ウマ娘超光速戦記 -TACHYON Transmigration-   作:LN58

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注意:王道スポ根学園ラブコメ…× 『ウマ娘』の世界を駆ける奇妙な冒険譚…○

本作は『ウマ娘 プリティーダービー』の世界観とタイムリープをテーマにした作品となり、
ゲーム本編の舞台であるトレセン学園や競バ場以外の広い世界を描き出すものとなります。
そして、原作の世界観にそぐわない伝奇SFの導入と原作の世界観を独自解釈した独自設定を多く盛り込んでおります。



◆世界線概要:ウマ娘超光速戦記 -TACHYON Transmigration- 

 

●見かけ上の世界線

【挿絵表示】

 

これがタイムリープをテーマにした本作の物語の基本構造であり、本作の土台となる世界線は単純に『異世界転移者が元いた世界』と『転移先の異世界』の2つにすぎない、極めてオーソドックスな異世界転生ものを下地にしている。

しかし、並行宇宙からの侵略者によって暗黒時代を迎えた未来世界からの過去改変がすでになされている異世界に転生してきたのが別の並行宇宙の時間軸において更なる未来からやってきた宇宙移民船のエンジニアというのが物語の特徴となる。

一方、異世界転生ものの常として異世界転生者である“私”の出身世界である西暦23世紀の宇宙時代の世界線を舞台にすることはないため、“私”という人物のキャラ付けのためのフレーバーテキスト(裏設定)になっている。

 

さて、原作『ウマ娘 プリティーダービー』においてはマンハッタンカフェやマチカネフクキタルの育成ストーリーに登場した現代科学では解明不可能(スピリチュアル)な怪異が跋扈しており、

アストンマーチャンやエアシャカールの育成ストーリーに至っては史実の競走馬の運命に魂を引かれたウマ娘の宿命が大きく関わってきている。

そこで本作では様々な現象で現れる怪異がヒトとウマ娘が共生する世界に災厄をもたらそうとしている情勢で“斎藤 展望”に転生することなったことで、それらの災厄と対決して異世界を守り抜くことが物語の目的となる。

また、原作『ウマ娘 プリティーダービー』がアストンマーチャンやテイエムオペラオーの担当トレーナーがさらりととんでもないことを次々しているのにならって、なんでそれができるかなどは結果だけを提示して想像にお任せするとして、

世界を救える存在であることを前提にして あまり話がクドくならないようにしながら 星の海を渡る宇宙移民の未来人から見たウマ娘の異世界に対するセンス・オブ・ワンダーを追求している。

特に、本人はウマ娘ではなくウマが存在する世界線の人間であるのだが、あまりにも価値観が違いすぎる上に近代競馬そのものに馴染みがない23世紀の未来人だからこそ、21世紀の文字通り200年は時代遅れの価値観や水準に常にイライラさせられる立場にあり、

更には、23世紀の宇宙時代の文明人としての矜持があるからこそ惑星統一国家が樹立していない未開惑星に対する過度な干渉を控えることにもなっているので、国家観のちがいもあって非常にもどかしい気持ちで世界情勢を憂えている。

他にも、このままだとWUMA襲来の絶望の未来がやってきてしまうことがその絶望の未来からやってきた賢者ケイローンの時間跳躍によって確定しているため、

絶望の未来に繋がる因果を断ち切るほどに世界を変革させるタイムパラドックスを引き起こすことが第一の目的となっており、

その具体的な手段の1つとして、国民的スポーツ・エンターテイメント『トゥインクル・シリーズ』において予言書『ウマ娘 プリティーダービー』には予言されていないウマ娘レースの革新や伝説を打ち立てる算段が立てられている。

これが『甲種目標』に設定されていて、無名の新人トレーナー“斎藤 展望”としてトレセン学園のトレーナーとして担当ウマ娘を勝たせなくてはならないことの最大の理由付けとなっている。

ただし、トレーナーとしての職能力は付け焼き刃に過ぎないため、行き場をなくした実績あるトレーナーたちを陣営に引き入れて具体的な指導は調教師(トレーナー)に丸投げにする馬主(オーナー)の立場になっており、

