ウマ娘超光速戦記 -TACHYON Transmigration- 作:LN58
-西暦20XY年01月26日の航星日誌- GAUMA SAIOH
本日、昨日とは競バ場を変えての『URAファイナルズ』予選トーナメント後半戦――――――。
すでに昨日の前半戦で数々の感動のドラマが誕生しており、出走バや視聴者によるそれぞれのアンケート調査でも『URAファイナルズ』開催に対する肯定的な意見が大多数で、肝腎の興行収入も予想を大変上回るものとなり 大盛況であった。
特に、競走ウマ娘にとっての最初の3年間:ジュニア級・クラシック級・シニア級を走りきった完走バの実力はピンからキリまであるため、
世間的には超有名人のナリタブライアンやミホノブルボンといったかつての“三冠バ”が勝つのは当然であっても、それ以外のほとんどはまったく勝敗の予想がつかない組み合わせになってくるのだ。
未勝利バもいれば、G2勝利バやG1レースの常連なども犇めき合い、これまでのローテーションの常識が通用せず、
この時のために学園から引退を引き止められて秘密の特訓を重ねて最後の大一番で己の存在をレースに刻みつけようと闘志を滾らせた競走ウマ娘が大番狂わせを果たしたぐらいだ。
そのため、ナリタブライアンよりも“三冠バ”になることが期待されて早々に一線を退いてしまった“幻の三冠バ”フジキセキの復活は、マイル部門での出走ではあったものの、凄まじい人気と注目を集めることになった。
三冠に挑戦する直前に屈腱炎を発症し、全治に1年以上かかる見込みであったことから、普通なら引退即退学の道を辿っていたはずの“幻の三冠バ”がこうして再び日の目を見ることになったのだ。
そして、『URAファイナルズ』限定で復活したフジキセキの走りはブライアン・エアグルーヴ世代にとっては昔を思い出させるものがあり、こうしたかつてのスターウマ娘の勇姿を再び見られることが『URAファイナルズ』の醍醐味になったのだ。
そうして、私とは顔馴染みであるスターウマ娘たちは順調に予選突破を果たしていき、ミホノブルボンに後塵を拝するばかりのライスシャワーとハッピーミークの強さが際立つ結果にもなった。
やはり、ミホノブルボンの背中をあきらめずに追い続けたG1レースの常連となる競走ウマ娘はやっぱり強かったのだ。ハッピーミークの実力はもうこれで文句の付けようがないだろう。
おかげで、私が賭けた応援バ券は全て大当たりで、改めて考えると 学園一の嫌われ者の私と繋がりがあるウマ娘は一流どころのG1勝利バばかりであり、
ルドルフ世代のBNW筆頭のビワハヤヒデも『有馬記念』でナリタブライアンと競り合った実力を遺憾なく発揮して余裕の予選突破だ。
――――――国民的スポーツ・エンターテインメントと謳われているだけのことはあった。
会場から感じる熱量の大きさは私の予想を遥かに超えたものであり、未だにトレセン学園のトレーナーになっていながら ただの徒競走に価値を見出だせない私であっても、この熱気に当てられて思わず知り合いの勝利を喜んでしまうぐらいだ。
これこそがスポーツの力なのだ。そこに心血を注ぐ人たちの情熱がこうして見る者を感動させて熱く燃え上がらせるのなら、たしかにそれは魂を揺さぶる芸術として価値あるものだと再認識させられた。
どうも宇宙移民というやつはハイテクな環境に身を置きながら地球上に存在しなかったような未知なるものを探して星の海を流離う身なればこそ、
誰でも出来る原始的なことだからと古代オリンピックで最初の種目になるような徒競走を無意識にバカにしてしまうところがあったようだ。
そういう意味では、どうして人類はスポーツを通して共存共栄の道を歩むことができていたのか、その答えを古きことを新しい知識として学ぶことができた;温故知新とは本当にバカにしてはいけないものだ。
だからこそ、私は宇宙移民としての探究心が満たされた歓喜に包まれており、頭であれこれ考えたトレセン学園の将来のことはさておき、目一杯にこの御祭に参加するようになっていた。
――――――都内の子供たちを集めた『URAファイナルズ』予選トーナメント観戦プログラム
シリウスシンボリ「じゃあ、さっさと餅搗きするぞ、シュワちゃん!」
アルヌール「おう」ペチッ
シリウスシンボリ「そら!」コネッ
