ウマ娘超光速戦記 -TACHYON Transmigration-   作:LN58

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第5話   アオハル杯の復活は雪辱と約束を果たす時 ✓

-西暦20XY年04月23日の航星日誌- GAUMA SAIOH

 

突然の秋川理事長の『アオハル杯』の復活宣言と数年に渡るアメリカ出張の衝撃が眼の前の現実に追いやれる毎日の喧騒によって少しずつ忘れ去られていく頃、

 

ついに秋川理事長が自身の不在中に学園と『アオハル杯』の運営を任せたURA幹部職員が生徒たちの前に姿を現すことになった。

 

土日がウマ娘レースの興行であるため、月曜日が出走したウマ娘たちの振替休日になることから、火曜日に全体集会が行われるのが習わしのトレセン学園の壇上で 秋川理事長の代理として これからのトレセン学園の運営を任された理事長代理の開口一番の発言が場を凍りつかせた。

 

その衝撃は厳密には学園関係者ではないために生徒たちと一緒の場に入れないためにサテライト会場に集まって新しく来た理事長代理の挨拶を軽い気持ちで見ていたトレーナー陣さえも言葉を失わせるほどのものであった。

 

 

――――――樫本 理子 理事長代理が掲げる徹底管理主義をベースとした育成方針『管理教育プログラム』の施行。

 

 

更には、その徹底管理主義に基づいて、秋川理事長が復活宣言をした『アオハル杯』の中止を言い放ったことが決定的となり、早速『アオハル杯』用のチーム集めに奔走していた生徒やトレーナーたちは呆然となったのだ。

 

そして、一瞬の静寂の後、大講堂は壇上の麗人に対する大ブーイングが響き渡り、サテライト会場においても新参者の横柄なやり方に対するトレセン学園の古株たちによる批判の声が止めどなく沸き起こる。

 

これまで一致団結で時代の最先端を直走っていたはずのトレセン学園の情熱の歩みがこれで止められてしまったかのように多くの人間には感じられた。それぐらいの失望感が学園を覆ったのであった。

 

しかし、樫本代理は有無を言わせない物言いで場を制し、秋川理事長が代理として選んだ人がどんな人なのかで盛り上がっていたはずの火曜日の全体集会は混乱のまま幕を閉じることになり、

 

こうして樫本代理による徹底管理主義体制が始まろうとしていたが、実際にはそんなことにはならなかったのである――――――。

 

むしろ、この“斎藤 展望”がエクリプス・フロントを制する者として君臨する道筋を作ることになったのが“樫本 理子”という かつての暗黒期のG1トレーナーであり、彼女もまた新しい時代のために必要な存在として選ばれた者であったのだ。

 

 

――――――そして、いよいよアオハル杯の復活と雪辱と約束を果たす時が来るのである。そう遠くない未来に。

 

 


 

――――――前日:4月22日

 

樫本代理「――――――ぬるい」

 

樫本代理「自主トレーニングの容認、開始時刻の不徹底、休憩時間の他ウマ娘との無駄話の許可――――――」

 

樫本代理「あら、納得のいっていない顔ですね」

 

樫本代理「では、彼女の睡眠時間と日々の睡眠満足度は? 毎日欠かさずヒアリングしていますか?」

 

樫本代理「睡眠不足はパフォーマンスの低下ばかりか事故を誘発します。把握して当然の事項です」

 

樫本代理「この学園が生徒の自主性を重んじていることは 当然 知っています」

 

樫本代理「しかし、その指針がそもそも()()()です」

 

 

ナリタブライアン「何やら理事長代理が 早速 新人トレーナーを捕まえて説教しているようだが、どう思う、あんたは?」

 

斎藤T「もう少し話を聞いてみようか」カタカタ・・・ ――――――指向性マイクで会話がはっきりくっきり聞こえている。

 

アグネスタキオン「あれが秋川理事長の代理として派遣されてきたURA幹部職員ねぇ」

 

アグネスタキオン「かわいそうに。さすがはかつてのG1トレーナーというだけあって言っていることは正論だが、トレーナーくんにとっては滑稽極まる御高説に思えるだろうねぇ」クククッ

 

斎藤T「ああ。最難関の国家資格に合格したばかりの新人トレーナーに対してああもダメだしをするということは、配属直後の新人研修の内容の不備を指摘していることにもなるわけだが、その内容を監修しているのはトレーナーバッジを発行しているURAなのだからさ?」カタカタ・・・

 

和田T「おいおい、URA幹部職員が現場視察に来て即座にダメだしするぐらいにURAのお偉方と現場との間に認識の差があるわけじゃないか、それって……」

 

マンハッタンカフェ「早速ですが、雲行きが怪しいです……」

 

 

樫本代理「――――――遠くにある杉山。シーズンには登山客で賑わう人気のスポットです。立派な杉の大木がざわめき、小枝がさえずり、やわらかい腐葉土が足元を包み込んでくれる」

 

樫本代理「この国の多くの山がそうであるように、あれは人の手が加えられているこその姿」

 

樫本代理「管理が届かない山は荒廃します。陽は差さず、草は枯れ、足元には堆積した腐植土か、枯死した倒木ばかり。土砂災害や洪水の原因とも成り得ます」

 

樫本代理「――――――“管理”と言うのはそういうこと」

 

