ウマ娘超光速戦記 -TACHYON Transmigration- 作:LN58
この日、俺の担当ウマ娘にして俺の愛バ:メジロマックイーンは筋書き通りに無事に生徒会会計に当選することになり、
全校集会の就任式の後に自由参加となる新生徒会役員それぞれの推薦人と一緒のウイニングライブで前生徒会長:シンボリルドルフが贈ってくれた白の新勝負服をお披露目となった。
同期にして同世代のライバルだったトウカイテイオーも『有馬記念』でお披露目した赤い新勝負服で姿を表し、
今まで前生徒会長:シンボリルドルフからの指名によって後から2人目の副会長となっていたナリタブライアンも今回はしっかりと立候補して当選した上で、上位リーグ『ドリーム・シリーズ』への移籍に伴い、その記念となる新勝負服で堂々とウイニングライブの舞台に駆け上がった。
そのため、全校集会の新生徒会役員就任式でウイニングライブをお披露目した新生徒会長:エアグルーヴも新勝負服だったので、
全員がこれまでにない装いと新時代を象徴する未発表の新曲によるウイニングライブのお披露目ということもあり、生徒たちの興奮は高まるばかりであった。
一緒にターフの上で競い合った上でウイニングライブを一緒に踊る機会なんてほとんどない 功労バたちの推薦人になれた それぞれの生徒会役員の支持者は最高の恍惚に達していた。
もっとも、一匹狼のブライアンは両脇をヒシアマゾンとフジキセキで固めるというパフォーマンスで有無を言わさない姿勢であったが、
これはこれで全員がスターウマ娘の夢のコラボレーションであったため、最終的な学校新聞でのアンケートでは新生徒会長:エアグルーヴのウイニングライブを押し退けてブライアンのウイニングライブが一番人気になった。
もちろん、ブライアンがアンケートで一番人気になった事実以外は明かされておらず、テイオーとマックイーンのどちらが最下位だったのかなんて野暮なことは発表されることはなかった。
というより、常に生徒会長からの指名で後から2人目の副会長になっていることから就任式で壇上に立ったことがないブライアンの所信表明演説でまさかの渾身のダジャレが炸裂した意外性が大いにウケたのだろう。
いや、ブライアンにそんなつもりはなかった――――――。それは見てればわかる。“怪物”がどれだけウマ娘の闘争本能を体現した存在であるかはみんなが知っているから。
だからこそ、今までやる気がなかったブライアンがしっかりと立候補して最低限の選挙活動をしっかりとこなして当選した上で自分の言葉で“ホウフ”を熱く語ったことで、副会長としての自覚が備わった内容の真剣さのギャップに思わず吹き出してしまうのだ。
いやいや、こうなったのも黄金期の象徴だった最強の生徒会長:シンボリルドルフが普段からしょうもないダジャレを言うもんだから、特に意識して無くてもそういうふうに捉えてしまう妙な校風が出来上がっていたというわけなのだ。
そして、“怪物”ナリタブライアンと同じくターフの上で鎬を削る闘争本能を呼び覚ます所信表明演説に触発されて“三冠バ”に挑戦しようという闘志が湧き上がった者とに分かれたわけだが、
だからこそ、何気ない発言から“皇帝”シンボリルドルフの影響力の強さを感じ取れるわけであり、
“女帝”エアグルーヴの足りないところを“怪物”ナリタブライアンが補った形で『生徒会総選挙』は最高の盛り上がりで幕を下ろすことができたのだ。――――――ダジャレで。
そう、厳しいことを言えば、それぐらい これからの新しい時代のトレセン学園の最初の顔役となる“女帝”エアグルーヴの負担が大きいものになるのだと周囲の大人たちは感じ取っていたことだろう。
別に、“女帝”エアグルーヴに非があるわけじゃない。前任者があまりにも偉大すぎただけなのだ。
それでも、どうしても先代と比べられてしまうのが代表者の辛いところであり、私も直感的には総生徒数:2000名弱の全国各地から集まってきた才能あふれる個性豊かな生徒たちを統制するには足りないものがあるように感じてしまう。
そういう意味ではエアグルーヴはこれまで通りのNo.2が適任だし、ナリタブライアンはNo.3辺りが適任の感じがしてならない。
――――――とは言え、他に適任者がいないのだからしかたがない。
世代の中心になったスターウマ娘が号令しないと 中央に入学できるほどに可能性に恵まれた 我の強いウマ娘たちを従わせることはできないのだから。
良くも悪くも、3期に渡って生徒会長職に就いていたことで“皇帝”シンボリルドルフの印象と影響が強すぎるからこその相対的かつ絶対的な批判というわけであり、
新生徒会長:エアグルーヴはマックイーンとテイオーのどちらかが次の生徒会長になる時の要求を下げるためのクッションにならざるを得ないわけなのだ。
その心労の程は常にメジロ家のウマ娘としての強い自覚の下に己を律してきたマックイーンには痛いほどにわかっているため、
実質的に庶務の扱いで事務処理では頼りにならないブライアンの代わりに新生徒会長をしっかりと支える覚悟で今回の『生徒会総選挙』に臨んでいた。
別に、生徒会の仕事は生徒会役員だけでやる必要はない――――――。
現に、あまり仕事をしない方の副会長であったブライアンの実の姉:ビワハヤヒデが2人目の副会長だと勘違いされたことがあるように、部外者であっても役員権限で仕事に参加させることはできるのだ。
要は、役員権限でどれだけ有効に生徒たちに益することができるかを問われているわけであり、シンボリルドルフがナリタブライアンを2人目の副会長に指名してきたことが実例となっている。
少なくとも、メジロ家の令嬢であるマックイーンと国民的アイドルとして顔が広いテイオーが生徒会役員になった以上はこれまで以上に協力を得ることができるはずだ。
そして、何よりも これからは あの無名の新人トレーナーが! 学園一の嫌われ者であったトレーナーが! 実はトレーナーの『名門』やウマ娘の『名家』がどう逆立ちしても勝てないほどの由緒正しき血統の『名族』だったトレーナーがいる!
