ウマ娘超光速戦記 -TACHYON Transmigration- 作:LN58
第1話 夢の舞台のその先にあるもの ✓
-西暦20XY年01月16日の航星日誌- GAUMA SAIOH
国民的スポーツ・エンターテイメントの殿堂『トゥインクル・シリーズ』において新たな時代の象徴となる空前絶後のレースが開催されようとしている。
3年前;“天才”トウカイテイオー、“名優”メジロマックイーンらがクラシック世代の年、あるいはミホノブルボン、ライスシャワー、サクラバクシンオー、ハッピミークらが入学してデビューした年に、
中央トレセン学園の秋川やよい理事長が突如として本競走の開催を発表したことからトレセン学園の黄金期が最後の輝きを増したように感じられた。
当初、構想だけは語られ、秋川理事長が実現のために各方面に協力を仰いだわけなのだが、その内容は前代未聞の『全レース場の全距離』『全国で同時開催』『トーナメント方式』というものであった。
理事長によれば、距離や適性が合わずにこれまで涙を呑んだウマ娘たちが多い中、“全てのウマ娘が輝けるレース”として設定したという。
これは“皇帝”シンボリルドルフが掲げていた“ウマ娘の誰もが幸福になれる時代”という理念に一致するものであり、理事長と生徒会長による二人三脚の理想であったことの証明であった。
しかし、この理念と構想を実現するために求められるものがあまりにも現実離れし過ぎていて発表から開催までに実に3年の年月が流れてしまっていた。
まず、出走枠が大きいレースであるなら、URAに登録して参加枠に恵まれなかった競走ウマ娘たちに公平にチャンスを与えることができるので、『全レース場の全距離』を対象にしたレースを開催することに疑問を抱く者はいないだろう。
だが、それは要するに、バ場には【芝】と【ダート】の2種類があり、距離には【短距離】【マイル】【中距離】【長距離】の4つが存在するので、その組み合わせで8部門のレースが開かれることになる。
そして、全国各地の競バ場も年間を通して様々なレースを開催しているので、理念を理解したが新設したレースのために何日もスケジュールを割くわけにはいかないので、足並みを揃えて『全国で同時開催』になるのも自然なことだ。
なので、当初は船橋市の中山競バ場の年末の名物だった『有馬記念』を前倒しにして、仕事納めの年末の最後の1週間なら全国各地の競バ場が全て使えるように調整を進めていたようであった。
ここまでだったら、年末の『有馬記念』を超える新たなオールスターゲームの誕生で、更に日本中が熱狂するはずだと誰もが楽観視していた。
むしろ、『有馬記念』が『URAファイナルズ』に組み込まれるのか、あるいは前哨戦という位置づけになることを危惧する声もあったが、全国各地の競バ場の日程を照らし合わせると仕事納めの年末最後の1週間に開催することが妥当と判断されていた。
そして、新たなるオールスターゲームへの参加条件と出走枠について議論が交わされ、ファン投票による春秋グランプリ『宝塚記念』『有馬記念』と同じくすることはすぐに決まった。
しかし、問題は『宝塚記念』『有馬記念』はバ場や距離が固定だからファン投票の結果も単純に反映できたが、
たとえば【芝】と【ダート】の両方で活躍していたウマ娘はどちらに出走するのか、たとえば【中距離】と【長距離】で活躍してたウマ娘はどちらに出走するのか――――――、その選択権がファン投票にあるのか、競走ウマ娘の側にあるのかであった。
これに関しては、理事長が単純明快に出走拒否するかは陣営の判断にあることにならって『どの部門で出走するかは競走ウマ娘自身の決定に委ねる』とした。
それに付け加えて、まだ開催時期が明確になっていない頃から『URAファイナルズ』出走を希望するウマ娘たちが事前に登録することができる特設サイトも開設して、そこで自身の希望する部門が公表される仕組みも作ることになった(開催2週間前まで途中変更可能)。
これによって、ファン投票の実施もまだではあったものの、ウマ娘レースのファンたちは応援するウマ娘の特設サイトでの登録情報を見て、夢の対決を心待ちにすることになった(実は、このファン投票という制度が
ただ、春秋グランプリ『宝塚記念』『有馬記念』と明確にちがう点は、出走条件をシニア級(3年以上)に限定していたことにあった。
つまり、『有馬記念』のような新旧世代対決は意図しておらず、どちらか言うと『トゥインクル・シリーズ』を3年以上走り続けることができたウマ娘に対する最後の晴れ舞台を用意する意味合いが大きいのだ。
これはそもそも『トゥインクル・シリーズ』を3年以上走り抜くことができなかった;故障や成績不振などで引退してトレセン学園を退学する生徒が多いことに対する中高一貫校としてのトレセン学園への批判が根底にあり、
特に、中等部からデビューを果たして2年目:クラシック級で“三冠バ”になれなかったことを苦にして引退・退学する生徒の存在はいくら厳しい勝負の世界とは言っても教育現場としては見過ごすことができない問題であった。
そのトレセン学園が抱える二律背反の問題に対する回答が『URAファイナルズ』という
これが秋川理事長とシンボリルドルフが目指した理想であり、そのために出走枠が部門ごとにたった18人で満足できるわけがなかったのだ。
とにかく、たくさんのシニア級:3年目まで走り抜いたウマ娘たちが上位リーグへの昇格やG1勝利を果たせずとも全員がターフの上で走ることができる最後の記念となる卒業レースを夢想していたのだ。
だから、前代未聞の『トーナメント方式』を採用して、どれだけ才能や運に恵まれてこなかったウマ娘であっても一度はトレセン学園の狭き門を潜り抜けてきた矜持と闘争心を満足させるための最後の場を溢れんばかりの情熱と莫大な私財を擲って秋川理事長は設けたのである。
そのため、この『URAファイナルズ』には中央官庁も開催に全面的に協力しており、参加者を増やすための前代未聞の『トーナメント方式』で興行を成功させるためにはどういったバ券を販売するべきなのかを真面目に試算して取り組んでいたという。
