ウマ娘超光速戦記 -TACHYON Transmigration- 作:LN58
――――――目標:12月31日までにWUMAを殲滅せよ!
年末まであと僅か、多摩地域での混乱が拡がりつつある。やつらの
多摩地域で原因不明の事故が多発するようになり、それと共に怪奇現象の報告も次々と上げられるようになったのだ。
地図上でその分布を見てみると、やはり24日にブラックサンタクロースが巨岩の贈り物をした地域――――――、正確にはその巨岩を回収した然るべき研究機関の辺りに集中していると見ていいだろう。
府中市もその例外ではなく、終業式を迎えて故郷に多くの生徒たちが帰っていることもあってトレセン学園での被害報告は少ないが、職員や警備員たちが怪奇現象を目撃しているそうだ。
あの巨岩はやはりオカルト現象を引き起こすための装置だったと考えるべきだろう。
となれば、奥多摩に侵入することは不可能になった。完全に手遅れと見るべきだ。
――――――やつらの超科学によって奥多摩はこの世界から分断されることになったのだから。
正式な発表はないが、すでに奥多摩との連絡が途絶えており、奥多摩に入る道路を進んでいたと思ったら
ヘリコプターで上空から進入する時も同様で、奥多摩に向かって進んでいたはずが、
どうやら並行宇宙を侵略できるほどのWUMAの空間跳躍技術のちょっとした応用のようだ。
超弦理論に基づいて外界からの進入路を四次元空間上でU字に繋ぎ合わせることで、
これにより、東京都を管轄する警察組織『警視庁』は奥多摩との連絡の回復と多摩地域で起きている怪奇現象の解明のために総力を上げることになった。
もちろん、並行宇宙の地球を支配して異なる地球を侵略しに来ている超科学生命体“フウイヌム”に21世紀の異なる地球の文明の技術で対抗などできるはずがない。23世紀の宇宙科学でもだ。
つまり、25日までに奥多摩に乗り込んで やつらを殲滅しておかなければ、こうして奥多摩は
そうなれば先遣隊による橋頭堡の確保という戦略目的は達成されたことになり、この世界もやがては超科学生命体の大群の攻勢を受けて人類社会は遠からず滅亡するだろう。
ホント、世にも不思議な時間を巻き戻す“目覚まし時計”が存在してなかったら、私はこの時点で発狂していたかもしれないな。
となると、24日で奥多摩隔離の布石が打たれ、27日に奥多摩隔離が実現されたと考えるなら、やつらの侵略計画の進展は一段落ついたとも言える。
――――――要するに、
そうなると、私が病床でやることが完全になくなり、終末が確定した世界の年末の様子を見ながら病院でダラダラと過ごすしかないのかもしれない。
とりあえず、31日に目標未達成でタイムリープが起きた時に備えて次周の予定表を作成して、ループ初日の24日の夜にブラックサンタクロースを討伐する手筈を整えておこう。
大丈夫。1日使って府中市を自分の脚で歩き回ったばかりだから、ブラックサンタクロースを撃ち落とすのに最適なビルは調べがついてる。撃ち落とす手段も法律のグレーゾーンのものを用意できる。
そして、4体のエルダークラスの勢力図は“奥多摩”“多摩地域”“トレセン学園”“船橋市”の4つの地域に割拠しているものと思われる。
奥多摩はWUMA襲来の地であり、年間を通して登山客も多く 人目につかずに侵略の準備をするにはうってつけの山間の場所なので、そこを防衛する軍団がいるのは軍事の常識だろう。本拠地を留守にするわけがない。
次に多摩地域は奥多摩と東京都心との接点であり、奥多摩を下りた先の前線基地として侵略を進めていったのは自然な流れだ。ここも要衝として押さえておく場所だ。
その中でも府中市のトレセン学園は『同胞たるウマ娘の解放』を目標にしたWUMAにとっては重要な場所であり、日本中から優駿たちが集まることもあって、地球征服後はウマ娘たちを支配者にするためのエリート教育機関に塗り替えられるかもしれない。
最後に船橋市には『皐月賞』『スプリンターズステークス』『有馬記念』『ホープフルステークス』が開催される中央競バの中山競バ場、平日開催となる地方競バ(南関競バ)の船橋競バ場があり、非常にウマ娘レースが盛んな場所となっていた。
つまり、4体の
奥多摩は完全に侵入不可となり、多摩地域は混乱の真っ只中で、トレセン学園はエルダークラス討伐によって何事もなく冬休みを迎え、船橋市は今の所は異常はない。
――――――なるほど、なるほど。それなら、暇だから船橋市のエルダークラスを討ちに行くか。