俺もマックイーンもあの方に命を救ってもらえたし、岡田Tとテイオーの復活もあの方のおかげなのだ。
だから、何も心配することはない。俺もマックイーンが卒業するまではトレーナーバッジを絶対に手放さないつもりでいるし、岡田Tもあの方の許で良くしてもらっているのは聞いたから。
ああ、俺がメジロ家恒例の新年会に参加していた一方で、岡田Tはあの方と誘われて伊勢参りした後に三保の松原で富士山と一緒に初日の出を拝んだって聞いた。
だから、どちらかというと心配なのはマックイーンとテイオーの次の世代のブルボン世代なんだよなぁ……。
いや、ミホノブルボン、ライスシャワー、ハッピーミーク、サクラバクシンオーとかかつてないほどの逸材が揃ってはいるんだけど、生徒会役員としては正直に言って評価に困る面々が世代の中心にいるわけでして……。
まあ、競走ウマ娘としての資質と生徒会役員としての能力は別問題だから、無理に生徒会役員になる必要はないのだけれど、
今まで内々で立候補者が決められて対立候補のいない信任投票だったから、もしも立候補者が多数になって激しい選挙戦になった時に本当に生徒たちの統制がとれるようになるかが心配だ。
それだけ実力が拮抗し合うレベルの高い名勝負が繰り広げられてきた証でもあるのだけれど、逆に満場一致で中央の顔として認められるような絶対的な王者が生まれづらくなってもいるわけなのだ。
そういう意味ではテイオーが成りたくて成れなかった“無敗の三冠ウマ娘”にまで殺人的なトレーニングの末に昇りつめた“サイボーグ”ミホノブルボンに生徒会長としての素質がまったくないのが『天は二物を与えず』とでも言うのか――――――。
いや、元々が
なので、ミホノブルボンが強かったのではない。あの驚異の天才:才羽Tが担当だったからミホノブルボンは最強なのだ――――――。そう結論付けられていた。
素質で言えば、名門トレーナーである桐生院Tが発掘してきたハッピーミークがトウカイテイオー以上の天才であったことでミホノブルボンより断然凄かったことが明らかになっている。
また、天才:才羽Tの同期である熱血甲子園球児:飯守Tが“お兄さま”になっている気弱なライスシャワーも
そう、“怪物”ナリタブライアンがそうだったように担当ウマ娘が強かったから無名の新人トレーナーでもG1勝利を果たすことは稀によくあるのだが、
それとは正反対に、“クラシック三冠”など夢のまた夢でしかなかった平々凡々なウマ娘を最強にまで導いた無名の新人トレーナーというのはおよそ聞いたことがない話である。
だからこそ、秋川理事長が一番に評価しているわけであり、当然 あの天才トレーナーは表彰だって満場一致で授与されている。
そもそも、メイクデビューする前から本場ヨーロッパのアスリートフードの試食会や地域美化活動を主催するなどして積極的に担当ウマ娘のファン数稼ぎを行いながら、自身の存在を内外に知らしめていたぐらいだ。
その学園の内外にまで拡がる行動力は一般トレーナーの枠を超えており、ひとりの人間としても才羽Tに敵う者はいないと思えたぐらいだ。
なので、才羽Tとミホノブルボンは規格外としか言いようがなく、それが後々になって満場一致の最強のウマ娘なのに生徒会長に推すにはいろいろとアレになっていることに頭を抱えることになろうとは――――――。
だって、去年の『ジャパンカップ』で全盛期の姿で復活したと言われていたトウカイテイオーにハナ差で勝ち切るだけの力量を示した上に初めてのダート戦『東京大賞典』でも圧勝するようなウマ娘なのに――――――!
