ウマ娘超光速戦記 -TACHYON Transmigration- 作:LN58
次の話となる 第6話 鏡開きのURAファイナルズ を先にご覧になってから今回の話をお読みなると展開がスムーズです。
――――――明らかに住んでいる世界と作風が違う人物が登場します。
――――――都内のとある高級ホテルのスイートルーム
2人の男女がベッドの上で互いの身体を貪るようにして交わり合い、中央トレセン学園からのメッセージが届いたのを少し見て、すぐに行為を再開していた。
それは互いが主導権を握ろうとベッドの上で揉み合う高度な心理戦の応酬となっており、瞬間瞬間に繰り出される男と女の駆け引きを楽しみながら、貞淑さや建前などかなぐり捨てて気の赴くままに男女が交わる一体感を精一杯に味わっていた。
しかも、若い娘の味を知り尽くした手練である狡猾な男の相手は自分好みに調教されることが決してない大胆不敵な態度を崩すことがない烈女であり、今夜こそ同じ女にばかり可愛がる烈女の身体を完全に自分のものにしようと腰に血を滾らせていた。
そして、女の方もまた嘘や方便が嫌いなので口から出る言葉は全て本気の天性の人誑しであったのだが、担当トレーナーと担当ウマ娘が結ばれた若夫婦よりも大きな年齢差のある野性味溢れる男の存在が甚く気に入っていた。
だから、同じ女以外でこうしてベッドの上での駆け引きを楽しめる唯一の男として、女はこの男以外の欲望を受け容れたことはない。
そう、2人の男女はこうして顔を合わせると 躊躇いなく肌を重ね合わせるほどに 互いを求め合ってはいたものの、籍を入れて落ち着くという考えが毛頭ない 自由な生き方に忠実な 素直になれない似た者同士であった。
だから、『好きだ』とか『愛してる』だなんて 心の中で猛烈に連呼するしかないぐらいに そういった甘い言葉を口が裂けても絶対に言わない意地の張り合いを何年も続けており、
挑発的な物言いと仕草と顔を互いに崩さずに互いの弱いところを緩急をつけながら激しく優しくねっとりじっとり攻め合い、
心の底から求めている相手から与えられている快感の渦に耐えながら1分1秒でも長く繋がって最高潮に達したいという情動の果てに、2人の男女は 他の女の身体では味わえない 矛盾した感情の鬩ぎ合いで積み上げていく充足感を毎回得ていた。
というのも、男も女もが相手がそれまでにどれだけ他の女を抱いていようが、こうして顔を合わせたら絶対に一夜を共に過ごすことは言わずもがなの決定事項であり、時には他の女たちを一緒に可愛がった後も平気で2人で昼下がりまで寝ずにやり続けているぐらいなのだ。
むしろ、他の女を可愛がるのなんて空気を吸って吐くのが当たり前なぐらいに2人の男女にとっては容易いことであり、それだけの場数を風俗に通い詰めてなくても日常的に踏めるほどの豪快な日々を送っているのだ。
そして、2人の男女がスイートルームに足を踏み入れた瞬間から互いに贅を尽くしたフルコースがベッドの上に運ばれたことになり、
さて、シンボリ家の総領娘:シンボリルドルフがいよいよ生徒会長の任期を終えて、トレセン学園の世代交替が行われたことで、黄金期は終わりを告げた。
それは“皇帝”シンボリルドルフが持てるものを全てを動員したことでトレセン学園の黄金期は実は非常に危ういバランスの上で成立しており、
ウマ娘の自主性を可能な限り重んじた自由で開放的な校風によって、黄金期を象徴する才能豊かな個性溢れるウマ娘たちが引き起こす風紀と秩序の乱れに目を瞑ってもらうことで成り立っていたのだ。
つまり、シンボリ家の外部への影響力と内部への統制が行き渡っていることによって、暗黒期よりも乱れた風紀と秩序の問題を黙殺させていたのだった。
しかし、それは“皇帝”シンボリルドルフがトレセン学園に在籍している限り、そういった裏工作を一手に担っていた男との契約関係が終了することで、今まで封じられていた問題が一気に噴出することになる。
なぜなら、その男は純粋にトレセン学園やシンボリ家のために動いていたわけではなく、あくまでも自分の欲望の思うがままに生き、その生き様がまさに“太陽を落とした男”フランシス・ドレイクに喩えられた“悪魔の権化”だったからだ。
