ポケットモンスター ホウエン地方編   作:とーさかしゅん

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ジムトーナメントには2つの目的がありました。
1つ目はジム戦がワンパターンにならないように。カナズミシティでは生徒の成績補填(加点)も兼ねた、どちらかというと生徒の試験にしたので、今度はチャレンジャーが強さを競い合うのが良いかと。
もう1つはヌマクローの無双を防ぐため。シャモが嫌でもヌマクローを出さざるを得ない状況にしました。
これを踏まえて、今回もお楽しみくださいませ。


第十一話 vsポチエナその3 敗北の鐘が鳴る

 

 1 9/21 ムロタウン

 

『コイキング、さかなポケモン。タイプ:みず。大昔はまだもう少し強かったらしい。しかし今は悲しいくらいに弱いのだ』

 試合結果はすぐに出た。

 まず、釣り人さんはコイキングばかりの手持ちだった。次に、アゲハントとのレベル差が圧倒的だった。そして、コイキングは跳ねるしか覚えていなかった。

「どうして…!」

「逆にどうしていけると思ったんだ」

「はねるは100回に1回、相手を一撃で倒す技が出るって仲間から聞いたんだ!」

「そんな効果ないよ…」

 …本当に無いよな?

 ともかく俺は一回戦を勝ち抜いた。俺たちはフィールドの外へ出て、トシマサたちと交代した。

 すれ違い際に、トシマサは俺に耳打ちした。

「またあっさり負けるなよ?」

 何度も負けてられるか。

 トシマサは、相手がフィールドに入ったのを確認すると、ボールを構えた。

 そして、ホエルコは相手のポケモンを蹂躙した。

 

 2 9/21 ムロタウン

 

 審判が手を上げる。

「それでは、両者ポケモンを!」

 ジムリーダー、トウキのエキスパートタイプはかくとうタイプだそうだ。かくとうの弱点はエスパー、ひこう、フェアリー。俺の手持ちにはラナ、アゲハント、スバメが挙げられる。アゲハントは既に一回戦で使ってしまったから残りは2体。両方をここで使うわけにはいかない上、俺は使えるポケモンがあと3匹しかいない。トウキさんとの戦いに備えて、理想はトシマサをたった1体で倒すことだが。

「(あのトシマサを、こいつだけで?)」

 やらなければならない。

「コダック、頼むぞ」

「ゆけっ、ヌマクロー!」

 トシマサが繰り出したのは黄色いアヒルのようなポケモン。頭を抱えていて、正直に言えば「あの」トシマサが使うようなポケモンには到底思えない。

『コダック、あひるポケモン。タイプ:みず。いつも頭痛に悩まさせている。この頭痛が激しくなると不思議な力を使い始める』

 なるほどな。頭にでかい爆弾を抱えているわけだ。そこに注意して、速攻で叩く。

「バトルスタート!」

「コダック、みずでっぽう」

「こっちもみずでっぽうだ!」

 両者が同時に口から水を放つ。しかし進化している分、やはりヌマクローの方が威力は高い。押され負けたコダックが、攻撃を受けて後ろへふっ飛ぶ。

「畳み掛けろ、マッドショット!」

「避けろ」

 コダックが頭を抱えながら全力で走り出す。マッドショットの1つがコダックの足を捉え、コダックはその場でスッ転んだ。

「トドメだ。みずでっぽうで接近!」

 ヌマクローはフィールドに水を吹き、砂浜を泥地に変えた。ヌマクローの力は泥の中で本領発揮する。

 高速接近したヌマクローは、ゼロ距離から技を構える。

「マッドショット!」

「かなしばり」

 マッドショットが、放てない。

 ヌマクローは口を押さえて、もがいている。

 溺れているのか? いや、そんなはずない。

「これでヌマクローの最高火力を封じた。もう何もできない。戦えない」

「そんなわけないだろ! マッドショット以外にも技は使える。いわくだきだ!」

 ヌマクローはコダックの顔めがけて拳を振り下ろす。しかし、その攻撃も相手の直前で止められてしまう。

 ねんりき、だ。

「もういい、コダック、戻れ」

 コダックに一撃を与えられずにいるヌマクローを放っておいて、トシマサはコダックをボールに戻す。

 代わりに出てきたのは、

「マリル、いくぞ」

『マリル、みずねずみポケモン。タイプ:みず、フェアリー。流れの速い川でエサを取るときは尻尾を川べりの木の幹に巻きつける。尻尾は弾力があって伸びる仕組み』

 ホエルコ程ではないがこいつも丸いポケモン。打撃が完全に効かないわけでないだろうが、わざわざ交換して出てきたということは、コダック以上にヌマクローに強く出られるということ。