なにしろ、ウマ娘レースという公営
なので、そういった状況が改善されると見込まれている上に、かつてない規模の興行による文部科学省への実入りを考えれば、全力を出さざるを得ないだろう。
つまり、『URAファイナルズ』の本質というのは、公営競技であるウマ娘レースの厳しい勝負の世界を取り仕切る元締めと青少年の健全な育成と教育を指導すべき立場の2つの顔を持つ文部科学省が主導する官民一体の政策でもあったのだ。
そうした背景を踏まえると、なぜ『URAファイナルズ』について秋川理事長が頑なに『全レース場の全距離』『全国で同時開催』『トーナメント方式』であることに拘ったのか、“全てのウマ娘が輝けるレース”の意味が理解できたはずだ。
よって、本来は世界基準に従ってシーズンの終わりとなる年末の仕事納めからの1週間で開催すると思われていた『URAファイナルズ』であったが、
日本の教育現場の事情が絡んだことにより、年度末から逆算した1月:予選、2月:準決勝、3月:決勝戦という異例の長期戦になるように最終的な開催日時が決定したのである。
もちろん、URAに登録しているウマ娘のための卒業レースなのだから、ここに外国バが参戦する枠など用意されるわけがないのだが、
世界でも異例とも言える構想と理念の『URAファイナルズ』の開催について海外の反応を見るに『まさに日本人だから開催できる真心のこもったレース』という期待と羨望の声が寄せられていた。
そういうわけで、どうやら“門外漢”である私が 今更 トレセン学園における中高一貫校の6年間に対して メスを入れる必要性はどこにもなかったというわけである。
ちゃんと当事者同士で問題意識を持って改革をやろうとしていたのだから、私は私の方で中高一貫校の6年間でしかウマ娘たちが走る機会と興奮が得られない問題を解決することに目を向ければいい。
ただし、やはりというか、【ダート】に関しては元々の競技人口が少ないせいで距離別に部門を立てることができなかったことから、距離が統一されることが通達されることになった。
なので、実質的には【短距離】【マイル】【中距離】【長距離】【ダート】の5部門による『全国の競バ場で同時開催のトーナメント』にシフトしている。
要約すると、国民的スポーツ・エンターテイメントである『トゥインクル・シリーズ』の夢の舞台の狭き門を潜り抜けることができた者は、どれだけ実績がなかろうとシニア級:3年目が終わるまで在籍し続けていれば、“ファン投票によって当選した”という体裁で全員が卒業レースに望むことができるというわけなのだ。
これは非常に画期的なことであり、成績不振や故障によって引退即退学となりがちなトレセン学園において辛い立場に追い込まれる担当ウマ娘と担当トレーナーに対する風当たりを緩和する救済策として有効に働くのではないかと期待されていた。
そして、ファン投票という体裁だが、実際にはG1勝利もできなかった夢の舞台の主役にもなれなかったウマ娘を対象に最後の記念として誰もが参加できることを目的とした卒業レースのため、
予選トーナメントであろうと、きちんと1試合ずつに賞金が支払われるようになっているので、フルゲート:18人の抽選次第で未勝利バが予選レースで掲示板入りを果たして初めて賞金を獲得することもまったくの夢ではないのだ。
だから、1月に開催される予選トーナメントにこそ一番に力を入れており、試合数も多いので土日を費やしてのビッグイベントとなることだろう。
また、決勝戦は必ずフルゲート:18人になるように全体の参加人数から準決勝での決勝戦進出の人数調整が行われるのも特徴で、トーナメントを勝ち抜いてきた18人の実力者たちが一斉に駆け抜けるレースの興奮はどれほどのものか――――――。
そして、基本的に部門ごとに設定された競バ場を使い続けるので試合の順番が後になるほどバ場が荒れてしまうなどのリスクがあるが、
準決勝のレースで勝利できなくても必ず決勝戦はフルゲート:18人になるように順位ごとのタイムで決勝戦進出の優先順位が決められていくので、準決勝でベストを尽くす意味は失われない。
むしろ、この『トーナメント方式』における真の勝利とは優勝しかないので、たとえ予選や準決勝で1位通過できなくても、そこから決勝戦で優勝してしまえば、予選や準決勝での敗北は公式記録にはカウントされないことになっているのだ。
逆に言えば、決勝戦進出を果たして優勝しなければ『URAファイナルズ』での予選や準決勝での勝利は勝鞍にカウントされないわけであり、かなり特殊な裁定がなされてもいるようだった。
ただ、必ずしも『URAファイナルズ』が全てのウマ娘たちの絶対の目標になるかは別な話である。
以前から指摘されていたように、基本的に1月から3月の冬季は世界基準ではシーズンの頭ではあるものの、あまりメジャーではないオフシーズンであり、開催時期としてはベストコンディションを維持するのが難しい時期でもある。
冬の寒さが極まる1月に予選トーナメントが開催され、次にトレセン学園の入学試験によって学内の施設が利用できない期間を挟む2月の準決勝トーナメント、最後に大学入試や卒業式の後の季節の変わり目となる3月に開催されるのが決勝戦なのだ。
しかし、そういう時期じゃないと『全レース場の全距離』『全国で同時開催』『トーナメント方式』の条件を満たすことができないわけであり、秋川理事長としては苦渋の決断でもあった。
しかも、ウマ娘は極めてデリケートな生き物で、3ヶ月に渡る3連戦が必ずできる保証はないため、シニア級:3年目を無事に終えて4年目も5年目も頑張ろうとする強豪たちがこぞって参加を見合わせることも十分に考えられる。
そう、国民的スポーツ・エンターテイメント『トゥインクル・シリーズ』で活躍して その存在を日本中に知らしめ、あるいは上位リーグ『ドリーム・シリーズ』への昇格が見込めるような名バたちからすれば、