●1周目:12月28日
URAが開催運営する中央競バに出走する競走ウマ娘の育成機関:中央トレセン学園は府中市にあるものが唯一無二のものではあるが、分校が京都競バ場の近くに存在しており、
京都分校は西日本での中央トレセン学園の入試会場や遠征合宿の宿泊施設としても利用され、中央トレセン学園の学校行事を見学できるサテライト会場としても機能していた。
一方、地方競バ『ローカル・シリーズ』の歴史は近代ウマ娘レースの統一ルールの国際規格と照らし合わせると中央競バ『トゥインクル・シリーズ』よりも新しいが、
かつて戦国時代の群雄割拠でそれぞれの地域でウマ娘たちが活躍していたことを考えれば、地方競バの方がルーツが古いわけであり、それぞれの地方で独自の興行と縄張り意識が現代にも根強く残っていた。
そのため、現在では一口に地方競バ『ローカル・シリーズ』として中央競バにも似た全国的な枠組みが構成されているが、
『ローカル・シリーズ』が成立したのは意外にも1990年の
結果としては、ますます『トゥインクル・シリーズ』の後追い劣化版の下位リーグの印象を『ローカル・シリーズ』が受けることになり、
現在でも地方競バ『ローカル・シリーズ』は中央競バ『トゥインクル・シリーズ』の下位リーグと見做されているが、中央で夢破れてからの天下り先として敗者たちの受け皿の役割を担うことになった。
しかし、日本競バ界は『ローカル・シリーズ』『トゥインクル・シリーズ』『ドリーム・シリーズ』の三重構造で成長することになり、
中央トレセン学園の暗黒期は笠松トレセン学園出身のオグリキャップの絶大なる人気によって終焉を迎えることになり、『ローカル・シリーズ』の存在価値が見直される契機ともなった。
そのため、オグリキャップの成功によって『ローカル・シリーズ』から『トゥインクル・シリーズ』への移籍が積極的に行われるようになり、
中央トレセン学園は秋川理事長と“皇帝”シンボリルドルフという二大巨頭に支えられて総生徒数2000名弱となる黄金期を迎えることになったのだ。
憧れの夢の舞台である中央トレセン学園への転入が地方出身のオグリキャップの活躍によって認められやすくなったことが結果として業界全体の活況へと導いた。
そう、オグリキャップが今でも神格化された存在なのはそういった功績があるからであり、まさしく日本競バ業界の救世主とでも呼ぶべき偉大なる存在であった。
さて、地方競バ『ローカル・シリーズ』は日本各地に割拠している地方競バを総括したものであり、
細かく見れば、北海道シリーズ、東北シリーズ、北関東シリーズ、南関東シリーズ、北陸シリーズ、東海シリーズ、近畿シリーズ、中国シリーズ、四国シリーズ、九州シリーズで構成されている。
北海道シリーズには競走ウマ娘ではなく世界唯一の農耕ウマ娘が主役の“ばんえい競バ”という地方特有の競技があるのが有名である。
また、九州シリーズにも参加資格が古代種に限定されるトライアスロン形式の“高千穂競バ”が開催されており、日本古来からの旧き血統を未来に残そうという運動が残っている。
そんなわけで、中央競バ:中山競バ場が同じ市内にあるせいで平日開催で興行する羽目になった南関東競バ:船橋競バ場が存在する船橋市に再び赴くことになった。
今日が28日で、23日に『有馬記念』が行われたばかりなので、あれから1週間も経たないうちに多摩地域は大変なことになってしまった。
しかし、私にとってはそんなことはもうどうでもよく、桐生院先輩を何度も襲った報復のために船橋市に潜伏しているだろうエルダークラスの討伐に赴いた。
地方競バ『ローカル・シリーズ』の特徴だが、基本的に地方競バ場をホームグラウンドとした地方トレセン学園が存在しており、
中央競バ『トゥインクル・シリーズ』のためのトレセン学園が京都に分校があるにしても府中市にあるのが唯一無二なのを考えると、地方競バ場と結びついた地方トレセン学園は非常に贅沢な場所に思えるかもしれない。
だが、府中市の中央トレセン学園と同じようなものだと思って、それぞれの地方トレセン学園を初めて訪れたら誰もが中央のレベルの高さに驚愕することになるだろう。
何しろ、それぞれの地方トレセン学園は基本的には金欠で、芝を買う金がないので地方レースはダートコースになるわけなのだ。
そのため、『ターフの上で走る』という表現が
もちろん、中央トレセン学園には芝のコースだけじゃなく、ダートコースもちゃんと用意されており、それで全距離バッチリ対応しているのだから、とんでもない規模を誇るのだ。
