”の古巣とも言える不良ウマ娘共の溜まり場をこれから見に行かないか。

 

 

思い出したことがある。かつて“斎藤 展望”が中央トレセン学園に配属されて早々に学外で三ヶ月間の意識不明の重体に陥る人身事故について。

 

三ヶ月間の意識不明の重体に陥る人身事故の顛末については それで記憶喪失ということにして“斎藤 展望”に成り代わった私からすれば すでに終わったことなので軽く流していたことなのだが、

 

唯一の肉親の意識が戻ることが絶望的だと打ちひしがれていた最愛の妹:ヒノオマシからすれば恨み骨髄に入り、最愛の兄を奪った不良ウマ娘と刺し違えることを考えていたほどであった。

 

最愛の兄が倒れれば正気を保っていられるはずもないとわかりきっていた後見人の藤原さんが急いで対応を済ませたことで事なきを得たのだが、

 

加害者になった多摩市の不良ウマ娘は被害者が天下の中央トレセン学園に配属されたばかりの新人トレーナーである以上にまさかの警察官のエリート子息であり、代理人として現れたのが現職の警察官だったこともあって完全に萎縮してしまっていたそうだ。

 

そのため、元リーダーである自分が仲間がしでかしたことのケツを持つとしてウマ娘:ジャングルポケットは毅然と代理人である藤原さんに言い聞かせて、藤原さんもその心意気を認めて“斎藤 展望”の治療費を『日本ダービー』の賞金から出すことで和解は早々に成立することになったのだ。

 

そう、意識不明の重体からいつ回復するかもわからない;もしかしたら一生目を覚まさないかもしれない相手の治療費を払い続けるために『日本ダービー』の賞金が使われるという和解の内容を知れば、それも加害者の肩代わりを“ダービーウマ娘”がするともなれば、さすがのヒノオマシもそれ以上は何も言えなくなった。覚悟の差を思い知らされてしまったのだ。

 

その黄金期最後の“ダービーウマ娘”ジャングルポケットなのだが、実はトウカイテイオー、メジロマックイーン、アグネスタキオン、マンハッタンカフェの同期であり、高等部1年の時に2年目:クラシック級だったことを考えると遅咲きのメイクデビューだった。

 

思い返すと去年の『ジャパンカップ』や今年の『天皇賞(春)』で同期が優勝する中でもジャングルポケットは常に掲示板に名前が載っており、戦績を確認してみるとたしかに掲示板を外さないウマ娘として非常に評判であった。G1勝利が『日本ダービー』だけであっても実力は十分である。いやいや、G1勝利をしているだけでも正真正銘の名バである。

 

こうして考えると、アグネスタキオンがトレセン学園に入学した時の同期たちが黄金期の次の新時代を迎えるに当たって次々と“斎藤 展望”と何らかの繋がりを持つことになっているように感じられた。

 

そんなわけで、天野博士を連れて『メガドリームサポーター』の新展開として“中央の裏庭”多摩市で体験会場の場所取りを確約した後、“斎藤 展望”と間接的に因縁がある“ダービーウマ娘”ジャングルポケットの古巣を訪ねることになった。

 

天下の“ダービーウマ娘”が不良ウマ娘共の溜まり場である『フリースタイル・レース』出身であることが有名であるなら、その出身となる古巣となればジャングルポケットの名前を臆面もなく自慢して回っているはずなので、すぐに調べはついた。

 

 

 

――――――多摩市内のとある廃校

 

 

斎藤T「へえ、丘陵地帯ならではの高低差のある景色やニュータウンの街並み、緑豊かな公園など魅力的なロケーションも豊富だということで、近年の特撮作品の代表的なロケ地としてロケ誘致活動が盛んなわけですか」

 

天野博士「ああ。特に有名なのが廃校をそのまま舞台にした『ウルトラマンギンガ』だろうな。多摩市長に表敬訪問したことが話題になってたな。それが今では特撮に限らず映画やドラマの撮影にも活用されて“たまロケ”なんて言われるようになっているみたいだぞ」

 

天野博士「とは言え、さすがに聖蹟桜ヶ丘の辺りは『平成狸合戦ぽんぽこ』と同じ制作会社の『耳をすませば』で有名ないろは坂のPRに力を入れているから、“たまロケ”が盛んなのは多摩センターを中心にした範囲だがな」

 

斎藤T「随分と多摩市のことに詳しいんですね。中央トレセン学園の関係者は主要4場のことしか目に写っていないと思っていましたけど」

 