そう、政変や革命によって世間の価値観が逆転することによって左派と右派の立ち位置が逆転するように、
この場合の“太陽を落とした男”という称号は“
現在では暗黒期と呼ばれる トレーナーによるトレーナーのためのトレーナーのウマ娘レースが展開されていた頃のトレセン学園の体制を打ち壊した主犯格としての異名だったのだ。
中央トレセン学園においてフランシス・ドレイクに喩えられるような大悪党であるが故に、腐敗しきった暗黒期のトレセン学園の体制を素っ破抜くことができたというわけであり、
本来ならば秋川理事長やシンボリルドルフが進んで協力を仰ぐような人物ではなかったのだが、男の力でもって暗黒期から黄金期に進ませるために旧弊を一掃するように取り計らったのが“唯我独尊の開拓者”であったのだ。
そう、この世界においては“皇帝”よりも“開拓者”の方が世代が上であり、“開拓者”が先んじて切り拓いた道を“皇帝”が歩んでいたのだ。
では、“悪魔の権化”フランシス・ドレイクに喩えられた男のトレセン学園における立場はいかなるものだったのだろうか――――――?
実は、この男はトレセン学園の暗黒期において相当数の生徒たちに手を付けており、それでいて 多額の賄賂をもらっていながら、その犯行は決してバレることがなかった――――――。
それを可能にしたポジションはいかなるものか――――――?
――――――その答えが“トレセン学園の3T”と呼ばれた教育体制の3重構造にあった。
3Tが何の略なのかと言うと、
そして、
ちなみに、教師と教官は学校職員の扱いであるのに対して、指導員は学校職員とは別に雇用関係が結ばれているため、学校の先生ではない(ただし、副業として臨時講師を務めることは可能)。
ウマ娘ではないためにターフの上で一儲けすることができない男はこのトレセン学園の教育体制の3重構造:3Tを利用して、トレセン学園のウマ娘を次々と味見していったわけなのだ。
おやおや、3Tなのに
実に、その通り。
そう、男は
どういうことかと言えば、暗黒期における“トレーナーによるトレーナーのためのトレーナーのウマ娘レース”というものは、トレーナー組合であらかじめ 『誰がどのウマ娘の担当になって いつ実績を積ませるか』のローテーションが組まれており、
ローテーション通りの勝敗になるように出走する全てのウマ娘のスカウトやトレーニングを調整し、担当ウマ娘に八百長試合をするように指示することは一切する必要がないほどに非常に巧妙かつ緻密な計画の下、
トレーナー組合に所属するトレーナーたちに、ある程度の差はあるものの、少なくとも勝利バを輩出する実績を満遍なく積ませて安定した評価と報酬と興行収入を得るというトレーナー本位のレースが展開されていた。
もちろん、自分たちの実力で激戦を勝ち抜いてようやく掴んだと思われた栄冠が全てトレーナー組合で仕組まれたシナリオ通りのものでしかないことを知ってしまったウマ娘たちの失望感と虚無感は言うに及ばず、
しかし、自分たちがその真相を暴露してしまった場合の国民的スポーツ・エンターテイメントの夢の舞台に憧れてきた自分たちの在り方や先人たちや未来の名バたちのことを思うと、真実よりも自分たちが思い描いてきた夢のために誰も口に出すことができなかったのだ。
まさに夢の舞台での栄光を目指してターフの上で競い合っていたつもりのウマ娘たちにとっての暗黒期だったというわけである。どうすることもできなかったのだ、子供たちには。
――――――ここで1つ問題が生じる。
そもそも、自分たちを稼がせてくれる金儲けの道具であるウマ娘の才能を見抜くことができないと計画の立てようがないわけであり、その才能を見抜いてスカウトして二人三脚で『トゥインクル・シリーズ』を駆け上がるのが担当ウマ娘と担当トレーナーの理想像であった。
しかし、暗黒期においてはトレーナー組合が巧妙かつ緻密に計画した指示書のとおりに動いていれば、多少のレース本番のハプニングによる番狂わせが起きたとしても、いずれ必ず順番がめぐってきて重賞レースで勝利を掴んだという箔付けがなされることが完全に保証されているようなものだった。
だが、そんな八百長試合で勝ちをもらってきたようなカネに魂を売ったトレーナーにウマ娘の才能を見抜く真剣な眼差しが備わると思うだろうか?