『URAファイナルズ』は トレセン学園で夢を掴めむこともできずに みっともなく夢の舞台にしがみついていた者たちの慰安が目的の 真剣勝負の世界で仲良しこよしを謳った 卒業レースだと酷評してくることだろう。
そんなことはわかっている。真剣勝負の世界に情けは無用であり、同情は侮辱にもなろう。
しかし、それなら自分の力で道を切り開ける者は『トゥインクル・シリーズ』のシニア級のもう1年を過ごせばいいし、あるいは『ドリーム・シリーズ』に昇格して更なる高みを目指せばいいのだ。
そうじゃない。秋川理事長としては『URAファイナルズ』で栄誉が与えたいのではない。機会を与えたいのだ。
――――――秋川理事長は信じていた。ウマ娘という生き物がどれだけ走ることが大好きなのかを。
――――――トレセン学園/元 岡田Tのトレーナー室
ジャー、ジャー、ジャー・・・
斎藤T「いよいよ、『URAファイナルズ』が開催されるな」
アグネスタキオン「ふぅン。
斎藤T「まあ、そうだな」
斎藤T「とりあえず、このトレーナー室も随分と狭くなったな。お前のなけなしの実験機材やら何やらで」
アグネスタキオン「そうだね。懐かしい感じがするね。カフェと一緒に部屋を分け合っていた頃を思い出すよ。部活棟が新しく建て直される前の話さ」
斎藤T「アンチ・ドーピングに引っ掛かりそうな生化学のイメージを払拭させるために、工学のイメージで頑張ってもらうからな。その分だけ嵩張るんだがな」
アグネスタキオン「ああ。私にしても肉体改造強壮剤はもう必要ないぐらいだからね。後は本格化を迎えた時に効率的な成長が見込める算段を6月の
アグネスタキオン「しかし、きみねぇ? ペーパーレス化のためにスーパーコンピュータを置くのはいいけど、これだけの宇宙食や非常食、健康食品を備蓄しておく必要があるのかい?」
斎藤T「あるに決まっているだろう。これは百尋ノ滝に移送する分でもあるんだから」
斎藤T「私はエンジニアだ。私のトレーナーの仕事なんてものは、トレーニングに足を運ぶこと以外はここにあるスーパーコンピュータを介してレンタルオフィスで十分にできることだからね。ここは堂々と使える物置でしかないよ」
アグネスタキオン「まあ、言わんとすることはわからなくはないがね」
アグネスタキオン「レースに出走する前日にはウマ娘は競バ場の調整室に入ることが普通だしね」
アグネスタキオン「しかし、まだ実験室の頃の方が生活感があったぞ? ここは本当に頭が混乱しそうなカオスな物置だよ。ユニットシャワールームなんて置いてあるしね」
斎藤T「それは私と
アグネスタキオン「あ、それもそうだったね……」
アグネスタキオン「お、上がったみたいだね」
アグネスタキオン「どうだい、使い心地は?」
ナリタブライアン「悪くないな。前々からシャワールームで服を脱げばいいと思っていたが、これはそれを叶えてくれた」サッパリ ――――――ユニットシャワールームのモニターに協力!
ナリタブライアン「おい、そこの保存食の中に北の珍味の缶詰があっただろう。それをもらおうか」
斎藤T「ヒグマとかエゾシカのことか? あ、トドやクジラもあるぞ」
ナリタブライアン「全部だ。1つや2つじゃない。全部だ」
斎藤T「わかった。しかし、味が濃そうだな。白米も欲しくないか」
ナリタブライアン「ああ。4パックくれ」
斎藤T「欲張りだな」
ナリタブライアン「どうせ、貯め込んだところで消費しきれないだろう。食べるのを手伝ってやるから、早く食べさせろ」
斎藤T「……大丈夫なのか? 『URAファイナルズ』の予選が26日か27日かは知らないけど」
ナリタブライアン「安心しろ。これでもクラシックの頃よりは食べてない。小腹を満たす程度だ。むしろ、調子を取り戻すためにはもっと必要だな」
ナリタブライアン「だいたい、私の元担当がうるさいんだ。姉貴も姉貴で卒業したら栄養バランスが偏るとか言ってうるさくなってな」
ナリタブライアン「私だって栄養学の基本ぐらいは理解しているさ。だから、サプリメントで必要な栄養は摂取している」
ナリタブライアン「けど、それ以上に好きなものを口に入れておかないと落ち着かないから、勝つために必要なことが何なのかは私自身が一番に理解している――――――」
アグネスタキオン「だから、放っておいて欲しいわけなんだな」
ナリタブライアン「ああ。会長や姉貴のために生徒会副会長だなんて柄でもないことをやっていたせいで身体が鈍ってしかたがなかったんだ」
ナリタブライアン「けど、あんたがサブトレーナーになったハッピミークにまさかハナ差で負かされるとは思ってなかったし、『有馬記念』でトウカイテイオーにも負かされたからには次こそは勝ちを掴み取りたい」
アグネスタキオン「なるほどねぇ」
ナリタブライアン「タキオン、お前はテイオーとは同期ではあっても同世代ではなかった」
ナリタブライアン「会長はテイオーが“三冠ウマ娘”になることに賭けていたようだが、私も姉貴も名家の出身ではないテイオーよりも“アグネス家の最高傑作”という前評判のお前が“三冠ウマ娘”になると期待していたんだぞ」
ナリタブライアン「それをこうも長々と待たせたんだから、今更メイクデビューするからには絶対に勝て」
アグネスタキオン「言われずとも、私の研究成果であるウマ娘の可能性の“果て”を見せてやるさ。そのために私は待つことを選んだのだからね」
ナリタブライアン「――――――最高のウマ娘には最高のトレーナーがつくというわけだが、私を前にして物怖じしないのもそっくりだな」フフッ
アグネスタキオン「ありがとう。私の実力は私自身が誰よりも正しく評価しているからね」
斎藤T「勝つかどうかなんて知らん。トレーナーなんてものは出走チケットに過ぎないのだから、勝てる見込みのあるウマ娘で儲けさせてもらうだけだ」
ナリタブライアン「それもそうだな。姉貴があんたをトレーナーに逆指名しようとしていたように、私の担当があんただったとしても何だかんだ言ってうまくやれそうだ」ハハッ
アグネスタキオン「――――――!」
斎藤T「ほら。ごはん4パックと北の珍味の缶詰の盛り合わせだ」
ナリタブライアン「おお。ありがたくいただくぞ」
