ウマ娘超光速戦記 -TACHYON Transmigration-   作:LN58

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第8話   節分祭で煎り豆に花が咲く

-西暦20XY年02月03日の航星日誌- GAUMA SAIOH

 

実は、トレセン学園:日本ウマ娘トレーニングセンター学園にとって一番に忙しい時期は年末年始などではない。

 

中高一貫校として中学受験と高校受験が用意されている2月こそがトレセン学園の繁忙期である。

 

東京都における教員採用試験は7月から10月の合格発表までの長期戦となっていることを踏まえると、

 

一般的なウマ娘レースのオフシーズンの時に冬季に入学試験、夏季に採用試験と綺麗に分かれて行われていることになる。

 

勘違いしてはいけないのは、教員採用試験で採用されるのはトレセン学園の3Tにおける教員(Teacher)教官(Instructor)である。

 

トレセン学園に入学した競走ウマ娘の運命の人となる指導員(Trainer)はトレセン学園の所属ではあるのだけれど、正確には教育機関としてのトレセン学園の教職員にはトレーナーは数えられていない。

 

公営競技(ギャンブル)であるウマ娘レースを管轄している文部科学省*1の長人たる文部科学大臣の監督を受けながら日本国政府が資本金の全額を出資する特殊法人:URAの所属団体であるトレーナー組合と雇用契約を結んでいるのが指導員(Trainer)である。

 

指導員(Trainer)は一般的にはトレセン学園の一員として広く世間に認知されているものの、正確にはURAから出向している外部指導者(コーチ)であるため、国家資格であるトレーナー登録及びトレーナー採用試験はURAの直接の管轄である。

 

要するに、トレセン学園のトレーナーと一口に言っても、トレセン学園の夏季の職員採用試験や冬季の入学試験とはまったく無関係の部外者の立場にある。

 

だから、教育機関の教職員とはまったくちがった観点からトレーナーとして採用される人間が多いわけでもある。

 

 

そのため、中高一貫校のトレセン学園には教職員と生徒以外に本来ならば学校関係者に数えられないURAの職員に属する人間(トレーナー)が気軽に出入りできる特殊な教育現場となっているわけである。

 

 

なので、学園関係者に数えられないトレーナーは特に2月の未来のスターウマ娘が入ってくるかもしれない入学試験には関わることができないようになっており、公平を期すためにトレセン学園の教職員に数えられている教官(Instructor)が実技試験の試験官を担当していた。

 

つまり、トレセン学園の2月は中学受験と高校受験のためにトレーニングに大きな制約ができる状況になっており、生徒たちは少なくとも2月上旬には進級や卒業を懸けた期末試験を受けることになっていた。

 

そして、トレーナーも受験期間中に学園にいることが歓迎されていないため、オフシーズンとして余暇を満喫することを推奨されていた。

 

なので、ここでトレーナーとその担当ウマ娘は3月から始まる激戦に備えた束の間の休息をとることができるわけなのだが、

 

ここで地獄を見るのが総生徒数2000名弱の生徒を抱えている中高一貫校のトレセン学園の教職員たちであり、競争倍率がとんでもない数字になっている夢の舞台への入学希望者たちを捌かなくてはならない。

 

筆記試験に関してはマークシート試験で対応することで大人数の採点も機械的に行って何とかなっているが、

 

入学後の『選抜レース』のような組み合わせの悪さで本来の実力を発揮できずに入学できずに地方で活躍したなんてことがあっては中央の目利きのレベルを疑われるので、

 

実技試験に関しては夢の舞台で輝けるチャンスを公平に与える場を提供する目的を第一に、最低限のハロンタイムを超えてさえいれば実技試験での多人数のレースの順位とは関係なく全員合格とし、

 

実際にはその後のトレセン学園のトレーニング設備を使った簡単なトレーニングに耐えられるかを主に見るものとなっていた。

 

そして、最終的には面接試験で学費をどのようにして支払うのかを確認し、問題がなければ入学試験に合格することになっていた。

 

そう、トレセン学園の入学試験においては最初から()()()()()()()()()()()()()()()()()は見ていない。

 

レースには一握りの勝者とそれ以外のその他大勢の敗者がいるわけなのだから、勝者を引き立てるだけの最低限の実力としっかりと入学金や学費を支払う当てがあれば、それで十分なのである。

 

なので、トレセン学園に所属する教官(Instructor)総出で実技試験で故障しやすいウマ娘かどうかを見張り、教員(Teacher)総出で面接試験でウマ娘レースの興行にどれだけ貢献する人材かを確かめるわけである。

 

 

つまり、中央トレセン学園の夢の舞台に入るための水準に達すること自体は実際にはかなり簡単なのだ。

 

 

ちゃんと入学金と学費を支払う当てがあることと引き立て役になるのに必要な最低限のハロンタイムを叩き出せるのなら、トレセン学園のトレーニングや学力についていけるかどうかの試験結果は二の次だったのである。

 

実際、サクラバクシンオーのように明らかに学力不足な生徒でも入学が許されているし、それが結果として短距離最強ウマ娘として勇名を馳せることになったのだから、この思惑は一定の成果を上げたと言える。

 

一方、巨大な組織を運営するのにどうしてもカネが必要になってくるので、常に最新のトレーニング設備や環境を用意するためにも、集客力と資金力のある最低限の実力(ハロンタイム)が保証されているのなら誰でも歓迎していたわけである。

 

そして、はっきり言おう。最低限のハロンタイムでさえも叩き出せない子であろうと、寄付金が多ければ裏口入学は可能であるし、

 

面接試験でレースを盛り上げてくれる存在になってくれると面接官からの口添えをもらえれば無手勝流の大逆転が可能であるのだ。

 

というより、就職の面接試験とはちがって現状の職能力ではなく“本格化”を迎える前の大勢のウマ娘の将来性を買う側にあるのがトレセン学園なのだから、まだ見ぬ名バの可能性を発掘するために裏口入学や無手勝流の大逆転を容認しているところがあったのだ。

 

そう、引退即退学などの夢破れた生徒たちの去就の問題の本質は実力不足だと公然と周囲に嗤われる状況に闘争本能の強いウマ娘の面の皮と矜持が耐えられるかどうかであり、

 

これでもトレセン学園は可能な限り夢の舞台への門を開いて未来のスターウマ娘の挑戦をこれでもかと待っているわけなのだ。実際、トウカイテイオーなんかは3度も故障して最後に歴史に残る栄冠を掴んだ。

 

しかし、その結果として、暗黒期よりも大幅に生徒が増えた黄金期では明らかに勝てない競走ウマ娘たちをどんどん増産することになった――――――。

 

だいたい、正々堂々と実力でトレセン学園に入学ができたとしても、次に『トレーナーにスカウトされるかどうか』という更に狭き門が待ち構えて、それで実際に勝てるかどうかも絡んでくるため、

 

結局は入試に合格できなかった人生の負け組に入試に合格できた大勢の未出走バや未勝利バが加わっていくのも周知の事実であったのだ。

 

なので、右も左も夢の舞台は敗北者だらけであるため、まじめに勝てるウマ娘かどうかを入学の時点で見定めるのも馬鹿らしいため、入学の基準は世間が想像するのとは正反対に実はかなり甘くなっていたのだ。