そのため、暗黒期においてはクラス制で一度にたくさんの生徒たちを指導する体育の先生でもある
そうすれば、スカウトされないウマ娘は永久に『トゥインクル・シリーズ』の重賞レースに出走することができないので、もしもこの目利きで将来大化けする可能性があるウマ娘を見逃していたとしてもトレーナー組合の計画を揺るがすものには成りえない。
本来は『選抜レース』での結果からウマ娘の実力を測って
それぞれのウマ娘に合ったマンツーマンのトレーニングの許可は担当トレーナーが握っており、教官は個別指導に対応していないからこそ、ウマ娘たちはトレーナーからのスカウトを無条件に受け容れてしまうのだ。
そのため、暗黒期ではトレーナーの質は非常に低かったとされ、逆にトレーナー組合の計画に斡旋されるウマ娘を目利きできる教官は凄まじい影響力を持っていたことになるのだ。
そのため、入学前の前評判だけで実力がわかるウマ娘、入学したての頃の教官の集団指導の中で素質を見出したウマ娘だけしか、暗黒期と呼ばれた時代のスターウマ娘になれなかったのである。
もちろん、国民的スポーツ・エンターテイメントの夢の舞台のブランドイメージを崩さないように“ウマ娘によるウマ娘のためのウマ娘のウマ娘レース”への回帰を目指す生徒会との対立は不可避であった。
正確には、学園の方針を決められる理事会をめぐってトレーナー組合の背後にいるトレーナーたちの『名門』、生徒会の背後にいるウマ娘たちの『名家』の熾烈な水面下の争いが繰り広げられていたのである。
――――――ほら、見てご覧。賄賂で一番に甘い汁を吸っているはずの
そう、ウマ娘たちは
マンツーマン指導ではないとは言え、スカウトされるまで一応はトレーニングを担当してくれている
そうした夢の舞台への狭き門である熾烈な入学試験を勝ち進めた喜びと期待で胸を膨らませたことによる思考の穴によって、入学したての時期の体育の時間ですでにデビューできるウマ娘や重賞レースで勝たせるウマ娘が決まっていたのだから、とんでもない話である。
トレーナーたちは 自分の目ではなく 教官の目利きでスカウトを決めている――――――。そのことに入学してすぐに気づけたウマ娘はどれだけいたことだろうか。
夢の舞台で一緒に二人三脚していく相手として理想のトレーナーにスカウトされることを夢見るのが何も知らないウマ娘たちの実態であった。
だが、“悪魔の権化”がどれだけ優秀な目利きであろうと学校職員の給料しかもらえない教官の立場で現在に至るまで豪遊しまくれるほどの資金を得ることができたのには更なる秘密があった。
この男、トレセン学園の教官を初老になるまで勤め上げた超ベテラン教官である一方、トレセン学園の教官はトレーニング器具の管理にも長けている必要があるため、設備更新の度に最新のトレーニング器具の点検や修理について熟知しなければならなかった。
そのため、男は積極的に中央トレセン学園の分校でトレーニング器具の講習会も開けるほどに仕事熱心であり、そのまましばらくは分校の教官を務めることも珍しくはなかったし、最新のトレーニング器具の購入についての発言権も有していた。
もちろん、表向きは非常に仕事熱心で尊敬できる模範的な教官の一人であったが、裏では名門トレーナーに脅されたフリをして賄賂を受け取っている善良で無力な目利きの教官の一人としても振る舞っていた。