斎藤T「そうだ。飲み物も欲しいだろう。マテ茶とレモン水があるけど、どっちがいい?」
ナリタブライアン「それなら、どっちもだ!」
その日、24時間の耐久試験が終わった偽装された瞬間物質移送器の表向きの機能であるユニットシャワールームのモニターを募集する準備をしていたところ、
以前に岡田Tのトレーナー室を貰い受けて学園の備品を返却するのを見届けに来た生徒会副会長:ナリタブライアンが部屋の中に抜群の存在感を示す完全循環型ユニットシャワールームに興味を持って、自らモニターを名乗り出ていた。
彼女は『URAファイナルズ』を最後に姉共々『トゥインクル・シリーズ』を卒業して上位リーグである『ドリーム・シリーズ』に移籍することが決まっていた。
昨年の『有馬記念』で姉:ビワハヤヒデと熾烈な先頭争いをしていたところを“皇帝”シンボリルドルフが自身の後継者と見込んでいた“悲劇の天才”トウカイテイオーに差し切られたが、
それでも、ブランクを感じさせない圧倒的な走りで“怪物”ナリタブライアンが健在であることを世に知らしめることになり、こうして『URAファイナルズ』に堂々と参戦することになった。
そのため、『URAファイナルズ』において【中距離】部門に出走希望しているナリタブライアンは姉:ビワハヤヒデと共に優勝候補として目されており、
『有馬記念』を機に堂々と引退することになったトウカイテイオーに勝ち逃げされたことでウマ娘としての闘争心を昂ぶらせた今のナリタブライアンは全盛期の力を取り戻しつつあるようだった。
それだけに、今までは生徒会長:シンボリルドルフに直接指名され、生徒会に協力している姉:ビワハヤヒデの顔を立てるために、柄でもない副会長として比較的理性的に振る舞っていたが、
『URAファイナルズ』というかつてない大舞台を前に すでに思考がレースに勝つことでいっぱいになっているため、周囲の人間が思わず世話を焼きたくなるような元々のズボラな性格が表に現れ出しており、
人目も気にせずに学園一の嫌われ者の根城となった 元 岡田Tのトレーナー室に設置されたユニットシャワールームでトレーニングの汗を思いっきり流すことにしたのだ。
誰もが認める“三冠ウマ娘”である彼女からすれば、卒業レースが本質である『URAファイナルズ』に向けて 大した実績もない古バたちが所狭しとトレーニングをしている状況ともなれば、
必然とトレーニング後の学園内のシャワールームの利用者も激増しているため、一匹狼の彼女としてはこうして誰も知らないユニットシャワールームのモニターになることは渡りに舟だったのだ。
この辺りが走ることが大好きで闘争心が強いウマ娘らしい彼女のズボラな面の最たるものであり、
生徒会長:シンボリルドルフが密かに発行していたモニター募集の許可証がなければ、念の為にカーテンで仕切られているにしてもトレーナー室で生徒にシャワーを浴びさせるのは公序良俗違反にもなっていたことだろう。
しかし、本来ならば生徒たちの代表として問題提起すべき生徒会長がその有用性を理解してモニターになりたがるため、知る人ぞ知る学園内の穴場スポットとして利用され始めていた。
早速、ユニットシャワールームの試運転となったが、宣伝広告のために機能性を追求しながらもモダンなデザインのハイモデルの使い心地は良好で、シャワールームの中で着替えや髪を乾かすことができるのが革新的で衝撃的であったようだ。
全寮制のトレセン学園には常に共用であるバスルームやシャワールームしかないことを考えると、外部から遮断されたお一人様用にコンパクトにまとめられたユニットシャワールームの浴室には得も言われぬ開放感があり、一匹狼の彼女には非常に居心地が良かったようだ。
そのため、非常にサッパリした様子でユニットシャワールームから出ており、非常に満足してもらえたようだ。
ナリタブライアン「お、これがヒグマか。なかなかの珍味だな」ムシャムシャ
アグネスタキオン「………………」ジー
ナリタブライアン「ん」
ナリタブライアン「どうした? お前もヒグマが食いたかったか?」
アグネスタキオン「いや、別に」プイッ
ナリタブライアン「そうか」ムシャムシャ
アグネスタキオン「トレーナーくん! 私も喉が渇いたから紅茶を淹れたまえ!」
斎藤T「ああ、そうか。それならクッキーを出してくれ。今日はこの“極上はちみつ紅茶”を試そうと思う」
アグネスタキオン「ああ!」
ナリタブライアン「………………」ムシャムシャ
アグネスタキオン「よしよし、今日はこのクッキーにするぞ!」コトッ
ナリタブライアン「お、変わったコップに皿だな。陶器製に見えるが、音が軽いな」
斎藤T「ああ。それはロールストランド風にプリントされたプラスチックだ。見た目だけは華やかにしようと思ってな」
ナリタブライアン「――――――『ロールストランド』?」
アグネスタキオン「たしか、スウェーデンの王室御用達の陶器ブランドとか言ったかな?」
斎藤T「おいおい、知らないのか? ノーベル賞授賞式の晩餐会で使用される食器は決まってロールストランドの『ノーベル』なんだぞ。それに肖っているんだ」
――――――アグネスタキオンという一人のウマ娘の研究成果であるウマ娘の可能性の“果て”とやらが真に価値あるものだと願ってね。
アグネスタキオン「え」
ナリタブライアン「なるほどな」
ナリタブライアン「タキオン、前言撤回する。斎藤Tは誰よりもお前に相応しいトレーナーだ」
アグネスタキオン「えええええええええ!?」
斎藤T「なんだ、本当に知らなかったのか? それだけ私はお前の研究成果を楽しみにしているんだぞ?」
アグネスタキオン「あ、ああ………………」アワワワ・・・
ナリタブライアン「本当に将来が楽しみだよ」フフッ
斎藤T「さ、食べよう食べよう。この“極上はちみつ紅茶”もどれほどのものかを検証しないとな」
アグネスタキオン「あ、うん……」
ナリタブライアン「おい、そのクッキー、1つくれ」ヒョイ
三ケ木T「うわああああああああああん! ブライアアアアアアアアアアアン!」ドン!