もうね、いろんな意味で才羽Tは太陽なんだわ。太陽のごとく陽の光の恵みと渇きを与える存在という意味で。
だから、俺はマックイーンと一緒にトレセン学園を卒業するからいいけど、そこからバトンを託す側としては誰かしら生徒会長に相応しい逸材が現れないと気が気でないのが正直な感想だった。
そんな先のことまで“皇帝”シンボリルドルフが面倒を見る義務なんてものがあるはずもなく、こればかりは次の世代にバトンを託された側の義務と責任なのだ。
ただ一方で、いよいよマックイーンとテイオーとは
――――――トレセン学園/和田Tのトレーナー室
和田T「――――――さすがは“アグネス家の最高傑作”なだけはある」
和田T「祖母:アグネスレディー → 母:アグネスフローラ → アグネスタキオンと繋がるわけだ」
和田T「マックイーンもメジロ家三代に渡る『天皇賞』制覇で名を上げたわけだけど、結局は自分の意志を貫いたアグネスタキオンは自分の理想となるトレーナーの厳選のために誰よりも待つことを選択した――――――」
和田T「その結果が去年のシニア戦線の最大の功労者となった学園一の嫌われ者というのだから、こればかりはアグネスタキオンにレースの女神が微笑んだとしか思えないな……」
和田T「これは再来年度のクラシック戦線がとんでもないことになりそうだ……」
和田T「けど、メジロ家のウマ娘もこれで打ち止めになった感が否めないな……」
和田T「一応、まだライアンとパーマーがいるけど、そろそろ引退も視野に入っている頃だしな……」
和田T「また20年後に期待するしかないか……」
和田T「そうなんだよな。暗黒期から黄金期までを彩ってきた『名家』のウマ娘たちがここに来て全て出し切った感があるしな」
和田T「アグネスタキオンは今まで秘蔵されてきたトレセン学園黄金期最後の輝きを象徴するウマ娘になるんだろうな」
和田T「現時点で来年入学が確定している有望株でアグネスタキオンに勝てるウマ娘なんているはずがねえよ!」
和田T「でも、どうするつもりなんだろうな? 今はマックイーンとテイオーの同期だから今は高等部1年で、」
和田T「来年度の高等部2年からメイクデビューするってことは、高等部3年でクラシック級なんだろう?」
和田T「3年目:シニア級は本当にどうするつもりなんだろうな?」
和田T「まあ、他人の俺があれこれ考えていてもしかたがないな……」
和田T「俺としてもマックイーンが卒業するまでトレーナーバッジを手放さないようにしないとだから、あとの2年をどう過ごすのかを考えておかないとな……」
和田T「いっそのこと、古巣に戻って G2勝利を目指す 小遣い稼ぎでもやっていようかな? メジロ家の新人がいるんだったら良かったけどな……」
和田T「さて、俺も岡田Tのように このトレーナー室を後進に譲るかどうかを考えておかないとな」
ガチャガチャ・・・
和田T「え、あれ? ドアノブが回らない――――――?」
和田T「おい! どうなってんだよ!? ついに壊れたか!?」
和田T「まいったなぁ……」
和田T「ここ、3階なんだよなぁ……。ベランダの非常階段を使って外に出るわけにもいかないしな……」
トレセン学園の将来に不安を覚えているが、それはそれとして、最高のライバルだったトウカイテイオーと岡田Tが新たな道を歩み出したように、
『天皇賞(秋)』の後、あれから俺は正式にメジロ家の令嬢である担当ウマ娘:メジロマックイーンと正式なお付き合いを認められることになり、しばらくは引退後の療養のために二人きりの甘々な時間を過ごすことになった。
もちろん、まだ相手は高等部1年の女の子だし、良識ある大人として手を出すわけにもいかないので大人の関係はお預けにはなったものの、それでも好きになった女の子に背中を流してもらえる至福のひとときを過ごすことができていた。
危うく掛かり気味になって押し倒された結果、男と女の関係になる一線を越えそうになった瞬間もあったけれど、押し倒されたことを逆手に取って力いっぱいに抱き寄せることで互いの欲求を何とか鎮めることができた。
とにかく、こうした場合はヒト以上に強大な身体能力をもつウマ娘に両手を掴まれたらアウトなので、先手を取って男の胸板に吸い寄せて心音を聞かせて気持ちを落ち着かせるのが有効だとウマ娘との恋愛の手引書に書いてあったのを何とかやれた。
でも、そこからは何かとメジロ家の令嬢としての体裁を保ちながらも、一心同体であることを強調して他人の目を盗みながら とにかく身体を擦り寄せてくるようになってきたので、段々と担当ウマ娘からするようになったキャラメルのような甘い臭いに身体が反応するようになってきた。
おそらく、これがG1勝利を果たしたメジロ家のウマ娘の大半が担当トレーナーと結ばれている秘訣であり、将来を誓った相手を決して逃さないための『名家』秘伝の婚活を実践しているのだろう。
これと見込んだ相手が年の差からロリコン扱いされることも厭わない積極性はさすがは『名家』の仕込みというわけであり、
これこそがウマ娘のトレーナーになる醍醐味として 良識ある大人としての理性の裏で さっさと誘惑に負けて欲望に身を委ねて俺の愛バをメチャクチャにしてやりたいという気分にもなっていた。