樫本代理「未成熟な少女が荒廃していくのを『ただ見守る』というのは()()()()()()()()()()()()です」

 

 

斎藤T「…………逆だと思うが。無為自然の営みに人が手を加える権利を行使したからこそ、その義務と責任で人の“管理”の必要が出てきたのだと私は思うが」

 

ナリタブライアン「――――――『権利と義務』か」

 

和田T「あ、駿川秘書が来ましたよ」

 

マンハッタンカフェ「――――――『任期中の学園の方針を一任』ですか」

 

アグネスタキオン「ふぅン、これはおもしろいことになってきたねぇ?」クククッ

 

和田T「……冗談だろう? どう考えても秋川理事長と正反対の人物じゃないか!? それが理事長代理だなんて!?」

 

和田T「斎藤T! これは大変なことになりますよ!? さっきの物言いからすると、絶対に担当ウマ娘の食生活にも口出しをしてくるでしょうから!」

 

アグネスタキオン「だろうねぇ。肉しか食べないブライアンくんにとっては地獄のような学園生活になるんじゃないかい?」

 

ナリタブライアン「な、なんだと!?」

 

マンハッタンカフェ「それを言うなら、生活無能力者のタキオンさんも相当に危なかったと思いますよ」

 

和田T「どうしよう、斎藤T!?」

 

斎藤T「いや、何も起こらないし、それどころか生活が便利になっていくきっかけを作る人物になるから、そう慌てないでください」

 

和田T「え?」

 

ナリタブライアン「どういうことだ? このままだと今までのように肉が食えなくなるんだぞ!?」

 

 

斎藤T「社会のルールと同じ。出資者の命令には逆らえないのが会社勤めの人間の性だから」

 

 

斎藤T「まず、学校法人:日本ウマ娘トレーニングセンター学園の運営資金の大元は何ですか?」

 

和田T「え、そりゃあ、総生徒数2200名弱にもなる生徒たちからの多額の入学金と年間授業料、それにURA経由のウマ娘レースの興行収入の割当もだけど――――――」

 

アグネスタキオン「いや、それ以上にウマ娘の『名家』からの寄付金が大きい」

 

和田T「あ、そうか!」

 

アグネスタキオン「つまり、総生徒数2200名弱にもなったトレセン学園のますます必要となる運営資金を拠出している『名家』の機嫌を損ねるような運営をしているようなら、容赦なく解任できるわけだよ」

 

マンハッタンカフェ「なら、黄金期をシンボリルドルフと共に切り拓いた絶対の信用と実績のある秋川理事長の方針を転換することは実質的に不可能なわけですね」

 

ナリタブライアン「なるほど、少なくとも“皇帝”シンボリルドルフを輩出した『名家』シンボリ家の意向に反する抜本的改革は封じられているわけだから、意外とそこまで心配するようなことにはならないわけか」ホッ・・・

 

斎藤T「まあ、暗黒期のアンチテーゼとして黄金期の自由で開放的な校風をとことん目指したツケで暗黒期以上に風紀が乱れていることに対する引き締めの強化は絶対に来ますけどね」ニヤリ!

 

 

――――――だからこそ、私がエクリプス・フロントの王となる莫大な財産を築き上げる最大の儲け時になるわけだ、これから!

 

 

 

――――――そして、

 

飯守T「学園はもう混乱状態だよ……」

 

アグネスタキオン「ああ、そのようだねぇ。即日『管理教育プログラム』とやらの施行にはならず、その前の公布として『管理教育プログラム』の内容が公示されたわけだが……」

 

飯守T「樫本代理の言っていることはトレーナー陣としては理解できるものがあるけど、ここに来て黄金期を導いた秋川理事長の方針を180°転換させた徹底管理主義なんて暗黒期の再来じゃないか! タイミングが最悪過ぎる!」

 

飯守T「おかげで、樫本代理に対する印象は最初から最悪で、昨日までの黄金期の在り方を続けたい生徒やトレーナーたちからは、その……」

 

アグネスタキオン「何だい、早く言いたまえよ?」

 

飯守T「あまり気を悪くしないで欲しいんだけど、斎藤T?」

 

斎藤T「どうぞ。どうせ、私のことでしょう?」

 

飯守T「ああ。去年の春に“学園一の嫌われ者”となったのが斎藤 展望なら、今年の春に“学園一の嫌われ者”になったのが樫本 理子ってことで、同列で語られていてさ……」

 

アグネスタキオン「……ふぅン」

 

飯守T「悔しいよ。これからも斎藤Tが樫本代理とセットで“学園一の嫌われ者”として思い出されることになるんだからさ……」

 

斎藤T「まあまあ、それよりも 早速 私に会いに来たということは、『管理教育プログラム』についてでしょう?」

 

飯守T「ああ、すまない……」

 

アグネスタキオン「しかし、凄い内容だねぇ、この『管理教育プログラム』というのも」

 

ライスシャワー「うん。『管理教育プログラム』が始まったらね、毎日 食べたものの栄養素を書いて、食べ過ぎちゃったり足りなかったりしたら、次の日のご飯は――――――」

 

飯守T「すっごく苦い栄養満点のペナルティドリンクを飲まないといけないんだとさ!」

 

アグネスタキオン「なあ、翌日に飲んで意味あるのかい、それ? 一日に必要な栄養素の過剰摂取に繋がってかえって栄養バランスの計算がもっと大変にならないかい?」

 

斎藤T「おそらく、将来的にURA公認栄養満点ドリンクとして学園で普及させるために味に慣れさせる目的があるんじゃないかな。あるいは栄養満点ドリンクのモニターとして罰則を利用して味の改良をするつもりなのかもしれない」

 

アグネスタキオン「ほう? 将来的にトレセン学園の生徒たちに自分から朝の一杯に飲むように仕向けたいわけか! いいねぇ! それなら樫本代理も生徒たちを実験台に使う私たちの同類じゃないか!」ハハハッ!