ウマ娘を指導するトレーナーの選択肢の幅を広げるための陣営の運営や戦略の面で辣腕を発揮し、ウマ娘を育てているのではなく、ウマ娘レースに参加するウマ娘もトレーナーも関わった全てをまとめて立派な人間に育て上げることを至上としている。

 

 

 

●“皇帝”と“皇帝の王笏”と“天上人”と“BNW”の物語

本作における“皇帝”シンボリルドルフの最強伝説は実はタイムリープによって3周目によって成し遂げられたインチキだったという設定となっており、

それもそのはずで、絶望の未来でWUMAによって支配層に引き上げられたウマ娘にヒトが虐げられる未来世界で生まれ育ったレジスタンスの工作員がタイムリープしてきた際、未来世界では完全に廃れていた近代ウマ娘レースのトレーナーを基本のキも知らないド素人がやろうとすればこうもなろう。

ただ、ヒトとウマ娘の共存共栄を夢見る理想の純粋さと切実さは真に迫るものがあり、“皇帝”シンボリルドルフが求めた“ヒトとウマ娘の統合の象徴”たろうとする自身と視座を同じくできる存在だと理解できる凄みがあったため、シンボリルドルフの強さに牽引されながら新人トレーナー未満のトレーナー詐称の“皇帝の王笏”の波乱の人生が時間を巻き戻されたことで 三度 繰り返されることになった。

 

1周目の戦績は有馬一族の御曹司である同期の“天上人”鐘撞Tがシンボリルドルフ打倒という興行のために送りつけた“BNW”にウマ娘一人の才能を凌駕する戦略でクラシック戦線で完敗を喫することになった。

というより、“天上人”鐘撞Tの手腕がまさにどんなウマ娘であろうと勝たせる神域のそれであり、同期の新人トレーナーとしての力量はまさに天と地ほど差があったのだ。

そのため、鐘撞Tが世に送り出した“BNW”に完敗した1周目では、シンボリ家のウマ娘として、あるいはその担当トレーナーとしての評価は地に落ちることになったのだが、

シンボリ家のウマ娘として勝つこと以上にもっと大切なことを1周目で余すことなくやり続けたことで、結果として“グランプリ三冠バ”となって“クラシック三冠”を分け合った好敵手“BNW”全員を打ち負かすことに成功し、その実績だけで十分に最年少の生徒会長として黄金期に君臨する“皇帝”の座に返り咲くことができたのだ。

シニア級で栄光を掴んだ生き様は“黄金世代”のキングヘイローや“覇王世代”のメイショウドトウの活躍に勇気づけられたものであった。

ところが、生徒会総選挙で満場一致で生徒会長に就任した後の事実上の引退レースとなるアメリカ遠征『サンルイレイステークス』でついに未来からの刺客が現れ、帰りの飛行機を容赦なく撃ち落とす凶行から日本に帰ることができずアメリカ中を逃げ回ることになってしまう。

そこでの逃亡生活の中で初めて“皇帝の王笏”の正体が未来人であることが語られ、その時空を超える使命感の裏側に隠されてきた一人の人間のありのままの本心に触れることで、不安が募る中で互いを慰め合うように2人は結ばれることになった。

最終的にアメリカ横断の末に辿り着いたマンハッタンに出現した超時空戦艦:ジパングに拿捕され、

世界が大混乱に陥る中、“皇帝の王笏”は愛する人と世界を救うために自らを犠牲にして超時空戦艦:ジパングを轟沈させ、沈みゆく艦と運命を共にしたのだった。

マンハッタンの桜が散る中、一人取り残された少女の涙の叫びに呼応するかのように悪魔の眷属が目の前に現れ、最愛の人を失ったばかりの傷心に苛まれる少女は誘われるように悪魔の契約を結び、時間が巻き戻る――――――。

 

結果、1周目ではシンボリルドルフを理想の面でしか真っ当に導けない素人トレーナーのせいで神域の新人トレーナー:鐘撞Tが刺客として送り出した“BNW”にクラシック戦線で完敗を喫したのと比べて、

双方の記憶と経験が朧気ながらも継承されていたことで2周目は『菊花賞』の最後の関門で本気を出した“天上人”鐘撞Tが担当する“万能”ビワハヤヒデに惜敗して“無敗の二冠バ”止まりになったものの、競走ウマ娘としては格段なる進歩があった。