特に、会長が生徒会役員に就任するにあたって特別に用意してくれた白い新勝負服を初めて見た時、お腹周りが健康的で美しいナーベル・ビューティーの嗜好を強く刺激されていた。
この時、俺はとんだドスケベ野郎だったことを深く自覚することになった。
何というのだろうか、触れてみたくなる。摘みたくなる。頬ずりしたくなる――――――。
そう言えば、その片鱗はマックイーンが夏場にスクール水着を着ていた時からあったのかもしれない。
太りやすい体質の彼女の腹回りがどうしてもはっきりしてしまうスクール水着に俺の目線は妙なところに合わせがちで、
そのおかげでお胸とかお尻などのデリケートゾーンに目が行かないことで他のメジロ家のお嬢様から無害認定を受けたことがあった。
でも、実際にはちがうんだ。ちがったんだ――――――。
俺は太りやすい体質のために過度な食事制限を課していたおかげで契約を結ぶことになった“最強の
俺は 新勝負服に身を包んでへそを丸出しにした担当ウマ娘を抱きしめるなら絶対に腹回りだと決めているぐらいに 引っ込んだり膨らんだりする担当ウマ娘のお腹に言いようのない魅力を感じていたヘンタイだったのだ。
だって、メジロマックイーンというひとりの女の子の魅力の源泉は太りやすい体質でありながらスイーツが大好きなことで常に頭を悩ませているところじゃないか――――――。
よくよく考えたら、元々の黒の勝負服でも腹回りがチラチラしていたので、もしやサブリミナル効果で――――――?
しかし、妄想や衝動に支配されかかる度に
そう、俺はやっぱり引退してもターフの上で優雅に華麗に懸命に走る担当ウマ娘の姿をずっと見ていたかった。
全力で走ることはできなくとも、華やかな勝負服で着飾って優雅なスタートを切った後、ラストスパートで歯を食いしばってメジロ家の令嬢としての体裁を擲って懸命に誰よりも先を目指す あの表情が俺の心を捉えて放さない。
だから、何というのか、メジロ家の令嬢としての外面や気品を全て溶かしきってしまった今の担当ウマ娘の有り様が俺にはどうしてもちがうものに感じてしまっていた。
やっぱり、憧れは理解から遠い感情なのかもしれない。走りに魅力される――――――、それがトレーナーという人種の業や性なのかもしれない。
それに、さすがにだらしのない弛んだ腹になることを歓迎しているわけでもないので、
引退した後もしっかりと食事管理を維持して俺の愛バの腹回りの健康的で美しいプロポーションが維持されるように愛でる義務と責任がある。
それからトウカイテイオーと岡田Tが伝説となった『有馬記念』に向けて猛特訓を送っている裏で、『生徒会総選挙』で内々の決定として立候補することになり、
選挙活動の一環として全校集会としての就任式が終わった後の生徒会役員による推薦人とのウイニングライブの練習に励むことになっていた。
だから、すでに引退した身としてターフの上での勝利を求められる重圧から解放されていた私と彼女にとって、『有馬記念』におけるトウカイテイオーの世紀の逆転劇は緩みきっていた自分たちの在り方を見直す良いきっかけになった。
実際、『有馬記念』の後の火曜日の終業式で改めてトウカイテイオーと岡田Tの許に年末の挨拶をしに行ったところ、以前に見た時と比べて一回りも二回りも大きくなった感じがしていた。不思議なことに。
そして、年末年始で伊勢参りにいって三保の松原で富士山と一緒に初日の出を拝んだというトウカイテイオーと岡田Tに年明けに会った時は更に大きくなった気がしていた。
なので、段々と気持ちが切り替わって生徒会役員として新生徒会長:エアグルーヴを支えたいという気持ちがはっきりするに連れて、マックイーンも落ち着きを取り戻してきた。
少しだけハネムーンを先取りしたような甘い時間は終わりを告げ、早速 会計としてエアグルーヴと一緒に事務処理を頑張っていることを聞いて鼻が高くなったところで、自分の身の振り方を考えていた時のことであった。
――――――なぜかトレーナー室のドアノブがガチガチになって動かなくなっていた。
和田T「しかたがない。えと、こういう時のための直通電話だ」
和田T「えと、施設管理者の内線番号は、ああ、これだこれだ」ピポパ・・・
和田T「さて――――――」
prrrrrrrr...
和田T「……なんですぐに出ないんだ? 常駐しているはずだろう?」
和田T「じゃあ、ERTだったら確実か? こっちは学生寮の監視だってしているし」ピポパ・・・
和田T「………………」
prrrrrrrr...
和田T「……どうなってるんだ?」
和田T「……なんで繋がらない!?」
和田T「……直通電話が壊れている? そうか、そうなんだよな?」
和田T「じゃあ、普通にケータイで誰か――――――」
和田T「え?」
和田T「――――――け、圏外?」 ――――――手にしたPDAのアンテナは死んでいた。
和田T「は? Wi-Fiもダメ?」 ――――――そして、無線LANも機能していない。
和田T「……くそっ! じゃあ、有線LANは!?」カチッ ――――――パソコンに有線LANを接続!