 

だからこそ、入学できても夢破れた落ちこぼれもたくさん生まれるわけで――――――。

 

中にはトレセン学園の出身という箔付けのためだけに中等部に入学して、何事もなくバカ高い授業料を払い続けて何食わぬ顔で中等部で卒業し、トレセン学園の出身であることを武器にして飯を食っていく強者もいたぐらいである。

 

つまり、入学生がトレーナーの手で才能を開花させて活躍しようがしなかろうが大きなカネの動きがあるため、部外者であるトレーナーに関わらせたくないというのが本音である。

 

トレーナーは未来のスターウマ娘の買い手ではあるが、売り手である仲介業者のトレセン学園にも入学生を選ぶ権利はあるため、こうした複雑な市場が出来上がっていたわけだ。

 

 

――――――カネに意地汚いのは 未成年の才能で興行をやっているのだから 学園もトレーナーもお互い様だ。

 

 

しかし、他の面でも2月は特に気を遣う時期でもあった。

 

何しろ、ダートウマ娘にとってはダート・1600mのシニア級G1レース『フェブラリーステークス』が第3日曜日:2月17日にあるため、受験期間中ということで学園のトレーニング設備に制限がかかるのは大問題であった。

 

そのため、他にも2月に出走を予定しているウマ娘のために受験期間中にトレーニング設備を使えるようにしておく必要があり、2月に開催されるレースの予定に合わせて受験期間を調整していたのだから、いろいろと大変なのだ。

 

そのため、今年から第4日曜日:2月24日には『URAファイナルズ』準決勝トーナメントのために『フェブラリーステークス』の日程が完全に固定されることになった。

 

 

一方、『フェブラリーステークス』と『URAファイナルズ』が連続して開催されるため、シニア級:4年目以降のダートウマ娘にとっては非常に悩ましい展開になっていた。

 

 

しかし、その問題を解決するために最近では競走ウマ娘にとって最初の3年間を走り抜いた完走バに対して“スーパーシニア級”という用語を新設することにより、

 

『フェブラリーステークス』はシニア級:3年目の競走ウマ娘が参加し、『URAファイナルズ』にはシニア級:3年目を完走したスーパーシニア級が参加できるものだとしっかりと区分されることになったのだ。

 

今までは1年目:ジュニア級、2年目:クラシック級、3年目以降:シニア級という括りであったため、どうしても一言で『URAファイナルズ』の出走条件を表現できず、一部で大きな誤解を招いていた。

 

なので、この“スーパーシニア級”の概念の発明は画期的なことであり、『URAファイナルズ』開催と同時にすぐに広まることになった。

 

最初の3年間を走りきった完走バに用意される道が、スーパーシニア級としてこれからも『トゥインクル・シリーズ』を走り抜くか、上位リーグ『ドリーム・シリーズ』へ移籍するか、それとも契約を延長することなく解除するか、はっきりと単語1つで表現できるようになったのだ。

 

 

――――――スーパーシニア級(契約続行)か、『ドリーム・シリーズ』(昇格移籍)か、契約解除(競走ウマ娘卒業)か。

 

 

さて、話を戻すと、2月はただでさえ中高一貫校としての中学受験と高校受験があるだけじゃなく、公営競技のプロスポーツ校としてひとりひとりの実力や資金力を確認しなくちゃならないのに、

 

同時期にれっきとした重賞レースの興行も執り行われるのだから、そちらに出走する生徒たちがベストコンディションで出走できるようにトレーニング設備の割り振りも学園は考えなくてはならなかった。

 

ところが、今までは考えられないほどにこの時期に大勢の完走バたちが『URAファイナルズ』準決勝トーナメントに出走することになったため、学内のトレーニング設備の割り振りがとんでもないことになってしまっていた。

 

1月の『URAファイナルズ』予選トーナメントは2日間に渡って全国の競バ場を専有するほどのかつてないほどの大規模レースになったが、

 

2月は2月で日本最高峰のトレーニング設備を持つトレセン学園が入学試験に対応するためにトレーニング設備の使用が大幅に制限される状況で最終調整をしなくてはならないため、その不満を抑えるためにトレセン学園の教職員たちは目を回すことになった。それで負けたら学園側の不備として非難されるからだ。

 

他にも、2月の『URAファイナルズ』準決勝トーナメントにスーパーシニア級の担当ウマ娘を出走させるために、今までは余暇を楽しむことが推奨されていたはずのトレーナーも最終調整に付き合う必要が出てきたので、これまた2月のオフシーズンを楽しんでいたベテラントレーナーたちにとっても大きな負担となっていた。

 

学園のトレーニング設備が今まで通りに使えないからと言ってこんな寒い時期に担当ウマ娘を遠征させるのも難しく、

 

今までは教職員たちが死ぬほど忙しいだけだった2月はトレーナーたちも一緒になって死ぬほど忙しい季節に変わろうとしていた。

 

もちろん、学業が本分である生徒たちにとっては進級や卒業を懸けた期末試験があるので、2月は本当にトレセン学園全体が慌ただしくなってきたのだ。

 

それを門外漢の私は横目に見ながら、やりたいこととやるべきことに邁進することができるので、非常に気楽にこの時期を快適に過ごすことができていた。

 

 

●2月度の『URAファイナルズ』開催による影響

 

・中高一貫校なので中学受験と高校受験があり、志望倍率がアホみたいに高いので、受験期間中は学園のリソースのほとんどが受験に割り振られてしまう。

 

・トレセン学園の教職員は圧倒的志望倍率からくる受験生の対応のために総出になる。

 

・そのため、教職員の都合で2月上旬には進級や卒業を懸けた期末試験があるため、生徒たちは必死になって試験問題に向き合うことになる。

 

・一方、URAの職員であってトレセン学園の教職員ではないトレーナーのほとんどは期末試験を終えた担当ウマ娘とオフシーズンとして受験期間の余暇を楽しむことになっていたが――――――、

 

-新設レース『URAファイナルズ』準決勝トーナメントのために出走バの最終調整をしなくてはならなくなったため、余暇を楽しむことができなくなる。

 

-それに伴い、受験期間中のトレーニングの要求が増加し、学園のトレーニング設備のやりくりが大変になり、寒さの厳しい冬季の遠征で最終調整をするべきか大いに悩むこととなる。

 

 

→ 結果、『URAファイナルズ』開催で2月は生徒も教職員もトレーナーもトレーニング設備の確保で紛糾することになった。今後の開催において一番の課題となることだろう。

 

 


 

 

――――――トレセン学園/元 岡田Tのトレーナー室

 

飯守T「ああ もう メチャクチャだよ!」

 

斎藤T「そもそもが総生徒数2000名弱のマンモス校ですからね。テストの点数をつけるだけでも大変だし、追試や補習も大変だし、最終的な進級と卒業の判断もありますからね」

 

飯守T「まあ、追試や補習に関しては例年通りに受験期間が終わった後にやればいいから、『URAファイナルズ』準決勝トーナメントの後にでもやればいいさ」

 

飯守T「そもそも、重賞レースのトレーニングを優先して期末試験の勉強に集中できない生徒のために追試期間があったわけだしな」

 