しかし、『宝塚記念』は出走回避となって“三冠バ”ナリタブライアンすら返り討ちにした『有馬記念』の後の年末年始で超時空戦艦:ジパングが東京湾に現れたことで“また”最愛の人を失うことになり、

関東大震災や東京大空襲の再現ともなった被害規模の惨劇の後に復興の道を歩むことになった情勢において抜群の指導力を発揮したことで満場一致で最年少の生徒会長となったものの、

日本を救った英雄として称えられたところで最愛の人を失ったことで空いてしまった穴は埋まることはない。

やがて、シンボリ家の使命でもある海外遠征の話に繋がり、事実上の引退レース『サンルイレイステークス』へと誘われることになった。

そこでの空虚な敗北と繋靭帯炎の発症の徒労感から微睡みの中で揺らされるアメリカの道を走る振動から段々となかったことになったはずの1周目の絶望を思い出していくことになり、

そこで全てを思い出して またしても最愛の人と死に別れてしまった絶望から悪魔の契約を発動させて時間を巻き戻してしまうのであった――――――。

 

そこから始まる3周目の世界こそが本作の舞台となる“最強の七冠バ”シンボリルドルフの世界というわけであり、“天上人”鐘撞Tが刺客として送り込んだ“BNW”に対して完全勝利を収め、黄金期の精神を継承する無名の新人トレーナー“斎藤 展望”が最後の最後に現れることができた世界線ということになる。

なぜ3周目で事実上の引退レース『サンルイレイステークス』から先の時代に進むことができたのかと言えば、神罰であると同時に救済として、絶望の始まりである超時空戦艦:ジパングの襲来が『宝塚記念』の後の夏季合宿の時期まで早まったからであり、

シンボリルドルフの絶望と世界の絶望が重なり合って成立した悪魔の契約で時間を巻き戻している以上、シンボリルドルフの行く所に超時空戦艦:ジパングが時空を超えて現れては最愛の人を道連れにしていく因果は確定してしまっている。

しかし、シーズン前半に最愛の人を失ってしまったシンボリルドルフを支えて翌年の『サンルイレイステークス』から先の時代に進めるだけの精神力を持つに至ったのは、

何を隠そう、“皇帝”シンボリルドルフのウマ娘レースで最大の敵役となって名勝負を盛り上げてきた黄金期の三巨頭たる“天上人”鐘撞Tの存在のおかげであり、

シーズン後半には不治の病で『トゥインクル・シリーズ』から退場してしまう因果にあったのだが、3周目では最愛の人の別れが早まった分だけ盛り上げ上手の鐘撞Tからの励ましを受けられる時期を享受することができたのだ。

その上で恩人となった鐘撞Tの退場を見送ることになったことで時間的余裕も相まって人間性が大きく成長できたからでもあり、決して3周目ということで無自覚に最愛の人との別れに慣れてしまったというわけでもない。

むしろ、周回によって記憶と経験が持ち越されていることに悪魔の契約を結んだシンボリルドルフ当人は『サンルイレイステークス』の後にようやく1周目での出来事を思い出す鈍感さのままであったのに加えて、

三女神の導きか、悪魔の契約の対象にされた“皇帝の王笏”の方が元から時空を超えてきたこともあって段々と自身に定められた因果を予感として理解するようになっていた。

それにより、3周目の超時空戦艦:ジパングの襲来においては目隠しを外さずにシンボリルドルフを真っ先に脱出させた後に、南西諸島をめぐる豪華客船に乗り合わせていたその他大勢を道連れにすることで超時空戦艦:ジパングの存在が世間に明るみになることがなくなり、

世界の絶望とシンボリルドルフの絶望が重なり合うことで『サンルイレイステークス』の後にシンボリルドルフが全てを思い出して絶望することで時間が巻き戻される因果を断ち切ったのだ。

 

 

そうして3周目でようやく始まったのが生徒会長:シンボリルドルフによる黄金期後半の3年であり、秋川理事長による新設レース『URAファイナルズ』開催宣言であった。

 

 

 