和田T「繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ……!」
和田T「くっそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」ダンッ!
和田T「ど、どうなってんだよ、くそぉ!?」
和田T「何だ、これ? まるで『天皇賞(秋)』の時のような“目覚まし時計”が暴走した時のようなヤバいやつ!?」
和田T「もうダメだ! ベランダの非常階段で出よう!」
和田T「あ、あああっ!? 窓の鍵がなくなってる――――――!? どこにもついてないぞ!?」
和田T「開け、このっ!」グイグイッ!
和田T「な、何なんだよ、いったい!?」
和田T「ハッ」ゾクッ
ライスシャワー?「――――――」 ――――――窓に反射して写し出される揺らめく漆黒の勝負服!
和田T「え?」クルッ
和田T「な、なんで、ここにライスシャワーが? しかも、勝負服って……」
和田T「なんで? どうやって? ドアノブをこじ開けてくれたのか?」
ライスシャワー?「………………」
和田T「ねえ、すまないけど、外に出たいんだけど?」
ライスシャワー?「………………」
和田T「ね、ねえ? 騒ぎを聞きつけて開けてくれたんだよね? ありがとう――――――」
ライスシャワー?「………………」
和田T「も、もしも~し……」
ライスシャワー?「――――――クイ」ボソッ
和田T「え」
和田T「あ、ごめん。よく聞こえなかったんだけど………………何かヤバそうな雰囲気なんだけど大丈夫だよな? 息が詰まりそうになってんだけど、今の俺」ハアハア・・・
ライスシャワー?「――――――クイ」ボソボソ
ニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイ!
和田T「へ」
ライスシャワー?「ニクイニクイニクイニクイニクイ!」ギラーン! ――――――鬼の形相で短剣を振り抜く!
和田T「うおわあああああああ!?」
ライスシャワー?「ニクイニクイニクイニクイニクイ!」ブン!
和田T「あ、あぶねえ!?」ビシュッ! ――――――腕を斬りつけられた!
和田T「っつううう! 傷は浅い! けど!?」ジワァ・・・
――――――勝負服の短剣はバラの造花と同じレプリカのはずなのに!?
ライスシャワー?「ニクイニクイニクイニクイニクイ!」ブン!
和田T「お、落ち着け! 自分が何をやっているのかわかっているのか!? 警視総監の息子さんの飯守Tに迷惑がかかるだろう!?」
和田T「どうする!? どうする!? 死にたくねぇよ!?」
――――――だって、俺はようやくマックイーンと一心同体になれたってのに!? 全部これからだってのに!?
いったい何が何だか、わけがわからなかった。
俺はどうして自分のトレーナー室に閉じ込められてライスシャワーに殺されそうになっているのか――――――。
しかも、考えれば考えるほど理不尽な展開の連続で、いったい 何度 夢の中だと思い込もうとしたことか――――――。
ヒトとウマ娘の身体能力の差は歴然としており、別に短剣なんて持ち出さなくてもターフを抉る強靭な脚で繰り出す蹴りを急所に入れられただけで死ねる――――――!
そう考えると、この正気を失っているとしか思えない勝負服に身を包んだライスシャワーは割と知性的に思える。
ウマ娘の蹴りをうまいこと誘導してドアや窓を破らせれば脱出ができるようになるのだが、それを知ってか本物の斬れる短剣で確実に息の根を止めようと立ち回ってくるのだ。
ただし、小柄なライスシャワーの細腕なので、しっかりと間合いと踏み込みを計算に入れて立ち回れば、意外と刃は骨には届かない。
大丈夫だ。競走ウマ娘の瞬発力は完全にヒトより勝っても、逆に優れているからこそ 足首を捻りやすく故障しやすくもなっているので、急な方向転換は連続ではできない。
しかも、動きがどうにも力任せで感情的で素人だ。円の動きで立ち回れば、トレーナー室でも十分に攻撃を躱せる。土俵際での攻防をイメージすればわかりやすいか。
そして、こういった対ウマ娘用格闘術では鍛えようがない弱点を攻めるのが鉄則であり、足を引っ掛けて転ばせるのもありだが、ヒトにはない長い耳や尻尾を掴んで投げ飛ばすのも有効な手段とされている。
特に、ライスシャワーの耳は体格の割には大きい方なので、容易に掴み投げることもできるが、できればそんなことはしたくはない。
それよりも、どうにかしてあの短剣を取り上げないと、そろそろ受け流すのにも限界が来る。
そして、ライスシャワーの小柄な体格からくる とある弱点に対応した対処法を閃く――――――。
――――――ウマ娘のトレーナーたる者、担当ウマ娘を勝たせるために ありとあらゆる場面で ふと閃いてトレーニングに活かせるアイディア力を養わければならない!
和田T「来るなら来い!」バッ ――――――3枚重ねのハードタオルを広げて構える!
ライスシャワー?「ニクイニクイニクイニクイニクイ!」バッ ――――――間髪なく短剣で突いてくる!
