ポケットモンスター ホウエン地方編   作:とーさかしゅん

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カナシダトンネル脱出の結果は…?
ところで崩落したトンネルを今後どう回収しようか、壊してから考えてます。後先考えなければ。
ルビー、サファイアの主人公はユウキとハルカなので、ハルカだけでなくユウキも出したいと思い、登場させました。ちなみに彼は図鑑所有者ではありますが、最初の三匹、いわゆる御三家を持っていません。今後も登場してシャモと関わります。
それではお楽しみくださいませ。


第十話 vsコイキング ジムトーナメント

 

 1 9/7 カナズミシティ

 

 ポケモンセンターはポケモンを治療する施設だ。トレーナーであれば無償で預けられるこの施設には、必然的にポケモントレーナーが多く集まる。

 たとえ、避難所のようになっていても。

 ツツジは未だ疲れを見せない顔で、そんな施設にやって来た。。ホコリや砂で汚れた服が、彼女が一睡もせずジムリーダーの責務を全うしていたことを物語る。

 既に消灯時間をすぎているため、施設は非常電源が入り、緑の光が内部をうっかすらと照らしている。

 ツツジは正面の自動ドアではなく、後ろの非常扉から入る。廊下を歩き、一番大きな受付の部屋まで来ると、音に反応したのか寝ていなかったのか、数人の人が起きていた。

「もし、今起きている方でポケモントレーナーの方がいらしたら、協力を要請します」

 ツツジは小声で、それでも誰かに届くように発した。

 声は暗闇に溶けていき、室内はシンと静まり返っていた。

「アクア団の団員を追って街を出たトレーナーが一人、未だに帰ってきていません」

 …。

「手持ちのポケモンの一部をわたくしのジムで預かっております。帰ってくるように伝えました。しかし、まだ」

 …。

「わたくしはジムリーダーの身。このような緊急時に街を離れることができません」

 …。

「どうか、わたくしをたすけてください」

 ふあ。

 どこからか、欠伸が聞こえた。

 ツツジは起きている数人に、起きた誰かに、祈るような想いで話しかけた。

 あふ…。

 欠伸をしたトレーナーが起き上がった。黒髪を隠すように、ボールが刺繍された黒いバンドが付いたフードを被る。そして、ベルト状のボールラックを腰に着ける。

「ツツジさん、どこへ行けば?」

 

 2 9/7 116番道路

 

 そして、ユウキはここにいた。

 ツツジとユウキは知り合いで、ツツジが話している声で目が覚めたのだ。

 赤と黒のシャツを着た少年は、迷わずツツジの依頼を受け取り、ここまで歩いてきた。

 日は昇り、流石にアクア団は全て去ったものだと推測しつつ、ユウキは万が一のことがあると思って森の中を通っている。

 森の中に潜伏していれば見つければいい。開いた場にいれば、見えない場所から討てばいい。

「帰ってこないトレーナーは、シャモくんね」

 シャモの知るところではないが、ユウキはシャモを知っている。妹から会うたびにバトルの話をされるからだ。

「まったく。帰ってこないと心配するからなぁ」

 ユウキとしては別にシャモを心配しているわけではない。妹が、そしてあのツツジが心配するからだ。まったくもって羨ましい、いっそこの手でトドメを…。

「あー」

 洞窟の前までやって来て、内側から突き破られたような穴を見て、

「入れ違ったわー、これ」

 ユウキはツツジに連絡すると、そのまま次の街へ進んだ。

 

 3 9/7 カナシダトンネル

 

 俺の考えた作戦はいたってシンプル。

 一番弱いところを、一番強い攻撃で突破する。

 今動けるポケモンは俺のアゲハントとスバメ、そしてアクア団の男のズバットだ。戦闘不能になったドジョッチと、人質扱いのキャモメは数に入れない。

「で、どうすんだよ」

「ズバットにちょうおんぱをさせるんだ。それで一番塞がった岩が薄いところを探す」

「なるほど」

「アゲハントは薄いところに糸でマーク。そこをスバメがつつくで突破する。そのとき、アゲハントのかぜおこしで後ろから威力を後押しする」

「待て」

 アクア団の男が説明を制した。

「なんでかぜおこしをする必要がある? 何度も攻撃して穴を空ければいいじゃないか」

「だめだ」

 たしかにそれも考えた。でも俺はすぐに何度も攻撃する方法の危険性を思い付いたのだ。

「このトンネルが今どれだけ脆くなっているのかわからない。そんな状況で何度もつついていると、いつ崩れるかわからない。やるなら一撃。スバメの一撃に懸けて俺たちは一緒に飛び出す」