 

ライスシャワー「ライス、うっかり食べ過ぎちゃうかもしれないから、不安で……」

 

斎藤T「大丈夫だよ。それ以上に肉マニアの偏食家のナリタブライアンが世話好きのヒシアマゾン寮長に愛情たっぷりの弁当を持って追いかけられていたから」

 

飯守T「それもそうか。ナリタブライアンほどの偏食家の好き嫌いをなくす努力は並大抵じゃないから、少しばかり食べ過ぎるぐらいは大目に見てもらえるってわけか」ハハッ

 

斎藤T「しかも、これだと自己申告制で真偽を確かめることができないから、ほとんど意味ないですよ。やるだけ素晴らしき無駄知識(トリビア)が得られるだけで、肝腎のレースには何の役にも立たないはずです」

 

斎藤T「ただ、健康な食生活を強く意識づけるきっかけにはなるので、しばらく学園全体でやってみて得るものがあったら続けて、まったくもってくだらないと思ったら生徒総会で陳情すればいいだけのことです。そのための生徒会ですから」

 

斎藤T「まずはやってみましょうよ。運営上の不手際があれば、それで廃止に持ち込めますから。正直に言って、1年も保たないと思いますけどね」

 

ライスシャワー「うん!」

 

飯守T「そうだな。何事も否定から入っていちゃ新しい発見なんか見つかるわけもないし、秋川理事長が代理に選んだ人なんだから、そこまで鬼のわけもないか……」

 

アグネスタキオン「結果がどうなるか、とても楽しみだねぇ……」クククッ

 

 

 

女代先生「あ、斎藤T、カフェさん。こんにちは……」

 

マンハッタンカフェ「こんにちは」

 

斎藤T「これはこれは女代先生。どうかしましたか、浮かない顔ですけど」

 

女代先生「あのですね、『管理教育プログラム』が始まるじゃないですか、あの樫本 理子って言う理事長代理の下で」

 

マンハッタンカフェ「そうですね。今日だけでもいろいろと混乱を呼んでますけど」

 

女代先生「その『管理教育プログラム』が始まったら、全教科 毎日 小テストがあるんですって!」

 

女代先生「ふざけないでよ!? 毎日 小テストを作るのと採点をするの、総生徒数2200名弱にもなったのにそんなの教員の負担にしかならないじゃない!? 簡単に言ってくれちゃって!?」

 

斎藤T「教職員の方々も大変ですね」

 

女代先生「そう! しかも、その毎日の小テストで赤点をとったら週末で補習授業――――――!? 休日出勤手当はちゃんと出るんでしょうね!?」

 

女代先生「トレセン学園の合格基準なんて 新入生・編入生 問わず 入試のハロン走の目標時間を超えればいいわけだから、オツムなんて二の次でドシドシ入学許可を出していったからこその現在の総生徒数2200名弱なのに、理事長代理って人は 今更 学園の偏差値なんて気にしているわけ!?」

 

女代先生「ねえ、カフェちゃん? 先生に休日の予定を組める確実な日ってこれからあるのかな? 週休二日制の労働条件は守られるかな?」

 

マンハッタンカフェ「そ、それは…………」

 

女代先生「地獄だわぁ……。ただでさえ、入試の季節は 毎年 憂鬱だってのに、これからは毎日の小テストに毎週の補習授業のことで憂鬱になるのね……」

 

女代先生「あ、そうだ、カフェちゃん。気分転換にカフェちゃんの趣味に山登りに誘ってくれないかしら? こういう時は身体を動かして頭のコリも解さないと!」

 

マンハッタンカフェ「あ、たしか、これからは外出先の事前申告も必要になるはずです、女代先生」

 

女代先生「はぁああああああああああ!? なんで生徒たちのプライベートにそこまで干渉するの!? それに総生徒数2200名弱の外出先の事前申告の内容をいちいち誰が審査するのよ!?」

 

女代先生「そうなると、商店街の買い出しに行くのも事前申告ってのが必要ってこと!? それで審査が通らなかったら、学園の外には出さないってわけ!? 発信機でも埋め込んで24時間監視するの!?」

 

女代先生「何それ、生徒たちを監禁したいの!? 過保護を通り越して病的じゃない!?」

 

斎藤T「ええ。ですから、『管理教育プログラム』は実行したところで不興を買って破綻するので、そこまで気にすることはないですよ」

 

斎藤T「そもそも、ただのURA幹部職員に過ぎない理事長代理が大権を握ったところで、トレセン学園の運営資金の大元を担う『名家』の機嫌を損ねるような真似ができるわけないじゃないですか。ただでさえ、暗黒期を思い出させる徹底管理主義をいきなり唱えて反感を買っているのに」