和田T「今だっ!」バッ
ライスシャワー?「!!?!!!」
バサッ
ライスシャワー?「!!?!!!」 ――――――短剣で突き破られた3枚重ねのタオルだったが、
和田T「そらよっと!」グイッ ――――――そのまま腕まで貫通させたところで3枚重ねのタオルで絡め取る!
ライスシャワー?「ア……」ザシッ ――――――突如として腕を絡め取られたことで短剣を手放してしまうのだった!
和田T「っと、チェックメイトだ。少しばかり手足が短かったな」パシッ! ――――――手放した短剣を掴み取ってすかさず喉笛にあてがった!
ライスシャワー?「ニクイニクイニクイニクイニクイ……!」ギリリ・・・
和田T「落ち着け!」
ライスシャワー?「ニクイニクイニクイニクイニクイ!」
和田T「!!!?」
ライスシャワー?「――――――!」
ヒヒヒイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!
黒い馬「――――――!」 ――――――なんと、ライスシャワーが見たこともない黒い四足歩行の動物に化けた!
和田T「なっ!?」 ――――――タオルが引き千切られる!
黒い馬「――――――!」 ――――――そして、後ろ脚でゆうに2m以上はある巨体を持ち上げた!
和田T「え」 ――――――熊が立ち上がって身体を大きく見せて威嚇するように!
黒い馬「――――――!」 ――――――そこから、前脚を勢いよく!
ドゴオオオオオオオオオオオオオオオン!
和田T「うおおおおわああああああああああああああああああああああああ!?」ベチャ・・・ ――――――肩に叩きつけ!
黒い馬「ヒヒイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!」
和田T「あああああああああああああああああああああああああああああああ!?」ゴシャ・・・ ――――――巨体に踏みつけられるのであった!
――――――もうわけがわからなかった。
いきなり部屋に閉じ込められるわ、ライスシャワーに殺されそうになるわ、そのライスシャワーが見たこともないような動物に変身するわで、
完全に俺の想像力を超えた超展開の連続で生じた隙を突かれて、強烈なハンマーを肩に叩きつけられて勢いよくトレーナー室の床に叩きつけられ、とどめとばかりに更にストンピングを浴びせてきたのだ。
身体の中のものがいろいろと潰される重圧と共に絶叫と血反吐が激痛によって吐き出され、薄れゆく意識の中で自分で吐いた血反吐で血の気が引いていくのを感じた。
――――――ごめん。マックイーン。
その瞬間、俺の担当ウマ娘の思い出;楽しかったことや苦しかった日々、嬉しかったことや辛かった日々の記憶が次々と瞼の裏に映し出されていった。
そして、最後に映し出されたのは存在しない記憶;大人になった俺の愛バと結婚する時のウェディングドレスを彩る朗らかな笑顔の彼女――――――。
俺はそんな彼女に永遠の愛を誓う指輪と口づけを――――――。
ドンドンドン・・・、ガチャ!
「――――――大丈夫ですか、和田T!? 返事をしてください!」
「ひ、ひどい……。あのライスシャワー?の馬のオバケに襲われたんだな………………いったいどういう因果関係が?」
「ともかく、今はオバケに吸い取られた生気を回復しないと。あとは呪いを解いておかないと内臓破裂の因果が残ってしまう……」
「――――――お守りが必要だよな。馬が相手なら聖水と称して刺激臭のするものを持たせておくべきか?」
「何にせよ、あのライスシャワー?のオバケはただの動物霊ではないな。何か、作為的なものを感じるが正体がわからないな……」
「おそらく、背後に――――――」
「さあ、万年茸:霊芝のドリンクを飲みなさい。意識がなくても飲め」グビッ!
「よし、あとは裏世界からの脱出だな」パカッ
――――――そして、“
―――
――――――
―――――――――
――――――――――――
――――――起きてください、あなた! あなた! あなた!