「…。なるほどな。その方法で行こう」

「それで、実行するときは俺はデボンのにもつを、あんたはキャモメを抱えて出る」

 男は不満そうな顔をしていた。

「なんで俺が」

「あんたが連れてきたからだろ!」

「だったら抱えるものを交換しよう」

「あんたそのまま持ち去る気だろう!」

 どさくさに紛れて裏切ろうとしてないか? この男。

 早速俺たちは作戦を実行した。10分ほどズバットは壁の隅々までちょうおんぱを当て続けて、壁の左辺りがターゲットだと示した。アゲハントが糸で丸を描く。

「スバメ」

「スバッ」

 俺はにもつを、アクア団の男はキャモメを抱えて、スバメの後ろにいるアゲハントのさらに後ろで走り出す構えを取った。

「かぜおこし!」

 スバメが壁を突き破る。同時に俺たちも走り出す。右足が痛い。周りの岩が崩落し始めて、俺たちの頭に無数の石が降り注ぐ。

 アゲハントは既にボールの中、スバメは先に脱出した。あとは最低でもキャモメだけでも助かってほしいが!

 額に大きなものが当たる。片目が見えなくなり、平衡感覚が損なわれる。

 残った目に光が差した瞬間、俺は外に出たことを確信し、同時に安堵した。

「バカやろうッ、気を抜くな!」

 後ろから突き飛ばされ、俺は頭を地面に擦り付ける形で転んだ。頭がくらくらとして、俺の意識はそこで途絶えた。

 

 4 9/7 116番道路

 

 何度も足をぶつける感覚で目が覚めた。

 俺はなんとかトンネルを脱出できたらしい、と目に入る日差しで理解した。

 それにしても、俺のシャツが妙にキツいような…。

「スッバッスッバ…!」

 上からはスバメの声がした。シャツが引っ張られているのは、スバメが俺の背中を小さい足で掴んでいるからだった。

 何度も足を地面にぶつけているのは、後ろから低空飛行をしているアゲハントが、スバメの負担を削ろうとかぜおこしを使っているからだった。

「お前ら…」

「ソ!」

「スバーッ!」

 喜びの声を上げるスバメとアゲハントは舞い上がった。ちょっと待てそんな態勢で足離されたら

「げぶ」

 情けない声とともに、俺は地面に顎を擦り付けた。

 立ち上がろうとすると、あちこちが痛む。特に右足が痛い。そういえば最初に閉じ込められるときにやったんだっけか。応急手当をしてもらっただけで、脱出するときに無理に動かしたからか、いよいよ腫れが酷い。

「もう少しだけ、助けてくれないか?」

 スバメが足で、アゲハントが細長い口で、俺の体を掴んで支えてくれる。俺は残った左足で何とか立ち上がり、カナズミシティまで歩いた。

 

 一方でアクア団のしたっぱの男は、

「お前は自分で家に帰れるだろ。行っちまいな」

 とトンネルから離れたところでキャモメを解放した。

 今回の作戦の出来は、50点といったところか。カナズミシティには、作戦の前から警察やトレーナーに団員を紛れさせて、他の団員が捕まる可能性を無くして突入した。人的な被害は無い。

 にもつを奪った彼自身も、最後の最後で大怪我をした上ににもつを奪還されるという失態を犯したが、データは手に入れた。

「よお、アンタか」

 したっぱは森の奥から現れた別の団員に手を振る。

「散々な目に遭ったそうですね、その様子だと」

「まったくだ。お前がもっと早くトウカのもりから帰ってきてたらこんなことにはならなかったぞ」

 彼女は最近入団した新人で、組織のことは右も左もわからない。だからそんなことを責めても仕方ないのだが。

「お前の実力があれば、あのトレーナーも難なく倒せただろうに」

 彼女はとても強い。ポケモンバトルの実力は幹部ウシオと同等か、いやあるいはリーダー·アオギリに届くかもしれない。

「どうでしょうね。でも私、実は彼のこと見たことあるんですよ」

「あいつを?」

「名前はシャモ。トウカのもりでデボンの研究員を守った奴だよ」

「そこでもあいつが…」

 新人がシャモというトレーナーをどれだけ知っているかは知らない。だがしたっぱの男は、確かにこう思った。

 奴を倒したい、奴より強くなりたい、と。

 したっぱは自分を置いていこうとする新人に付いていきながら、ふと、脱出したときのことを思い出していた。

「にしても、何だったんだろうな。あの黒いポケモン」

 