 

女代先生「あ、それもそうね! 結局、世の中、お金なのよ!」

 

女代先生「ああ、よかった。斎藤Tのおかげで胸のつかえが下りたわ。これで安心して今日もぐっすり眠れるわ」

 

女代先生「ところで、斎藤Tったら、今度は何のソリューションを手掛けている感じなのかしら?」

 

斎藤T「これですか? 『備えあれば憂いなし』ってことで、前々から各種要望を集めていた案件の中で差し迫って必要そうなものを――――――」

 

女代先生「――――――まあ! それは素晴らしいわね!」

 

マンハッタンカフェ「ええ。ですので、『管理教育プログラム』が施行されたら、ますます新クラブ:ESPRITの支持が深まるわけです」

 

女代先生「これはいいわね! まさに『ピンチはチャンス』ね! これぞ起死回生の策!」

 

女代先生「あなたについて正解だったわ! これなら安心ね!」

 

マンハッタンカフェ「はい。大船に乗ったつもりでいてください、先生」

 

 

 

岡田T「久々に来てみれば、まったくもって おもしろいことになってますな、昨今のトレセン学園は」

 

トウカイテイオー「笑い事じゃないよ、トレーナー! 秋川理事長が復活宣言した『アオハル杯』が秋川理事長が選んだ理事長代理の一存で中止になったんだよ!?」

 

エアグルーヴ「ああ。しかも、私も生徒会長として『管理教育プログラム』の精神には賛成だが、その内容があまりにも先代が目指した理想と掛け離れたものである以上、私は生徒総会を開いて直ちに是非を問おうと考えている」

 

岡田T「斎藤Tとしては、現状をどう思いますか?」

 

斎藤T「秋川理事長の思惑通りに事が進んでいるように思いますが? 何も問題なんて起こっていないですよ?」

 

エアグルーヴ「なんだと? 徹底管理主義を標榜して明らかにこれまでの黄金期の在り方を否定している人間が理事長代理になって勝手なことをしているんだぞ!?」

 

トウカイテイオー「そうだよ、斎藤T! 今だって理事長室に何人も生徒たちが直談判しに来て大騒ぎだよ!」

 

斎藤T「ええ、それでいいんです」

 

トウカイテイオー「え」

 

斎藤T「秋川理事長もURAも黄金期の自由で開放的な校風と引き換えのトレセン学園の風紀の乱れは問題視していたので、そのことで厳しく取り締まれる人物を送り込んで注意喚起を促しているわけですから」

 

エアグルーヴ「だが、『管理教育プログラム』が施行されたら大混乱が起こるのは教職員・トレーナー・生徒たちの満場一致の意見だぞ」

 

斎藤T「だから、『管理教育プログラム』は施行してみて問題点があったら、その都度 修正を加えていって、最終的に理事長代理を更迭すればいいだけの話です」

 

トウカイテイオー「それってどういう――――――」

 

斎藤T「要は、樫本代理は黄金期を継続させるために仕立て上げられたお芝居の悪役(ヒール)ですよ」

 

 

斎藤T「去年の今頃、強引なスカウトや引き抜きを敢行して“学園一の嫌われ者”になって学外の人身事故で意識不明の重体になった“斎藤 展望”の末路を見て、トレセン学園のトレーナーたちが自分たちの在り方を 今一度 見直して気を引き締め直したようにね」

 

 

岡田T「その“斎藤 展望”がご自分で言うのだから、間違いない効果なんでしょうな……」

 

エアグルーヴ「それは………………」

 

斎藤T「だから、URAは憎まれ役になる樫本代理という純粋な人間を送り込んで新時代の楔にするつもりです。今のURAやトレーナー組合は暗黒期のアンチテーゼとなる黄金期の精神に支配された人間の巣窟ですから」

 

トウカイテイオー「ええ? そんなの、新時代のための人柱だよ! マッチポンプってこと!?」

 

エアグルーヴ「…………まるで黄金期の精神を引き摺ることが悪みたいな物言いだな?」

 

斎藤T「老害・老醜という言葉があるように、個人の劣化と同じく組織もまた時と共に腐敗していくものだし、時代と共に価値観は変わっていくという自然の摂理を覚えておいてください」

 

斎藤T「それは悲しいことじゃない。生成化育の生命の循環の中で古きものが淘汰され、新しいものが生まれていく自然の摂理に逆らって老廃物が堆積することの方が不健全ですから」

 

斎藤T「今は問題点を改めてより良いものを生み出すための産みの苦しみを体験する脱皮の時なのです」

 

エアグルーヴ「――――――『脱皮の時』か」

 

 

メジロマックイーン「大変ですわ、みなさん!」ガチャッ

 

 

トウカイテイオー「どうしたの、マックイーン!?」

 

メジロマックイーン「それが――――――」

 

斎藤T「――――――理事長代理が『管理教育プログラム』施行の中止と『アオハル杯』復活を容認したのでしょう」

 

メジロマックイーン「そうですの!」

 

メジロマックイーン「そして、『アオハル杯』で樫本代理が育てたチームに勝利することで『管理教育プログラム』の無期限中止にすると!」

 

トウカイテイオー「!」

 