飯守T「けど、この時期にトレーニングを必要とする競走ウマ娘が一気に増えて、受験期間中のトレーニングが満足にできない状況はマズいんじゃないのか?」

 

 

斎藤T「まあ、この問題の解決を通してトレセン学園が大きく脱皮することになるでしょうから、そう悪いことでもないですよ。これが改革の原動力になります」

 

 

飯守T「わりと期末試験が終わった後の暇な時期を『ハッピー・バレンタイン!』ってことでライスと一緒にのんびりするのが楽しみでもあったんだけどな……」

 

斎藤T「出走する/しないも出走申請ができる担当トレーナー次第じゃないですか」

 

飯守T「この時期にこんなにも最終調整を思い悩むんなら、次からは『URAファイナルズ』には出したくないけどな!」

 

 

斎藤T「それだけ、今まで入学した後の競走ウマ娘たちのことを平然と見捨ててきたツケを学園が払わされるわけですよ」

 

 

飯守T「……だな」

 

飯守T「今も学生寮に閉じこもりきりの子が何人もいるのが現実だしな」

 

飯守T「ターフの上の夢を見て、夢の舞台を目指して、そして 夢破れて――――――」

 

飯守T「俺と出会わなかったら、きっとライスも――――――」

 

飯守T「そんな夢の舞台の輝きの陰で蹲っている生徒たちと向き合おうとしない大人たち――――――」

 

飯守T「なあ、お前だったら、どういう風に解決する? 同時開催できるバ場の確保を優先するばかりにトレーナーや学園の都合を一切無視した無茶苦茶なローテーションをどう変える?」

 

 

斎藤T「トレーニングできる場所を増やせばいいんじゃないんですか? あるいは、入学試験のために使える会場を用意するかですね」

 

 

飯守T「つまり、『受験生と在校生を完全に分離させて邪魔しあわないようにする』ってわけだな? まあ、それが正統派だよな」

 

斎藤T「だいたい、距離適性がちがうのに“本格化”を迎えていない小学生に2000mを走らせるのは明らかに問題ということで、ハロンタイムが最低ラインを超えたらみんな合格ってことになっているんでしょう?」

 

飯守T「まあ、その最低ラインのハロンタイムをなかなか超えられる小学生がいないから狭き門なんだけどな」

 

 

斎藤T「だったら、1ハロン(200m)の芝コースとダートコースのカーペットを野球場とかサッカーグラウンドにいっぱいに敷いて一斉に走らせればいいじゃないですか」

 

 

飯守T「え!?」

 

斎藤T「ほら、そうすればハロンタイムの測定を場所を問わずに簡単にできるようになるでしょう? 全国各地でハロンタイムによる実技試験が行えるようになる! 各地の競バ場のスタッフを試験官に回せる!」

 

斎藤T「そうすれば、最新のトレーニング器具の適性調査は少なくとも学園で受けなくちゃならなくても、受験期間中にトレセン学園のコースを受験に割り当てる必要はまったくなくなりますよね?」

 

飯守T「それが実現すれば、2月も今まで通りにトレーニングができるようになるじゃないか!?」

 

飯守T「すげえよ、斎藤T! そのアイデアを理事長に提出しようぜ!」

 

斎藤T「すでにシンボリ家を通して提案済みです。あとは使い捨てのハロンカーペットの生産の目処がつくかどうかです」

 

斎藤T「いつも思いますけど、コースに芝を敷き詰めたところで触りもしない余剰部分が目立ちますから、障子の張り替えと同じ要領で必要な面積分のタイルカーペットの上を走ればいいじゃないですか」

 

飯守T「おお!」

 

 

斎藤T「――――――問題は今というわけです」

 

 

飯守T「……そうなんだよな。斎藤Tの発明で来年から受験期間中の不便がなくなるかもしれないけど、俺たちとしては今をどうするかだよな」

 

飯守T「まあ、条件はどこも同じだし、みんなトレーニングができないなら、準決勝トーナメントで差が開くことはないよな?」

 

飯守T「ここは無理はせずに基礎トレーニングか?」

 

斎藤T「まあ、それが無難でしょうね」

 

飯守T「“皇帝”シンボリルドルフの時代もいよいよ終わった矢先にこのドタバタ感もあって『本当に1つの時代が終わりを迎えるんだ』って感じがするよ」

 

斎藤T「開催まで漕ぎ着けることができただけでも御の字で、最初だからいろいろと問題もあるわけですけど、挑戦を恐れるようになったら学園も終わりですから」

 

飯守T「そうだな。夢の舞台で働いているんだから、これぐらいの夢とロマンのある特大イベントをこなせるだけの大仕事を教職員にも参加させてやらないとな!」

 

 

斎藤T「さあ、今日は節分祭です。恵方巻と福茶をどうぞ」

 

飯守T「あ、黒豆が入っているんだな、福茶って」

 

斎藤T「基本的には梅昆布茶をベースにしてましてね」

 

斎藤T「起源は村上天皇の御代に空也上人が十一面観音に祈願して供えた茶が疫病で苦しんだ人々を救ったことに始まります」

 

斎藤T「あるいは、村上天皇の御身が病を患った時に空也上人が開基した六波羅蜜寺の観音様に供えた茶で快復したことに因み、“皇服茶”とも呼ばれています」

 

飯守T「――――――“幸福”をもたらす茶だから()()()か。また1つ勉強になったよ」

 

飯守T「おお、美味い! 梅の風味と昆布の出汁が利いてて、しかも抜群の塩加減でまろやかで飲みやすい!」ゴクッ

 

飯守T「何か悪いな。いつもご馳走してもらってよ」

 

斎藤T「いいんですよ。この部屋に入れるVIP限定のおもてなしなのですから」

 

 

シンボリルドルフ「やあ、斎藤T! 何やら素晴らしいトークに花を咲かせているようだね!」ニッコリ!

 

 

飯守T「わ、シンボリルドルフ!?」

 

斎藤T「どうぞ、幸福をもたらすお茶“皇服茶”です」

 

シンボリルドルフ「そうか、そうか。幸福をもたらすお茶“皇服茶”か」フフッ

 

シンボリルドルフ「うん! 美味い!」ゴクッ

 

斎藤T「黒豆は正月のおせち料理にもあるように『()()に暮らせるように』という意味合いがあり、黒は何物に染まらない色として『強い意志力』の象意となります」

 

シンボリルドルフ「おせち料理は掛詞の宝庫だな」フフッ

 

飯守T「へえ。じゃあ、福茶に黒豆が入っているのは『()()に暮らせる』ことが幸福だって教えているんだな」

 

斎藤T「そうです。整理・整頓・清掃・清潔・躾の5Sを行えない人間はそれだけで不幸になるわけです」

 

斎藤T「たとえば、タバコをポイ捨てして引火させる危険性のことを思えば、5Sがどれだけ大切かわかりますよね」

 

斎藤T「するか/しないかを考えて取捨選択をすれば、自ずと正解が見えてくるものです。ゲーム理論です」

 

斎藤T「そして、雑然とした空間は気が乱れるもので、もしも宿泊施設が広々とした空間である場合と狭い空間のどちらがゆったりできるかと言えば、当然 広々とした空間の方が気はいいんです」

 