●光と影の世界と可能性の世界

【挿絵表示】

 

1周目での超時空戦艦:ジパングの襲来によってマンハッタンを壊滅に追いやられた世界の絶望と一人の少女の絶望が重なり合って悪魔の契約が成立したことで、そうして一人の少女の時間が巻き戻るのだが、

ここで超時空戦艦:ジパングによるマンハッタン襲撃の衝撃と未来人による現代社会への宣戦布告によって世界は震撼し、その絶望がシンボリルドルフが結んだ悪魔の契約と共に世界を光の世界と影の世界へと分裂させる大きな希望になってしまった。

世界が絶望に満ちた時、人々は自らの行いを後悔し、もしも叶うのならば人間の善性の極限まで達した人生や世界を願ったことで、人間の普遍的無意識のポジティブな領域が極大化したのだ。

言い換えれば、世界中の人間が絶望に直面した際に『こんなことになるんだったらこうしていればよかった。ああしていればよかった』と一斉に現実逃避したことで、人間の普遍的無意識のポジティブな領域が極まった可能性の世界が導き出されたのだ。

そのため、シンボリルドルフに悪魔の契約を迫ったのが“虹の彼方の者(rainbow chaser)”の化身になるわけであり、それによってポジティブの領域が完全に優位な世界が宇宙に誕生したことによって、

宇宙がポジティブとネガティブのバランスをとるために“虹の彼方の者(rainbow chaser)”と対になる人間の普遍的無意識のネガティブな領域が支配的な“影の支配者(real mastermind)”の世界が生み出されることになったのだ。

これが世界が分裂して誕生した光と影の世界の起源であり、全ての始まりは可能性の世界を生み出すほどに超時空戦艦:ジパングが襲来した絶望であることから、

極大化したポジティブを引き起こしたネガティブの極みをどうにかしないことには、その時点で超時空戦艦:ジパングが襲来するという世界の絶望の因果と“皇帝の王笏”が自らを犠牲にして未来人の侵略を阻止するという一人の少女の絶望の因果もまた確定しているため、

どれだけ時間を巻き戻そうとも“皇帝”シンボリルドルフが世界を救うために最愛の人と離別する運命は変わることがないのだ。

更に、最愛の人との時間を取り戻す悪魔の契約を結んだとしても所詮は悪魔の眷属がすることなので肝腎のタイムリープが完全ではなく、朧気ながら感覚として憶えている程度しか2人の記憶が次の周に引き継がれないのだ。

そのため、なんとなくこうすると上手くいく/上手くいかないという直感が冴え渡るものの、悪魔の契約によって時間を巻き戻して最愛の人との時間を取り戻すついでに『トゥインクル・シリーズ』での戦績が上がっていく代償として、神罰として時間を巻き戻す毎に超時空戦艦:ジパングが襲来する時期も前倒しになってしまうという始末。

同時に、シンボリルドルフの卒業後の進路がアメリカ留学になるのも、1周目での逃走生活の中で愛し合った思い出が魂に刻まれているからこそ、無意識にアメリカに懐かしさを覚えるようになってもいた――――――。

 

そして、“虹の彼方の者(rainbow chaser)”によって時間が巻き戻される光の世界と“影の支配者(real mastermind)”が支配する影の世界は 文字通り不即不離の光と影の関係となって それぞれ存在することになった。

 

ただし、2つの世界は並行世界として完全な独立関係にあるのではなく、1周目の世界を基底として光の世界を繁栄世界とし、影の世界を衰退世界として、世界の壁を超えて因果が結ばれている世界群(cluster)を形成しており、

実は、光の世界でシンボリルドルフが時間が巻き戻す際に不要な因果や不都合な因果を悪魔の眷属が影の世界に追いやることで次の周の結果を良くしていた裏があるため、

周回を重ねる毎に光の世界でのシンボリルドルフがウマ娘レースで栄光を掴むことができるようになる一方で、そのツケを影の世界のシンボリルドルフが背負わされる羽目になっていた。

因果の流れを詳細に見ると、基底となる1周目の世界でこれが良かったと思う因果は2周目となる光の世界に引き継がれ、これは悪かったと思う因果は新たに産み落とされた影の世界に選別され、