それぐらい中央と地方の格差は大きいわけであり、近代ウマ娘レースの起源を考えれば 本来はメインであるはずのウイニングライブに掛ける予算も地方の経営では厳しい。
そういった中央と地方の落差を目の当たりしているからこそ、中央トレセン学園が夢の舞台だと この世界に住む誰もが憧れを抱くわけである。
地方競バ:南関東シリーズの船橋トレセン学園も例によって船橋競バ場をホームグラウンドにして存在しているが、
府中市に広大な生徒寮やトレーナー寮の住宅団地に全ての距離やバ場に対応したトレーニングコースを有する中央トレセン学園と比べたら豆粒みたいなものであった。
しかし、ホームグラウンドの船橋競バ場の他にも中央競バ:中山競バ場があるため、中央入りができなくても走ることが大好きなウマ娘たちにとっては非常に人気がある地方トレセン学園となっていた。
一般的には興行収入の面からも南関東シリーズが『ローカル・シリーズ』の筆頭とも言える地位にあり、船橋(千葉)、川崎(神奈川)、大井(品川区)、浦和(埼玉)の4つの競バ場で構成されている。
現在では一般的となっているゴール写真判定、枠別の帽色、スターティングゲート、パトロールフィルム制度、ナイターレースは、ミホノブルボンが飛び入り初参加で優勝を果たした地方初の国際G1レース『東京大賞典』を開催した大井競バ場が初めて採用している。
一方で、南関東があるなら北関東シリーズもあるわけだが、宇都宮(栃木)、足利(栃木)、高崎(群馬)の人気も興行もイマイチであり、規模縮小を重ねて存続の危機にあるのだとか。
そこで北関東シリーズでは地域おこしの一環としてレースよりもウイニングライブに力を入れるという独自路線を走っているらしく、近代ウマ娘レースの本当の勝利者として評価を集めているらしい。
そして、その立役者の名前に『名門』桐生院家の人間の名前があった――――――。
しかも、それは中央トレセン学園の暗黒期にシンザン以来の“クラシック三冠バ”を達成したミスターシービーの担当トレーナーだというのだから、不思議な縁を感じざるを得ない。
ともかく、日本競バにおける1レースの売上最高額としてギネス世界記録に登録された『有馬記念』などで賑わう中山競バ場での優先席を得られるのが売りになっている船橋トレセン学園にエルダークラスが隠れ潜んでいると見て捜査を進めていった。
――――――深夜の船橋市
斎藤T「まさか、『有馬記念』前夜の船橋市を出歩いていた経験が活かされるとはな……」
アグネスタキオン’「全ては運命の女神の掌の上ということかい?」クククッ
斎藤T「どうだろうな? ここまでうまくいくとは思わなかったよ」
アグネスタキオン’「さて、エルダークラス:ヒッポリュテーの因子を継承した私がこうして他所のエルダークラスの縄張りを見せつけるように出歩いたら、いったいどうなるのかな?」ニヤリ
斎藤T「ああ。完全に擬態対象そのものになって日常生活から抜け出せない下位存在に悪態をつきながら、横暴な上司と無能な部下に苛まれる哀れな中間管理職の上位存在が釣られたというわけだ!」ニヤリ
アグネスタキオン’「聞け! “スーペリアクラス”
――――――お前たちの主の下に案内したまえ!
12月28日、背中の調子も良くなって私は一念発起して退院すると、
そして、府中市の中央トレセン学園をエルダークラス:ヒッポリュテーの軍団が侵略していたように、船橋トレセン学園に当たりをつけて、すでに冬休みに入っていた船橋トレセン学園の周りを目立つように偵察したのだ。
それもできるだけ浮浪者に思わせる装いをするのがポイントで、やつらの正体が馬のマスクを被った全身白タイツのふざけた格好の怪人:ウマ女であったとしても、馬鹿というわけではない。
擬態しては擬態対象を殺害するのを繰り返すのには限度があり、“成り代わり”を終えた後の社会的損失の影響が少ない人物を狙っての地道な情報収集をやっていたのだ。
だから、ホームレスや浮浪者、家出少女やネカフェ難民、一人暮らしの老人などを狙って次々と擬態しては“成り代わり”を果たして、不要になったら その存在を使い捨てることを繰り返していたようである。
そうすれば存在を使い捨てても不審に思われることもないし、社会から関心を持たれることも少ない。死を隠蔽するのは非常に簡単だった。
私からしても自我を保ちながら擬態したくはない擬態対象ばかりで、命令に絶対服従のジュニアクラスを充てがうのが適切とも言える。