斎藤T「だから、おもてなしをする以上は5Sは絶対にしなくてはならないのです」

 

斎藤T「あ、どうぞ。恵方巻をいただいてください」

 

シンボリルドルフ「ああ、いただきます、斎藤T」

 

飯守T「でも、それだと この部屋はあまり気がいいとは言えないよな……」ムシャムシャ

 

シンボリルドルフ「そうだな。山積みになった保存食に、タキオンの実験スペースに、スーパーコンピュータに、ユニットシャワールームに囲まれた中で、こうしてテーブルを囲んでいるからな」

 

シンボリルドルフ「でも、ここに来ると不思議と晴れやかな気分になるな。ブライアンが入り浸るのもよくわかる」ムシャムシャ

 

斎藤T「それは空気の流れがちがいますからね。どうして周りをスクリーンで仕切っているかと言えば、空気の流れを変えつつ認識の世界で境界を作っているからですね」ムシャムシャ

 

斎藤T「そこの実験スペースや山積みになった保存食のところに足を踏み入れた瞬間に空気が変わりますよ」

 

飯守T「そういうもんなんだ」

 

斎藤T「そういうもんなんです。あるかないかの効果を確かめて統計データが得られれば、それはれっきとした科学的事実になりますよ」

 

シンボリルドルフ「なるほど。部屋を仕切るだけでこんなにもちがいが出るものなのだな」

 

斎藤T「多目的ホールを展示会ブースにする時にパネルをどう配置して、どういった順路になるように考えていけば、自ずとわかることです。街の美術展を見てくださいよ」

 

シンボリルドルフ「――――――私もまだまだ勉強不足だな」

 

シンボリルドルフ「そういった視点があるからこそ、先日 企画書にまとめてくれたハロンカーペットのアイデアが思いつくわけなんだな。さすがだ」

 

飯守T「でも、今日はどうして神棚に鏡餅を飾っているんだ? しかも、メチャクチャ気合が入っている飾り付けもしてあるし」

 

 

斎藤T「そんなの、本来の正月が旧正月だからです」

 

 

飯守T「え」

 

シンボリルドルフ「ああ、今の暦は西洋のグレゴリオ暦:太陽暦に合わせたもので、元々は中国暦:太陰暦の旧暦が使われていたんだよ」

 

シンボリルドルフ「それで、だいたい太陽暦の2月1日の節分の時期を太陰暦の正月としていたから、今でも太陰暦の国や中国文化圏では旧正月を元日として国の祝日にしていることが多い」

 

飯守T「じゃあ、昔ながらの正月を祝っているわけなんだな、斎藤Tは」

 

斎藤T「ええ」

 

飯守T「あ、そう言えば、節分と言えば豆撒きだけど、皇宮警察の家系だと『福は内、鬼は外』って言いながら豆を撒くのか?」

 

斎藤T「しないですよ。数々の鬼神を使役した“神変大菩薩”役行者に倣って『福は内、鬼も内』です」

 

斎藤T「禍福は糾える縄の如し、神が人に害したらそれは試練、悪魔が人に害したらそれは災いだと区別する21世紀の底の浅さに呆れるばかりです」

 

斎藤T「雄大な自然の弱肉強食の摂理を見れば、生まれたら死ぬのは当たり前で、その中で生き物はストレスを抱えながら互いに傷つけ合って進化してきたんです」

 

斎藤T「コノハムシとかナナフシとか見てくださいよ。あんなにも見事なまでに葉っぱや枝に化けてでも生きていることを強いられていることを不幸だと嘆かないでしょう」

 

斎藤T「だから、生き物にとって人生で起きるあらゆることが善因善果・悪因悪果・因果応報の賜物であり、その上で明るく前向きに楽天的で発展的で創造的であることが天地自然の掟なのです」

 

斎藤T「“皇帝”陛下におかれましても、幼い頃からの競走ウマ娘の『名家』の総領娘としての英才教育を嫌がって遊び呆けていたら、今のようにご立派になれましたか?」

 

シンボリルドルフ「いいや。辛くても努力してきた甲斐があったと過去の自分を誇れるよ」

 

斎藤T「そう、嫌なことは嫌なんだけど、その中で喜びや楽しみ“苦中有楽”を見出して向上していくのが人生の醍醐味ですから」

 

斎藤T「善と悪の色分けも抽象化すれば、それは自身によりストレスを与える側を悪として、それを克服することを善と呼んでいるわけで、我々はあらゆる意味でのストレスと向き合うことで日進月歩を果たしているわけです」

 

斎藤T「飯守Tにしても、担当ウマ娘が『選抜レース』を前にして怖気付いて逃げ出すような子だったから、縁が結ばれたわけでしょう?」

 

飯守T「ああ。普通だったら、スカウトするわけないよな、あんな別な意味で気性難の気弱な子」

 

飯守T「でも、ふとした偶然からライスが普段からどれだけ頑張っているのかを目にすることができていたし、そこは本当にめぐりあわせの良さを感じていたよ」

 

飯守T「まさか、ライスがグランプリウマ娘になってメジロマックイーンに匹敵する実力者になるだなんて思いもしなかったな」

 

シンボリルドルフ「ああ。あれには本当に驚いたよ。才羽Tや桐生院Tの他にも無名の新人トレーナーがこうも活躍しただなんて目を疑ったよ、本当に」

 

 

シンボリルドルフ「だからこそ、用心しておいてくれよ、飯守T。メジロマックイーンのようにならないようにな」

 

 

飯守T「ええ。わかってますって。俺も元甲子園球児で、球児が投げられなくなる辛さは理解していますから」

 

飯守T「ライスには無理はさせたくないんだ。あの子が引退したら絵本作家になって幸せな物語をたくさん描いてもらいたいんだ」

 

シンボリルドルフ「それなら全てのウマ娘が幸福になれる絵本を描いてもらいたいな」フフッ

 

飯守T「そうですね」

 

シンボリルドルフ「そして、それが新しい時代の福音書になることを」

 

斎藤T「………………」

 

 

この日、テスト期間中ということで多くの生徒たちがテスト勉強に励んでいる中、私は飯守Tを招いて節分祭:本当の正月を祝っていたところ、“皇帝”シンボリルドルフがお越しになった。

 

すでに生徒会長の座をエアグルーヴに譲った後のシンボリルドルフは長年に渡る重責から解放されたためか、物凄い頻度でここを訪れるようになった一方で、生徒会長だった頃の輝きが薄れているようにも感じられた。

 

それだけ夢の舞台の顔役を務めることが責任重大の大役であったことを物語るわけであり、その大役を全うしようとする気概がシンボリルドルフのカリスマを 一層 輝かせていたのだ。役作りが人を作るのだ。

 

ただ、最愛の人だった担当トレーナーとの思い出が残り続けるトレセン学園から離れたくないというのが一人の少女“新堀 ルナ”としての本心であり、その寂しさを忘れるために生徒会の仕事に打ち込んでいたところがあった。

 

そうすることがここまで自分を導いてくれた最愛の人と恩師に報いることになるのだと自分に言い聞かせて、かつてないほどに最高のトレセン学園の日々を創り出すことに情熱を注いでいたのだ。

 