アルヌール「えい」ペチッ
シリウスシンボリ「そら!」コネッ
アグネスタキオン「おや、今日も餅搗きをするのかい?」
斎藤T「今日のは普通の白餅を鏡餅にして供えるだけだけどね」
斎藤T「そう言えば知っているか。神前に捧げられた鏡餅は皇室の三種の神器の象意なんだ」
アグネスタキオン「ふぅン、どの辺がだい?」
斎藤T「まず、神社の拝殿には鏡が供えられていて、古代では非常に高価な鏡は円いものだから、それに見立てて餅を円形にしたものを供えたのが鏡餅の始まりだとされる」
斎藤T「つまり、鏡餅は名の通りに鏡が由来で、その鏡の元となるのが三種の神器が1つ:八咫鏡だ」
斎藤T「そして、積み重ねた餅の上に戴く橙が三種の神器が1つ:八尺瓊勾玉、串柿が三種の神器が1つ:天叢雲剣というわけだ」
斎藤T「材料は全て庶民にとって身近なもので構成されていて、それによって天孫降臨から始まる日本国民の統合の象徴たる天皇家の祭祀に肖ったものを民間でもやれるようにした代用品が現在に伝わる鏡餅の様式なんだ」
アグネスタキオン「なるほどねぇ。三種の神器を用いた天皇家の祭祀を真似たものが鏡餅というわけなのかい」
斎藤T「パンがキリストの肉、ワインがキリストの血となっているんだから、鏡餅だって天皇家にまつわるものなんだぞ」
アグネスタキオン「ふぅン。言われてみれば、そういうものだと納得がいくもんだねぇ」
アグネスタキオン「ところで、今日はどうして昨日と同じように大々的に餅搗き競争をしないんだい? 今日も搗いた餅で鏡餅を供えるぐらいならさ」
斎藤T「それはウマ娘レース界のレジェンドに配慮したものです」
アグネスタキオン「へえ?」
ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!
斎藤T「来たようだ」
アグネスタキオン「ふぅン、どれどれ?」
アグネスタキオン「おお、あれが伝説の――――――」
オグリキャップ「オグリキャップだ。よろしく頼む」
スーパークリーク「よく来てくれましたね、みなさん」
タマモクロス「せやで。せっかく 遥々 こっちに来たんやから、しっかりとゲストとして紹介してな、クリーク」
スーパークリーク「は~い。みなさ~ん、こちらは私の親友のタマちゃんで~す」
タマモクロス「――――――“タマモクロス”や! 紹介するんなら、ちゃんと紹介せいっちゅーねん」
タマモクロス「けど、暗黒期と散々言われていた時代から、ようホンマに『URAファイナルズ』みたいなレースが開催されるようになって、ウチ 嬉しいんや」
オグリキャップ「ああ。画面越しにでもわかるぐらいに全てのバ場で喜びと感動が溢れているのが伝わってくる」
オグリキャップ「私たちの走りは未来にバトンを繋いでいくことができたんだな……」
タマモクロス「まあ、ウマ娘レースの徒競走にはバトンなんてもんはないけど、小学校ん時の運動会のリレー競走なら誰だって走ったことがあるから、そう言いたくなるのもわからなくはないんやけどな」
アグネスタキオン「なるほどねぇ。知らぬ者はいないオグリキャップの大食いは誰もが知っていることだから、子供たちに提供するはずの搗きたての餅をみんな横取りされる恐れがあるという――――――」
斎藤T「今日の特大スペシャルゲストではあるけれど、一番にもてなすべきは未来の名バとなる子供たちなんだから、年甲斐もない振舞いを見せつけるわけにもいかないからな」
斎藤T「よく見ておけよ。あれがお前が超えるべきウマ娘レース界の伝説だ」
斎藤T「お前はオグリキャップが築き上げた伝説から始まる黄金期最後の遺産として、ウマ娘レースのみならず、
アグネスタキオン「そうだったねぇ」クククッ
――――――あれがオグリキャップ。国民的アイドルウマ娘にして神の愛し子か。
アグネスタキオン「6年目となる上位リーグ『ドリーム・シリーズ』での冬季・中山・2500mの引退戦での奇跡の大勝利……」
斎藤T「そう、1月に起きた伝説を超える不動の神話を相手は6年だが、
アグネスタキオン「みなまで言わなくてもいい。誰かに聞かれるだろう」
アグネスタキオン「それに、『ドリーム・シリーズ』での公式戦の記録まで含めて6年なら、ある意味
斎藤T「わかっているならいい」
――――――Hasta la vista, baby.