だから、ジュニアクラスの監視を行う部隊長のシニアクラスはそれなりの身分で身動きが取りやすい立場が好まれていた。
一人暮らしの大学生や単身赴任のサラリーマンや独身のキャリアウーマン、妻に隠れてキャバクラや不倫に走るスケベオヤジ、親のカネで遊び呆けて回るドラ息子辺りが狙い目だった。
そして、やつらは『同胞たるウマ娘の解放』を建前に行動しているため、ウマ娘に擬態して殺害させることは少ないような気がする。
そう、なぜ擬態した時に擬態対象を抹殺する殺人衝動に駆られるのか――――――。そこが賢者ケイローンが矛盾に思う“フウイヌム”の生態であり、
並行宇宙に進出できるほどの空間跳躍技術があるなら、その驚異の科学力で人類文明を蹂躙すればいいだけだろうに、やつらはなぜかわざわざ擬態してからの情報収集を優先しているのだ。
それしか侵略のノウハウがないとは思えないが、それが逆にこちらに付け入る隙を与えているのだから、そこまで洗練されているとは言えないやり口だ。
もちろん、地球侵略という崇高な目的の邪魔になれば、躊躇わずに同胞たるウマ娘であろうと排除しようとするため、ウマ娘を囮にする作戦は有効ではない。
しかし、やつらには理念があり、戦略があり、感情があるのだ。必ず今回の地球侵略に当たっての戦闘
つまり、基本的にはウマ娘保護政策を推し進めながら状況に応じて非情な決断を下して絶対に失敗が許されない地球侵略を行っているように思えた。
それを踏まえてヒッポリュテーの記憶を継承した
そう、非情な決断を下して同胞たるウマ娘を殺害する要素はどこにあるのかと言えば、それは考えてみれば簡単なことだったのだ。
あの日、アグネスタキオンに擬態させるように名もなきジュニアクラスに過ぎなかった
まさか、侵略的外来種に過ぎない怪人:ウマ女なんかにウマ娘保護政策のために常識的な見地から排除されそうになっていたとは思わず鼻で笑ってしまった。
だが、少なくともエルダークラス:ヒッポリュテーの記憶から読み取れる限りだと、擬態対象のシンボリルドルフのヒトとウマ娘の絆を信じる心を読み取って知らず識らずのうちに影響を受けていたことで、
トレセン学園を離れて静養していたトウカイテイオーの担当トレーナー:岡田Tを始末するべきだったのを同情心から見逃していたこともあり、
それが仇となって私が本物の岡田Tと接触していたという状況証拠から『ジャパンカップ』に現れたトウカイテイオー’と岡田T’が偽物であることが割れてしまったのだ。
そう、少なくともWUMAは自分たち以外の存在は下等種族として差別してはいるものの、やつらなりの喜怒哀楽や倫理観というものがあるため、超科学生命体ではあるけれどもウマ娘のために涙を流せる存在でもあったのだ。
もちろん、『同胞たるウマ娘の解放』を謳っているわけなのだから、“ヤフー”に飼い慣らされた哀れな存在だとは思っていても、少しは彼女たちの気持ちに寄り添う感情の動きが芽生えていたのだ。
それが府中市の中央トレセン学園で果てたエルダークラス:ヒッポリュテーが擬態をしたことで犯してしまった最悪の失策であり、
本物のトウカイテイオーと岡田Tを始末しなかったことを皮切りにしてWUMAの地球侵略に足がついてしまったのだから、それを徹底的に利用している側としてはやるせない。
――――――船橋トレセン学園
ガチャリ・・・
斎藤T「ほう、これは想像以上の大物だったな。道理で船橋トレセン学園に巣を張るわけだ」
アグネスタキオン’「ふぅン。ここは1932年の第1回『日本ダービー』優勝の“ワカタカ”の担当トレーナーとその一族が戦後に開いた由緒正しき地方トレセン学園だったか」
アグネスタキオン’「――――――『名門』箱館一族」
箱館理事長’「そうだ。戦後の日本競バ界の歴史は『名門』箱館一族から始まったと言っても過言ではない」
箱館理事長’「故に、我ら誇り高き“フウイヌム”の同胞たる“ウマ娘”を金儲けの道具にする“ヤフー”のもっとも罪深き血族をこの世から抹殺しなければならなかったのだ」
斎藤T「異世界からの侵略者の方が私たちよりもよっぽど歴史に詳しいようだな。まあ、ウイニングライブの伝統と文化に懐疑的なトレーナーも多いことだしな」
アグネスタキオン’「じゃあ、トレーナーくん。黒幕もわかったところで――――――!」
斎藤T「――――――WUMA共! 全滅だ!」
――――――時間跳躍! 5分前の世界に修正が入る!