ナリタブライアン「うわっ」
三ケ木T「いやああああ! やっぱりブライアンも女の子だってことだったのね!?」ヨヨヨ・・・
アグネスタキオン「……いきなり誰だい?」ジロッ
ナリタブライアン「私の元担当だよ」ハア・・・
三ケ木T「そんな!? そんな他人行儀に『元担当』だなんて言わないで! そんな男よりも私の膝の方がいいよね!?」
ナリタブライアン「お、おい!? 人前でなんてことを言うんだ、あんたは!?」カアア!
ナリタブライアン「だいたい、私が生徒会役員になってからは他の子の担当になったんだから、今更 あんたの出る幕なんてないだろうに……」プイッ
三ケ木T「でもぉ! それでも、あなたの担当トレーナーは私のままよ! 今も昔も!」
三ケ木T「だから、『有馬記念』の時のように一人で『URAファイナルズ』に挑むことなんてないじゃない!」
ナリタブライアン「また始まった……」ボソッ
斎藤T「まあまあ、せっかくお越しになったのですから、一緒に紅茶にしませんか? これ、“極上はちみつ紅茶”ですよ?」
三ケ木T「あなたね! 私のブライアンを騙してこんな怪しい部屋に連れ込んでいる悪徳トレーナーは!?」キッ
アグネスタキオン「……大した物言いだね。人様のトレーナー室に勝手に上がり込んできてさ?」ギロッ
三ケ木T「って、ひ、ひぃいいいいいいいいい! 助けて、ブライアン!」
三ケ木T「この子、“
アグネスタキオン「食べたのなら、とっとと連れ帰ってくれ。不愉快だ」チッ
ナリタブライアン「すまない……」
斎藤T「いやいや、気にすることはないですよ。初めての担当ウマ娘の最後の晴れ舞台で何もせずにいられるわけがないんですから」
斎藤T「あなたも元担当とは縁を切っていないおかげで、『有馬記念』に出走することができたわけですし、憎からずは思っているのでしょう?」
ナリタブライアン「それはそうだが……、それにしたって、ここまで取り乱すことはないじゃないか……」
三ケ木T「ああ!? ブライアン、その缶詰、ヒグマにトドとかあるけど、要するにお肉でしょう!?」
三ケ木T「ちゃんと食事管理できてる? お姉さんは卒業しちゃうんだよ? ヒシアマ姐さんの手作り弁当はちゃんと食べてる?」
ナリタブライアン「――――――っ!」
ナリタブライアン「う、うるさい! あんたはいつまで私に付き纏う気だ!?」
――――――それとも、私と一緒に『ドリームトロフィーリーグ』に来てくれるのか!?
三ケ木T「あ……」
ナリタブライアン「ハッ」
三ケ木T「そ、そうだよね。私が悪いんだよね……」
三ケ木T「私にとってブライアンは最初にして最高の担当ウマ娘だから、『トゥインクル・シリーズ』はブライアンの才能で勝ち続けることができたけど、私、ほとんどブライアンにしてやれることがなかった……」
三ケ木T「だから、私、『トゥインクル・シリーズ』の先のあなたの夢を叶えるのに力不足で足手まといだったから、あなたから逃げて……」
ナリタブライアン「お、おい……」
アグネスタキオン「……くだらない茶番だね」ボソッ
斎藤T「まあ、そう言うな」
――――――出会いがあれば、必ず別れがあるんだから。よく見ておけ。
三ケ木Tはナリタブライアンの担当トレーナーであり、見てわかる通り、非常に大人としては頼りない印象の年若い女性であった。桐生院先輩の方がまだ安心して見ることができる。
そのため、彼女もまた“怪物”ナリタブライアンに相応しくないとして当初から様々な批判や脅迫を受けていたものの、ナリタブライアンの圧倒的な実力によってそういった声を黙らせてきた経緯があった。
というよりは、ナリタブライアンの1個上の世代が“皇帝”シンボリルドルフであったことが彼女のトレーナー人生の大きな支えになっていたと言っても過言ではない。
そう、シンボリルドルフの担当トレーナーだった“皇帝の王笏”と呼ばれた彼がトレセン学園の黄金期を担当ウマ娘と共に切り拓いていく過程で、
彼女のような頼りない新人トレーナーがベテランを押し退けて三冠ウマ娘の担当トレーナーになることを容認される開放的な流れを生み出していたのだ。
とは言え、本当に何の実力も覚悟もない新人トレーナーが孤高の彼女のトレーナーの座に収まるわけがなく、
積極的に指導することはできなくても、気難しい性格の実力ピカイチの“怪物”の能力をフルに発揮できるように頑張り通したことで、見事 シンボリルドルフに続く“三冠ウマ娘”を達成することに成功したのである。
なので、“皇帝の王笏”と呼ばれて華々しい最強の道を歩んだシンボリルドルフの担当トレーナーに続く偉業を果たしたことで、
ウマ娘の才能を引き出すことができれば、実績も後ろ盾もない新人トレーナーでも“三冠ウマ娘”達成がやれることを証明したため、
実は、トレセン学園の黄金期;総生徒数2000名弱の個性豊かな才能あるウマ娘とトレーナーたちが自分たちの可能性を信じて全国各地から府中市に集まるようになったきっかけとして、黄金期到来の最大の功労者である時の人として表彰されてもいたのだ。
つまり、黄金期への道を切り拓いたのがシンボリルドルフなら、それに続いて黄金期を築き上げた功労者というのがナリタブライアンということになり、黄金期であることを決定づけたのが国民的アイドルとして抜群の人気を誇ったトウカイテイオーが続くという流れになっているのだ。
ただ、ナリタブライアンの戦績は厳しいことを言えば“無敗の三冠ウマ娘”シンボリルドルフと同じではなかったことから、
自身にとって最初にして最高のウマ娘が“ただの三冠ウマ娘”というケチがついたのは紛れもなく自身の実力不足であったと負い目を感じていたため、
