タロウとジロウは中学版にはいなかった(うみのいえで出てきたキャラなので当然ですが)キャラなのでこのときはどう味付けしていこうか悩んでいました。物語内の日数稼ぎに作ったうみのいえ編が結構な足かせにッッ!
アクア団のボスも現れてルビサファっぽくなってきました。
お楽しみくださいませ。
1 10月1日 カイナシティ
カイナシティは海に面したホウエン最大の貿易都市である。輸入したなま物や珍しい品は市場で売られ、生活用品は最大都市キンセツシティに運ばれる。
昼の市場は平日にも関わらず賑わっており、やっとの思いで入れた海鮮丼のお店も大変混雑していて、男3人は窮屈な席に案内されてしまった。
そう、男3人である。
「兄貴はどうしてそんなに強いんですか!」
「強さの秘訣、知りたいっす!」
名前はタロウとジロウだ。嘘だ。近いけど違う。でも二人の圧と熱意ですっかり忘れてしまった。
2人は昨日、うみのいえで一悶着を起こした所謂クレーマーというやつだ。と思っていたのが、実際にはこちらの勘違いがあったようだ。
「俺、うっかりあの姉ちゃんを怪我させちまうとこだったんだ!」
「ホントに服を綺麗にしてほしかっただけなんすけど、ちょっと熱くなりすぎちまったんすよ」
今も充分熱いけどね。
話を聞くとこの2人、悪いやつらではないようだ。昨日はお互いに興奮していたせいで喧嘩になってしまっただけで、今は落ち着いて(落ち着いてはいないか)謝ってきたのだ。
というか、勘違いで倒してしまったんだし、悪いのは俺の方では? とは言えず。
「俺らを倒した兄貴に付いていけば、俺らポケモンリーグだって行ける気がするんです!」
「うっす! その通りっす!」
「いや、俺は別に強いわけじゃないんだよ」
2人がこんな姿勢だし、俺は自然と軽い口調になっていた。
「俺なんかよりも強いトレーナーなんてたくさんいる。実際俺はあるトレーナーに負け続けている。そいつに習った方がいいぞ」
タロウが激しく首を振る。やめろ汗飛ぶ飛び散る。
「そんなことないです! いや、そんなことないことないかもしれないんですが」
「っす!」
「俺らを倒したのは、他ならぬ兄貴なんだ! だから兄貴に習いたいのは当然のことでしょう!」
「っす! す!」
まるでヤクザ者の言葉だ…。そのうち仁義を通すだの言いそうで怖い。あとジロウはもう話せること無いんか。
しばらく考えた。
俺はまだ、弱い。とてもじゃないがこの2人に対して偉そうに何かを教えることなんてできない。
でも、悪くないんじゃないか?
誰かと一緒に戦うことなんて、これまで無かったわけだし。ハルカちゃんやトシマサとも違う関係で、俺自身も強くなれるんじゃないか?
俺の視線は、思考している間、海鮮丼に向けられていた。
「奢りやす」
「え」
「どうか俺らを舎弟に加えてくれませんか!」
何か向こうも勘違いをしているようだけど。
「わかった、ただし舎弟じゃない。俺も強いトレーナーじゃないしな。仲間になろう」
「ありがとうございます!」
「す! す!!」
こうして、海鮮丼で交わされた(買わされた?)この奇妙な関係が、短い間続くことになる。
2 10月1日 カイナシティ
忘れていると思うが、俺はカイナシティのとある人物に荷物を渡す役目を実行している最中だ。受取人は造船所にいると言われる「クスノキ」という男。
デボンのにもつ。
アクア団が以前、カナズミシティを襲撃してきた原因の一つ。物は違うとハギさんは言っていたが、これもアクア団が狙っている可能性が高いという。
「どう捉えるべきか」
「兄貴?」
タロウが買い物袋を片手に、訝しげに顔を覗いてきた。口に出ていたか。
俺たちはカイナシティの市場で買い物をしていた。バトルの面で役立つグッズを探していた。怪しげなおこうの店から出てきたところだ。
アクア団と戦うかもしれない。そんなタイミングで仲間が2人できたのは良いと捉えるか、悪いと捉えるか。
一緒に戦ってくれるか、巻き込んでしまうか。
「ちょっと頼まれごとがあってな、もしかしたらアクア団っていう連中と戦うかもしれない」
「いいんじゃないですか? 俺らだって強くなれるチャンスじゃねえですか」
「だが危険かもしれない」
「そんなこと言ったって、バトルは兄貴が強いかもしれないっすけど、歳は俺らの方が上っす! 役に立てることは1つくらいあるっすよ」