2周目の時間が巻き戻る際に、光の世界でこれは良くなかったと思う因果は影の世界へ、同じように影の世界でもこうあって欲しいと思う因果は光の世界へと継承されるため、

3周目はそれによって輪をかけて光の世界は理想世界に近づき、影の世界は爛れきった世界へと腐りきっていくわけであり、光と影のそれぞれの“斎藤 展望”が目撃してきた第3の可能性の世界とはその結果のものなのだ。

よって、世界の壁を超えることができなければ時間が巻き戻しても事象を変えることができない世界群の因果に縛り付けられることになるのが光と影の呪縛ということになる。

 

可能性の世界は光と影の世界と極めて近い位置に存在するだけの別世界に過ぎないが、ある観点からの関連性は極めて高いため、世界の壁を超えることができれば訪れることができるもしもの世界(想像の範疇)である。

しかし、誰にとってのもしもの世界(想像の範疇)なのかと問われれば、“特異点”である“斎藤 展望”の印象によるものであり、

ヒト社会に参画するウマ娘という異種族の光明面を見てきた本編世界の光の世界の“斎藤 展望”の場合、“永遠なる皇帝”シンボリルドルフに代わってトレセン学園の中心となれる人物の可能性について焦点が当てられていた。

一方、通信報告においてウマ娘という異種族の暗黒面である野蛮さに辟易することになった影の世界の“斎藤 展望”の場合は、貞操を固く守っている賢人として敬愛している“傾国の皇帝”シンボリルドルフの為人がちがってしまった場合の可能性がテーマになっていた。

どちらもトレセン学園の顔役が“皇帝”シンボリルドルフではなかった場合の可能性を意識していたが故の可能性の世界への異世界探訪であったわけなのだが、

この微妙なニュアンスのちがいは、黄金期を迎えて総生徒数2000名弱まで成長していながら生徒を導くトレーナーの数が尋常ではないほどに少ない状況の影の世界においては深刻な人材不足で光の世界のように協力者が集まらない分、“皇帝”シンボリルドルフ一人に傾けられる意識の割合が大きくなっているからである。

その意味では影の世界では『まともなウマ娘はシンボリルドルフぐらいしかいない』という認識だからこそ、光の世界のようにシンボリルドルフ以外のウマ娘が黄金期を牽引することになったらどうなるのかの想像の余地が育たなかったわけである。

 

また、世界ごとにトレセン学園に所属するウマ娘やトレーナーが異なる理由は『そういう可能性の世界だから』で済むわけだが、1つの世界が分裂した光の世界と影の世界に関しては因果関係がはっきりしており、

『サンルイレイステークス』を超えた先の黄金期後半から登場した才羽Tが影の世界には存在せず、才羽Tの皮を被った“影の支配者(real mastermind)”の化身である非実在人間“半人半霊(エンティティ)”が存在する理由は、光と影の世界が元は1つの世界であったのが分裂して繁栄世界と衰退世界となった結果である。

なぜなら、基本的に光と影の世界は同一人物や同一事象による鏡合わせによって宇宙全体のポジティブとネガティブが保たれてるため、

それだけ才羽Tが光の世界の住人として圧倒的なまでの太陽のごとき存在であるからこそ、影の世界の住人にそれに対抗しうるネガティブの化身がいないことから妄念妄想の塊である非実在人間“半人半霊(エンティティ)”によって埋め合わせがなされているのである。

そこからポジティブとネガティブのバランスが光と影の世界で独立して保てるようになった時、言い換えれば“虹の彼方の者(rainbow chaser)”と“影の支配者(real mastermind)”の影響力が拮抗するようになった世界は独立した関係となって互いにとっての可能性の世界として存続することになる。

 

 

 

●悪魔の眷属:シンボリックリンク”の悪足掻き

本編において“虹の彼方の者(rainbow chaser)”の化身であるシンボリックリンク”が卒業前に契約者であるシンボリルドルフに接触してきた理由は至極単純で、悪魔の契約の目的であった時間の巻き戻りが不要になることで自身の存在が忘却されることを回避するためである。