だから、“皇帝”シンボリルドルフの全てがなくなったわけではないが、今のシンボリルドルフはどこか空気が抜けた印象を受けた。

 

そう、“ヒトとウマ娘の統合の象徴”としてトレセン学園を黄金期に導く存在であることを“ウサギ耳”に予言され、

 

一人の少女の道標となるべく託された予言書『プリティーダービー』で描かれた数々の未来の可能性を吟味しながら、“皇帝の王笏”と呼ばれた彼と一緒にスターウマ娘の発掘と保護に陰ながら尽力していたことの証であった。

 

たとえば、“悲劇の天才”トウカイテイオーや“メジロ家の至宝”メジロマックイーンこそ今では世代の中心ともてはやされているが、

 

実はあの世代で『選抜レース』において満場一致で最強だった学園一危険なウマ娘:アグネスタキオンやそんな彼女と一緒に旧校舎の理科準備室を分け合った不気味なウマ娘:マンハッタンカフェがいたわけであり、

 

かたやマッドサイエンティスト、かたや深夜徘徊の経験がある変わり者の 白と黒の2人に惜しみなく便宜を図ることができたのも予言書『プリティーダービー』があればこそである。

 

この2人はターフの上での勝利よりも速さを追究する独自の美学を持ち、そのアプローチが他とはちがった形になっていることをだいたい予言書に書いてあった通りであるのを確かめることができて以来、

 

退学処分勧告を受けないように“無敗の三冠バ”の威光を駆使して積極的に生徒会や校外活動の手伝いをさせて周囲の評判を少しでも良くなるように良き先輩として面倒を見ていたのだ。

 

そんな最強の生徒会長の心遣いが伝わったからこそ、中等部1年生の時点でトレセン学園に自分が求めるものがないとしてすぐに見切りを付けて自主退学を考えていたアグネスタキオンを引き留めることになり、マンハッタンカフェも妥協を覚えて入学した年にメイクデビューを果たしたエリートになることができた。

 

それからアグネスタキオンのメイクデビューに4年以上は掛かったことを考えれば、同期のトウカイテイオーたちが最速でメイクデビューを果たしたのに続いてメイクデビューを年内に果たせたマンハッタンカフェはどれだけ優等生だったのかを肌身で感じることになった。

 

予言書『プリティーダービー』に距離適性やバ場適性に脚質、性格や容姿まで予言された競走ウマ娘を全てチェックしていた“皇帝”シンボリルドルフは、予言とは多少のちがいが見受けられても、だいたいは予言された通りに競走ウマ娘が次々と重賞レースで優勝するのを見て、予言の正確さへの確信を深めることになった。

 

つまり、予言書に描かれているウマ娘は総生徒数2000名弱になる中央トレセン学園の中でもトップクラスの逸材で世代の中心になることがわかってしまうのだ。

 

ただ、もちろん、ウマ娘の『名家』やトレーナーの『名門』が幅を利かせているのが中央トレセン学園であり、名もなきウマ娘と担当トレーナーによる成り上がりというのは俄には信じられなかったのが暗黒期の残滓でもあった。

 

シンボリルドルフとて予言書の内容を盲信しているわけではない。しっかりと今の現実と照らし合わせた上で予言書に記されたウマ娘の才能を発掘していたが、予言書に記された約束された名バだけを贔屓するわけにもいかなかった。

 

なので、たまに予言書にはまったくない展開が起きても、大筋が合っていることを確認できれば、予言書はおおむね正確であるという信頼は揺らぐことはなかった。

 

 

しかしながら、これまでもトレセン学園で起こり得る喜びや悲しみも余すこなく予言されていたのに驚きを禁じ得なかったシンボリルドルフではあったが、予言書の中で一番にありえない存在の予言が成就したことに彼女のみならず日本ウマ娘レース界が震撼した。

 

 

それこそが 秋川理事長が新設レース『URAファイナルズ』の開催を宣言した年;トウカイテイオーやメジロマックイーンが世代の年に入学してきたトレセン学園黄金期における最終最高最大の“無敗の三冠バ”ミホノブルボンであった。

 

現在でも前人未到の果てへと先陣を切っている新進気鋭の“サイボーグ”ミホノブルボンがいかに当時としては奇跡の存在と謳われたかと言えば、それは『短距離ウマ娘(スプリンター)が“無敗の三冠バ”になった』という事実だけで伝わる。

 

そう、距離適性が合っていないのを鉄の意志と鋼の強さで矯正して“無敗の三冠バ”になった経歴はこれまでの競走ウマ娘の常識を覆す衝撃的なものだったのだ。

 

もしも、そのままの才能を活かして短距離路線を走っていたなら、きっと現在では短距離最強ウマ娘と名高いサクラバクシンオーの最大のライバルとして名を残していたはずなのだ。

 

しかも、驚くことに『選抜レース』の前から担当トレーナーがいたというだけでも『選抜レース』の結果をもってトレーナーからのスカウトを心待ちにしているウマ娘からすれば羨望の的であるのに、ミホノブルボンにはこれと言ったコネがなかったのだ。

 

はっきり言って、国民的スポーツ・エンターテインメントの殿堂である中央トレセン学園に通わせることができる程度の普通の家庭の生まれであり、

 

たしかに両親はウマ娘レースに参加していたにしても、それでウマ娘の『名家』やトレーナーの『名門』の出身だったりコネがあったりしたわけでもない。

 

ただ、入学試験において機械の如く異常なほど正確なペースで逃げを打つ姿が内外で大きな噂になっていたから、耳聡いベテラントレーナーが入学直後にスカウトしたのだ。最初からそれぐらいの能力があったのだ。

 

ところが、明らかに適性が短距離ウマ娘(スプリンター)ということでベテラントレーナーはそれ以外に育てようがなかったのだが、

 

当のミホノブルボンは“三冠ウマ娘”になりたくてトレセン学園に来たわけなので、スカウトを受けたはいいものの、“三冠ウマ娘”の夢だけは絶対に譲れないとして頑なにトレーナーが出す短距離路線の方針に従うことができなかった。

 

そこで登場したのがその年に配属された無名の新人トレーナーであった才羽Tであり、後に正真正銘の天才としてウマ娘レースに新たな歴史を刻むことになる名伯楽であった。

 

結果として、セオリー通りにしか育ててくれないベテラントレーナーとは契約解消となり、自分の夢を応援してくれる新人トレーナーと再スタートしたミホノブルボンは短距離ウマ娘(スプリンター)を克服して“三冠ウマ娘”になることができたわけなのだ。

 

 

――――――子供の願い事は未来の現実。それを夢と笑う大人はもはや人間ではない。

 

 

この時点で、いかに“無敗の三冠バ”ミホノブルボンがいくつもの奇跡によって成り立った存在であるか、理解できただろう。

 

予言書にそうなると記されていても本当にそうなると信じて全てを賭けられる人間はどれだけいるだろうか。むしろ、ウマ娘レースのことを知っている人間ほど尻込みするような賭けの連続である。

 

だからこそ、何のしがらみもない無名の新人トレーナーはベテラントレーナーでは見出すことができなかった大切な何かをミホノブルボンに見出して、ミホノブルボンの夢に全てを投じることができたのである。

 