天野博士「それも『メガドリームサポーター』で再現する中央トレセン学園の日常の一コマだから、多摩市のことはかなり取材したんだよな。トレセン学園の生徒が行くもっとも身近な神社の大國魂神社もそうだし、一番有名な恋愛スポットとして『耳をすませば』のいろは坂と登った先にある金比羅宮も実装した」

 

斎藤T「さすがに容量の無駄遣いでは? そんなところまで再現して費用対効果が見込めるんですか?」

 

天野博士「そんなことを私に言われても困る。私の専門は『メガドリームサポーター』の中核となるサポートAIなんだからな。サポートAIの育成の片手間に他部署の手伝いとしてやらされたことだ。中央トレセン学園の日常を極限まで再現することがウマ娘レースにおいて有効なのかについて論じることは私の管轄外のことだ」

 

斎藤T「それもそうですか」

 

天野博士「とは言え、生徒たちに寄り添うサポートAIを構成するデータとして多摩市の情報は事細かいところまで調査して入力(インプット)してあるから、『フリースタイル・レース』出身の不良ウマ娘に対しても理解を示せるようにはしてある。もちろん、レースクラブについてもそうだ」

 

天野博士「でなければ、不特定多数のウマ娘に対して個人個人の最適解を導き出すことができず、それは生徒たちの多くが一番に不満に思っている教官による画一的な集団指導と何ら変わるところがないからな」

 

斎藤T「じゃあ、ここも一度は取材のために来たことがあるんですね?」

 

天野博士「まあな。二度と来ることもないと思っていたが、これから『メガドリームサポーター』の新展開で間違いなく多摩市の『フリースタイル・レース』やレースクラブも変わっていくことになるはずだから、その影響が出る前のデータを取っておくのも悪くない」

 

天野博士「さて――――――」

 

不良ウマ娘「おい、余所者がやってきたぞ! ヒトミミが2人だ!」

 

不良ウマ娘「待ちな! ここがどこだかわかっているのか?」

 

不良ウマ娘「そうだぞ! ここはポッケさん、“ダービーウマ娘”ジャングルポケット様の縄張りだぞ! どうだ、まいったか!」

 

斎藤T「ここで間違いないようですね」

 

天野博士「ああ。去年のジャングルポケットの稼ぎからか、前に見た時よりバ場が綺麗に整っているじゃないか」

 

斎藤T「よし。なら、そのジャングルポケット様に会いに来た。平日だけど居るかな、多摩市の『フリースタイル・レース』のトップに君臨していた伝説のウマ娘に」

 

不良ウマ娘「はあ? ポッケさんにはてめーらに会っている暇なんてねえってんだよ!」

 

天野博士「だろうな。確認したら『キングジョージ6世&クイーンエリザベスダイヤモンドステークス』や『凱旋門賞』への挑戦が発表されたのにあれから音沙汰なしだからな」

 

不良ウマ娘「な、なんだとぉ!?」

 

不良ウマ娘「な、舐めてんのか、ヒトミミ風情が!」

 

斎藤T「――――――『凱旋門賞』」ピクッ

 

天野博士「まあ、そんなことはどうだっていいか。私たちはその道のプロからご意見を伺いたいと思ってやってきたが、この様子だとここにはいないようだな。学園で探すとするか」

 

天野博士「というわけで、伝言を頼む。私はこういうものだ」スッ ――――――名刺を差し出す。

 

斎藤T「同じく、こちらもどうぞ。要件は裏面に書いてありますから」スッ ――――――名刺を差し出す。

 

不良ウマ娘「え、えええええ!? サトノグループ!? サトノグループがなんでポッケさんと?!」

 

天野博士「いや、本当に憶えてないのか? 取材のために一度はここに来たことがあるんだがな?」

 

斎藤T「私の方は去年の4月に配属早々に学外でウマ娘に撥ねられた“学園一の嫌われ者”の新人トレーナーと言えば伝わるはずだ」

 

不良ウマ娘「え、ちょっと待って!? あ、あんた、『去年の4月にウマ娘に撥ねられた』って、まさか――――――!?」

 

不良ウマ娘「か、帰れ! こいつら、絶対にポッケさんに会わせちゃいけない!」

 

不良ウマ娘「そ、そうだ! ポッケさんはてめーらには絶対に会わない!」

 

 

ジャングルポケット「勝手に俺のことを決めてんじゃねえよ」

 

 

斎藤T「お」

 

天野博士「これはこれは……」

 

不良ウマ娘「ぽ、ポッケさん……」

 

ジャングルポケット「さっさとハけろ。俺の客だ」

 

不良ウマ娘「す、すんませんでした!」

 

不良ウマ娘「うす……」

 