エアグルーヴ「……本当にあなたの言う通りになったな、斎藤T」

 

斎藤T「最初からそのつもりだっただけですよ、理事長代理は。現実的に考えてください。こんなのは『ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック(返報性の原理)』ですよ」

 

岡田T「秋川理事長の方針に真っ向から反する『管理教育プログラム』の導入の効果がこのままだと望めないのは火を見るより明らかだからこそ、学園中を納得させるために『アオハル杯』を樫本代理も利用するつもりだった――――――」

 

エアグルーヴ「たしかに、徹底管理主義に懐疑的なウマ娘たちの信用を得るためにはまずは実績を叩き出して追従者を生み出さないとならないわけだが、公式戦の『トゥインクル・シリーズ』で実績を叩き出すには最初の3年間が終わってみないことには評価は定まらないわけだし、少人数制の指導が災いしてたまたま個々人にあったやり方に過ぎないと言われかねないか……」

 

トウカイテイオー「だから、不特定多数のチーム対抗戦になる非公式戦の『アオハル杯』で明確な差を見せつけることで樫本代理は徹底管理主義の正当性を証明しようと考えているわけなんだね、斎藤T」

 

斎藤T「そう。だから、言ったでしょう、『どうあっても樫本代理は秋川理事長の敷いたレールに乗っかるしかない』って」

 

斎藤T「秋川理事長もそれがわかっていたからこそ、樫本代理に『アオハル杯』の運営も託してアメリカ出張に安心して出向いたわけです」

 

斎藤T「結局は結果こそが全てのウマ娘レースの原理原則に従うしかないわけですよ、誰であろうと、今も昔も」

 

斎藤T「同時に樫本代理は『アオハル杯』を利用して『アオハル杯』本戦までの3年間の任期を周囲に認めさせたわけにもなるのですから、生徒会役員の皆様方は頑張って『アオハル杯』本戦が終わるまでの代わる代わるのお付き合いを貫いてください」

 

トウカイテイオー「ええ……」

 

メジロマックイーン「そんな……」

 

エアグルーヴ「くっ! まさか、私が生徒会長を任された年にこんな厄介事に見舞われることになるとはなッ!」

 

エアグルーヴ「だが、わかった。これはたしかに私一人では対処しきれない問題だからこそ、樫本代理に対抗するためには私たちの想いを受け継ぐ者たちを育成しなくてはならないわけだ」

 

斎藤T「その意気ですよ。シンボリルドルフ卒業後の新しい時代は一人一人の不断の努力によって黄金期の輝きが続くわけですから、わかりやすい悪役のおかげでモチベーションが上がったでしょう」

 

エアグルーヴ「……周囲の思惑に乗せられていることがわかっているのはあまりいい気分じゃないが、私が生徒会長として成すべきことがこれではっきりした!」

 

エアグルーヴ「すまない、テイオー、マックイーン。厄介事を次代に押し付けていくことになるが――――――」

 

メジロマックイーン「大丈夫ですわ、生徒会長! 必ずや樫本代理の野望を打ち砕いて秋川理事長とシンボリルドルフが築いた黄金期のトレセン学園を守り抜いてみせますわ!」

 

トウカイテイオー「うん! ボクもカイチョー…ルドルフさんのように新しい時代に負けないように学園のみんなを導いていくから!」

 

岡田T「陰ながら尽力させていただきます。俺もシンボリルドルフの輝きに惹かれてトレーナーを続けている身ですから」

 

エアグルーヴ「ありがとう、みんな!」

 

斎藤T「生徒会長。わかりやすい敵役だからといって、樫本代理やその担当ウマ娘たちへのいじめを容認したら学園の風紀やモラルは引き返すことができないところまで堕ちるので、あくまでも正々堂々スポーツマンシップに則ったものであるように徹底しておいてください」

 

斎藤T「樫本代理のチームに勝つだけだったら、『アオハル杯』本戦で不戦敗になるように毒を盛るなり、退学に追い込むなり、身内の不幸を呼ぶなり、いくらでもやり方がありますから」

 

斎藤T「不本意でしょうが、憎き敵であろうともしっかり守ってやってください。それが互いの信頼となって安定した秩序が保たれますし、指導者の器の大きさを内外に示すことになります」

 

エアグルーヴ「……わかった。肝に銘じておこう」

 

岡田T「本当にどうなるんだろうな、これから?」

 

トウカイテイオー「そうだね、トレーナー。まさか、新年度早々にこんなことになるだなんて思いもしなかった……」

 

メジロマックイーン「本当ですわね。いつまでも黄金期の輝きに満ちたトレセン学園であって欲しいと願いますわ……」

 

 

斎藤T「さて、ここからは万が一にも『管理教育プログラム』が導入された場合の問題点についてあらかじめ対策を練ろうかと思います」バサッ ――――――売り込みのプレゼン資料を配布する。

 

 

エアグルーヴ「どういうつもりだ?」

 

斎藤T「どうもこうも、『管理教育プログラム』の導入の問題点は平たく言えば不便を強いるのが問題なのであって、生徒たちの健康面と安全面の強化については異論はないはずです」

 

斎藤T「つまり、『管理教育プログラム』の導入の負担を減らすソリューションを事前に提供できれば、『アオハル杯』本戦で勝とうが負けようが樫本代理を満足させて生徒たちの生活を向上させて互いにWin-Winにできるわけですよ」