シリウスシンボリ「意味は『地獄で会おうぜ、ベイビー』だ」
アルヌール「Hasta la vista, baby」
シリウスシンボリ「おチビ共も! さん、はいッ!」
子供たち「Hasta la vista, baby!」
シリウスシンボリ「そう、で、その後に“
アルヌール「
シリウスシンボリ「わかってきたじゃないか、シュワちゃん。らしくなってきたぜ」
アルヌール「No problemo」
シンボリルドルフ「あの……、シリウス? 子供たちに何を教えているんです?」
シリウスシンボリ「海外で舐められないようにするための流儀をこの私が直々に教えてやっているんだよ」
シリウスシンボリ「ほら、“日本総大将”スペシャルウィークだって、『ジャパンカップ』の時に凱旋門賞バに向かって『
シンボリルドルフ「いや、あれは『凱旋門賞』で敗れたエルコンドルパサーの意趣返しで何も知らずに吹き込まれたものだって聞いてますけど……」
シリウスシンボリ「それからも、お気に入りのフレーズになって 何度も使っているじゃねえか」
シリウスシンボリ「お行儀よくゲートに入るだけの日本のウマ娘はだから舐められるんだよ」
シリウスシンボリ「一人ぐらいはこうした跳ねっ返りがいる方がわかりやすいストーリーになって興行は盛り上がるのはわかってんだろう?」
シリウスシンボリ「神が人にパンを与え、悪魔が人にスパイスを与えた」
シリウスシンボリ「さあ、おチビ共! 前置きをこの辺にして、今日は海外のウマ娘共が恐れ慄く日本の食い物:ライスケーキの食い方を伝授してやるから国際競走のディナーで実践するんだぞ!」
子供たち「はーい!」
シリウスシンボリ「ほら、アルヌールは搗きたての餅を1人前に千切っていくんだよ!」
アルヌール「Yes,ma'am!」
シリウスシンボリ「ちなみに、ma'amは“madam”の縮約形だけど、意味は『奥方様』になるから実質的に“ma'am”と“madam”は別の単語だから、忘れてもいいぞ」
子供たち「はーい!」
シリウスシンボリ「ほら、どいたどいた。オグリキャップのやつに目をつけられる前に食わせてやらないと」
シンボリルドルフ「わかりました」フフッ
ジュー、ジュー、ジュー!
タマモクロス「ええか? これが明日から使える100円レシピやで! せっかく中央に上がってきたのに、練習後の空きっ腹を食費を気にして腹を満たせないのはホンマにつらいことや!」
タマモクロス「せやから、こういう安くて美味くて腹に溜まるレシピをたくさん持ってきたから、家に帰って自分の小遣いでちゃんと練習するんやで?」
タマモクロス「わかったか!」
子供たち「はーい!」
オグリキャップ「タマ、私も――――――」ジュル・・・
タマモクロス「あ、オグリ! 今日は『レジェンドウマ娘直伝! 世界一受けたいお料理教室!』なんやから、自分で賄い飯を作って勝手に喰ってろや!」
オグリキャップ「でも、私はタマの作ってくれた料理が食べたいんだ……」
タマモクロス「うぅ……。そんなで目でウチも見るな……!」
タマモクロス「わかった。わかったから! ちゃんとオグリの分も作ってやるから、お行儀よくして待つんやで。子供たちが見とる」
オグリキャップ「ありがとう、タマ」ニッコリ
タマモクロス「ああもう! ホンマ、オグリは何も変わっとらんな! 今 何歳やねん!」
オグリキャップ「そういうタマも昔とまったく変わってなくて、私はとても嬉しい」
ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!