ナリタブライアンが更なる高みを目指して『ドリーム・シリーズ』への移籍を表明した時に、すでに他のウマ娘の担当もしていたこともあり、それについていこうと声を上げることができずにいた。
日本競バ界は地方競バ『ローカル・シリーズ』、中央競バ『トゥインクル・シリーズ』、優駿競バ『ドリーム・シリーズ』の三重構造になっており、それぞれのシリーズに同時にトレーナーと競走ウマ娘は席を置くことはできないのだ。
一応、『ドリーム・シリーズ』への移籍に関してはトレーナーと競走ウマ娘のどちらかの移籍が認められれば、そのまま二人三脚を継続して一緒に移籍することも可能なのだが、
ここで三ケ木Tは自身の実力不足を直視することになり、怖くなって最初の担当ウマ娘である彼女の呼びかけに応えることができなかったのだ。
そもそも、『ドリーム・シリーズ』の創設は『トゥインクル・シリーズ』で長年に渡って
長年に渡ってターフの上で君臨する王者も最終的にファンからレースの結果がわかりきって退屈だと飽きられて文句を言われるようになるのだから、
そう、人気者から一転して厄介者の扱いを受けるようになるのが公営
別に、悪いことばかりではない。それだけの待遇が『ドリーム・シリーズ』では用意されており、それによって『トゥインクル・シリーズ』のその先としてハイレベルな戦いの世界が用意されることになったのだから。
一方で、やはりというか、実質的に『トゥインクル・シリーズ』から追放された扱いのためか、一般的にはオフシーズンとなる冬季と夏季の年2回の開催なところに厭味ったらしさを感じるのだが。
しかし、これが国民的スポーツ・エンターテイメント『トゥインクル・シリーズ』の在り様なのだ。
勝っても地獄、負けても地獄――――――。
私は私の担当ウマ娘:アグネスタキオンにこのことを知った上で『トゥインクル・シリーズ』で“超光速の粒子”の名に相応しい神話を打ち立てて欲しいと願っている。
そう、私たちは『トゥインクル・シリーズ』での栄誉という移ろいやすいものなどをレースで求めていない。
――――――ウマ娘の可能性の“果て”とやらを一緒に見ることができれば それで満足なのだ。
斎藤T「当て身」トス!
三ケ木T「キャッ!」ガクッ
アグネスタキオン「あ」
ナリタブライアン「な、何をする、貴様ッ!?」ガタッ
斎藤T「――――――それが答えだな」
ナリタブライアン「!!!!」
ナリタブライアン「……くっ!」
ナリタブライアン「……あんたには敵いそうにない」
斎藤T「バスタオルを敷いてくれないか」
アグネスタキオン「あ、ああ……」
ナリタブライアン「言いたくはないが、お前が羨ましい限りだよ、タキオン」
アグネスタキオン「………………」バサッ ――――――床にバスタオルを広げる。
ナリタブライアン「……こういうのを“不釣り合いだった”って言うのだろうな」
斎藤T「なら、他に選択肢があったとでも?」ヨッコラセ
三ケ木T「」 ――――――バスタオルの上に寝かせられる。
ナリタブライアン「いや、私のトレーナーは今も昔も唯一人だ」
――――――
彼女の言うように実力不足の新人トレーナーが最強のウマ娘とコンビを組むことが“不釣り合いだった”のかは私にはわからない。
しかし、彼女自身が認めているように、彼女にとってはどうあれ一緒に最強の道を駆け抜けた担当トレーナーの存在は唯一無二のものであった。
であるなら、『一緒にその先を目指すことができない』という時点で2人の未来は担当になった時点で決まっていたのかもしれない。なんという運命の皮肉――――――。
だが、トレセン学園のトレーナーを職業に選んでしまった以上、担当トレーナーは担当ウマ娘を勝たせないと食い扶持を稼ぐことができないのだから、実力不足を感じて『ドリーム・シリーズ』への移籍に尻込みするのも致し方ない。
そのため、賢しいトレーナーは4年以上になる担当ウマ娘にはノラリクラリして『トゥインクル・シリーズ』に残り続けることを指示することもあり、無理に『ドリーム・シリーズ』に移籍することを目指すこともしない。
というより、そもそも『トゥインクル・シリーズ』のG1レースで勝利するだけでも日本国内の憧れとなる偉業なのに、G1勝利が当たり前の強豪が所狭しの『ドリーム・シリーズ』でボロクソに叩かれるのは想像するだけでも寒気が止まらないことだろう。
なので、ここでも私は桐生院先輩とハッピーミークの間に見られたような
やはり、どれだけ日本中の男女を虜にするような凛々しいウマ娘であっても所詮は中高一貫校の年頃の乙女でしかなく、精神的支柱として導いてくれる身近な大人の存在は必要不可欠なのだ。
なので、二人三脚を続けていくためには実力相応のパートナーシップがなければ、このように最終的に躓いてしまうのだ。
それでも、“怪物”ナリタブライアンはその実力だけで『ドリーム・シリーズ』への移籍が認められるほどの圧倒的な才能を見せつけることができたのだが、果たして『ドリーム・シリーズ』でも通じるかどうかは本人としても不安が隠せなかった。
だからこそ、今までのように自分の実力を発揮できるように支えてくれるはずだった担当トレーナーが当たり前のように『ドリーム・シリーズ』への移籍に頷いてくれなかったことに動揺が隠せずにいたのだ。
そういうわけで、彼女は“斎藤 展望”が担当トレーナーになるアグネスタキオンのことを羨ましく思ってしまったのだ。
確かに、私なら彼女が求める最高の仕事をすることができるはずだ。それだけの実力を有して熱意があるのなら、その可能性を信じて力を貸すだけでいいのだから。
なので、私自身そもそもウマ娘レースそのものにそこまで興味があるわけでもないので、才羽Tや飯守Tのように担当ウマ娘を奮起させるまでのことはできないと思う。