なぜなら、男はウマ娘への情熱を持ちながらトレセン学園のトレーナーの資格をとることができなかった落ちこぼれであり、
どれだけ目利きが優れていてもトレーナーの資格を持てない以上はスターウマ娘との二人三脚が許された殿上人たるトレーナーに傅くしかない存在なのだと――――――、
そう周りに信じ込ませて栄枯盛衰のトレセン学園に20年近く勤務し続けていたこともあり、博奕に敗れて表舞台を去っていく名門トレーナーや数多のトレーナーたちを見送ることになり、
そうして男はトレーナーの世代交代によって着実に受け継がれていった自身への絶対の信頼を掴み取ると同時に、学園内に忍ばせていた自分の手駒となる教え子である女たちを利用して次々と若手のトレーナーたちの弱みを握っていったのだ――――――。
気づけば、男はトレセン学園内に張り巡らされた
そう、この男は現在のトレセン学園の黄金期に対して暗黒期と呼ばれる時代よりもっと前から、トレセン学園の夢の舞台に競走バとして出走するためのアスリートコースに進学してくる大半の生徒ではなく、
出走バたちのサポートスタッフとして養成されるアシスタントコースの生徒に狙いを定めて、じっくりと時間を掛けてレースの女神と閨を共にする“
つまり、トレセン学園で一番最初に全てのウマ娘にターフの上での走り方を教えるのは他ならぬ
更に、トレセン学園のトレーナーは現場では担当ウマ娘との最初の3年間を単位にして将来設計する考え方のため、10年以上にもなるような長期的な展望をまったく考えられない一種の職業病に冒されており、
また、どれだけ実績を積み重ねたベテラントレーナーでも、担当ウマ娘を勝たせられなかった責任、スキャンダル発生による監督不行き届きの責任、故障による引退の責任などなど、
一夜にして名トレーナーの地位と名声を剥奪されて路頭に迷うこともあるのだから、全神経を担当ウマ娘の勝利に費やす生き方しかできないようにウマ娘レースという巨大な化け物に飼いならされているのだ。
その一夜にして全てを失う潜在的な恐怖がトレセン学園のトレーナーの心に刷り込まれているため、八百長試合を決定してるトレーナー組合の背後にいる『名門』のお偉方の心を意のままに動かすのは非常に簡単なことだった。誰だって自分の分身として生ませた自分の子が可愛いものなぁ。
そして、そのカラクリの一例として、レース本番前日の調整ルームに入れるのは出走バとサポートスタッフのウマ娘という事実――――――。
全てはそういうことなのだ。長い年月を掛けて自分の手駒となるように調教した教え子たちを全国各地の競バ場のサポートスタッフに紛れ込ませているのだから、後は『名門』のお偉方だけが知るレースの結果を変えてしまえばいい――――――。
レースの結果さえも男の気分次第で変えられて上納金を満足に収められなくなった場合の制裁の恐怖をお偉方に植え付けてしまえば、もうトレーナー組合の人間で夢の舞台の影の支配者である男に逆らえる者はいないのだ。
そう、夢の舞台の影で頂点に立つ“
あとは、秋川理事長とシンボリルドルフによる黄金期の幕開けの直前に行われた大粛清において、これまでの贈収賄の罪を問われて懲戒免職になるのだが、
受け取った賄賂は一切手を付けずに全額を詳細な記録と併せて学園に提出することで往年の善良で無力な名教官としての最後の誠意が認められ、