 

斎藤T「そのためにESPRITで提供予定の管理アプリの開発に是非とも生徒会役員の方々に協力してもらいたいのです」

 

トウカイテイオー「へえ? 何それ? いったいどんな感じ?」

 

メジロマックイーン「私たちにできることがあれば、何でもおっしゃってください」

 

エアグルーヴ「まさか、あの『皇帝G1七番勝負』で利用した超高性能VRシミュレーターに関するものなのか、これを見る限り?」

 

 

斎藤T「生徒会役員の方々にやってもらいたいのは管理アプリの音源のボイス提供の契約です」

 

 

エアグルーヴ「――――――『管理アプリの音源のボイス提供』?」

 

メジロマックイーン「これはいったいどういうことですの?」

 

トウカイテイオー「つまり、アレだよね! 『初音ミク』みたいなことだよね?」

 

岡田T「あ、なるほど! 管理アプリの音声に国民的スポーツ・エンターテインメントのスターウマ娘が声を当てれば、それだけ宣伝効果が見込めるわけですな!」

 

斎藤T「そうです。この管理アプリはトレセン学園の生徒たちに限定でインストールできるようにして試用させるので、学園の生徒たちからの支持を得る手っ取り早い手段として、管理アプリの音源のボイス提供を憧れのスターウマ娘である生徒会役員の声をサンプリングしたいのです」

 

斎藤T「これは有償で提供するものではないので収益化はいたしません。なので、実質的にタダ働きさせることになりますので、ESPRITで用意しているカタログギフトを報酬とさせていただきますが、どうでしょうか?」

 

トウカイテイオー「そういうことなら、このテイオー様の声だけじゃなく、写真の使用許可も認めてもいいぞよ」

 

斎藤T「それはできません。あくまでも有名スターウマ娘の肖像権を侵害することがない範囲での利用;つまりは『トゥインクル・シリーズ』の登録競走ウマ娘の管理契約に抵触しないように提供するためにも、あくまでも匿名の参加という体裁で存在をボカさないといけないんです。契約金だの、使用可能期間だの、いろいろ面倒なのが発生しますから」

 

斎藤T「まずはこちらの台本を読んでください。それで管理アプリの大まかな機能が把握できるはずです」

 

斎藤T「くれぐれも内密にお願いします。トレセン学園の生徒たちに限定で無償でリリースすることになるとしても、そこから管理アプリが流出した場合に備える必要がありますので」

 

エアグルーヴ「わかった。それがトレセン学園の生徒たちのためになるのなら、喜んで協力しよう」

 

エアグルーヴ「とりあえず、この台本を一通り読めばいいのか?」

 

斎藤T「……最後のページからめくってもらうとわかるのですが、私はこの管理アプリに依存しないような措置として思い思いの声を収録したいと思っています」

 

斎藤T「つまり、管理アプリを利用する上で想定される質問に対する回答を用意してもらいたいというのが一番の依頼です」

 

 

こうして樫本代理が引き起こした秋川理事長に対する反乱とも取れる混乱は学園に大きな動揺をもたらすことになったものの、

 

結果としては樫本代理が反発の声を聞き入れて早々に『管理教育プログラム』施行と『アオハル杯』中止を延期したことによって ひとまずは学園を震撼させた動揺は収まることになった。

 

その代わりに『アオハル杯』本戦において樫本代理の徹底管理主義に賛同したウマ娘たちが集まったチーム<ファースト>に勝利できた時は『管理教育プログラム』施行と『アオハル杯』中止が執り行われるため、

 

『アオハル杯』は当初の健全なスポ根ドラマの舞台ではなく、これまでの学園の日常を賭けた決戦の舞台となって、樫本代理とチーム<ファースト>という共通の敵を打倒することを目標に様々なチームが鎬を削ることになったのであった。

 

しかし、最初から『アオハル杯』を利用して徹底管理主義を認めさせるつもりだった樫本代理の準備は万端であり、瞬く間に今年の新入生たちの中から素質のあるウマ娘たちをリストアップしてスカウトを済ませて逸早く『アオハル杯』のトレーニングを開始しており、その手際の良さと実際の指導力の高さからスタートダッシュで大きな差をつけることになったのであった。

 

正直に言って、秋川理事長がアメリカ出張の直前に復活宣言をした非公式戦『アオハル杯』のノウハウなどとうの昔に失われていた今のトレセン学園のトレーナー陣のうだつの上がらない様子を見て失望することになった新入生たちも多く、樫本代理が率いるチーム<ファースト>以外に上手くやれているチームはごくわずかだったのは当然のことであった。

 

そもそも、日本最高のトレーナー陣を誇っていようとも優駿たちの頂点を掴むのは並大抵のことではなく、一人の担当ウマ娘を神経をすり減らして『トゥインクル・シリーズ』で勝たせるので精一杯なのが普通なのに、最低でも15人は必要になる『アオハル杯』のチーム指導をやりこなせるトレーナーなどまずいないわけなのだ。

 

だからこそ、『アオハル杯』は生徒たちの自主的な運営によって成り立っているわけであり、本業である『トゥインクル・シリーズ』での勝利を疎かにしてまでやれることではないのだから、

 