スーパークリーク「さあ、慌てないでくださいね。応募者全員サービスの復刻版『ぱかプチ』の引き換えはこちらになります」
子供たち「やったー! 念願のオグリキャップだー!」
子供たち「タマモクロスも!」
スーパークリーク「はいは~い」
スーパークリーク「あ、この引き換え券は私ですね」
スーパークリーク「よく来ましたね。いい子いい子ー」ヨシヨシ
子供たち「ま、ママ……」
スタスタスタ・・・
アグネスタキオン「まったく、どうして私が会場を隈なく回って甘酒やソフトドリンクを配らないといけないんだい?」
斎藤T「今日の主役じゃないからだ」
斎藤T「それと、イメージ戦略だ。お前はただでさえ“学園一危険なウマ娘”としてのイメージが強すぎるから、こうやって何も知らない人たちからの支持を得て回るしかないんだ」
斎藤T「いいか、雑用こそが判断能力の源なんだ」
斎藤T「雑用に使われる末端の人間の動きや考えが正確にわかってこそ組織が円滑に回せるわけだから、リーダーこそが率先垂範して雑用をやれるようじゃないと、資本主義における資本家と労働者の垣根がなくなることは永遠にない」
斎藤T「そもそも、自分がやりたいこと・実現したいことの全てを自分でやれるのが理想であり、それこそが神なるものの体現だろう」
斎藤T「だからこそ、お上の人間と下々の人間を一体になった時に一個人では果たされないような組織の巨大な力が発揮されるわけだ」
斎藤T「労働者は資本家の手足として分身として入念に労るべき存在なのを自覚するべきであり、だからこそ、雑用を厭う者に神の叡智は宿らない」
斎藤T「――――――WUMAの階級制度だってそうなっていただろう?」
アグネスタキオン「だから、きみは一人で何でもやろうとするわけなんだね」
斎藤T「まあ、他に任せられる人間がいないことばかりだからな……」
斎藤T「とは言え、スポーツドリンク・栄養ドリンク・ミックスジュースの飲み比べのコーナーを一手に担っているお前の評判は上々だぞ」
アグネスタキオン「まあ、私の得意分野だからね」
アグネスタキオン「そして、挽きたてコーヒーの自動販売機があるように、ミキサーとサーバーを一体化させて配合比率を変えられて裏漉しやボトル詰めができる超ハイテクの新型ドリンクサーバーを用意したのはきみだろう?」
斎藤T「ああ。これでいちいちミキサーからコップに注ぐ手間や保存の手間が省けて、手軽に自家製ミックスジュースを楽しめるだろう? 裏漉しで飲みやすさも自在に調整できる!」
アグネスタキオン「いや、それ自体はありがたいんだけれど、体験コーナーに人が集まっているのに『私がこうしてドリンクを配って回る意味はない』と言っているんだけど」
斎藤T「わからんやつだな。こうした地道な努力と経験を知らない根性なしに育てるつもりは毛頭ない」
斎藤T「私がトレーナーをするということはそういうことだ。トレーニングに関しては口出しするつもりはないが、それ以外の面ではトレーナーである私に従ってもらう契約だ」
アグネスタキオン「……まあ、こうしたウマ娘レースのレジェンドと会う機会や未来のスターウマ娘になる子供たちとふれあう機会を得られたのは、私の研究においても有益なことではあるよ」
アグネスタキオン「私の白衣のイメージもここでは随分とちがった意味に捉えられているみたいだしね」
斎藤T「ああ。何も知らない人しかいないからな、
斎藤T「ぜひとも、ウマ娘最速理論の実証が成されることを期待しているよ」
アグネスタキオン「ああ。もちろん、見せてやるさ」
――――――ウマ娘の可能性の“果て”をね。
本日は超大物ゲストであるウマ娘レースの伝説:オグリキャップとタマモクロスを迎えてのアスリートフードをテーマにした2日目となっており、
オグリキャップの大食いとタマモクロスの料理上手であることや鏡開きで餅をたくさん食べさせたいことから、前日が餅をメインにしたもてなしにして、その翌日がアスリートフードによるもてなしとなっていた。
そのため、『URAファイナルズ』開催の歓びを白熱する現地のバ場で味わってきたファンですら『こっちに来たかった』と言わしめるほどの伝説のOB会となっていた。
『URAファイナルズ』の本質が中高一貫校として退学が多い現状を憂えた国策の卒業レースであり、引退を引き止めて この日限りの復活を期して ついに再び夢の舞台を駆け上がるウマ娘たち――――――。
それを大スクリーンで見つめる未来のスターウマ娘となるだろう子供たちが『トゥインクル・シリーズ』の激闘の歴史を駆け抜けた伝説と一緒に観戦する様は、まさに過去と未来の融合とも言えた。
これが卒業してからも母校であるトレセン学園を想う有志たちの新たなる役割とも言え、『URAファイナルズ』の裏でこうした交流イベントをOB会が開催する意義でもあった。
つまり、『URAファイナルズ』にはこれだけのトレセン学園の内外で大きな動きがあり、それが新たなウマ娘レース文化の創造に繋がっていたのだ。
そういう意味では、日本における『URAファイナルズ』の開催は諸外国にとってはまさにアメイジングであり、本場のパート1国ですら絶対に真似することができない“日本だからこそできた興行”だと大絶賛となっていた。
何しろ、冬季に開催される前代未聞のトーナメント戦は無謀の一言であり、ここまで興行が大成功になるとは誰も思っておらず、秋川理事長のポケットマネーと国民の血税が無駄に流れるだけだと誰もが鼻で笑っていたぐらいなのだ。
なので、まだ予選トーナメントでしかないものの、ここまで大盛況であるのならば秋川理事長が世界の競バ界を相手取った賭けは完勝に近いものがあった。
この成功があればこそ、新時代の先頭を切る“女帝”エアグルーヴやそれに続く者たちもやっていけるのだと、私は改めて未知なるものを求めて新天地を目指す宇宙移民としての初心に帰っていた。
知識だけじゃダメなんだ。計算だけじゃダメなんだ。体験を通して得たものこそが本物だ。
――――――何事も『やってみなければわからない』ということだ!