その誠実な人柄と長年に渡る貢献を踏まえた情状酌量によって、一人だけ自主退職で悠々と学園を去っていったのだった。
もちろん、これまで上納金として懐に収められたものは全て自分のものであり、一生遊んで暮らせるんじゃないかというほどの財産を隠し持ち、最後まで尻尾を掴ませることがなかったのである。
――――――これが“太陽を落とした男”の伝説であり、この事実は秋川理事長でさえ知らないことであった。
むしろ、理事会や『名門』の大物の誰かが
ただ、この男はたしかに暗黒期に跳梁した“悪魔の権化”であったわけなのだが、あっさりと既得権益を手放して勇気の告発によって大粛清の後押しをした背景には、それこそ“悪魔の権化”と呼ばれた男が改心するほどのとてつもない出来事があったのだ。
そして、男は“
その後も“
それがいよいよ偉大なる女王からの命令による義理立ての期間も終わったということで、完全にトレセン学園から引き上げようという段階に入ったのだ。
そう、レースの女神と閨に共にする“
黄金期や暗黒期といったものなど所詮は相対的なもので、“ウマ娘によるウマ娘のためのウマ娘のレース”を重視すれば風紀と秩序が乱れ、
そこから監督責任から“トレーナーによるトレーナーのためのトレーナーのレース”が強く求められ、いつかはそれが逆転しだすのを初老になるまでトレセン学園で見続けていたのだから。
そう、男が学生だった頃は“芦毛の怪物”オグリキャップよりも先に中央に移籍して活躍した“地方の怪物”ハイセイコーによるウマ娘レースの人気再燃の時期だったのだ。
そして、歳の離れた従兄が地方から中央トレセン学園のトレーナーになることを目指し、従兄を通じて夢の舞台の実態の輝きと影を知ることで、
幼くして誰よりも野心家であった男は従兄の二の舞を演じることがないようにトレセン学園の教育体制の3重構造の隙に真っ先に気づくことができ、わざと
結果、自分をただの教官と侮ってきた同期のトレーナーたちは男が初老で悠々と自主退職した時には誰一人として残っておらず、
自分がトレーナーになってウマ娘を勝たせるよりも莫大な財産を簡単に築き上げることができたのだから、男はすでにトレセン学園での金儲けに飽きてしまっていたのだ。
だからこそ、“
もちろん、アシスタントコースの教え子たちはみな大人になったのを確認してからご褒美をあげており、不純異性交遊などといった大人としての良識を疑われることは一切していないが、違法じゃなくなれば話は別である。
否、アシスタントコースに進まざるを得なかったウマ娘たちの劣等感を煽って同じようにトレーナーにならなかった名教官への好感度を高めた後、レースの結果は自分たちの意のままであるという仄暗い優越感を覚えさせることで未来のサポートスタッフ全員を共犯者にしたてあげる技術はまさに天才であった。
更には効果的なボディタッチによる刷り込みと開発もお手の物であり、そうやって情熱を秘めた若い果実を次々と熟成させて、大人になった教え子を自らの意志で男を求めて大人の女になるように仕向けながら、
それでいて、ちゃんと他の男と家庭を築けるように
そうじゃなければ、男もまたトレセン学園のトレーナーが常にヒトよりも強大な身体能力と闘争本能を持ったウマ娘が掛かった時に不純異性交遊を犯してしまう二の舞を演じるのだから――――――。
――――――俺は従兄のようにウマ娘にされるがままの人生は送らない!