そう、私はミホノブルボンやライスシャワーのようなウマ娘とは根本的に相性が悪いように思う。
トレーナーとしての知識もさることながら、何というのかシンボリルドルフのような才気と風格がないと興が乗らないのかもしれない。
ただ、“怪物”ナリタブライアンがそう感じたように、私が非情な勝負の世界に向いているのも確かで、私がトレーナー業をまじめにやれば担当ウマ娘の実力以上の成果をもたらすことに疑いを持っていない。
WUMA事件で姉妹揃って助けられた恩義があるにしろ、“怪物”として畏敬の念を持たれて周囲から距離を置かれている自分に対して物怖じしない大胆不敵さを彼女は買っているようで、
一匹狼としてあまり他人との関わり合いに積極的でない反面、自身が認めた人物には背中を預けることを躊躇しないため、私としても非常にわかりやすい相手に思えた。
私が見るに、彼女にとって三ケ木Tは実姉:ビワハヤヒデと同じく邪険にあしらわれても彼女のことを真剣に思って踏み込むことができた大胆さが気に入られたから、ナリタブライアンの担当トレーナーになれたところが絶対にあるはずなのだ。
だからこそ、『ドリーム・シリーズ』への移籍に怖気づいてしまった担当トレーナーとの積み重ねてきた時間と愛情の分だけ筆舌に尽くしがたい悔しさで心が染め上げられていることだろう。
――――――なら、この場合の答えは簡単ではないか。
アグネスタキオン「なあ? でも、それって実質的にプロポーズみたいなものじゃないかい?」
斎藤T「そうだな。すでに三ケ木Tが次の子の担当をしている以上は、その子の面倒を放り投げて移籍することに良心の呵責を覚えることだろう」
アグネスタキオン「そうだね」
――――――今の
斎藤T「ウマ娘にとっては一生に一度の夢の舞台である以上は
斎藤T「だから、ベテラントレーナーにはそういった割り切りができた人間だけがなれる」
斎藤T「けど、そういった割り切りができるようになったことで失ってしまうものがあるのも事実だ」
斎藤T「少なくとも、シンザン以来のミスターシービー以降の“クラシック三冠ウマ娘”は全て新人トレーナーの若造によって達成されているのがその証拠だ」
アグネスタキオン「つまり、いろんな意味でフレッシュな若者同士のケミストリーが“クラシック三冠ウマ娘”になるために必要なものになってくるのかな?」
斎藤T「統計学的にはまだ何とも言えないがな」
斎藤T「だが、それが事実だとすれば、慢性的なトレーナー不足を解消する手立てが思いつかないな……」
アグネスタキオン「なら、私は幸運なウマ娘だったと自惚れてもいいんだね?」
斎藤T「そういうのは勝ってから言え」
アグネスタキオン「よく言うよ。大の大人が未成年に100万円相当のダイヤモンドのネックレスをポンと買い与えておいて」キラキラ ――――――ダイヤモンドのネックレスが輝きを放つ。
斎藤T「……実際の貢献と比べたら遥かに安物ではあるが、それだけの功績を称えたものだ。疚しいことなんてない」
アグネスタキオン「まあ、そうだろうね!」プイッ
アグネスタキオン「誰のおかげで、きみはどんな怪物をも凌駕する最高の肉体を手にすることができたと思っているのやら!」プンプン!
斎藤T「怒るなよ。たしかに“怪物”ナリタブライアンもあっと驚くような戦果を上げることができる最高の肉体にはなったさ。お前と出会ったことで」
斎藤T「だから、同じ炭素の塊を贈るんだったら そんなダイヤモンドなんかよりもカーボンナノチューブでできたサポーターをあげたかったよ」
アグネスタキオン「トレーナーくん……」
斎藤T「そうだな。今だからこそ、はっきりと言える」
斎藤T「私としてはナリタブライアンでもなく、ビワハヤヒデでもなく、シンボリルドルフでもなく、アグネスタキオンというウマ娘が私にとっての一番だと思っているよ」
アグネスタキオン「………………!」
斎藤T「ヒトとウマ娘が共生する21世紀のこの世界において、未だウマ娘は存在自体が深淵なのだろう?」
斎藤T「ヒトに酷似した外見でありながら高性能かつ高機能な耳と尾を持ち、その筋力は質量に反して異様に甚大」
斎藤T「特に、走力は時速60km以上を記録し、その圧倒的な身体能力が仇となってヒト社会において制限がかけられているのにも関わらず、ウマ娘はそのことを受け容れてヒト社会の一員として慎ましく暮らしている――――――」
――――――実に、興味深いとは思わないか? 並行宇宙には怪人:ウマ女もいたことだしな!
●殺人的なローテーションによる“全てのウマ娘が輝けるレース”は死屍累々!
原作においては3年目終了後の育成情報上では翌年1月後半に連続して『予選』『準決勝』『決勝戦』が行われているのが新設レース『URAファイナルズ』であり、
現実における競馬においてかなりの期間が設けられている『クラシック三冠レース』ですら全てに出走できる競走馬が少ない事情が忠実に反映されて、
少なくともヒトよりも強大な身体能力を持つ設定のウマ娘ですらも連続出走に耐えられないことを踏まえると、
1月後半にまさかの三連戦となる大人数のトーナメント戦は明らかに競馬=ウマ娘レースの常識から反した狂気の沙汰としか思えないローテーションだろう。
そのため、この開催日程はあくまでもゲーム的な表現であって、そもそも1位通過しか勝ち上がることができない条件でトーナメント表を組んだら、
18人から1人選抜のレースを3回戦・5部門行うには、18³×5=29160人のウマ娘が必要になるので、中央トレセン学園に在籍しているのが2000名弱なのを考えれば とてもじゃないが足りない足りない。
――――――そもそもが投票結果で出走権が与えられる現役のシニア級の名バが万単位でそんなにいるはずがなかろう!