斎藤T「私、天皇家に代々仕えてきました家系の生まれでして、ここだけでしか到底言えないような恐ろしいことを今から言いますね?」
斎藤T「いいですか? 来年度の5月1日から平成から令和になるわけですからね、その時まで秘密にしておいてくださいね? 絶対にですよ?」
オグリキャップ「ああ、わかったぞ。楽しみにしている」
タマモクロス「期待しとるで、あんちゃん! 一発、特大のギャグをかましてや!」
斎藤T「はい、平成のウマ娘レースの伝説となる御二方に許されたので、お教えしますね」
斎藤T「今はまだ平成時代なので、今上天皇陛下のことについては触れません」
斎藤T「はい、今は平成時代だけれど、昔は何時代だったかな? 答えられるかな?」ビシッ ――――――江戸時代と平成時代の間の3つの時代が隠された歴史年表!
子供たち「明治!」
子供たち「大正!」
子供たち「昭和!」
斎藤T「はい、正解!」
斎藤T「そんなわけで、時代が変わる今だからこそ! 私のご先祖様がお勤めになっていた皇宮護衛官の間で伝わる秘密のこぼれ話をいたします!」
斎藤T「はい、こちらの御方が明治天皇陛下です! 代々木公園の明治神宮で有名ですよね!」
斎藤T「ある時、明治天皇陛下のお側に仕えていた人がこっそり目を擦りました。こんなふうに見えないように」
斎藤T「すると、明治天皇陛下はこうおっしゃられたのです」
明治天皇『――――――
オグリキャップ「…………?」
アグネスタキオン「ふ、ふぅン……」
シリウスシンボリ「ブハッ」
シンボリルドルフ「……く、くくっ」
タマモクロス「ワハハハハ! 最高や! 最高やで、あんちゃん!」
タマモクロス「おい、拍手や、拍手!」
パチパチパチ・・・!
斎藤T「ありがとうございます。くれぐれも秘密にしておいてください。でないと、怖いですからね」
斎藤T「続きまして、大正天皇陛下。第123代天皇にして漢詩人だったことを憶えておいてください。わかりやすいでしょう」
子供たち「はーい!」
斎藤T「よろしい」
斎藤T「ある時、大正天皇陛下の前を恵比寿さんが通っていきました」
斎藤T「恵比寿さんって知っているよね。右手に釣り竿を持ち、左脇に鯛を抱える姿で七福神の1柱として有名だよね。関西の方だったら馴染み深いんじゃないんですか」
斎藤T「すると、大正天皇陛下はこうおっしゃいました」
大正天皇『――――――
シリウスシンボリ「こ、これは……!」
シンボリルドルフ「く、くくく……!」
アグネスタキオン「ふ、ふふ、ふぅン……!」
タマモクロス「ワハハハハ! 最高! ホンマ おもろいで、あんちゃん!」
オグリキャップ「お、おお! たしかに鯛を背負う恵比寿は珍しい! そういうことだな、タマ?」
パチパチパチ・・・!