斎藤T「――――――トレセン学園に堂々と入らせてもらえれば、後は用済みだ」パキポキ
斎藤T「ウマ娘よりも強大なWUMAとは言え、擬態したままじゃ実力の半分も出せまい」パンパン ――――――あっという間に5人のWUMAを灰に変える。
斎藤T「そして、WUMAの死体は灰となる。理事長室までの道で監視されていない場所だから、これで完全犯罪の成立だ」
アグネスタキオン’「いやはや、本当に怖い能力だねぇ、我ながら」
アグネスタキオン’「きみも肉体改造強壮剤で立派に育ってきたねぇ。一瞬で首を圧し折るぐらいに仕上がっているよ」
斎藤T「頬張ったフライドチキンの骨を折るみたいな感触であまり気持ちのいいものじゃないけどね」
斎藤T「さて、これで偽物の箱館理事長’とサシで対面できるな」
ガチャリ・・・
怪人:ウマ女「シネェ!」 ――――――いきなり
斎藤T「いきなりだな」パシッ
アグネスタキオン’「でも、きみからしたら欠伸が出るぐらいなんだろう?」
怪人:ウマ女「ナッ!?」
怪人:ウマ女「バ、バカナ!? ドウシテ“ヤフー”ゴトキニ“フウイヌム”デアルワタシガオクレヲトル……?」
怪人:ウマ女「ナラ、クラウガイイ! ワガサイコキネシスヲ――――――!」
アグネスタキオン’「ふぅン」
怪人:ウマ女「ム」
怪人:ウマ女「ムムッ!?」
怪人:ウマ女「――――――サイコキネシスガ!? チカラガカキケサレル!?」
斎藤T「ちゃんと角も羽も生えているのが確認できたことだし、次からはいつでも殺せるな」
アグネスタキオン’「ああ。思い切って来た甲斐があったね」
怪人:ウマ女「イ、イッタイナニモノダトイウノダ、キサマタチハ!?」
怪人:ウマ女「イヤ、ワタシノイトシイコタチヲチリニカエストハ、カトウセイブツノブンザイデヨクモ! ユルサナイィイイ!」
斎藤T「馬面でも怒ったら迫力が出るもんだな」
アグネスタキオン’「ああ、なるほど、こいつがエルダークラス:ヒッポクラテアだね」
怪人:ウマ女「ナ、ナゼワタシノナマエヲシッテイル……!?」
怪人:ウマ女「イヤ、コノカンジハ マサカ ヒッポリュテー!? ヒッポリュテートモアロウモノガ ケイローントオナジク ワレラヲウラギッタトイウノカ――――――?!」
怪人:ウマ女「イヤ、チガウ? ナゼ“ヤフー”カラモ ヒッポリュテーヲカンジル!?」
怪人:ウマ女「ナラ、ドウイウコトナノダ!? コノ“ヤフー”カラカンジルノハナマナマシクテ、ウマムスメノホウカラカンジルノハスキトオッタカンカク――――――」
怪人:ウマ女「オマエタチ! ヒッポリュテーニナニヲシタアアアアアアアアアアアア!?」
アグネスタキオン’「さあ、最上位の“フウイヌム”を使って楽しい楽しい実験といこうか!」バサッ ――――――自由の女神の冠を模した角と純白の翼が展開される!
怪人:ウマ女「ナッ!?」
怪人:ウマ女「ソノツバサハエルダークラスノアカシ――――――」
怪人:ウマ女「オ、オマエ! オマエェ! オマエェエエ! ジュニアノブンザイデナリアガッテ!」
怪人:ウマ女「“ヤフー”ゴトキニホダサレタカ、ワレラ“フウイヌム”ノツラヨゴシガ!」
アグネスタキオン’「そんなに怯えなくてもいいんだよ、すぐに気持ちが良くなるからさ」
アグネスタキオン’「ほら、手伝いたまえよ。そのために協力してやったんだから。実験データはきちんとレポートにして次の周の私に提出するように」
斎藤T「……お前が
怪人:ウマ女「ナ、ナニヲスルキダ! ヤ、ヤメロ! ワカッテイルノカ!? ワタシハエルダークラス! オマエタチノヨウナチヲハウムシケラガフレテイイワケガナイノダ!」
アグネスタキオン’「いよいよ仮説を証明する時が来たね」
――――――なら、エルダークラスより更なる進化した“スーペリアクラス”が命じる!
●1周目:12月31日
――――――船橋市三番瀬
斎藤T「見ろ、朝日だぞ」
アグネスタキオン’「これが今年最後の来光か……」
アグネスタキオン’「最高に充実した実験データと共に年末を迎えられたね、トレーナーくん」
斎藤T「そうだな。エルダークラス:ヒッポクラテアを服従させることに成功して、そこからヒッポクラテアの軍団を使って実験三昧だったものな」
斎藤T「おかげで、WUMAに関する情報はバッチリ集まった。これで残り2体のエルダークラスの軍団とも戦える」
斎藤T「あとは、24日の夜に多摩地域の空に現れるブラックサンタクロースを撃ち落として、その勢いで奥多摩を奪還すれば、WUMAは年内に殲滅できる!」
アグネスタキオン’「……うん」
斎藤T「なんか、さっきから頭の中で日めくりカレンダーがちらついているから、ここで念じれば その瞬間に24日に時間が巻き戻されるんじゃないかって気がしている」
斎藤T「じゃあ、本当にありがとう、
アグネスタキオン’「……トレーナーくん」
斎藤T「?」
アグネスタキオン’「日めくりカレンダーをめくることができるきみだけがタイムリープするのだろう?」
斎藤T「ああ、そうなるという確信が今ではある」
アグネスタキオン’「私ときみは同じ“特異点”であっても、私はきみとは一緒にはいられないのだな……」
斎藤T「その寂しいと思う心すら書き換えられるのが時間跳躍だ」