「ヌマクロー、距離を取るんだ!」

「残念、はらだいこ」

 マリルは自身のお腹を思い切り叩く。

 体力を大きく消耗して繰り出すことで、マリルの攻撃力は爆発的に上昇する。今のマリルは、火事場の馬鹿力を無理矢理引き出しているような状態だ。

「まずい。みずでっぽう!」

「もう遅い。アクアジェット!」

 マリルが水に包まれて、ヌマクローに突き刺さる。ヌマクローが泥を泳ぐより速く、ヌマクローが動き出すよりも先に。

 ヌマクローは一撃で沈んだ。

「ヌマクロー、戦闘不能!」

 アクアジェット。必ず先制攻撃できる技。素早さに極振りしたような技だから普段は威力が低く、トドメの一撃として繰り出すことが多い。

 しかし今のマリルは攻撃が最大限に上がっている。速さと攻撃力を兼ね備えた奴を、どう突破すればいい⁉️

「スバメ、いくぞ!」

 ラナと迷ったが、ラルトスは防御力が低い。攻撃力が限界まで引き上げられたマリルの前に出すわけにはいかない。

 スバメは手持ちの中で最もレベルが低い。だがその速さはピカイチだ。

「アクアジェット」

「避けろ!」

 水に包まれて突撃してくるマリルを、スバメは間一髪のところで避けきる。

「きあいだめ!」

 スバメに攻撃力を上げる術はない。が、相手の急所を狙って攻撃することはできる。

 きあいだめですこしでも攻撃力の差を埋める。

「でんこうせっか!」

「アクアジェット」

 2匹のポケモンが交差し、激突する。スバメはたったの一撃で瀕死ギリギリまで体力が削られてしまった。対してマリルは急所に攻撃を受けながらも、まだまだピンピンしている。

「終わりにしよう」

 トシマサはすでに勝利宣言をしていた。

 今から俺に何ができる? スバメはここから巻き返せるのか?

「あわこうげきだ」

 抵抗無く、スバメは倒された。

 またしても、トシマサに負けたのだ。

「よって勝者、トシマサ!」

 戦闘不能になったスバメをボールに戻し、俺はよろよろとフィールドから、そしてジムから出ようとする。そんな俺のところに、意外にもトシマサがやって来た。

「ポケモンもトレーナーも弱い。最後の攻撃、俺はあえて隙を作ったというのに、お前は初めから諦めて攻撃をしなかった」

 …。本当にその通りだった。

 最後の瞬間、俺はスバメをただ見ているだけだった。目の前に表れた壁のようなものを意識して、俺はその高さに恐れて、挑むことをやめていた。

 本当なら、抗えたかもしれないのに。

 一矢報いることができたかもしれないのに。

「スバメが哀れだ」

 ああ、わかってるよ。

 スバメはまだ戦えたかもしれない。俺の指示を最後まで待っていたかもしれない。

 俺は。

「お前は、ポケモントレーナーに向いていない」

 

 3 9/24 ムロタウン

 

 俺は、トシマサに負けてからの3日を、何もせずに過ごしてきた。手持ちポケモンを誰も持たずに外をぶらつき、夕方になれば帰る。その繰り返しだ。

 ジムトーナメントもあれから開かれておらず、トレーナーが2人ほどやって来ており、ジムの門を叩いていた。

 24日の夕方、俺がポケモンセンターの自分の部屋に戻ると、部屋の中が荒らされていた。

「!」

 カバンの中身が散乱しており、布団は引き裂かれて、俺のボールもあちこちに飛ばされていて。

「ヌマクロー! どこだ! それにアゲハント、ラナ。スバメ!」

 ラナが布団の影から現れる。その手にはヌマクローとアゲハントのボールがあった。

「スーさん…。スバメさんはいません」

「何があったんだ、ラナ」

「ポチエナがやって来たんです。あのポチエナが」

 ポチエナ。すでに何度か出会ったことのある、特別な個体か。

 でもそれが、スバメと一体何の関係が?

「スバメさんは部屋で暴れたポチエナに付いていって、外に出ていきました」

「どうして」

「強くなるために」

「⁉️」

「あなたはどうして、ジムに再度チャレンジしないんですか?」

 それは。俺がポケモントレーナーに向いていないからだ。

 ラナは俺の顔を見て、何を思っているのか理解したようだった。

「あなたはポケモントレーナーです。ぼくと、ヌマくんとソーちゃんと、それからスーさんの」

 ヌマくんとは、ヌマクローのことだろう。ソーちゃんは、鳴き声からしてアゲハント。そして、スーさんはスバメ。

「でも俺はトシマサに言われた。俺はトレーナーに向いていないって」

「それでぼくたちのトレーナーを辞めちゃうんですか? ぼくらの想いは、何も考えないで」

 ラナたちの、想い?