 

 5 9/16 カナズミシティ

 

 とりあえず、信じられないくらい怒られた。ツツジさんや、他にも別のトレーナーに迷惑をかけたらしく、俺は病室にやって来た人たちに謝った。ほとんど知らない顔の人だったけど。

 俺は1週間入院することになり、こうして今日、ようやく病院から出られることになった。医者の腕が良いのか、足の痛みは引いて、問題なく歩ける。

 そして俺は今、とある場所に呼び出されている。

 デボン·コーポレーション。

 一昨日の昼過ぎ、ハルシオンさんが病室に訪れて、社長·ツワブキが俺に会いたいそうで、日程を調整したことを伝えにきてくれた。

 会社というものを知らない俺は、受付のある一階に入った瞬間から、別世界にやって来たかのような感覚になった。

 エレベーターが動く音すら聞こえるくらいの静寂さで、靴の音が出るたびにビクビクした。

 ちょうどエレベーターから出てきたのはハルシオンさんで、俺は安堵して彼のところへ行った。

「もうお越しになってたのですね。遅くなってしまい申し訳ありません」

「いや、俺…ワタシも今来たばかりで」

 使い慣れない一人称だ。カタコトになる。

「普段通りで構いませんよ。今日は我々の方からお呼びしたのですから、肩の力を抜いてください」

 エレベーターで最上階まで上がり、扉からして雰囲気がある部屋に案内される。ここが、社長室か。

「失礼します、社長。ハルシオンです」

「どうぞ」

 柔らかな声だった。安心感を与えられる。

 扉の奥には、白い頭の老人が、高そうな服を身に付けて、高そうな椅子に腰を掛けていた。

「はじめまして、シャモくん。わしがデボンの二代目社長、ツワブキムクゲだ」

「はじめまして! ポケモントレーナーのシャモです! よろしくおねがいします!」

 声が裏返るくらい緊張した。匂いというか、空気というか、何から何まで違う世界に思えて仕方ない。

「そう肩肘張らなくてもいいよ。今日、わしはきみに礼を言いたくて呼び出したのだから」

「お礼、ですか?」

 それはデボンのにもつのこと、だろう。しかし、

「すみません、にもつ自体は取り戻したんですが、データは、その、盗まれてしまいました」

「なんと!」

 ハルシオンが驚愕の顔になる。そりゃそうだ。奪い返したとはいえ、結局敵の目的は達成されてしまっているのだから。

「でもきみが無事で良かったよ。あのにもつはとても重要なものだが、あれのために人が犠牲になる必要はない」

「すみません」

「それよりも、わしが言いたいのはデボンのにもつのことではない。キャモメのことだ」

「え?」

 そういえば、結局キャモメは持ち主に返ったと聞いたが、誰だったかは聞いていなかったな。社長のポケモン? いや、だとしたら俺がアクア団を追って街を出る前には既に情報があったはずだ。

「わしの旧知の仲で、ハギという男がいる。彼にはあのキャモメ、ピーコちゃんがいないとダメなんだよ。だから、助けてくれてありがとう」

「そうだったんですね」

 ツワブキさんは一度頭を深く下げると、俺にこう切り出した。

「友のポケモンを助けてくれたきみに、いくつか頼みたいことがあるんだ」

「俺にできることがあれば、何でも」

「ありがとう」

 社長は俺を机の前まで来させた。そこには一通の手紙が置いてある。そこにこう書かれていた。

 ダイゴへ。

「これは息子に向けた手紙だが、誰にも見られたくないもの。きみを信用して、息子に直接渡してくれないだろうか?」

「わかり、ました」

 手紙一通にどれだけの価値があるかなんて、俺には想像できなかった。だから返事が少し遅れた。

「でもどこに届ければいいんですか?」

「ダイゴは今、ムロタウンの洞窟に行っている。しばらくはそこにいるだろうから、どうか向かってほしい。ムロまではハギに頼んでいる」

 ムロタウン、たしかジムもあったな。

「わかりました。お受けしましょう」

「ありがとう!」

 社長は立ち上がり、俺の手を両手で握った。大きな手はとても固く、そして温かかった。

「頼まれてくれるきみに、これをプレゼントしよう」

 社長は俺の左腕にかかったポケギアに、小さなメモリーを数秒間挿し込んだ。

「図鑑ナビ、テレビナビを入れた。ポケモン図鑑を開かなくても、これをポケモンに向けるだけで、図鑑と連動してくれるナビと、電波が届くとこであればどこでもニュースが見られるナビだ」