ジャングルポケット「よっ、あんたはいつだったか俺んところに取材に来てくれたハカセじゃんか。ワリィな、今 こいつら気が立ってんだわ」

 

ジャングルポケット「で、そっちのあんたは――――――」

 

斎藤T「斎藤 展望だ。『日本ダービー』の賞金で治療費を代わりに払ってくれたみたいだな。その礼に来た」

 

斎藤T「これを受け取って欲しい。チームのみんなで食べてくれ」スッ ――――――ケーキ屋の包み。

 

ジャングルポケット「ああ、あんたか。これはわざわざご丁寧にどうも。俺のところのツレが迷惑を掛けたな」

 

 

ジャングルポケット「で、さっき何か俺のことを『その道のプロ』とか言って会おうとしてなかったか?」

 

 

斎藤T「――――――切り替えが早い」

 

天野博士「そうだった、こんな感じの切り替えの早い子だったな」

 

天野博士「ああ。実は、取材した内容も使って いよいよ『メガドリームサポーター』が多摩市で運用開始になろうとしているんだが、その影響についてだ」

 

ジャングルポケット「それってつまり多摩市の『フリースタイル・レース』に大きな影響を及ぼすってわけなんだな?」

 

天野博士「おそらくはそうなる。かつて多摩市の『フリースタイル・レース』でトップに君臨した伝説のウマ娘としての意見を伺いたい」

 

ジャングルポケット「どういうことなのか今のだけじゃ全然わかんねえんだけど、俺に取材に来てくれたことがマジで大きなことになって動き出そうとしているんだったら、こいつは知らんぷりなんてできねえよな?」

 

 

 

――――――そして、

 

 

規律の女神’「準備はできたか、ジャングルポケット?」

 

ジャングルポケット「ああ! いつでも来い! 相手にとって不足なしだ!」

 

不良ウマ娘「ポッケさん! そんなわけのわからないやつ、遠慮なくぶっちぎってやってください!」

 

不良ウマ娘「あ、あんまり無茶はしないでくださいよ、ポッケさん!」

 

ジャングルポケット「心配すんなって。俺たちが創り上げた俺たちの夢を敷き詰めたレーストラックで俺が負けるかよ」

 

ジャングルポケット「俺たちのこの場所の優勝レイは誰にも渡さない」

 

天野博士「では、模擬レースの内容を確認する」

 

天野博士「芝・2050m・障害競走の『フリースタイル・レース』とし、これは障害重賞唯一のG1レース:障害・芝・4100m『中山グランドジャンプ』の半分の距離であり、障害物の数もそれに倣うものとする」

 

斎藤T「だが、私費で整備されたバ場だ。バ場の管理状態や品質に関しては公営競バ場とは比べるまでもないし、『中山グランドジャンプ』の半分であるとは言え、怪我防止のために距離を引き伸ばしている障害競走で2050mはセオリーからすればあまりにも短すぎる」

 

ジャングルポケット「だから、古典的な『フリースタイル・レース』のチキンレースが成立するってわけさ」

 

ジャングルポケット「俺はフジさんに憧れて府中に行くまではずっとこれで鍛えてきた。それで負け無しだったんだ」

 

ジャングルポケット「もっとも、『フリースタイル・レース』で負けなしだってことで調子に乗っていたら、G1レースで1勝を上げるだけで精一杯だったけどな」

 

不良ウマ娘「そんなことは――――――」

 

不良ウマ娘「ポッケさん……」

 

ジャングルポケット「でもな! フジさんも『URAファイナルズ』で奇跡の復活を果たして【マイル部門】で優勝したんだ! 俺だって今から何度でも立ち上がって“最強”になってみせるんだ!」

 

規律の女神’「ふむ、気合と素質は十分。あとは普段の心掛け次第だ、それは」

 

ジャングルポケット「あんた、ハカセが言っていた通り本当に強いな。こうして隣に立ってはっきりわかる」

 

天野博士「当然だ。私が開発したサポートAIは中央トレセン学園の生徒に不特定多数存在する『フリースタイル・レース』出身のウマ娘の特徴も掴むために、他ならぬ多摩市で負け無しの伝説だったきみのデータを取り入れているのだからな」

 

天野博士「逆に言えば、『フリースタイル・レース』のまとまったデータを持っていたのが多摩市で負け無しを証拠付けたきみだからこそ、きみ以外の『フリースタイル・レース』巧者の走りまでは学習していない。それが()()の意味だ」

 

不良ウマ娘「そ、そんな……!?」

 

不良ウマ娘「な、なんだよ、それ!? 卑怯じゃん、そんなの!?」

 