樫本代理のウマ娘の自由を抑え込むやり方に憤りを覚えるトレーナーは多くとも、『アオハル杯』参加に積極的になれない腑抜けのトレーナーばかりになるのも自然なことであった。

 

そう、みんなが憧れてきた夢の舞台を壊そうとしている悪のチーム<ファースト>打倒を胸に誓うウマ娘たちの決意とは裏腹に明らかに『アオハル杯』まで手を回す余力があるトレーナーの存在が致命的なまでに不足していることがここに来て露呈することになったのだ。

 

それでいてなお、樫本代理はチーム<ファースト>にスカウトしたウマ娘の中で特に才能あるリトルココンとビターグラッセの2人を今年中にメイクデビューさせるつもりでローテーションを組んでいるらしく、

 

自身の徹底管理主義に賛同するチーム<ファースト>のサブトレーナーもしっかりとスカウトしているため、チーム<ファースト>の運営はすでに軌道に乗って万全になっていたのだ。

 

そのサブトレーナーは今年配属になったまったくの無名の新人トレーナーであったのだが、樫本代理が用意した完璧なマニュアルに従うだけで樫本代理が不在時の代行を務まるわけなので、この時点で樫本代理の非凡さと徹底管理主義の信頼性をトレセン学園中に示すことになったのだ。

 

そして、『アオハル杯』に参加できるのは3年目:シニア級のウマ娘までであり、年数を重ねたウマ娘が所属していることでチーム総合力が上がりやすくなっているわけなので、

 

今年の『アオハル杯』予選第1回での勝利を掴むべく3年目:シニア級のウマ娘とトレーナーたち、並びに来年の『アオハル杯』予選第2回と第3回も見据えて2年目:クラシック級のウマ娘とトレーナーたちも説き伏せて抜かりなくチーム<ファースト>に参加させていったのである。

 

 

――――――その動きについていけないのがウマ娘の自主性を第一にして自由で開放的な学園を目指した黄金期を経験してきたトレセン学園のトレーナー陣であったのだ。

 

 

そう、基本的にウマ娘レースというのは勝者は常に1着バだけの非情な戦いであり、『アオハル杯』のようなチーム対抗戦の方こそウマ娘レースの常識では頭のおかしいレースであるため、これまでのトレーナーの常識やノウハウがまったく活かせないために新入生たちが思うほどチームメンバー集めには動けなかったのである。

 

正直に言って、最初の3年間に『アオハル杯』に出走するのは既存の枠組みでローテーションを組んでいたベテラントレーナーほどリスクに感じるものがあり、チーム総合力やトレーニングレベルのためだけにチームに担当ウマ娘を参加させることは許しても自身の立てたローテーションの予定外となる『アオハル杯』出走は頑なに認めないトレーナーが普通だったのである。

 

そう、ここで非公式戦『アオハル杯』の戦績が公式戦『トゥインクル・シリーズ』での成績にはまったく反映されない事実が大きくのしかかってきており、賢明なトレーナーほど『アオハル杯』出走に多大なリスクを感じて参加を躊躇うことになるわけなのだ。

 

しかし、チーム総合力が上がることでトレーニングレベルも上がると、優先的にトレーニング設備が使えるようになるのは非常に魅力的な話であり、名前だけは貸してメリットだけを享受したいという欲も働くのであった。

 

一方で、トレーナーの適切な個人指導を受けられずに自己流のトレーニングを積み重ねて悪い癖を身に着けてしまっているだろう未出走バたちを一から鍛え直すのは給金は変わらないのに実質的に担当ウマ娘が増えたも同然の負担の増加なので、

 

真剣にチーム<ファースト>に勝とうとチームメンバーを集めようとすればするほどトレーナーたちは互いの利害を主張し合って共通の敵を前にして一致団結することができずにいたのである。

 

そのため、そんなトレーナーたちの情けない姿を見て完全にスカウトをあきらめた『選抜レース』の常連である未出走バたちがトレーナーの名前だけを借りてチーム登録を済ませる事例も後を絶たないわけであり、

 

これが本来の『アオハル杯』で想定されていたチーム作りの光景であったはずなのに、樫本代理とチーム<ファースト>打倒という目的が付け加えられたことでどこか歪な雰囲気を漂わせるようになってしまっていたのだ。

 

中にはそのトレーニング設備目当てで『アオハル杯』には出走しないことを示し合わせてベテラントレーナーたちが結託した有名無実なチームも生まれることになり、

 

長らく廃止されていた『アオハル杯』が突然の復活をしたばかりのために何もかもが準備不足だったとしても、そんなのは夢の舞台の有り様を知らなかった新入生たちからすれば知ったことではないので、トレセン学園を覆う消極的な雰囲気が『選抜レース』に向けてのモチベーションに大きな影響を与えることになったのは言うまでもない。

 

 

――――――そう、新時代の始まり;新年度早々に早速だが黄金期の輝きに翳りが見え始めていたのである。

 

 

 