悪魔にとって契約が不要なものになって忘れ去られることは存在の死を意味するため、それは悪魔の眷属であるシンボリックリンク”も同様で、

更には、その核になるのがシンボリルドルフの母親:スイートルナに横恋慕していたがために愛する人の子への愛情でもって自身のスイートルナへの愛情の深さを証明しようとするシンボリルドルフの叔父さんの妄念妄想なのだから、それはもう必死である。

用意してきた“置き時計(アストロラーベ)”はまさしくシンボリルドルフの絶望と世界の絶望をシンクロさせて契約者であるシンボリルドルフに時間の巻き戻りを願わせるために異なる時間を合わせる悪魔の装置であるが、

これ自体は通常の時計盤を現在世界として、天体時計の星辰の位置によって異なる時間帯を掛け合わせることで“置き時計(アストロラーベ)”の有効範囲にいる人間に異なる時間帯での出来事を追憶させる装置に過ぎない。

つまり、悪魔の眷属らしく“置き時計(アストロラーベ)”を悪用しているわけであり、言葉巧みに精神に揺さぶりをかけて時間をまた巻き戻して最愛の人と添い遂げられる未来を再構築するように誘惑してくるわけなのだが、

時間を巻き戻して前回よりも自己の利益の最大化を促進させた場合は神罰が下って超時空戦艦:ジパングの襲来が更に前倒しになることを理解していないか、あるいは自身の存在の死を回避するために本能的に理解を拒んでいるせいで、

仮にシンボリルドルフが誘惑に負けて4周目に突入してしまった場合は、仏の顔も三度まで、次はクラシック戦線の時期に超時空戦艦:ジパングを襲来させて『トゥインクル・シリーズ』に壊滅的打撃がもたらされるはずであり、ウマ娘レースでの栄光をつかむどころではなくなってしまうのだ。

なので、悪魔の契約を交わしたシンボリルドルフが4周目を望もうが望むまいがスイートルナを相当に美化した姿に擬態した悪魔の眷属:シンボリックリンク”の邪念は3周目で三女神の神罰によって息の根を止められる運命にあった。

つまり、三女神の神罰は悪魔の契約で繰り返されるタイムリープに永久に囚われることになった子々孫々たるウマ娘を解放するための救済でもあった。

 

 

 

●可能性の世界だけ存在する“特異点”

この世界は1つの壮大な歴史ドラマであり、そこで生きるひとりひとりに役者としての役割があるとする。

つまり、そのドラマを演じるに当たって登場人物(character)役割(role)役者(actor)の組み合わせが存在することになる。

本作ではヒトとウマ娘が共生する異世界で不慮の事故に遭った無名の新人トレーナー“斎藤 展望”に成り代わった存在こそが、23世紀の宇宙移民の宇宙船エンジニアの“私”だったわけなのだが、

それはたまたま光と影の世界である“永遠なる皇帝”シンボリルドルフの世界や“傾国の皇帝”シンボリルドルフの世界での配役がそうだっただけで、

全ての可能性の世界で“斎藤 展望”という登場人物(character)役割(role)を果たせるのなら役者(actor)は“私”である必要もないわけなのだ。

要は、“特異点”だから“私”が“斎藤 展望”に転生したのではなく、その可能性の世界における“斎藤 展望”の役割(role)を果たせる役者(actor)が“私”だったから本作の“特異点”となっているわけであり、

明言こそしないが、もしかしたら“有機皇帝”シンボリルドルフの世界の“斎藤 展望”の中の人はちがう人かもしれないし、そうでないかもしれない――――――。

現に、光と影の世界に転生した並行世界の“私”という同一存在同士であっても、異世界で体験してきたものや置かれた状況が異なることで、ウマ娘という異種族やその異文化に対する印象が大きく異なっているわけであり、この時点で完全な同一存在であっても完全な同一人物とは言い難い差が生まれつつあるわけなのだ。

つまり、世界を1つの舞台にした壮大な歴史ドラマの尺度から見て登場人物(character)役割(role)を果たせる役者(actor)が演じたなら、誰でもその登場人物(character)その人となって同一人物に当てはまるのだ。

物語の構造上において重要なのは役割(role)であり、登場人物(character)の設定という表面的なものこそ、演じる役者(actor)の個性の表現となってくるのだ。

 

 

 

 

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