「ポチエナは、あなたがバトルしている姿をずっと見てきたようです。あの子はあなたに負けまいと奮闘しているんです」

「ポチエナがそんなことを…」

「ポチエナだけじゃありません。ヌマくんもソーちゃんも、スーさんも、みんなあなたと同じように強くなりたいって願っているんです」

 ラナはベッドの縁に立ち、両手で俺の胸ぐらを掴んだ。

「トレーナーになってあなたが、勝手に降りないでください!」

 俺は、トシマサに言われたことしか聞いていなかった。あいつに二度負けて、その壁の高さに絶望して、あいつに向いていないと言われただけでポケモントレーナーとしての自分を否定していた。

 そこに俺の意見は無かった。ましてや、一緒に戦ってくれたポケモンたちのことなんて、一ミリも無かった。

 俺はラナの腕を離し、カバンを手に取った。

「スバメはどこに行った?」

 俺はラナとともに、ポケモンセンターを飛び出した。

 

 残された俺は、アゲハント(ラナのやつはソーちゃんと言ってたな。雌だったのか)の方を見ながら、さっきの会話を思い出していた。

『ヌマくんもソーちゃんも、スーさんも、みんなあなたと同じように強くなりたいって願っているんです』

「(なあ、ラナ。うっかりなのか、それともわざとなのか?)」

 ラナは、強くなりたいと願っているのか? ポチエナが来たときも自分の意見ではなく、他人がこう言っていたから、という理由で動いた。

 そして、ラナは。

「(あいつ、前は知らないけど、俺が入ってから一度もシャモと呼んでない…)」

 

 4 9/24 ムロタウン

 

 砂浜に、ポケモンたちはいた。

「スバメ!」

「スバッ…!」

 俺はスバメの元に駆け寄り、その体を両手で抱いた。

「ごめん。俺はお前の、いや、みんなの声を聞いていなかった」

「…」

「お前も、強くなりたいのか?」

「スバッ!」

 俺の手の中で、スバメは力強く頷いた。

 俺たちは立ち上がり、目の前で待ち構えていた相手に向かう。

 ポチエナは、わざわざ待っていてくれた。

「バトルしようぜ」

 俺は、笑っていただろう。そして、おそらくポチエナも笑ったのだろう。

 特別な合図は必要ない。俺たちとポチエナは、同時に動き出した。

「でんこうせっか!」

 スバメの高速攻撃に対して、ポチエナは前のめりにたいあたりをすることで合わせてくる。お互い至近距離でふらつくが、ポチエナの方が先に復活する。体を大きく捻り、尻尾を硬直させてアイアンテールを放つ。

「避けろ!」

 スバメは反応しきれない。ポチエナの攻撃を面で受けてしまう。

「くっ、スバメ大丈夫か⁉️」

「す、スバーッ!」

 頭にこぶを作りながらも、スバメは鳴き叫ぶと、後方へ飛び退いた。

 ポチエナが追撃の構えを見せる。あれは、たいあたりか?

「スバメ、つつくこうげき!」

 再び同時攻撃。

 しかし今度はスバメの攻撃が当たる前に、ポチエナがぶつかった。揉みくちゃになってスバメを叩きのめす。

 これは、たいあたりじゃない!

 じゃれつく。相手に飛びかかり揉みくちゃになって攻撃をするフェアリータイプの物理技。あくタイプであるポチエナが普通覚えるとは思えないが、一体どういうことだ?

「スバメ飛べ!」

 取り上がろうとするスバメの足を、ポチエナは逃がさずかみつく。そのまま砂浜に落として、再び体を前回転させる。

 アイアンテールの構えだ。

 スバメは避けられない。受け止めるしか、ない。

「スバメ、止めろ!」

 その羽でもって、スバメは鋼の尻尾を正面から受け止める。しかし、やはり押され負けてしまう。

 再びのじゃれつく。スバメは翼で防御した姿勢のまま、はね飛ばされる。

 それからも同じ動きが続く。飛ぼうとするスバメは、その度に砂浜に引きずり下ろされ、アイアンテールを受けさせられて、じゃれつくで距離を取られる。

 ポチエナは何がしたいんだ?

 スバメに、何かを攻略させたいのか?

 何度か同じパターンが続いた。すると、唐突にポチエナが動きを変えた。

 スバメの翼にかみついて、体を捻って投げ、スバメの背中を砂浜に叩きつけた。

 その動きは、なぜか、柔道の背負い投げのように見えた。叩きつけられたスバメは、こちらも不思議と痛みをあまり感じていないのか、すぐに羽ばたいて距離を取った。

 一定の距離を保ったまま、両者睨み合う。

 ポチエナの動き、理由は分からないがワンパターンなもので、いい加減俺にも次の行動が分かってきた。

 そんなタイミングでかみつくによる投げ技。ポチエナは俺に何かを伝えようとしているのか?