アグネスタキオン’「ああ。空間跳躍を応用した並行宇宙への移動なんて所詮は別な映画のフィルムの世界に飛び移るだけのことだけど、」
アグネスタキオン’「きみが経験する時間跳躍は世界である映画のフィルムそのものに手を加えることができるディレクターズカットだ」
アグネスタキオン’「そして、世にも不思議な時間を巻き戻す“目覚まし時計”によって再構築された世界は三女神というプロデューサーによるファイナルカットだ」
アグネスタキオン’「きみは
斎藤T「どうだろうな? 私は今回の1週間で多摩地域を見捨てて、必要なことだったとは言え、船橋市でWUMAを使った非人道的な実験に残りの日々を費やした――――――」
斎藤T「ずっと“
アグネスタキオン’「私はこの時間がずっと続けばいいと思っていたよ」
アグネスタキオン’「ここでの実験を通してわかったことがあるんだ」
斎藤T「――――――『実験』? まだ何か報告したいことがあるのか?」
アグネスタキオン’「いや、こればかりは絶対に言葉じゃ伝わらないものだから、それを報告させることができないのが悔しくてね」
アグネスタキオン’「でも、プロデューサーによって再構築されたファイナルカットに引き継がれることを祈りたい気分なんだ」
斎藤T「だから、何なんだ? 大丈夫だ、日めくりカレンダーをめくらない限りは今の時間の流れは続く」
斎藤T「もしかして、“目覚まし時計”が不発に終わっても大丈夫なように、ヒッポクラテアの軍団を完全に傘下に収めたことに何か不安でもあるのか?」
アグネスタキオン’「そうじゃないんだ」
アグネスタキオン’「そうじゃなくて、私はようやく理解できたんだ」
アグネスタキオン’「――――――きみはずっと私の側にいてくれただろう?」
斎藤T「ああ」
アグネスタキオン’「私はアグネスタキオンに擬態したジュニアクラスの“フウイヌム”に過ぎなかった」
アグネスタキオン’「それがたまたまエルダークラスの血統であり、2人のエルダークラスの因子を受け継いだことでスーペリアクラスへと進化することができた」
アグネスタキオン’「それによって、私はきみが名付けてくれた
アグネスタキオン’「でも、それが本当に私自身の意志なのかが証明できずにいてね」
斎藤T「?」
斎藤T「――――――『我思う、故に我あり』ということか?」
アグネスタキオン’「わかるだろう? 下位クラスのジュニアクラスにとっては上位クラスの命令は絶対。それはエルダークラスであっても例外じゃなかった」
斎藤T「ああ。完全にスーペリアクラスがエルダークラスよりも上であるという格付けはすんだだろう?」
アグネスタキオン’「となると、私が“もうひとりのアグネスタキオン”だと思っていたものは本当はヒッポリュテーやケイローンの意識が合わさったものなんじゃないかって不安になっていたんだ」
斎藤T「いや、因子継承が起きた後も根っこは“もうひとりのアグネスタキオン”にしか見えなかったぞ? 空間跳躍能力が使えるようになって、そこから個性が芽生えただけだろう?」
アグネスタキオン’「そうじゃない。そうじゃないんだよ、トレーナーくん」
アグネスタキオン’「私がきみに対してどういった想いを向けているかは知っているだろう?」
斎藤T「……まあ、ヒッポリュテーの想いを継承しているからな」
斎藤T「いや、それを言ったら、お前だって私がどう思っているかなんてわかっているだろう?」
アグネスタキオン’「私はね、トレーナーくん。私自身のことが怖いんだよ……」
斎藤T「え」
アグネスタキオン’「どうして私が同胞である“フウイヌム”たちで人体実験ができたのかを考えていたよ」
斎藤T「……今回のことは勝つためにはしかたがないことだったんだ」
アグネスタキオン’「私は臆病だったんだと思う」
アグネスタキオン’「もしも“フウイヌム”に対してあれほどの人体実験をできるのだとしたら、私がやつらの仲間であると思われることもなくなるんじゃないかって……」
斎藤T「まさか――――――」
アグネスタキオン’「ああ。ヒッポリュテーは“フウイヌム”としての意識に“皇帝”シンボリルドルフの意識が割り込んできていたわけだが、」
アグネスタキオン’「私の場合はウマ娘:アグネスタキオン’の意識にウマ女:ヒッポリュテーの意識が割り込んできているから、」
アグネスタキオン’「本来は私こそがそのバケモノの一人なのにバケモノの思考に自分が染まることにひどく怯えているんだよ、実はね……」
斎藤T「……2つの心を持つのも大変だな」
アグネスタキオン’「ああ。だから、私は殺したよ、たくさん」
アグネスタキオン’「最低だとは思わないかい? 他人から借りた偽物の姿をして ここまで悍ましくなっちゃったよ、私は……」
斎藤T「それなら私も同じことだ」
アグネスタキオン’「だから、
アグネスタキオン’「無理だったよ。私がウマ娘を超えたバケモノであることはどこまで行っても変えようがない真実だった……」
斎藤T「ああ、なるほど。そうかい」
アグネスタキオン’「でも、だからこそ、
斎藤T「そういうことか」
斎藤T「だから、怖いのか? 『もしも世界から取り残されたら』と考えると?」
アグネスタキオン’「……ああ。本当に“目覚まし時計”によって世界が再構成されるのではなく、ただ単にきみが並行世界に旅立つものだったとしたら?」