斎藤T「ありがとうございます。これも秘密にしておいてくださいね」
斎藤T「じゃあ、最後。昭和天皇陛下。これは言うまでもないでしょう。今上天皇陛下のお父さんとして大変に素晴らしい方でした」
斎藤T「そんな私が崇敬してやまない昭和天皇陛下のこぼれ話を1つ」
斎藤T「ある時、昭和天皇陛下がウマ娘レースのウイニングライブというものをご覧になろうと思い立ちました」
斎藤T「今日 国民的スポーツ・エンターテインメントとなった近代ウマ娘レースは昭和時代に形が整いましたからね」
斎藤T「しかし、生まれて初めてのウマ娘レースをご覧になったのですが、レースが終わってもライブステージはバ場のどこにも見当たらず、とうとう迎えの人が来てしまいました」
斎藤T「すると、昭和天皇陛下はこうおっしゃいました」
昭和天皇『――――――
シリウスシンボリ「あ、ああ! アハハハ! もう無理! こんな不敬罪スレスレのジョークを皇宮護衛官の息子のアンタが言うだなんて反則だろうが!」
シンボリルドルフ「さ、さすがにこれは……! 笑っちゃいけないはずなんだけど……!」
アグネスタキオン「ふ、フフフ……! さすがは私のトレーナーくんだよ……!」
オグリキャップ「ふ、ふふふふふふ!」
タマモクロス「見ろ! オグリですら笑うほどやで! ホンマに最高だったわ、あんちゃん!」
オグリキャップ「昭和天皇陛下もドジだったんだなぁ。ウマ娘のレースの会場とウイニングライブの会場は別なことも知らないだなんて」フフッ
タマモクロス「――――――不敬やで!」
オグリキャップ「あうっ」
斎藤T「オチがついたところで、本日はありがとうございましたー!」
パチパチパチ・・・!
――――――イベント終了後の打ち上げ
シリウスシンボリ「よし、グラスは持ったな」
シリウスシンボリ「それじゃ、『URAファイナルズ』開催を記念して!」
シンボリルドルフ「乾杯!」
――――――乾杯!
タマモクロス「いや~、ホンマに見応えのあるレースやったな、オグリ」
オグリキャップ「ああ。私もあそこに混ざって走りたくてしかたがなかった」
シリウスシンボリ「まあ、実態としては最初の3年間を走りきった競走ウマ娘に全員がなれるように願った卒業レースで、実力も実績もバラバラなのが入り混じっているから、普通じゃ見られないようなレース展開になってハラハラさせられるな……」
シリウスシンボリ「昔だったら普通にタイムオーバーになっているような大差もチラホラあったしな」
シリウスシンボリ「まあ、腐っても最初の3年間を走りきった競走ウマ娘しかいないから、走りきれないようなヤワなやつは一人もいなかったがな」
アルヌール「実力も実績もバラバラでタイムオーバーが許されるということは『選抜レース』と同じ条件ということか」
シリウスシンボリ「お、そうだな。そういうことだよな」
シンボリルドルフ「つまり、卒業レース『URAファイナルズ』はトレセン学園の生徒なら誰もが一度は時と場所を同じくする『選抜レース』に立ち返ったものになるのか」
スーパークリーク「いいですね。自分たちのトレセン学園での原点になる『選抜レース』を振り返るというのも」
オグリキャップ「そうだな。今も昔も『選抜レース』で競い合ったライバルたちが みんながみんな バ場に居続けるわけじゃないにしても、あの頃のことを思い出しているんじゃないかな?」
タマモクロス「せやけど、『選抜レース』とはえらいちがいやで。異例のトーナメント形式だし、予選トーナメントでも上位入賞で賞金は出るわ、何より練習コースじゃない本物のバ場を実力・実績に関係なくみんなで走れるんや。ホンマにええ時代になったな、オグリ」
オグリキャップ「それを実現してくれたのは“皇帝”シンボリルドルフだ」
シンボリルドルフ「いえ、私はチーム<シリウス>とチーム<アルフェッカ>が遺してくれたもののおかげでここまで来ることができただけです。私一人の力で成し遂げられたものは何一つとしてありません」
タマモクロス「けどな、ウチらにしてみれば“新堀 ルナ”っちゅうひとりの女の子をあれだけ可愛がった人が太鼓判を押してくれたから、ウチらはみんな“皇帝”の道を用意していけたんやで?」
オグリキャップ「懐かしいな。ムラクモTは今も元気にしているだろうか」