この天才トレーナーの登場は同期の名門トレーナー:桐生院先輩や、熱血トレーナー:飯守Tに大きな影響を与え、後にそれぞれの担当ウマ娘であるハッピーミークとライスシャワーの活躍に繋がったのである。

 

当然、その驚愕は同期のトレーナーや競走ウマ娘だけのものではなかった。

 

生徒たちの長たる“皇帝”シンボリルドルフも、“ただの三冠ウマ娘”にしかなれなかったナリタブライアンや“無敗の二冠ウマ娘”にしかなれなかったトウカイテイオーが成し得なかった、自身に続く“無敗の三冠ウマ娘”がミホノブルボンになったことに誰よりも驚いたのである。

 

というのも、予言書ではミホノブルボンは“三冠”達成をライスシャワーに阻まれることになっていたのだ。

 

しかも、質が悪いことに、ライスシャワーは昨年トウカイテイオーが怪我のために成し得なかった“無敗の三冠ウマ娘”誕生の歴史的瞬間を心待ちにしていたファンたちから“レコードブレイカー”として勝ったのに悪者扱いされると予言されていたのだ。

 

そして、ミホノブルボンは夢を果たせずして怪我で引退することになったのだから、ライスシャワーに対する風当たりはますます強くなったと記されている。今までは考えられないようなウマ娘レースファンたちのモラルハザードが起きようとしていた。

 

更に、翌年の『天皇賞(春)』においてメジロマックイーンのメジロ家三代に渡る三連覇を阻止したことで、またもや勝ったのに称えられることなく、悪者扱いを受けるというとんでもなく過酷な運命が待ち受けていたのだ。

 

あんな幼気で健気な少女に対して容赦なく罵声を浴びせるという前代未聞の事態が起きてしまえば、夢の舞台の根底を揺るがすことになりかねない――――――。

 

当時のシンボリルドルフは『沈黙の日曜日』の苦い思い出もあり、ミホノブルボンの“三冠”達成を賭けた『菊花賞』には相当な対策を用意して臨んでいた。

 

 

――――――そして、ミホノブルボンは勝ったのだ。勝って“三冠ウマ娘”の夢を叶えたのだ。

 

 

結果として、ミホノブルボンはシンボリルドルフに続く“無敗の三冠ウマ娘”として歴史に名を残しただけじゃなく、ライスシャワーが悪役扱いをされて心を痛めるような事態にはならなかったのだ。

 

むしろ、最強のウマ娘:ミホノブルボンとの接戦の末に負けたことを称えられることになったのだから、予言が覆されたことを素直に喜んでいいのか、もし勝っていたら悪役扱いしだす大衆の身勝手さに憤っていいのか、わからなくなってしまっていたという。

 

更に、ミホノブルボンの無敗記録は“三冠”達成後に止まってしまったものの、

 

翌年の『天皇賞(春)』でもメジロマックイーンにライスシャワーは勝たなかったことで称えられ、次の『宝塚記念』でリベンジを果たしてグランプリウマ娘になることでライスシャワーの人気は不動のものとなったのだ。

 

本当に信じられない気分だった。予言がここまで覆されただけじゃなく、結果として全てがより良い方向に変わっていったのだから。

 

その原動力になっていたのはまさしく驚異の天才:才羽Tであり、トレセン学園が理想としていたヒトとウマ娘の間に生まれる不思議な絆の力による奇跡を現実のものとして呼び起こしたのだ。

 

 

だから、才羽Tとミホノブルボン、飯守Tとライスシャワーは“皇帝”シンボリルドルフにとっては自身が卒業した後のトレセン学園の新たな時代を切り拓いてくれる存在だと現役組の中でもっとも期待を寄せていたのだ。

 

 

そして、才羽Tと飯守Tが生徒会よりも理事長との付き合いばかりしていることを非常に残念に思っていたが、ここに来て2人と生徒会を結びつけてくれる逸材が最後の最後になってようやく現れてくれたのがシンボリルドルフにとっての望外の喜びだった。

 

しかも、予言の通りにメイクデビューできるように退学処分を取り下げるようにギリギリまで庇護し続けていた“幻の三冠ウマ娘”アグネスタキオンの担当トレーナーの座に収まり、

 

ウマ娘の世界を襲う様々な悲劇からたくさんの人たちを人知れずに救いながら、トレセン学園の将来をより良いものに変えていける創造力を持ち合わせた規格外の“門外漢”だったのだ。

 

 

シンボリルドルフ「――――――煎り豆に花が咲いたな」フフッ

 

飯守T「え?」

 

シンボリルドルフ「炒った豆はすでに死んでいるから芽が出るはずがないんだから、そこから芽が出て花を咲かせるのは、ありえないような奇跡という意味だよ、飯守T」

 

シンボリルドルフ「まあ、『厄払いに用いた豆から芽が出る縁起が悪い』ということで煎り豆で豆撒きをするわけなんだけど」

 

飯守T「それって、あまりいい意味で使わない言葉なんじゃ……?」

 

シンボリルドルフ「どうなんだい、斎藤T? きみならどう解釈する?」

 

斎藤T「当然、『福は内、鬼は内』なら吉祥ですよ。“苦中有楽”の理想を考えれば、それこそ“渡る世間に鬼はなし”です」

 

斎藤T「こういう教えがあります」

 

 

――――――Lost and Found(彼は失われていたが見つけ出された).

 

 

斎藤T「昔々、あるところに二人の息子がいました」

 

斎藤T「兄はとてもまじめな性格で親の言いつけをきちんと守り、日々 誠実に過ごしておりました」

 

斎藤T「しかし、弟の方は兄ほどまじめでもなく、いつも親の言いつけを守るのを嫌がって、遊び呆けていたそうな」

 

斎藤T「やがて、独り立ちができるようになると、早速 弟は親が健在なうちに財産の分け前を請求したのです」

 

斎藤T「そして、生前分与を受けた弟は自由な暮らしを求めて遠い国に旅立ちましたが、そこで放蕩に身を持ち崩してすぐに財産を使い果たしてしまったのです」

 

斎藤T「すると、大飢饉が起きて、その放蕩息子は何とか食っていくために豚の世話でも何でも必死になって生計を立てました。豚の餌さえも食べたいと思うくらいに飢えに苦しんだのです」

 

斎藤T「そんな日々を送って、何もかもが虚しくなって呆然と空を見上げて、昔のことを懐かしんでいた時でした」

 

斎藤T「父のところには食物がたくさんあるし使用人が大勢いるのに、私はここで飢えて死のうとしている――――――」

 

斎藤T「手紙を出すカネもないぐらいに困窮している親不孝者の私でも、せめて家族に看取られて死にたい――――――」

 

斎藤T「そして、帰るべきところは父のところだと思い立ち帰途に着いて、ボロボロになりながらも必死の思いで懐かしい我が家に帰り着いたのです」

 

斎藤T「そして、彼は父に向かって言おうと心に決めていたことを表情がグシャグシャになりながらも打ち明けたのです」

 

 

「お父さん、私は世の中に対しても、お父さんに対しても恥ずかしい人生を送って参りました……」

 

「もう息子と呼ばれる資格はありません。でも、どうか私を豚の世話係にしてください。お腹が空いて死にそうです……」

 