和田T「ハッ」
メジロマックイーン「ああ、よかった……!」
和田T「え? マックイーン? いったい何が……?」 ――――――気がつくと保健室のベッドの上。
メジロマックイーン「憶えてませんの?」
和田T「あ、いや、何も……」
メジロマックイーン「その、トレーナー室で血を吐いて倒れていたそうです……」
メジロマックイーン「それをあの方がここまで運んでくださったみたいで……」
和田T「――――――『あの方』」
和田T「……そうか」ホッ
メジロマックイーン「これ、お見舞い品だそうです。なんでも、今のあなたは相当に内臓が弱っているそうですから、この滋養剤の霊芝のドリンクと、適度な休息と運動を絶対にして欲しいと」
メジロマックイーン「それと、他の栄養ドリンクは絶対に飲んではいけないともおっしゃってましたわ」
メジロマックイーン「典型的なエナジードリンクの飲み過ぎによるカフェイン中毒の可能性が高いと」
和田T「え」
和田T「あ、そっか。俺、最近、エナジードリンクを 結構な量 ガブ飲みしてた気がするな………………もうマックイーンを勝たせる必要もなくなったのにな」
メジロマックイーン「あなた……」
和田T「ごめん。思っていたよりも、俺、あと2年、トレセン学園のトレーナーをやるのが怖くなっていたみたい……」
メジロマックイーン「だったら、もう無理をせずに引退なさっても……」
和田T「でも、そうしたらマックイーンの旦那さんとしての格好がつかないじゃないか……」
メジロマックイーン「そんなこと……」
和田T「嫌なんだ。このまま勝ちウマに乗って逆玉の輿みたいに寿退社するのが……」
和田T「俺のトレーナーとしての実績はそんなでもないからこそ、子供に肩身の狭い思いはさせたくないって、何もしないまま終わるのが怖くて……」
和田T「一心同体だからこそ、少なくとも一緒にトレセン学園を卒業するぐらいの意地と甲斐性がなくちゃ、」
和田T「俺と一緒にターフの上で死んでくれるようなこともしてくれた最愛の人に対して申し訳がなさすぎて、本当に自分のことが好きじゃなくっちまうよ……」
和田T「俺からトレーナーバッジを取り上げたら、残るのは 何の取り柄のない ただのおっさんだろう?」
メジロマックイーン「………………」
和田T「いつかの時と逆になっちまったな……」
メジロマックイーン「あなた――――――」
メジロマックイーン「いいんですよ、トレーナーさん……」
和田T「え」
メジロマックイーン「今度は私が貴方のことを支える番ですから」
メジロマックイーン「私、この度 晴れて生徒会役員に就任できましたけれど、それに値する実績を築き上げることができたのは、他ならぬトレーナーさんのおかげです」
メジロマックイーン「トレーナーさん、私はトレーナーさんが私のために用意してくださった献立表のノートが一番の宝物ですわ」
――――――最初は自己管理もできない未熟者でした。頼れるトレーナーさんに出会えて本当に幸せでした。
和田T「でも、俺は――――――」
メジロマックイーン「言い訳無用ですわ!」
和田T「え」
メジロマックイーン「病は気から! 今のトレーナーさんは私のために不健康な生活を送らされていたわけですから、弱気になって当然ですわ!」
メジロマックイーン「ですから、少しずつ健康な生活習慣を送れるように私が看てあげますわ!」
メジロマックイーン「そして、おばあさまが言っておりましたわ」
――――――病は飯から。『食べる』と言う字は“人が良くなる”と書く。
メジロマックイーン「これからは 毎日 私の作ったメジロのみそ汁を味わってくださいな」
和田T「マックイーン……」
和田T「俺は、俺は――――――」
アグネスタキオン「やれやれ、いつまでそうしているつもりなんだい? もうそろそろで門限になるんだし、起きたのならさっさと帰りなよ」ドン!
メジロマックイーン「た、タキオンさん!?」
和田T「………………」
アグネスタキオン「ほら、かきたま汁だよ。豆腐や生姜も入っているから これで軽く腹を満たすといい、二人共」
和田T「そうか。わざわざありがとう。斎藤Tにもよろしく伝えてくれ」
アグネスタキオン「ああ。それと、これをお守り代わりに持っていろとさ」
和田T「……ん、これは八ツ橋の匂い? いや、微妙にちがう?」
メジロマックイーン「これはシナモンの香りですわね……」
アグネスタキオン「これを気付け薬として常に持ち歩くことだね」
和田T「わざわざすまない……」
アグネスタキオン「さあさあ、私も暇じゃないんだから、食べ終わったら私のトレーナー室に返しに来ておくれ」
メジロマックイーン「ありがとうございました、タキオンさん」
メジロマックイーン「あ、タキオンさん!」
アグネスタキオン「何だい?」
メジロマックイーン「当時 誰よりも“三冠バ”に近いウマ娘であったあなたとはターフの上で競い合いたかったですわ」
メジロマックイーン「だからこそ、楽しみにしておりますわ、タキオンさんの走りを」
アグネスタキオン「なら、その期待を裏切らないようにするとしよう」
アグネスタキオン「見せてやるよ、ウマ娘の可能性の“果て”をね」
・・・バタン!