タマモクロス「せやな。最初からウチの担当がしたくてしたくてたまらなかった御仁で、見た目からしてクリークが2人に増えたみたいでウチのことを可愛がってくれたけど、最後はえらい男前になってたからホンマにびっくりやったで」
スーパークリーク「大丈夫ですよ。今も昔と変わらずにあの人はタマちゃんのことを心から可愛がってくれるはずですよ」ヨシヨシ
タマモクロス「ほっとけ! あの頃から何も変わってないのはウチもわかっとるから!」
タマモクロス「にしても、クリークはずっと待つんか、自分の担当トレーナーのこと?」
スーパークリーク「はい」
――――――だって、“何かしら大切な人”ですから。いつまでも待ってます。
アグネスタキオン「…………ふぅン」
斎藤T「どうした? ノンアルコールワインの味はお気に召さなかったか?」
アグネスタキオン「いや、『URAファイナルズ』開催までにいろんなことがあっただろうことを考えていてだね」
斎藤T「私もこうして直に人に会ってみないとわからないことだらけだったのを痛感したよ」
斎藤T「知識としてデータ化される中で削ぎ落とされていったものがこんなにもあったんだ」
アグネスタキオン「そうだね……」
斎藤T「いったい後世の人間にアグネスタキオンというウマ娘はどう記録されるのだろうね?」
アグネスタキオン「さてね――――――」
スーパークリーク「あ、そうだ! ルナちゃん、ルナちゃん!」ムギュッ
シンボリルドルフ「う、うわっ!? クリークさん!?」カアア! ――――――突如スーパークリークの胸に引き寄せられる!
スーパークリーク「あの人の代わりとは言いませんけど、きっとあの人だったらこうすると思い、トレセン学園の6年間を頑張りぬいたルナちゃんにいい子いい子です!」ヨシヨシ
シンボリルドルフ「く、クリークさん……、もうそんな歳でもないから恥ずかしい……」
オグリキャップ「ルナ!」ムギュッ
シンボリルドルフ「ふえっ!?」ドキッ ――――――背後からオグリキャップに抱きつかれる!
オグリキャップ「よく頑張った。よく頑張ったな」ヨシヨシ
シンボリルドルフ「あ……」
オグリキャップ「ほら、タマも!」
タマモクロス「はぁ? ウチも!?」
スーパークリーク「タマちゃん!」
タマモクロス「ああもう! しゃーない!」
タマモクロス「ほら、ルナ! ウチも褒めてやるから今日は思いっきり泣いていいんやで」
タマモクロス「今じゃウチよりもこんなに大きく育ったけど、ウチらからすれば いつまでも“新堀 ルナ”なんやからな」
シンボリルドルフ「タマさん……」
シンボリルドルフ「う、うぅ…………」ジワァ・・・
シンボリルドルフ「うん、がんばったよ……。ルナ、がんばったもん……」
タマモクロス「ああ、よしよし。ようやった、ようやった」ヨシヨシ
タマモクロス「しかし、男っちゅうのは本当にどうしようもないやつやな」
タマモクロス「ウチは別にいいとして、担当ウマ娘のクリークやルナを置いていって どっか遠くへ行ってまうんやからな」
タマモクロス「でも、ルナ。人前でずっと泣いていないと思ってたんやけど、随分と涙脆い気がするな。これまで人前で泣いたことがあったんか?」
シンボリルドルフ「え? あ、それは…………」チラッ
斎藤T「――――――」 ――――――いつの間にか背中を向けて担当ウマ娘と話している。
シンボリルドルフ「………………」
タマモクロス「……そうか。ルナもまだまだ女の子なんやし、恋の1つや2つあったって当然やな」
シンボリルドルフ「ち、ちがいます! 私にとっては私と一緒に“皇帝”の道を歩んでくれた彼しか――――――」
タマモクロス「でも、別の男の前で泣いたんやろ?」
シンボリルドルフ「!!!!」
タマモクロス「ええんやで。今の時代は離婚の1つや2つ経験して堂々と女を磨くような価値観にも成りつつあるんやし、」
タマモクロス「ひとりの人間を愛して その人を失ったら ずっとその人のことを想い続けて操を立て続けるのも辛いだけやで?」
タマモクロス「そもそも、ルナは結婚していたわけでもないんや」
タマモクロス「シンボリ家の総領娘として、これから数え切れない人たちと渡り合っていかなくちゃならんのやし、絶対に信頼できるパートナーは身近に必要になるで」
タマモクロス「せやから、釣った魚に餌をやらない亭主は最低やけど、釣った魚より先に死ぬような男はもっと最低や」