というより、それだけの数のウマ娘を揃えることができたら『予選』だけでいったい何レース・何日かかることやら――――――、
いや、それよりももっと深刻なのは興行を支えるファンの購買力が完全に尽きることであり、大赤字間違いなしの不採算になることだろう。
なので、トレセン学園の総生徒数:2000名弱を鑑みて『そんなに3年目:シニア級を完走できたスターウマ娘がいるわけがない』という推測を基に、
実際に開催するとなるとトーナメントの規模は意外とそんなに大きくはないとして、できるだけ実現可能な設定を模索したものとなる。
よって、かつてないオールスターゲームになることや全国各地の競バ場を同時に使用するために、
当初は『東京大賞典』『有馬記念』終了後の仕事納めした後の年末の1週間でやれる規模の世界初のトーナメント戦として構想されていた(そのために『有馬記念』の開催日が前倒しになった)。
世界基準で言えば1月から始まって12月で終わるシーズンを踏まえると、どうしても年末の最後の1週間しかオールスターゲームを開催するに相応しい時期がない。
そして、シーズン頭の1月の冬季にオールスターゲームを開催するのはどう考えても出走するリスクが大き過ぎた。
そこから、最低でも1ヶ月ずつ間を置いた上で『予選』『準決勝』『決勝戦』のトーナメント戦を行い、全てのレースがフルゲートになるように勝ち上がりの人数調整が行われ、出走するメリットと出走しないメリットを用意するという独自設定を設けた。
すなわち、『URAファイナルズ』の本質を 過酷なレースの世界において大切な最初の3年間を最後まで走り抜くことの励みになる最後の晴れ舞台;弱者救済のための“卒業レース”と位置づけることにしたのだ。
そうじゃないと、明らかに“全てのウマ娘が輝けるレース”の趣旨に反する 競馬初心者もびっくりな殺人的なローテーションを素人の思いつきでやっているようにしか見えないので、4年目以降も走り続けるウマ娘にとっては傍迷惑なものでしかない――――――。
ゲームの世界じゃない物語の世界として考えると、そんなふうに強者と弱者の2つの立場の現実があるため、こうした甘っちょろい趣旨のレースの開催目的を創作したわけである。
●ハルウララに救済を…… シナリオ分岐のアップデートを求む!
ざっけんな、この野郎!
初期キャラのダートウマ娘でありながら、完全に適性がない芝・長距離の『有馬記念』が必須目標とか、
しかも、意図的に設定された負けイベント同然で、その惨敗でマイナススキルがつきまくるとか、
シナリオの流れをぶった切る最低最悪な負け展開の後に「全目標達成! 『URAファイナルズ』出走おめでとう!」なんて言われても全然嬉しくないよ!
せめて、同じ時期に開催されるダート・中距離の『東京大賞典』に挑戦する選択の権利ぐらいくれ! 中山の芝を地均しするとかじゃなくて!
願わくば、何かの間違いで中央トレセン学園に在籍しているのなら、中央に相応しい新勝負服をください。
せっかく『アオハル杯』シナリオのダート枠の初期キャラに選ばれているのだから、何かしら負け続けてきながらも名馬だった史実性を取り入れて欲しかったよ……。
下記のアンケートはハルウララの救済案なので、ぜひとも賛成意見に投票をしてもらいたい。
1,『有馬記念』『東京大賞典』の選択性に
大本命。どう考えても適性のない芝・2500mの『有馬記念』に出走を強制させられて惨敗の結果、マイナススキルがつきまくるのは胸くそ悪い。
なので、同時期に開催されるダート・2000mの『東京大賞典』との目標選択ができるようにシナリオをアップデートしてくれ!
第9目標:有馬記念に出走 → 第9目標:G1レースに出走
2,新勝負服で中央らしい性能と面影に
スキルは据え置きで オグリキャップのような芝とダートの適性を両立させた スタンダードな学生服をモチーフにした新勝負服で ターフの上も走れる 通称:夢ウララの実装。
初期適性さえ上がってくれれば、劣化オグリキャップであっても『有馬記念』での勝利も夢物語ではなくなるので、
史実通りの“勝てないウマ娘”であることにこだわりがない限りは、夢ウララの実装は『有馬記念』の特殊実況を生で聞きたい人たちにはありがたいはずだ。
固有スキルは『順位が50%未満で近くのウマ娘の適性と脚質と持久力になる』なんてどうだろうか。チーム戦前提の育成で因子継承が非常に楽になって起用もありじゃろう。
――――――強すぎるだって? 夢ウララですから! 『有馬記念』で勝つような
→2021年12月31日:新勝負服『初うらら♪さくさくら』実装!
ただし、
3,負けることがメリットになるサポート性能に
こちらは1着にならないと全て負け扱いになる厳しいレースの世界において、
1着じゃない;負けた場合のレースボーナスとファン数ボーナスとやる気効果アップが倍になる特殊効果を持ったSSRサポートが実装されたら、未勝利の名馬:ハルウララらしいサポート性能になるんじゃないかと。
特に、キングヘイローやフジキセキのような因子継承が大前提の高難易度シナリオで全勝を目指さない場合や勝率が安定しない『アオハル杯』の予選での負けを補填する保険として、
他にも、初めて挑戦するウマ娘の育成の際に最高の性能を発揮する初心者救済用のサポートになるはずだ。
あるいは、“当たらない馬券”としてお守り代わりになった逸話から、バッドステータスの予防・解除に特化したイベントも完備していると、サポーターとして非常に手堅く仕上がるだろう。
4,他の地方ウマ娘を増やして底辺争いに
文字通り、中央ウマ娘とのレベルの差を見せつけるために、ハルウララの他に地方ウマ娘を増やして、ハルウララの相対的な地位を上げる陰湿な策。
“ハルウララよりも勝てない馬”ダンスセイバー、“ハルウララ超え”マイネアトリーチェとか割と候補がいるのが、競馬という勝負の世界の厳しさを物語る。
5,いいや、ハルウララは勝てないのがいいんだ
現状で問題なし。ハルウララは1勝も挙げずに負け続けたことで逆に人気を呼び、ブームを巻き起こしたのだから、これでいい。何も言うことはない(無慈悲)。
最弱のウマ娘:ハルウララの救済案
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『有馬記念』『東京大賞典』の選択性に
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新勝負服で中央らしい性能と面影に
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負けることがメリットになるサポート性能に
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他の地方ウマ娘を増やして底辺争いに
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いいや、ハルウララは勝てないのがいいんだ