「それが叶わないのなら、せめて最後に家族に看取られて死にたいと思って恥ずかしながら帰ってきました……」

 

 

斎藤T「………………」

 

シンボリルドルフ「………………」

 

飯守T「……つ、続きは?」

 

斎藤T「すると――――――」

 

 

斎藤T「父は帰ってきた息子の言葉を聞き届けると、同じように涙を流して抱き寄せたのです」

 

斎藤T「そして、帰ってきた息子に一番良い服を着せ、足に履物を履かせ、盛大な祝宴を開いて饗したのでした」

 

 

飯守T「ああ、よかった!」

 

シンボリルドルフ「ああ!」

 

斎藤T「ところで――――――」

 

 

斎藤T「それを見た兄は放蕩の限りを尽くして財産を無駄にして無様に生き恥を晒してきた弟を軽蔑し、そんな弟のために宴まで開いて迎え入れた父親に不満をぶつけたのです」

 

 

飯守T「あ」

 

シンボリルドルフ「むぅ……」

 

斎藤T「しかし――――――」

 

 

斎藤T「父親は兄をたしなめて言ったのです」

 

 

「子よ、お前はいつも私と一緒にいる。私のものは全部お前のものだ」

 

「だが、お前の弟は死んでいたのに生き返った。いなくなっていたのに見つかったのだ」

 

「祝宴を開いて喜ぶのは当たり前ではないか」

 

 

斎藤T「と」

 

飯守T「おお!」

 

シンボリルドルフ「……『放蕩息子のたとえ話』ですか」

 

斎藤T「そうです」

 

シンボリルドルフ「つまり、『山上の垂訓』にあるような天国の生き方に必要なのは家族愛に代表されるような無償の愛ということか……」

 

斎藤T「それだけじゃ足りないですよ」

 

 

斎藤T「それと、パラダイムシフトですから」

 

 

飯守T「――――――ぱ、『パラダイムシフト』?」

 

シンボリルドルフ「パラダイムという概念を一言で表すのは難しいが、『規範』や『常識』と言った方がわかりやすいかもしれない」

 

飯守T「なるほど。で、その『パラダイムシフト』ってのが?」

 

斎藤T「自分自身が信じていた価値観や正義をひっくり返すことが必要になってきますよ」

 

飯守T「ええ?」

 

シンボリルドルフ「それは、いったい……?」

 

斎藤T「昔は王様の言うことが絶対で正しかったじゃないですか。それが昔の人の常識」

 

斎藤T「でも、今は法律や憲法に基づいて王様でも悪いことをしたら裁かれるのが社会のルールに変わっているじゃないですか」

 

斎藤T「あるいは、現代で考えても、TPOを弁える、郷に入れば郷に従え、いろいろとあるじゃないですか」

 

斎藤T「そのことを言っているんです」

 

飯守T「ああ、なるほど……?」

 

シンボリルドルフ「……つまり、私たちが正しいと信じていることがいずれは過ちになる時が来ると? そのことを受け容れられるようになれと?」

 

斎藤T「そうですよ。原始時代のルールは暴力、貴族社会のルールは階級制度、市民社会のルールは人権宣言ですから」

 

斎藤T「これを孔子で言えば『君子豹変す』。豹の毛が秋になって抜け変わり 紋様が鮮やかになるように、位の高い者や徳を備えた人物は、時代の変化に応じて自らを改めていくことができるわけです」

 

斎藤T「つまり、新たな時代の規範を創り出せるのが孔子の言う“君子”の特徴の1つです」

 

 

斎藤T「ですから、話は戻って『煎り豆に花が咲く』というのも、新しい時代の予兆;パラダイムシフトの前触れと考えることができません?」

 

 

斎藤T「悪と見なされていたものが善となり、善と思われたものが悪に塗り替わるのなんて、人類の歴史では幾度となく繰り返されてきたことです」

 

斎藤T「たとえば、暗黒期が黄金期に移り変わったように――――――」

 

シンボリルドルフ「――――――『その逆もある』ということか」

 

斎藤T「はい」

 

飯守T「!!」

 

飯守T「……ま、マジかよ」

 

斎藤T「まあ、結局はその時々の状況に応じた取捨選択の結果でしかなく、それを臨機応変と称えるか、節操なしと見做すかの()()()()()()()でしかないですよ」

 

斎藤T「善と悪の概念もよりストレスを与えて不快に思えるものを悪と見定めて、それに立ち向かうことを善として奮い立たせているように」

 

斎藤T「“魅力的な悪役”や“人間味を感じない正義の味方”という善と悪の基準に矛盾した概念が平然と存在することが人間の理性の限界であると同時に、多様性の萌芽であり、進化の素でもあるのですから」

 

飯守T「そうだな。悪役に魅力を感じるのは良くないはずだし、正義の味方に人間味を感じないことで不満を覚えるのも、考えてみるとおかしな話だよな」

 

シンボリルドルフ「けど、実際に暗黒期はチーム<シリウス>とチーム<アルフェッカ>の対決でウマ娘レースの人気を取り戻したところがあるから、」

 

シンボリルドルフ「そういう意味では闇の中でこそ正義が輝くように感じられるように我々はできていることを理解しておかないとな」

 

シンボリルドルフ「どんな善政であろうといつかは腐敗して悪が蔓延り、どんな悪政だろうといつかは義の心が満ちて善が栄えることになる――――――」

 

斎藤T「そうです。その上で、山あり谷あり 浮き沈みしながら、人類はこの地上で更なる繁栄を遂げていっているのですから、微調整は都度必要であっても全てが上手くいっていると信じることです」

 

斎藤T「もちろん、トレセン学園が暗黒期から黄金期を迎えたことで かつてないほどに興隆を果たした裏で、夢の舞台で落ちこぼれの未出走バや未勝利バが大勢増えた罪にも向き合わないとですが」

 

飯守T「…………難しい話だな」

 

シンボリルドルフ「……ああ、そうだな」

 

 

――――――この世界はひどく矛盾している。

 

暗黒期が黄金期に移り変わった要因を簡単に言えば“トレーナーによるトレーナーのためのトレーナーのウマ娘レース”であったことに不満を覚えたからだ。

 

それは統制が行き過ぎたからだと言う。その結果として八百長レースが横行することになった。

 

そして、黄金期が暗黒期に移り変わる要因も簡単に言えば“ウマ娘によるウマ娘のためのウマ娘のウマ娘レース”だと指摘される時代が来るのだろう。

 

それは自由が行き過ぎたからだと言う。その結果として風紀と秩序が乱れることになった。

 

しかし、そのどちらも根源となっているのは『ウマ娘レースの主役であるウマ娘が輝けるようにしたい』という願いからであり、それが結果として暗黒期と黄金期の両方を招いたのだ。

 

一方で、国民的スポーツ・エンターテインメントとして夢の舞台として国民の憧れとなっているトレセン学園には一握りの栄光を掴んだ名バの他にはその引き立て役になる脇役しかいないのも事実である。

 

いや、レースで全力を尽くして負けたのなら割り切れるが、そもそも『選抜レース』で結果を残せずにトレーナーからのスカウトを受けられない未出走バもたくさんいるわけなのだ。

 