斎藤T「そうだな。こういうのはこれで最後にした方がいいのかもしれないな」
アグネスタキオン’「トレーナーくん……」
斎藤T「やはり、“目覚まし時計”を使うことを前提にした戦略は間違っていたというわけだな」
斎藤T「そのことに気づけただけでも『ここまで来れてよかった』と心の底から思っているよ」
アグネスタキオン’「……わからない」
アグネスタキオン’「どうしてきみは私のことを肯定するんだい!? 私は本物のアグネスタキオンでもなければ、ヒッポリュテーでもないし、会長でもない! 全てが偽物なんだ!」
アグネスタキオン’「でも、その事実から逃げようと足掻いたら、私は同胞であるはずの“フウイヌム”を実験という名目で手にかけてきた真性のバケモノだったんだよ!?」
アグネスタキオン’「そして、今だって私はきみがいなくちゃ本当は……」
斎藤T「……これはどういったらいいんだろうな?」
そして、年末の朝を迎えた。初日の出の正反対ということで終いの日の出である。
あれから私と
これによって、
これで『有馬記念』の翌日となる24日に時間が巻き戻るのだから、船橋トレセン学園理事長に成り代わりをしていたエルダークラス:ヒッポクラテアをいつでも無力化できる。
そこから多摩地域に現れたブラックサンタクロースを24日の夜に討ち果たして、25日に奥多摩を制圧すれば異世界からの侵略を食い止めることができる。
しかし、必要なことだったとは言え、まさか
『自身の正体がバケモノであっても人間で在り続けたい』という願いに加えて、『人間でありながら自身がバケモノの思考に染まる』という恐怖に人知れず苛まれていたなんて――――――。
これはたしかに普通に人間として生まれてきた存在には絶対に理解できない境遇の宿命であった。
しかし、そもそも、この
だから、そういうものだと最初からわかっているからこそ細心の注意を払って接してきたわけであり、因子継承するまでは実験室に籠もることを強要された方のアグネスタキオン’という程度のちがいしかなかった。
だが、三女神像のおまじないの儀式で得たWUMAの進化はこのようにして代償を求めてきたのだった。
やはり、ウマ娘にとっての皇祖皇霊たる三女神はWUMAとして生まれた彼女の業の深さを許しはしなかったのだ。
たしかに、私が
そして、WUMA討伐の戦力として当てにしていたのも事実で、彼女自身がが必死に否定し続けているバケモノが次々に討たれていくことに何を感じているのかを考えてこなかった。
なるほど、私に狩られる側の存在から一緒になって狩る側になることができれば、自身がバケモノであるという決して逃れられない宿業も忘れられると――――――。
いや、そうじゃない。そういう風に教え込んでしまったのは他の誰でもない――――――。ふとした拍子にWUMAとしての本性が露になることを恐れて彼女を実験室に閉じ込めてきた私自身だ。
そう、本物のアグネスタキオンが来年のレースデビューのために私と一緒に外出することが増えた一方、私は“もうひとりのアグネスタキオン”をWUMA討伐の時だけ実験室から連れ出していた。
そうだ。“もうひとりのアグネスタキオン”として好きなだけ実験室で実験漬けの幸せな生活を送ることができる存在だと私は羨んでいたが、
アグネスタキオンが誰かと一緒に出かけることに喜びを覚えたということは、それを実験室に一人居て聞かされてばかりの“もうひとりのアグネスタキオン”も羨ましいと思わないはずがない。
そうか、彼女も立派な乙女だったんだなって、宇宙移民船での限られたコミュニティでの暮らしの中ですっかり忘れていたことに気付かされた。
まだまだ子供――――――、というより実際に成長期半ばの色づく年頃の子供なのだから、そういった少年少女たちの繊細微妙な感情の揺れ動きを大人が無視してはいけない。
それが表面化したのがヒッポリュテーの想いを受け継いだ因子継承の時だったとすれば、そのままにしておいていいはずがないのだ。
そうなれば、いずれは報われない想いのために昏い感情を爆発させることになり、そうなった時に何が起きるのかなんて予想なんてつかない。そのことを私は『有馬記念』前夜の
そうだ。私はこうして彼女と一緒に年末を迎えられたことを全力で肯定していいんだ。
最初から24日に時を巻き戻して多摩地域を救うことを決めていたのだから、船橋市を救って世界も救う算段をここで整えて正解だったんだ。
たとえ“
それよりも、私は今ここで奥多摩を攻略した後に将来的に爆発することになるだろう
年内にWUMAを殲滅できた後も、私は私の独断でバケモノでありながらバケモノであることを否定する他ない彼女の面倒を見るのだから、その可能性を思い出すことができて本当によかった。
そう、24日の聖夜に身を挺してトレセン学園の生徒を暴走車から救って入院生活から始まった最初の1週間で話したことや思いついたことは決して無駄にはならないのだ。
WUMAに勝つためにWUMAの思考や在り方を追究して理解を深めていくことで、WUMAであろうとも人間と変わらない喜怒哀楽や倫理観があることを私は認めるようになっていた――――――。
――――――彼女が年末の朝に海辺で来光を拝みたくなった気持ちの奥にあるものがわかった。
バチャバチャ!