和田T「……それじゃ、ありがたくいただくとするとしようか」
メジロマックイーン「はい。タキオンさんに先を越されたのが悔しいですけど、これからは――――――」
和田T「ああ。楽しみにしているよ、マックイーン」
――――――俺はまたもや助けられたみたいだ、あの方に。
あの方とは去年の『天皇賞(秋)』で大変お世話になっているが、実際にはそれほど親しいわけじゃなく、岡田Tを通じて最近の動向を知る程度の距離感だった。
しかし、こうしてまた助けられたことに、私はあの方の気遣いと心遣いに深く感謝する他なかった。
たぶん、一発で私が謎のオバケに襲われている現場に辿り着けたというわけじゃないはずだ。
あの時と同じように、何度も繰り返される時の中で必死に私のことを探し回って、私を死の運命から救い出してくれたにちがいない。
そうして、愛する人と時間いっぱいにあーんし合った かきたま汁は不思議なほど腹にたまり、指先にまで熱が行き渡って、活力がみなぎっていくのが感じられた。
あとで知ったのだが、この時は疑いなく学園一危険なウマ娘が用意したスープを飲んでしまったのだが、薬膳料理としてしょうが汁をベースにしたかきたま汁だったそうなのだ。
なので、その薬効によって身体が温まっていく過程で かつてトウカイテイオーやメジロマックイーンよりも最強の座に相応しかったアグネスタキオンというウマ娘に対するイメージが変わっていった。
ここまで親切にされるのもあの方が担当トレーナーとなっているからなのだろうが、言葉は通じるのに話が成立しない問題児:ゴールドシップとはちがった意味で親切心を疑ってしまいがちなアグネスタキオンの心変わりを如実に感じられた。
俺も食事管理で苦しんでいる担当ウマ娘のためにいろんな健康スイーツを手作りしていたからこそ、優しさが染み渡る温かな味に心が震えた。
正直に言って、今でも夢に出てきそうなぐらいオバケの恐怖が身体に染み付いているが、こうしてお守り代わりのシナモンの香りを嗅いでいると途端に現実に引き戻される感じがして、ようやく落ち着きを取り戻すことができた。
そして、見舞いの品として用意してくれた霊芝のドリンクの他に、いつの間にか採血されたのだろう、血液検査の結果も添えられており、簡単な診断結果にカフェイン中毒の警告があった。
そんなことができるのも明らかな理科系のウマ娘であるアグネスタキオンならではであり、俺はこの味をきっかけにしてしっかりと養生して来年度からの新しいトレーナー人生のスタートを切ることができた。
マックイーンにしても、まさか学園一危険なウマ娘であるアグネスタキオンに心温まるスープを振る舞われるとは思いも寄らず、このことが俺の健康管理のためにいろいろと励む良い刺激にもなった。
だから、学園一危険なウマ娘と学園一の嫌われ者のあの2人が繰り出す二人三脚;ウマ娘の可能性の果てを俺は陰ながら見届けたいと強く願うようになっていた。
それがまさか、残り2年の学園生活でああいったことになるだなんて、この時はあの方も誰も予想ができなかった――――――。
マンハッタンカフェ?「――――――」
スタスタスタ・・・
ライスシャワー?「ニクイニクイニクイニクイニクイ!」ブン! ――――――短剣が突き出される!
才羽T「おいおい、せっかくの豆腐が崩れるじゃないか」ヒョイ! ――――――しかし、豆腐の入ったボウルを片手に紙一重で躱す!
ライスシャワー?「ニクイニクイニクイニクイニクイ!」ブン! ――――――憎しみを更に込めて突き出す!
才羽T「そんななまくらじゃ、僕の命は奪えないよ」スッ ――――――危うげなく足を引っ掛ける!
ライスシャワー?「アァアア!?」ズサァ ――――――勢い余って転んでしまう!
才羽T「世の中で覚えておかなければならない名前はただ一つ。天の道を往き、総てを司る――――――」
ライスシャワー?「ウゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!」
ヒヒイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!
黒い馬「――――――!」パカラパカラ! ――――――ウマ娘の姿から正体不明の四足歩行動物に変化する!
才羽T「なるほどな。きみの正体はウマだったわけか。懐かしいな」
黒い馬「――――――!」パカラパカラ!
才羽T「いや、ここが裏側の世界だとするなら、ライスシャワーのウマソウルが暴走しているわけだね」スタスタ・・・ ――――――1!
才羽T「なら、ウマの代わりにウマ娘が存在するこの世界にウマソウルを召喚した術者がいるわけか」スタスタ・・・ ――――――2!
才羽T「そして、それがどういった因果かトレセン学園に解き放たれて、不幸を告げる黒ウマとして人々を襲うナイトメアになっている――――――」スタスタ・・・ ――――――3!
黒い馬「ヒヒイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!」
才羽T「…………イダーキック」ピタッ
才羽T「ハアッ!」グルッ! ――――――豆腐の入ったボウルを片手に!
黒い馬「!!?!!!」
ドゴオオオオオオオオオオオオオオオン!
黒い馬「ヒイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン……」ドサッ・・・――――――上段回し蹴りが顔面に炸裂!
才羽T「だから、言ったよね。せっかくの豆腐が崩れるって」シュタ! ――――――豆腐の入ったボウルを片手に!
才羽T「きみがライスシャワーのウマソウルであろうと、僕は手加減しないぞ」ゴゴゴゴゴ・・・
才羽T「あるべき場所に還るんだな」スタスタ・・・
黒い馬「――――――」
――――――その瞬間、紅い月が照らす世界は星空の下の夜道に戻った。
才羽T「これはいよいよ封印が破られる前兆か……」
才羽T「それだけ、人はこの世で生を受け、業を積み重ね、同胞と競い 妬み 憎んで、心の世界を闇に染めてきた……」
才羽T「となれば、トレセン学園は破滅するしかないのだろう……」
――――――執念や憎悪を“夢”と言い換える者は“悪夢”しか見続けられない。