「そんな、もったいないですよ!」

 思わず断ってしまうが、社長は「構わないよ」と言った。

「これが、それだけ大切な頼み事なのだから」

 俺はハルシオンさんに送られて、会社を後にして、ハギという男がいる104番道路へ向かった。

 それにしても、ツワブキ社長はどうして俺が図鑑所有者だと知っていたんだろう。

 

 6 9/16 ムロタウン

 

 ハギ老人は快く受けてくれた。

「あんたか! ピーコちゃんを助けてくれて本当にありがとう!」

 といった具合で、その日のうちに船を出してもらえて、夜にはムロタウンに到着した。

「わしは船で寝るが、シャモくんもどうかの?」

「では、お言葉に甘えて」

 翌朝、俺は初めにジムに挑戦することにした。

「わしはしばらくムロに滞在したら、カナズミに帰るつもりじや。何かあったら言っておくれ」

「ありがとうございました」

「わしの方こそ! ピーコちゃんを助けてくれてありがとうよ!」

 俺はハギ老人に別れを告げて、早速ジムに向かった。ジムの前まで来ると、体を鍛え上げた、青髪の青年が中から出てきてこう言った。

「あー、まだダメだ」

「は?」

 挑戦を断られた? 一体なぜ?

「明日なら良いかもしれないが、今日はダメだ」

 その後、何度食い下がっても入ることを拒まれたので、俺は仕方なくジムを去った。

 翌日も、その翌日もジムへ赴いたが、やはり拒まれた。ハギ老人はカナズミに帰り、俺がポケモンセンターに泊まり始めて3日、ようやく事態が動いた。

「おはようございます、ジムに挑戦しに来たんですけど」

「おう! 入んな入んな!」

 これまでとは随分態度が変わっている。快活な様子で、青年は嬉しそうに俺をジムの中へ通した。

「お前で3人目だ! あと1人来るまで、ちょっと待っててくれよな!」

 俺は案内されるままに、砂浜のようなフィールドへ連れられた。

 そこには俺の他に、既に2人のポケモントレーナーがいた。1人はボサボサの黒髪頭、そしてもう1人は…。

「あっ、あんた!」

「奇遇だな。シャモ」

 赤い髪の少年、トシマサだった。トシマサは俺と馴れ合うつもりはないらしく、一言そう言っただけで、それ以降話しかけてこなかった。

 4人目が遅れてやって来ると、青髪の青年が4人の前に立つ。

「俺はジムリーダーのトウキだ! このジムで俺に挑戦したければ、まず、挑戦者4人でバトルをしてもらう! トーナメント戦で勝ち抜いたただ一人が、俺と戦える!」

 ジムトレーナーは1人もいない。施設の関係者は審判とトウキの2人だけ。この人は本当に、トーナメントをさせるためだけに数日間待たせたというのか。

 つまり、負ければ次戦えるのはいつになるのか。

 絶対に負けてはならない。

 トウキに代わり、審判が残りのルールを教える。

 まず、バトルは2対2のシングルバトル。どちらかのトレーナーが降参、あるいは2体が戦闘不能になればバトル終了。

 ただ、手持ちを2体残して勝ったとしても、次の試合以降に使用することは禁止。ジム戦含め、全試合2体ずつ消費するということは、勝ち進む者は最低6体必要になってくる。

 試合に1回も出さなければ、持ち数は減らない。ジム戦に向けてポケモンを1体だけで相手の2体を倒せば、それだけ有利になる、というわけだ。

「よーし、お前らくじを引け! 1と2、3と4で1回戦で、勝った奴らで決勝だ!」

 俺は1番、遅れてやって来た人が2番。まずはここで勝ち星を上げる!

 俺たちはフィールドの両端に立った。

「俺は最強の釣り人を目指す者、釣りもバトルも本気で行かせてもらうぜ?」

「俺はとにかく強くなりたい。そのために、まずはあんたから倒す!」

 審判が手を上げる。

「両者最初のポケモンを!」

「アゲハント!」

「コイキング!」

 トウキさんへの挑戦権を賭けた、ジム·トーナメントが始まった。

 

 

 

レポート

9月21日 ムロタウン

 

 

手持ち

 

LV14  ラルトス

 

LV17  ヌマクロー

 

LV13  アゲハント

 

LV11  スバメ

 

図鑑

19匹




中学版との違い
・ユウキの登場
・ムロタウンのジムトーナメント
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