アグネスタキオン’「うわっ!? 冷たいじゃないか!?」
斎藤T「ほら! 朝焼けなのに何を黄昏れてんだ!」
アグネスタキオン’「トレーナーくん! 私は真剣に――――――」
斎藤T「生きろ!」
アグネスタキオン’「え」
斎藤T「生きろ!」
アグネスタキオン’「いや、『生きろ』と言われても――――――」
斎藤T「生きろ!」
アグネスタキオン’「だから……!」
斎藤T「生きろ!」
アグネスタキオン’「きみ!」
斎藤T「生きろ!」
アグネスタキオン’「……トレーナーくん?」
斎藤T「生きろ!」
アグネスタキオン’「きみはこんな私でも『生きろ』と言ってくれるのか?」
斎藤T「生きろ!」
アグネスタキオン’「わかった。生きるよ」
アグネスタキオン’「だから、生きろ! 死なないでおくれよ、トレーナーくん!」
アグネスタキオン’「私も生きていくから!」
アグネスタキオン’「そういうことなんだろう!?」
斎藤T「ああ、さようならだ」
――――――また会おう!
タッタッタッタッタ! バンッ! バチャアアアアン!
言うべきことはシンプル。私はその言葉を全力で表現して思いっきり大地を蹴り飛ばして東京湾へと飛び込んだ。
私が記憶する走り幅跳びの人類記録が10m未満だと考えるなら、最後の朝焼けの中で三番瀬から臨む東京湾に大きな水柱を立てた私は十分に人間を超えたのだろう。
だから、意識が暗く冷たい重たい東京湾に沈むきる前に確かに私は見ることができたのだ。
東京湾の朝焼けの中で純白の翼をはためかせたグリゴリの天使の飛翔――――――。
生きるとは怖いこと。
生きるとは傷つくこと。
生きるとは間違うこと。
生きるとは苦しむこと。
生きるとは涙を呑むこと。
生きるとは勇み立つこと。
生きるとは巣立つこと。
生きるとは高みを目指すこと。
生きるとは
――――――そして、時は巻き戻る!
●2周目:12月24日
アグネスタキオン「必要なものがあったら遠慮なく言いたまえ。もっとも、言われるまでもなく必要なものは用意できているだろうけどね」
アグネスタキオン「妹君と一緒に首を長くして待っているからね」
斎藤T「ああ」
アグネスタキオン「またバイクに乗せて連れて行ってくれよ、スピードの彼方へ。楽しみにしているから……」
斎藤T「ああ。
ガチャリ・・・
アグネスタキオン「さて、これからどうするとしようかねぇ?」
アグネスタキオン「トレーナーくんが12月31日を迎えることで“目覚まし時計”の力で時間が巻き戻されて全ての状況がリセットされるのなら、この1週間は形に残る研究は無意味になるからねぇ」
アグネスタキオン「となると、研究は中止して最新の研究論文を読み漁って情報収集に徹しているのが一番かな?」
アグネスタキオン「……それと、ニュースでも見ておこうか。もしかしたらトレーナーくんが頑張っている様子を見られるかもしれないしね」
――――――なあ、トレーナーくん。
アグネスタキオン「まったく、私を待たせるとはねぇ。私はずっときみのような最高のモルモットが来るのを待ち続けていたのに、また待たせるつもりなのかい?」
アグネスタキオン「この実験室も随分と快適な環境になったもんだよ。実にいいじゃないか、このマッサージチェアも」
アグネスタキオン「けど、万が一に備えての特許の相続権なんて、私にとっては無用の長物でしかないのにな……」
アグネスタキオン「きみがいない実験室はこんなにも静かだよ。シーズンが終わったトレセン学園の冬休みなんていつもこんな感じだったのに……」
アグネスタキオン「早く帰ってきておくれよ、トレーナーくん……」
ガチャリ・・・
アグネスタキオン「ん?」
斎藤T「あ、ちゃんと24日の朝に戻っているな」
アグネスタキオン「……トレーナーくん!?」ガタッ
アグネスタキオン「――――――!」ゴクン
アグネスタキオン「おやおや、トレーナーくん? 随分とお早い帰りだねぇ? ついさっきここを出たばかりなのにねぇ?」ニヤニヤ
斎藤T「ああ。やることができた。手伝ってくれ。今夜、絶対に必要なものなんだ」
アグネスタキオン「なるほど、きみはちゃんと
――――――おかえり、トレーナーくん。