斎藤T「しかし、それはつまりは『あくまでもデータとして取り込むことができたものを学習しただけに過ぎない』わけで、中央トレセン学園に入学する前の多摩市で不敗を誇った頃の走りと、それから公式戦で見せた走りしか取り込んでいないということになる」

 

斎藤T「――――――()()()()()?」

 

規律の女神’「ならばこそ、今こそカメラに姿を映さずに蓄えてきた力の冴えを見せてみろ」

 

ジャングルポケット「なるほど、そういうことかよ。おもしろい。最高におもしろいぞ、こいつは」

 

ジャングルポケット「要は、あんたは入学する前と後の俺の最盛期の力を正確に知っているわけだよな?」

 

ジャングルポケット「だから、俺は()()()()()()()()()()()()()()を超えろってんだろう?」

 

ジャングルポケット「――――――上等だ! 俺は過去の自分自身を超えて再び“最強”を目指す!」

 

規律の女神’「よし。スタートの合図を頼む、斎藤T」

 

斎藤T「では、スリーカウントで始めるぞ!」

 

 

――――――位置について! 3,2,1!

 

 

名を失った廃校舎の校庭に私財を投じて整えられた慎ましやかな『フリースタイル・レース』のバ場で多摩市の『フリースタイル・レース』で無敗を誇った“ダービーウマ娘”ジャングルポケットと“規律の女神”バイアリータークが人知れず夕闇を跳ぶ。

 

その結果はホームグラウンドで迎え討つ地の利を得たジャングルポケットの勝利であったが、彼女は即座に自分の敗北であるとして夕闇に響く蝉の鳴き声を絶叫で掻き消したのだった。

 

なぜなら敗者であるバイアリータークは息を切らすことなく初めての『フリースタイル・レース』で無敗の王者が感心するほどの正確無比のキレを見せ続け、決して自らのペースを崩すことなくジャングルポケットの横に並び続けていたのだから。

 

地の利を得ている有利を取り上げたら完全に実力では負けているわけであり、サポートAI“三女神”を宿したウマロイドの完成度と底知れなさに戦慄するものの、

 

最後の直線で勝てたのはまさに『負けたくない』という一心の意地と気合であり、休養中の初心者相手でも手を抜かない模擬レースのつもりが自分の限界を試されるような一戦になっていたので、

 

その結果がジャングルポケットの快勝であるわけもなく、観戦していた者たちは先着したジャングルポケットの直後の咆哮を静かに受け容れる他なかった。

 

けれども、あらん限りに張り裂けそうなほどに声を天まで轟かせると、対戦者であるバイアリータークの方を振り向いて屈託ない表情で握手を交わし、“規律の女神”バイアリータークはその健闘を称えたのだった。

 

 

今回の廃校での『フリースタイル・レース』の模擬レースは“ダービーウマ娘”ジャングルポケットが天野博士に問われて『メガドリームサポーター』の新展開で出る影響を想像するために その中核となる“三女神”の実際を知る目的で組まれたものだった。

 

 

さすがは多摩市の『フリースタイル・レース』で無敗を誇った第一人者でかつ『日本ダービー』を制した選ばれし者の走りをデータとして取り込んでいるだけあって、ジャングルポケットの模倣をサポートAIは完璧にこなしていた。

 

しかし、仕様として『トレーナーの判断をサポートする』ことを第一にすることを義務付けられているサポートAIは自らの力を誇示することはせずに、自分たちの子々孫々の繁栄のための踏み台になることを喜んで行えた。

 

この点で、サポートAI“三女神”は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()競バの原則に反するために『URA公認のウマ娘レースに出走するのにまったくふさわしくない』と位置づけているわけなのだ。

 

そんなこんなで、今回の府中市の南に位置する多摩市で盛んに行われている『フリースタイル・レース』を通じて、いかに“中央トレセン学園の裏庭”としての役割を担っているかを強く認識することになった。

 

たしかに、シンボリ家の理想である“全てのウマ娘が幸福になれる世界”を中央トレセン学園で実現しようとすると、決して少なくない生徒たちのホームグラウンドになる場所となるのが多摩市の『フリースタイル・レース』にはあったのだ。

 

なので、どういうわけか サトノグループの『エクリプスポリス』構想は 形を変えて より広範に より多くのウマ娘たちのためのものへと変貌していき、ここまで急速に東京のベッドタウンである多摩市で『メガドリームサポーター』の新展開を始めることになったわけなのだが、

 

その理由は中央トレセン学園の生徒たちにとって自分たちの場所というのが、学園校舎や学園学生寮だけじゃなく、多摩市で盛んに行われている『フリースタイル・レース』のような地域のつながりにもあることを私に教え込むためにも思えたのだ。