シンボリルドルフ「そ、そんなこと――――――!」ギリッ
タマモクロス「お、ちゃんと怒る気力があるぐらいに情はまだ残っているわけやな」
タマモクロス「せやけど、実際には寂しくて辛いんやろう?」
タマモクロス「だったら、ウチから言えることは一つや」
――――――自分の担当トレーナーと同じ歳になるまで今の気持ちを持ち続けたのなら十分に操を立てたんやから、そこからは自由に選択するんやで。
シンボリルドルフ「え」
タマモクロス「いつまでも引き摺ってたらあかん。そんな青春の燃えカスのような人生のためにあんたの担当トレーナーは命を張ったわけじゃないっちゅうことや」
タマモクロス「幸せになる義務があるんやで、残された人間にはな」
タマモクロス「だから、今は気持ちの整理をつけなくてもいい」
タマモクロス「けど、同時にルナには残りの人生を選び直すこともできることは忘れんといてな」
タマモクロス「はい、ウチからは以上!」
シンボリルドルフ「……タマさん」
タマモクロス「大丈夫やって。今のルナは酸いも甘いも経験したイイ女になれる素質は十分にあるから、いい出会いにもきっと恵まれるからな」
タマモクロス「せやから、今はいろんな重責から解放されて宙ぶらりんになって昔のことを思い出して憂鬱になるかもしれへんけど、その分だけ今までになかった未来だってちゃんと待っとるから!」
オグリキャップ「ああ。ルナは強い子だ。誰もルナのことをほっとかないさ」ヨシヨシ
スーパークリーク「いい子いい子~」ヨシヨシ
シンボリルドルフ「それじゃあ、クリークさん。昔みたいに泣いてもいいかな」
スーパークリーク「いいですよ~。大きくなりましたね~」ヨシヨシ
シンボリルドルフ「ありがとうございます……」
――――――では、胸を借ります。
シリウスシンボリ「なあ、アンタらはルナのことをどう思ってんだ?」
アグネスタキオン「何だい、急に?」
シリウスシンボリ「いいから。アンタらのことをルナはずっと気にかけて庇い続けてきたんだろう? それなりに恩義は感じてるんだろう?」
シリウスシンボリ「――――――今だったら夜這いしたって誰も文句は言わねえよ」
アグネスタキオン「――――――『夜這い』!?」
斎藤T「別に。極上の肢体を味わうのなんて仮想現実でもできるようになりますし、未成年との情愛に現を抜かすほど私は暇じゃないので」
アグネスタキオン「お」
シリウスシンボリ「言うじゃないか、ああ?」
斎藤T「なら、はっきり言うと、私は未知なるものを探求する宇宙移民ですので、ウマ娘の幸福を願うシンボリルドルフとウマ娘の可能性を追究するアグネスタキオンなら、私はアグネスタキオンと一緒に冒険したいですね」
アグネスタキオン「トレーナーくん……」
シリウスシンボリ「言い切ったな」ハア・・・・
シリウスシンボリ「まあ、メイクデビューもしていない新人にダイヤモンドのネックレスを渡しているぐらいにはお熱のようだし、悪かったな。野暮なことを聞いた」
斎藤T「いえ。こちらとしても大切なビジネスパートナーですので、末永いお付き合いをさせてもらいたいとは思っていますよ」
シリウスシンボリ「大人がみんなアンタやツレみたいな余裕の持ち主だったら、何の心配も苦労もないんだけどな」
シリウスシンボリ「まあ、この場に居合わせて簡単に情が移るような人間なら こっちから願い下げだったし、アンタは絶対に信頼できる人間なのはわかった」
シリウスシンボリ「なら、頼んだぜ。私たちが夢見た黄金期はこうして『URAファイナルズ』として結実した」
シリウスシンボリ「そこから先の私たちが創造できなかった新しい未来をルナと一緒に見させてもらうからな」
斎藤T「いいですよ。少なくとも、私の担当ウマ娘はウマ娘レースの伝説を超えるウマ娘界の神話になると思いますので」
シリウスシンボリ「――――――『オグリキャップを超える』とは大きく出たな」
シリウスシンボリ「だが、そうでなくっちゃな。やっぱりアンタはツレと同じ人間だ。確実に何かしでかしている人間の臭いがする」
シリウスシンボリ「今夜も来るんだろう? 楽しみにしていたからな」
斎藤T「ええ。こちらとしても楽しみですよ」
――――――本当にいろんな意味で新しいものが続々と生まれつつある今日此頃。