ジロウが俺の言葉を遮るように言った。
「わかった」
バトルが2人を強いからって、少し偉そうな態度になっていたかもしれない。
遠慮なく頼らせてもらおう。
「わかった。2人とも、もしもの時は一緒に戦ってくれ」
「おう!」
「っす!」
俺たちはポケモンたちを連れて、カイナ造船所へ入った。
警戒して入ると、先程までの心配は杞憂に終わった。静かな工房で数名の職人が資料に目を通していたからだ。
「おや?」
突然の来訪者に、机の上の大きな紙に目を通していた、1人の男が気がついた。
「ようこそ。見学かな?」
「いえ、こちらに用事があったんですが、クスノキさんですか?」
「いえ、私はツガですが。館長にどのような用ですか?」
どうやらこの中にクスノキさんさいないようだ。俺はデボンのにもつを見せて、要を説明した。
「なるほど、それでしたら館長はカイナ水族館にいます。直接渡して頂けますかね?」
「わかりました。ありがとうございます」
「いえいえ、こちらこそありがとうございます。水族館はここを出て…」
ツガさんから水族館の場所を教えてもらった俺たちは、その足で目的地へ向かう。
完全に油断していた。
特に違和感を覚えず、正面から水族館に入ってしまった。
目に移ったのは今まさに侵入してきた海賊服の男女が3人、後ろからさらにぞろぞろとしたっぱたちが入ってくるところだった。
「あ、てめ!」
俺を指差してぎょっとした顔になったしたっぱがいた。一体なんなんだ。
「カナシダトンネルのときは譲ってやったが、今回はそうはいかねぇぞ?」
「あー、そんなこともあったな」
カナシダトンネルの崩落に巻き込まれたとき、不本意とはいえ協力した、あのしたっぱか。服が同じ上に顔を覚えていなかったから、全く認識できなかった。
したっぱは周りの者を先に進ませて、自分はボールを投げた。
出てきたのは前回同様ドジョッチだ。俺は相性のいい技を持つアゲハントのボールを投げようとする。
「待つっす!」
ジロウが俺の前に出る。
「俺が代わりに相手になるっす。だから2人は先へ!」
「いや、だがあいつは俺が」
「さっさと上に行って、クスノキって人に会ってくるっすよ!」
たしかに、2階にクスノキさんがいるなら早く行った方が良い。他のしたっぱたちはすでに階段を登りだしている。
一緒に戦うと、約束したからな。
「ジロウ、頼んだ!」
「す!」
俺たちはしたっぱのドジョッチの攻撃をかわして、館内に突入した。
1階にいる団員は5、6…、9人か。かなり多い。
こちらを迎撃するため、3人の団員がポチエナ、赤い金魚のようなポケモン、そしてザリガニのようなポケモンを繰り出した。
『トサキント、きんぎょポケモン。タイプ:みずーーー
図鑑説明がポケモンのデータを読み上げ始める。
「アゲハント、すいとるこうげき!」
『ーーーひれがとても美しいポケモンだが油断をしていると強烈なツノの一突きをくらーーー
トサキントが倒れるのと同時に、タロウのゴーリキーのからてチョップがポチエナに刺さっていた。
『ヘイガニ、ごろつきポケモン。タイプ:みず。鋭いハサミで獲物を捕まえる。ーーー
「ヤミラミ、ひっかく。メノクラゲ、あわ!」
『ーーー好き嫌いがないのでなんでも食べーーー』
ポチエナが倒れる。ヘイガニが技を受ける。
図鑑説明が終わる前に相手のポケモンを薙ぎ払ったとはいえ、敵の数は多い。残りのしたっぱも加わり、さらに大量のポケモンを繰り出してきた。
「兄貴、先へ」
「おまっ流石にこの人数は!」
「俺が勝てなくても、その前に兄貴がクスノキさんに合流しちまえばこっちの勝ちです。さぁ早く!」
ここで揉めても時間を余計に消費する。タロウの言う通り先に進むしかないか。
俺はメノクラゲだけをボールに戻して、ヤミラミに指示を出した。
「タロウのサポートを頼んだ」
ヤミラミは笑顔で頷くと、すぐに相手のポケモンたちに飛びかかった。
俺は階段を駆け上がり、2階へと進んだ。
3 10月1日 カイナシティ
ジロウというのはシャモが勝手に付けたあだ名のようなものである。本名はジロキチ。タロウも同じく、本名はタノスケマルという。
2人のバトルセンスは全くないというわけではない。ジムバッチは半年で2つだけではあるが手に入れている。
1人や2人のアクア団のしたっぱ程度であれば難なく倒せていたはずだ。