この話の間抜けなところは、トレセン学園の3Tの中でもっとも不純異性交遊に目が行かないのが中高一貫校のトップアスリート校においてもっとも立場の弱い
そして、
一方で、
どちらかと言えば、
しかし、トレセン学園の話題の中心は言うまでもなく目まぐるしく世代交代していくアスリートコースの出走バたちであるため、どうしてもアシスタントコースの生徒たちへの注意が薄くなるのも当然であり、分校にいる生徒たちにもなると より一層 顕著だった。
だからこそ、男は全ての競走ウマ娘にとって夢の舞台で最初にターフの走り方を指導する誰もが知っている存在:トレセン学園の“
――――――それが“太陽を落とした男”フランシス・ドレイクに重ねられた暗黒期の生き証人であった名教官:
――――――窓から朝日が差し込む頃、
水鏡I「へえ、こいつは面白そうなのが出てきたもんだなぁ」
シリウスシンボリ「どうした? ルドルフが卒業するから『生徒会長を辞める』ってだけの当たり障りのないメールだろう?」
シリウスシンボリ「まあ、あの泣き虫のルドルフが入学してからあっという間の6年間だったけど、少しはまともになったんじゃないか、あそこも?」
水鏡I「シリウス、鍵はちゃんと持ってきているんだろうな?」
シリウスシンボリ「あぁん? そりゃあ、アンタの敬愛する女王陛下が預けたもんだから、必ず持ってきているさ」
水鏡I「ちゃんとメールは見たか? “皇帝”は女王陛下から賜った予言書『プリティーダービー』を学園一の嫌われ者に渡すつもりだぞ」
シリウスシンボリ「はあ……?」
シリウスシンボリ「まあ、『URAファイナルズ』開催までの予言書って話だったな」
シリウスシンボリ「なら、もう期限切れの予言書ってことなんだから、渡したって何の問題はないだろう?」
水鏡I「そして、『土曜日の『URAファイナルズ』予選初日のOB会に必ず来い』という話さ」
シリウスシンボリ「……そのために私まで東京に帰ってきたわけじゃねえんだがな」チッ
水鏡I「いい機会じゃないか。懐かしい顔に会えるかもしれないぞ」
シリウスシンボリ「会うまでもなく、あいつらは何も変わってないだろうさ」
シリウスシンボリ「それはアンタの教え子たちもそうだっただろう?」
水鏡I「ああ、子供も大きくなってたな。来年にはいよいよトレセン学園に入学する子だっているぐらいだ」
水鏡I「だから、いいかげん、素直になれよ。俺の子供が欲しいんだろう?」
シリウスシンボリ「おい、それが人にものを頼む態度か?」フフッ
――――――何でもします。俺のお嫁さんになってください。
シリウスシンボリ「だろ? ほら、そう言うんだよ」
水鏡I「そっちこそ、そろそろ欲しがっているくせに強がるなよ」
シリウスシンボリ「強がっているのはそっちの方だろう?
水鏡I「男ってのはいつまでも初心な少年のままなんだよ」
シリウスシンボリ「スケベオヤジのマセガキの甲斐性なしが」
水鏡I「ムッツリスケベめ。今日だけで20回はやったのに、その前に若い女を3人は摘み食いしただろう」
シリウスシンボリ「甘いものは別腹とよく言うだろう」
水鏡I「ああ、だから、俺がメインディッシュってことなんだろう? 認めろよ、お前は俺の子供を欲しがっているんだよ」
シリウスシンボリ「ちがうだろう? アンタの方が私がいないとダメになる身体になっているから、他の女を取っ替え引っ替えしたところで満足できないんだろう?」
シリウスシンボリ「ほら、来なよ、ぼうや。私がお寂しいぼうやを慰めてやるよ」
シリウスシンボリ「それとも、クリークのように“でちゅね遊び”したいでちゅか~?」
水鏡I「アハハハ! ほら、意識してる意識してる! 幼児プレイをご所望ってことはやっぱりママになりたいって疼いているんだろう?」
シリウスシンボリ「そういうアンタのところのムスコもママのところに帰りたがっているじゃないか」
水鏡I「じゃあ、優しくしてよ~、ママ~」
シリウスシンボリ「よくできまちたね~。えらいでちゅね~」
――――――こうして“太陽を落とした男”と“唯我独尊の探求者”の 冬の大三角が煌めく星の夜を追い落とす長いレースは半日に渡り 今回だけで24回を数えることになった。