ポケットモンスター ホウエン地方編   作:とーさかしゅん

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お疲れ様です。
サブタイトルの語呂が悪いのは、当初は後半が「2つの再会」だったからです。ええ、ええ。文字数ヤバすぎて2つ目の再会は次回に持ち越しですよ(なんなら予定外のストーリーでさらに遅れてる上、3つ目4つ目の再会もあるのなんなんだよチクショウ)。

アオギリの勧誘セリフで某上弦の方が頭に浮かんだ方。はい、意識しました。すみません。アクア団の内部事情とか、戦う度に察することができる程度に開示していきたいものです。

それでは、お楽しみくださいませ。


第17話 vsゴクリン 2つの勧誘、1つの再会

 

 1 10/1 カイナシティ

 

「お前は知っているか? ポケモンも人も、全ての命は海から生まれたってことを。そう、海は全ての生き物にとってかけがえのない大切な場所なのさ」

 語りだしたアオギリは、近くに展示されていた豪華客船のレプリカを囲う強化ガラスに手をやり、そして拳を振りかざした。

「しかし人間は自分のエゴのために海を汚し、潰し、大切な場所をどんどん破壊していきやがる」

 アオギリの拳がガラスのケージを破ることはなかった。いいや、敢えて砕かなかったのかもしれない。

「それでオレたち人間が苦しむのはまあいいさ。しかしポケモンたちはどうだ? 海を奪われることで住む場所を失うポケモン。新たな生命を育むことができなくなったポケモン。罪のないポケモンが苦しむ世界、そんなモン許されるワケがねぇ!」

 そこで俺は気づいた。

 アオギリの目、壁に掛けられたさまざまな水ポケモンが描かれた壁画を見る瞳から放たれているのは、獲物を狙う眼光ではなかった。

 自分を信じて疑わない、野望に満ちた熱い眼差しだ。

「だからオレは決めた。人間の愚かな行動も、破壊された海も自然も、全て始まりに還す…とな! だが、オレたちの活動に反発するヤツらは多い。ちょうどお前みたいなヤツだ」

 アオギリはゴツゴツとした拳を俺に突き出した。

「人手が足りねぇ。力も欲しい。お前みたいな強いヤツがもっとチームに入れば、オレの、オレたちアクア団の野望は必ず叶うだろう」

 アオギリの主張、アクア団の掲げる信念はまぁ分からなくもない。俺自身ポケモンが環境汚染で苦しんでところは見たことはないが、そんな世界を望んでいるわけでもない。だから彼らの話を全て突っぱねる気はない。

 だけど、だ。

「断る」

「なんだと?」

 俺は『知っている』。アクア団は目的のためにデボン社から何かのパーツを奪おうとしていることを。

 俺は『知っている』。アクア団はデボン社からパーツを奪うためにデボンの研究員を、そしてカナズミシティを襲撃したことを。

 俺は『知っている』。俺がここにいなかったら、アクア団はクスノキさんを襲撃していたことを。

「アンタたちの理想は尊いよ。子供の俺には、生命の原始とか地球の未来とかわからない。でも、やり方は間違っている。これだけはハッキリ言える! お前のやってることは間違っている!」