しかしタノスケマルの相手は残り5人、ポケモンは10匹以上いた。ジロキチの相手も、数こそたったの1人だが、周りのしたっぱよりも数段強い。
シャモを上に行かせたはいいが、かなり劣勢だった。シャモが間に合えば勝ちというわけではない。下に戦えるしたっばが多ければ、逆転される可能性だってあるのだ。
「いい加減倒れろや!」
ジロキチが悪態をつく。
実を言えばゴローンはいわ、じめんタイプであるため、ドジョッチ相手に未だ倒れていないというジロキチの方が異常ではある。
「俺は作戦を成功させるつもりでいたが、この際あのトレーナーにリベンジできりゃ何でもいい。だからとっとと倒れろ!」
「くっそぉ、ゴローン、たいあたり!」
ゴローンが、その巨体でもってドジョッチに襲いかかる。
しかし効果バツグンの技を受けすぎたか、その動きは遥かに鈍っていた。ドジョッチには簡単に避けられてしまい、死角を取られてしまった。
「もう寝てろ、みずでっぽう!」
攻撃が背中に直撃したゴローンは、そのまま前に倒れた。戦闘不能だ。
一方のタノスケマルも、ヤミラミの手を借りているとはいえ、徐々に追い詰められていた。
「ゴーリキー、からてチョップ!」
敵のトサキントの攻撃を受けながら、それでも目の前のヘイガニを叩き伏せ、しかしそこが限界だった。
ゴーリキーは膝を着いて、そこを狙ったかのようにポチエナが飛びかかる。
「しまった!」
ポチエナはゴーリキーの懐に入り、とどめを、
「? こいつ」
刺すことはなかった。
ポチエナは口から青いきのみ、オレンのみを出して、ゴーリキーに与えた。目を合わせて、数度の言葉を交わすと、ゴーリキーはきのみを食べ始めた。
「お前、アクア団のポケモンじゃねえのか」
ポチエナはゴーリキーとタノスケマルの前に立ち、そして力強く吠えてトサキントに噛みついた。
トサキントを離さず、その尻尾を鋼色に輝かせ、敵のポチエナを殴り付ける。
「アイアンテールだと? ポチエナが覚えられるのか!?」
残ったポケモンはあと4匹。ヤミラミも合流し、こちらは手負いのゴーリキーを含めて3匹。
「どこのどいつか知らないが、負けてられねえぞゴーリキー!」
体力が多少回復したゴーリキーは立ち上がり、2匹と並び立つ。
反撃が始まった。
4 10月1日 カイナシティ
2階はガラスのショーケースに覆われた世界の船が展示されていた。
「あなたがクスノキさんですか?」
俺はサント·アンヌ号と紹介されている船の前に立っている老人に声をかけた。他に客は誰もいない。
「そうですが、きみは?」
「俺はシャモっていいます。デボンのにもつをあなたに渡しに来たんですが…」
「おお! ツワブキさんに頼んでおいたパーツか! いやあご苦労様、これで出発できるよ」
アクア団のことを早く伝えたいが、クスノキさんに話を遮られてしまった。
そうこうしている内にしたっぱたちに追い付かれてしまった。
「おい、そこのお前!」
2人組の男女のしたっぱだった。
「そのパーツ、私たちがいただくわ」
「俺たちアクア団の船長がそれを欲しがっているんだ。何も言わずよこせ!」
したっぱの2人はポケモンを繰り出す。1匹はヘイガニ。そしてもう1匹は、赤と青の鱗と黄色のヒレが特徴的な魚のポケモンだった。
『キバニア、どうもうポケモン。タイプ:みず、あく。縄張りに入って来た相手を集団で攻撃。鋭いキバはボートの底もかみきる』
注意すべきは顎か。ヘイガニのハサミもそうだが、攻撃をまともに受けるのは良くないな。
ならば、
「ゆけっ、アゲハント、ラナ!」
直接攻撃を主としないこいつらで戦おう。
「ヘイガニ、はさむこうげき!」
男したっぱの声でヘイガニがラナに突っ込む。
「ラナはなきごえ! アゲハントはすいとるこうげきだ!」
ラナが鳴き声をあげたことでヘイガニの攻撃の手が一瞬緩み、そこを突くようにアゲハントの攻撃が飛んでくる。
よろめくヘイガニを倒しきるため、俺はさらに追加攻撃を指示した。
「アゲハント、かぜおこし!」
ヘイガニはしたっぱの元まで吹き飛んで、戦闘不能になった。
「くそっ、なんてやつだ!」
「私に任せな」
そう言って、俺と男したっぱの攻防を静観していた、キバニア使いの女したっぱが前に出てくる。
2対1で攻めた方が楽だろうに、そうは思わなかったのか?