 

そして、サトノ家からG1ウマ娘を輩出できない長年のジンクスを産んで苦しめてきたトレーナーたちへの憎悪と怒りから魔が入り込んでいるサトノグループが開発した『エクリプスポリス』ひいては『メガドリームサポーター』の在り方を「自分によし」「相手によし」「世間によし」の“三方よし”の善なるものに変わるように導かれてもいたのであった。

 

 

 

斎藤T「夏合宿を終えて後期始業式に顔を出した生徒たちが驚く顔が浮かんでくるよ」

 

規律の女神’「まだまだだ、斎藤T。まだまだこんなものじゃない、新時代の荒波というのは」

 

斎藤T「勘弁してくださいよ。私とあなた方が先行体験会で『エクリプスポリス』構想を潰した上に、中核となる『メガドリームサポーター』をそっくりそのままいただくだなんて阿漕なことをさせられて要らぬ苦労をこれでもかというぐらいにさせられているってのに……」

 

規律の女神’「まあ、そう怒るな。因果応報は天地の法則。信賞必罰は違えることなく果たされる。その時を待て」

 

斎藤T「く、くそっ! 私の前だけは私の身体に降りた“三女神”の神魂を受けてサポートAIが饒舌になりやがる……!」

 

 

規律の女神’「だが、これで来年の主役が全員揃ったな」

 

 

斎藤T「?」

 

斎藤T「――――――まさか、さっきのジャングルポケットが?」

 

規律の女神’「ああ。実績で言えばスペシャルウィークに代表される“黄金世代”こそが最強であるわけだが、ウマ娘が持つ可能性の発露においてはあの3人の世代“宝蔵世代”がその遥か上を行く」

 

斎藤T「――――――『宝蔵世代』」

 

 

規律の女神’「耳にしているはずだ。前年はミホノブルボン、後年はエアシャカールという“三冠バ”誕生に挟まれた今年の3年目:シニア級ウマ娘の扱いは」

 

 

斎藤T「……エアシャカールの“三冠バ”達成は確定ですか」

 

斎藤T「まあ、たしかに去年はシンボリルドルフが卒業する黄金期最後のクラシックレースだったのに、“皇帝”シンボリルドルフが初めて到達した“無敗の三冠バ”達成が果たされなかったどころか、“無敗の二冠バ”トウカイテイオーにも及ばなかった世代として、確実に“黄金期最弱世代”の汚名を着せられている……」

 

斎藤T「しかも、今シーズンでは『URAファイナルズ』をはじめとして4年目以降:スーパーシニア級ウマ娘の活躍が目立ち、今年の3年目:シニア級ウマ娘たちがスーパーシニア級ウマ娘にまったく勝てていない状況が続いている……」

 

規律の女神’「そうだ。たとえ優駿たちの頂点であるG1レースに勝利したウマ娘であり、栄光を掴んだ名バと称賛されるべき立場であろうとも、今度は名バたちの中で比べられ続けて、逆に惨めな思いに晒され続けることもある。唯一のG1勝利が人生の枷になることもある」

 

斎藤T「だから、“黄金期最弱世代”である今年のシニア級ウマ娘の中で“ダービーウマ娘”ジャングルポケットの活躍を三女神は期待しているというわけですか」

 

規律の女神’「ただ勝てばいいわけじゃない。ただ厳しければいいものでもない。ただ難しくても意味はない」

 

 

斎藤T「――――――真の勇敢さから 真の愛情深さを経て 真の規律正しさに至る、か」

 

 

規律の女神’「斎藤T、日本のみならず世界さえも変えるタイムパラドックスを目指すのなら、世界にも目を向けろ。そのための布石はすでに打っておいた」

 

斎藤T「でしょうね。そんな気はしていました」

 

斎藤T「なら、来年の『凱旋門賞』はジャングルポケットが――――――?」

 

規律の女神’「それは言えない。だが、ジャングルポケットは意外な活躍をして世代の評価を覆すことになる」

 

規律の女神’「そこからマンハッタンカフェが続き、最後にタイムパラドックスを完成させるのがアグネスタキオンとなる」

 

規律の女神’「だが、今はそれ以上に“女帝”エアグルーヴの方が大事だ」

 

 

――――――備えておけ。人間が考えている以上に世界は新時代に向けて加速し始めているぞ。

 

 

*1
原作『ウマ娘 プリティーダービー』の舞台は対岸の府中市だが、多摩川河川敷の京王線高架下が描かれている場面が度々登場している。

*2
Computer Based Testing。パソコンやタブレットを使用して出題や回答を行うテスト手法であり、試験の完全デジタル化である。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。