それも黄金期の輝きが増して過去最高の総生徒数2000名弱を記録したことで、当然ながら総生徒数が増えたところで重賞レースが増えたわけじゃないので、トレセン学園内の落ちこぼれはますます増えていくだけだった。

 

そうなれば、当然ながら夢の舞台で活躍できない己の惨めさから怒りや不満を募らせ、恨みを残すようになるのも自然な成り行きだろう。

 

昔の暗黒期よりも今の黄金期の方が総生徒数が増えたのだから、夢の舞台で活躍できない生徒たちの恨みの総量も単純に黄金期の方が大きいと計算できるのではないだろうか――――――。

 

 

――――――そう、斎藤 展望の次なる戦いとは賢者ケイローンが告げていた“過去の遺産”であったのだ。

 

 

斎藤T「物は相談なんですけど、手伝って欲しいことがあるんですが、飯守T?」

 

飯守T「え」

 

シンボリルドルフ「…………!」

 

斎藤T「以前に飯守TはWUMAの侵略に対してトレーナー職よりも警視総監の父親のように『直接的に誰かを守れる仕事がしたい』って言いましたよね」

 

飯守T「!」

 

飯守T「ああ! 俺も何だかんだ言って親父の子なんだって強く認識しているぜ」

 

 

斎藤T「なら、ライスシャワーの命が2年後の6月までと言ったら、何ができる? 何をしてくれる?」

 

 

飯守T「え」

 

シンボリルドルフ「……え?」

 

シンボリルドルフ「ちょっと待って欲しい、斎藤T。今のは予言書の話でいいのだろう?」

 

斎藤T「ええ、そうですよ」

 

飯守T「え、『予言書』――――――?」

 

シンボリルドルフ「しかし、予言書『プリティーダービー』の外伝の巻:ライスシャワーの章にはそんな未来は予言されていなかったはずだぞ」

 

斎藤T「まあ、そうでしょうね」

 

斎藤T「正伝の巻の構成するメニア本とリプア本に隠されていた予言でしたからね。外伝の巻は最初の3年間:完走バになるまでの話までしか書かれてないですからね。その先ですよ」

 

シンボリルドルフ「なんだって!?」

 

飯守T「ちょ、ちょっと待ってくれ。予言書ってことはウマ娘のこれからのことがわかるってことなんだよな!?」

 

飯守T「え、ということは“皇帝”シンボリルドルフはウマ娘の未来がわかって――――――」

 

斎藤T「今はそんなことよりも、ライスシャワーが2年後の6月にレース場で死ぬ予言が書かれていたことですよ」

 

斎藤T「何か思い出しません?」

 

 

――――――サイレンススズカが選手生命と一緒に天に召されそうになった『沈黙の日曜日』のこと。

 

 

シンボリルドルフ「!!?!」ガタッ

 

飯守T「ま、待ってくれよ!? 俺のライスがサイレンススズカと同じことになるだなんて、俺は――――――!?」

 

斎藤T「どうなんですか? サイレンススズカと同じことになったらライスシャワーは死ぬと思いますか?」

 

飯守T「なっ……」

 

シンボリルドルフ「……そう言うからには、きみには成すべきがわかっているということだね?」

 

斎藤T「そうなんですよ。人手不足でどうしても信頼できる人間の手を借りたいんです。できればウマ娘ではなく、ヒトじゃないとダメです」

 

シンボリルドルフ「なぜだ!?」

 

斎藤T「では、どうしてウマ娘の手を借りることができないのかを説明しますね。百聞は一見にしかず」ゴトッ

 

シンボリルドルフ「こ、これは……?」

 

飯守T「……何かの道具? いや、ロボット? 割と大きいけど何なのかがよくわからないな」

 

斎藤T「やはり、()()()()()()()が――――――」

 

飯守T「?」

 

 

斎藤T「こちらは“鞍野郎”という妖怪で、こっちは“鐙口”という妖怪を退治して得た抜け殻となる()()です」

 

 

飯守T「え? 妖怪!?」

 

シンボリルドルフ「――――――『バグ』? 『バグ』とはいったい何だ?」

 

斎藤T「どうです? WUMAと同じように本能的に何かを感じませんか、ウマ娘なら?」

 

シンボリルドルフ「うっ、そう言われると、何か表現し難い感情が渦を巻く」

 

シンボリルドルフ「あ」

 

斎藤T「何でもいいです。その直感を教えてください」

 

シンボリルドルフ「あ、ああ。なぜだか、この妖怪の死骸とでも言うべきものを見ていると、不思議なイメージが湧いてくるんだ」

 

 

――――――ハイハイしていた頃の赤ちゃんの自分の姿が思い浮かぶんだ。

 

 

飯守T「えと……」

 

斎藤T「実は、同じことを私の担当ウマ娘が言ってましてね。その瞬間、正体不明の痛みに襲われたので、見せないようにしていましたが、やはりウマ娘に何らかの影響を与える呪具と化していました」

 

斎藤T「飯守T。と言うことで、ウマ娘に何らかの悪影響を与える存在となる妖怪を一緒に駆除して欲しいのです」

 

飯守T「え!?」

 

斎藤T「怪人:ウマ女と同じです。WUMAもヒトよりも遥かに身体能力に勝るウマ娘が本能的に恐怖を感じる存在でしたが、妖怪は裏世界に住み着いてウマ娘に密かに悪影響を与える存在となっています」

 

 

斎藤T「そして、その正体がトレセン学園に蟠る怨念や無念が集まった悪霊だとしたら――――――?」

 

 

飯守T「!!」ガタッ

 

シンボリルドルフ「!!?!」ガタッ

 

飯守T「そういうことなら、絶対にライスを護らないと! あいつも落ちこぼれの一歩手前だったからこそ、落ちこぼれになった連中にとってのヒーローであると同時に一番の嫉妬の対象だ!」

 

シンボリルドルフ「待ってくれ! それが本当だとしたら、そのけじめをつけるべきなのは私だ! 私が――――――」

 

シンボリルドルフ「あ」

 

斎藤T「戦力外です。競走ウマ娘はスピードとビジュアルに特化している反面、全体的に見て荒事に向いていませんし、当事者が現れる方が余計に怨みを増すので手出しは無用です」

 

斎藤T「それに、青少年の健全な育成のためにも、ここは大人がしっかりと子供を護る場面です」

 

斎藤T「まあ、忘れてください。あなたは未成年者で保護される義務がある」

 

斎藤T「しっかりと卒業して総領娘としての責務をまず果たしてください。その方がいろいろと力になれますから」

 

シンボリルドルフ「………………」

 

飯守T「わかったぜ、斎藤T! やってやろうじゃんか!」

 

斎藤T「ありがとうございます」

 

斎藤T「目標としてはテスト期間中の担当トレーナーが暇になる時期に妖怪退治に精を出します」

 

斎藤T「詳しいことについては、後ほど。それまでWUMAと戦うつもりで準備を進めておいてください」

 

飯守T「よし! これで用意してもらった対WUMA用の装備が埃を被らずにすむな!」

 

シンボリルドルフ「…………今の私にできることは少ない」

 

 

――――――頼んだぞ、トレセン学園の守護者たちよ。

 

 

*1
我々の世界における日本競馬は農林水産省の管轄

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