「私はサシでやるのが趣味なの。あなたには興味もあるしね。キバニア、アゲハントにかみつく」
なんで俺なんかに興味があるってんだ。初対面なはずだが。
「アゲハント、かわせ!」
「残念、さらにアクアジェット!」
アゲハントが距離を取る。しかしその間合いを詰めるように、キバニアが宙で水をまとい突撃する。
不意を突かれたか、急所に受けたか、攻撃を食らったアゲハントは倒れてしまった。
「アゲハント!」
俺はアゲハントの元へ走り、ボールに入れる。
その隙を狙われた。
「1匹倒れたくらいで動揺しちゃダメよ? こっちのラルトスががら空きなんだからさ!」
「まずい、ラナ!」
「アクアジェット!」
「はたくで攻撃を逸らせ!」
ラナはなんとかキバニアの攻撃の直撃を避けた。しかしどこか様子がおかしい。はたいた手を苦しそうに押さえている。
「ラナ?」
「キバニアのとくせいはさめはだ! 触れたモノを痛め付けるのよ」
ラナはまだ戦える。キバニアがいよいよ近接攻撃に対して強いというのならば、やはりこいつで決めるしかないだろう。
「ラナ、チャームボイス!」
「ハァァァッ!」
「アクアジェット!」
キバニアが迫る。ラナに直撃する前で。
ラナの、妖精の声がキバニアの耳をつんざく。
あくタイプのキバニアにとって、フェアリータイプの技は効果バツグン。強烈なカウンターを食らったキバニアは戦闘不能になった。
女したっぱはしばらく茫然としていたが、やがてニタリと笑ってキバニアをボールに戻した。
「お前らのポケモンは全部倒したぞ。もう戦えないはずだ」
「誰が、ポケモンは1匹しかいないって言った?」
「なんだと…」
こちらにはまだヌマクローたちが残っている。この程度なら負ける気はしないが。
女したっぱの不気味な笑みが不安を与えてくる。
そして、彼女は2匹目を繰り出すべく、ボールを掲げた。
「さて、こいつは倒せるかな? ボーマン…
「何をしてやがる」
突然の野太い男声。威圧感のある一声に、俺は体をこわばらせた。したっぱは慌ててボールをしまい、声の方へ膝をついている。
ぎぎぎぎ、と硬直した首をなんとか声の方へ向けると、黒いスーツをまとい、頭に青いバンダナを巻いた大柄な男がいた。
「パーツをいただくだけだってのに、いつまで時間をかけてんだ」
「ハッ! アオギリさまっあがッッ!?」
顔を上げて真っ先に答えた男したっぱが潰れたカエルのような声を上げたのは、アオギリと呼ばれたスーツの男に蹴り飛ばされたからだ。
「一般人の前で名前を呼ぶヤツがあるか」
「私から報告を、船長」
鼻っ柱を押さえて呻く男したっぱに代わり、女したっぱが話し出す。
「彼は一般人ではありますが、どうやらデボンとの繋がりがあると思われます。にもつを奪おうとしましたが彼に敗れました。申し訳ありません」
「なるほどなァ」
男の興味は俺へ向いた。明らかに表の人間の目付きではなかったが、俺の体はもう固まっていなかった。頭では覚えていないが、俺は過去に似たような人間と相対したことがあったのか?
「オレはアオギリ。そこの野郎たちを従えてアクア団ってチームの船長をやっている者だ。ガキンチョ、お前の名前は?」
「シャモ、ポケモントレーナーです」
ここは素直に答えておこう。向こうも、一度は隠した名前を明かしているわけだし。
ただし、ここで明かしてくれたということは、当然、すでに一般人とは認識されていないのだろう。嫌な縁ができてしまった。
「そうか、シャモか」
アオギリは未だに倒れている男したっぱを、次に女したっぱを見下ろして、クスノキ館長に目をやる。そして、最後に再び俺を見た。その目は獣が餌を選んでいるようにも、狩人が品定めしているようにも見える。
そして、アオギリは俺に衝撃的な話を持ちかけてきた。
「シャモよ、お前もアクア団に入らないか?」
レポート
10月1日 カイナシティ
手持ち
LV24 キルリア オス
LV22 ヌマクロー オス
LV20 アゲハント メス
LV19 スバメ メス
LV27 メノクラゲ メス
LV20 ヤミラミ オス
図鑑
34匹(新:トサキント、ヘイガニ、キバニア)
中学版との違い
・タロウとジロウ(脱線しすぎてもう書く必要ないのでは??)