さて、いよいよ始動したチーム対抗戦『アオハル杯』だが――――――、
先に開催された新設レース『URAファイナルズ』が最初の3年間を走り抜いた人気投票で選出されたスターウマ娘に出走枠を与えるのはまずいいとして、
フルゲート:18頭立てで1位のみ通過の前代未聞のトーナメント戦:予選・準決勝・決勝戦を1月中に全て開催するというクソローテーションと現実には存在し得ないほどの大会参加人数がそれも5部門も要るというゲーム的な描写からいかに現実的な設定に落とし込めるかを二次創作したように、
このチーム対抗戦『アオハル杯』も現実にこのような形式のチーム戦が行われたという記録が古今東西に1つも存在しないように、いかにトレーナーにとって『トゥインクル・シリーズ』と並行して開催されることが迷惑極まりないかばかりが考察で浮かんできてしまう。

まず、日本中央競馬会競馬施行規則第41条「競走に勝利を得る意志がないのに馬を出走させてはならない」とされており、「すべての競走馬は勝利することが目的である」という理念があるわけであり、
チーム対抗戦では必然とチームメンバーを勝たせるために他チームを妨害するというようなことが起こり得る。*1
更に、『アオハル杯』の開催が6月後半と12月後半という最初の3年間に“春秋グランプリ”を目指しているウマ娘にとっては『URAファイナルズ』以上のクソローテーションを強いる日取りになってしまっている。
そのため、現実的に明らかに公式戦『トゥインクル・シリーズ』と非公式戦『アオハル杯』の両立は不可能であり、それが過去に廃止と復活を繰り返した大きな原因になっている。

しかし、そうなると明らかにURAにとって不利益である『アオハル杯』を開催させたのが誰なのかを考えると、自ずと誰のために開かれた非公式戦であるかが見えてきたわけである。

それはトレーナーからのスカウトを受けることができないでいる大勢の未出走バたちのためであると考えると、設立された当初の『アオハル杯』の目的がすんなりと理解できるわけである。
問題は廃止と復活を繰り返すうちに当初の目的が忘れ去られて、その思い出に浸る先輩ウマ娘から『アオハル杯』のことを聞き出して、また手探りでやっていくうちに『トゥインクル・シリーズ』の登録競走ウマ娘までもが参加するようになってしまったのが全ての悲劇の始まりではないかと思う。
なので、今度の『アオハル杯』復活は『URAファイナルズ』と同じように恒例化させることで制度として本来の目的を果たすものにするべく入念な準備がされていたと予想され、
樫本代理の率いるチーム<ファースト>が最初からランキング1位の優勝候補になるゲーム的な都合もこれで説明がつくはずである。

ところが、『アオハル杯』新設当初の本来の目的と樫本代理が『管理教育プログラム』施行中止の好条件として『アオハル杯』でチーム<ファースト>に勝つことを求めた理由がわかったところで、深刻な問題にぶつかってしまう。

それが5部門3人ずつの最低15人は必要になってくるアオハルチームの統率と管理と階級の問題であり、どう考えてもトレーナーからスカウトを受けて成長した現役ウマ娘に頑張ってもらうのが『アオハル杯』優勝への近道だが、
そもそも、6月後半と12月後半に『アオハル杯』が開催される理由がそもそもトレーナーのスカウトを受けられない未出走バたちの活躍の機会を与えることを考えると、ここで現役ウマ娘が活躍しては元も子もないのだ。
しかし、未出走バだけで頑張っても良い刺激にならないから現役ウマ娘の参加も認めるのは自然なことだが、このせいで『トゥインクル・シリーズ』と『アオハル杯』という勝手のちがう2つのレース体系に両足を乗せることになり、どっちつかずで仕上がりが中途半端になることだろう。
更に、“春秋グランプリ”に担当ウマ娘を出走させる意欲と実力を持つトレーナーとしては絶対に『アオハル杯』になど参加させたくもないわけなので、参加するにしても名前を貸すぐらいに留めたいはずが、
樫本代理が妥協案として提示してきた好条件のために、黄金期の自由で開放的な校風に馴染んでしまったトレーナーたちとしては、本気で勝ちに来た樫本代理に慄いて嫌でも『アオハル杯』優勝を目指さなくてはならなくなったのである。
しかし、2年後の年末の『アオハル杯』本戦でチーム<ファースト>と対決するとなると『有馬記念』出走をあきらめる必要があるのだ。

さあ、いったいどれほどのトレーナーが樫本代理の徹底管理主義に抗うべく『アオハル杯』優勝に向けて真剣に取り組むことができているのだろうか!?

*1
実際、アプリ『ウマ娘 プリティーダービー』のチームレースやチャンピオンズミーティングでは“デバフ役”とか“蓋”という現実の競馬の勝利の理念に反する戦法が必要不可欠となっている。

あなたが担当ウマ娘と契約したばかりのトレーナーならば、このトレセン学園の自由で開放的な校風が失われようとしている『アオハル杯』の3年間をどのように過ごしますか?

  • 一番に『アオハル杯』優勝を目指せ!
  • 公式戦も非公式戦もどっちも頑張るから!
  • 非公式戦など知るか! 公式戦で勝つぞっ!
  • グランプリの人気投票に落ちたら出るさ!
  • チームトレーニングだけ参加させよっと!
  • ごめん、樫本代理に弟子入りします!
  • 他のURA登録団体に移籍します!
  • もはやこれまで! トレーナー引退します!
  • 樫本代理を追い出せ! 実力行使だッ!
  • 見ざる。言わざる。聞かざる。知ぃらない
  • 管理教育プログラムを乗っ取ってしまおう!
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