 アイアンテールが襲いかかる。俺はスバメに、翼で防ぐよう指示するが、やはり受けきれない。この先のジム戦で同じような状況になったら、おれはどうする? 何度受け止めても、ダメージを押さえているだけだ。それに何度も受ければ小さなダメージも蓄積する。

 どこかで攻撃を反らさないと、ダメージを逃がさないといけない。

「…そうか」

 じゃれつくで距離ができる。ポチエナは何度も繰り出してきたアイアンテールを、今回も選択して放ってくる。

「スバメ」

 アイアンテールの攻撃を、全力で正面から受け止めるから、だからダメージがそのまま残ってしまうんだ。

 だったら、

「右翼を左前に突き出せ! 攻撃を受け流すんだ!」

 ポチエナの攻撃に合わせて、スバメは翼を突き出す。アイアンテールは羽に沿って打ち落とされて、砂浜をえぐった。

 攻撃を、受け流した。

 アイアンテールのモーションを終えたポチエナは、今までのパターンから外れて攻撃を止めた。

「?」

 スバメとじっと見つめ合うこと数秒、ポチエナは鳴き声ひとつ上げず、砂浜を駆けて町を出ていった。

「おい、待てって! ポチエナ!」

 海沿いに町の外へ出たが、すでにポチエナの影はなく、足跡だけが高い崖まで続いていた。

「嘘だろ、あの高さを登っていったのか?」

 お礼を言いたかったが仕方ない。俺は来た道を戻り町に帰ろうとする。

 その視線が、波打ち際に向かう。

 潮に流されそうになっている、一匹のポケモンがいた。

「あれは…」

 図鑑を出そうとして、ツワブキ社長から貰った、ポケギアの機能を使う。

 ポケギアをポケモンに向けるだけで、後ろのポケットにある図鑑が音声を出す。

『メノクラゲ、くらげポケモン。タイプ:みず、どく。海辺を漂い獲物を探す。毒の触手はちぎれることもあるが時間が経てば生えてくる』

 くらげってことは基本的に波に流されるままに移動するのかな。じゃあ打ち上げられているんなら、ポケモンセンターに戻ってヌマクローに頼んで、海に戻してやるか。

「なあ、メノクラゲ。これからお前を海に戻してやるから、少しだけ待っていてくれ、よ…?」

 メノクラゲは、その傘に大ケガを負っていた。

打ち上げられて干からびている訳じゃなかったんだ。

「おい、大丈夫か⁉️」

 メノクラゲは苦しそうに目をじっと閉じるばかりで、答えられない。

 今すぐポケモンセンターに運ぶべきだ。

「ラナ!」

「はい!」

「俺がメノクラゲを運ぶ。お前は先に行って、ポケモンセンターを開けてもらってくれ!」

「メノクラゲは毒を持ってます。危険です!」

「ラナはどくタイプが弱点だろ」

「人間のあなたよりは耐えられます!」

「俺が運んだ方が速い。早く!」

 ラナは食い下がろうとするが、こんなやりとりを続けるわけにはいかないと思ったのか走り出す。

 さて、問題は俺だ。メノクラゲを運ぼうとすれば、毒の触手に触ってしまう。

 いや、

「考えるまでも、ない!」

 腕に強烈な痛みが走る。俺はシャツを濡らしながらメノクラゲを腕に抱えてムロタウンへ戻る。

 街に戻る頃には腕の感覚がなくなっていて、まるでゴムでメノクラゲを縛っているようだった。

 自動ドアが開く時間も惜しく、足踏みしながらドアが少し開いたところで俺は体をねじ込んだ。

「ラナ!」

「ポケモントレーナーさん! こちらです!」

 すでにポケモンセンターのお姉さんが待機していて、メノクラゲを担架に乗せるとすぐに治療室へ入っていった。

 そこで、限界だった。

「いっ…てぇぇぇぇ……!」

 痛みを忘れるために喚き叫びたいところだったが、何となく、メノクラゲには聞かれたくなかった。腹に力を入れて声を押さえる。

 やがて俺のところにもお姉さんがやって来て、薬を塗られたり包帯を巻かれたりと治療が施された。

 

 

 

レポート

9月24日 ムロタウン

 

 

手持ち

 

LV16  ラルトス

 

LV18  ヌマクロー

 

LV14  アゲハント

 

LV15  スバメ

 

図鑑

23匹(新:コイキング、コダック、マリル、メノクラゲ)




中学版との違い
・シャモの敗北と挫折
・シャモとポケモンたちの修行
・メノクラゲの救助イベント
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