 俺はアオギリから目を離さなかった。アオギリは目の色を変えなかった。この言葉は、おそらく届いていない。

 アオギリは、止まらない。

 ここで戦うことになっても、俺は引かない。

 俺は腰のボールに触れる。ラナのボールはとても熱かった。俺の感情が熱を帯びているようだった。

 アオギリは、拳を、

「…ったく、ガラにもなく語っちまったぜ」

 下ろした。

「今日のところは引き上げてやる。だが、次にオレのジャマをしやがったらただじゃすまさねえ」

 声色には、わずかに失望の色が混じっていた。

「それだけは覚えておけ」

「…ああ、わかった」

「いくぞ野郎ども」

 アオギリが踵を返すと、男したっぱが続いて、水族館を出ていった。

 女したっぱだけは膝をついたまま震えていた。

 アオギリがそんなに怖かったのだろうか? そうは見えなかったが。

「プクク」

 いや、この女は、笑っていた。

 ずっと顔を伏せて笑っていた。

「あははははははははは! 最高だねキミ! アクア団の船長を怒らせるなんて命知らずなんだから!」

「な、なんだよアンタ。敵なんだろ?」

 正直アオギリよりも、突然距離を詰めてくるこの女したっぱの方が怖いと感じてしまった。

「敵、敵、敵…うーん。多分? キミがこれから私の仲間にならない可能性もないわけだし、どちらでもないんじゃないかな?」

「いやならないだろ」

「かもしれないね」

「アオギリに脅かされたけど、俺はアンタたちの邪魔をするぞ」

「でも、最後に仲間になれば結果オーライだ。昨日までの敵も、同じ思想に至れば仲間だよ。だから、私はキミを待つ。いつまでも、いつまでもね」

 女したっぱはそれだけ言うと、俺の話を聞くこともなくスキップで去っていった。

 俺がアクア団に? まさか。

「た、助かったよ」

 今まで展示物の陰に隠れていたクスノキ館長が出てきた。そういえば、忘れそうになってた。

「君はシャモくんというのか。助けてくれてありがとう。危ないところだった」

「帰ってくれて良かったです。そうだ、これがデボンに頼まれていたパーツです」

 俺はリュックに入っていたデボンのにもつを館長に渡す。

「ありがとう。これで出発できる! すまないね、今日はこれから海底調査に行かなければならないんだ。改めてお礼をさせてもらうよ。それではこれで失礼するよ」

 クスノキ館長は足早に階段を降りていった。

 海底調査か。本当に凄い人なんだな。

 これでひとまず、トウカのもりから始まった「デボンのにもつ」に関わる襲撃は終わった、ということでいいのか?

 全てやりきった気がして力が抜けてしまった。なんだかんだで体は緊張でかなり体力を使っていたようだ。

「兄貴!」

 下からタロウとジロウ、そしてヤミラミがやってきた。こっちに関しては完全に忘れていたな。本当にそれどころじゃなかった。

「2人とも無事か?」

「ぼこぼこにされました!」

 じゃあなんでそんな笑顔なんだよタロウ。

「野生のポチエナの助けもあって、なんとか全員倒したんすよね」

 野生のポチエナ?

 まさか、「あの」ポチエナか?

 ムロタウンからここまで距離がある、なんて話じゃない。何らかの方法で海を渡らなければここまで来れないはずだ。そもそもムロタウンで出会ったのもおかしな話だ。

 本当にあのポチエナなら、一体何が目的なんだろう。

「兄貴、これからどうします?」

 タロウが尋ねてきた。

 俺はヤミラミをボールに戻し、

「今日はもうポケモンセンターで休もう。俺たちもポケモンもかなり消耗してるしな」

「っす!」

 

 2 10/3 カイナシティ

 

 水族館の1階で戦ったヤミラミ、ゴローン、ゴーリキーが回復しきらなかったので、昨日は1日カイナシティで過ごした。

 市場はとても賑わっており、俺たち3人はきずぐすりやモンスターボール、それにポケモンに持たせるどうぐを購入した。

「たつじんのおび! こいつぁ強そうっすね!」

「かくとうタイプの技ばかり覚えたゴーリキーとは相性良くないぞ。持たせるならもっと色んなタイプの技を習得しないと」

「なるほど! じゃああっちで技マシン買ってくるっす!」

 タロウのバトルの向上心はすごいものだ。薬は少なめに、どうぐを中心に買い物をしている。

 片やジロウは薬を多く購入している。とくしゅ攻撃に弱いゴローンは、様々なタイプが出てくる草むらでは不利になるためだ。

「にしても、買いすぎじゃないか?」

「備えあれば嬉しいっす!」

「憂いなし、だ」

「す!」

 俺はというと、実はあまり買ってない。ボールは元々最低限のものしか持たないし、薬も充分あるからだ。そもそも資金があまりない。何かを大量に揃えるのはなかなかできないのだ。

 その後、タロウは技マシンをいくつか購入し、ジロウは何故かぬいぐるみを買っていた。俺は技マシンを2つ購入した。

 これが何かの役に立てばいいが。

 市場の入り口でタロウとジロウを待っていたとき、俺はちょっとした騒ぎ声を聞いた。

「おい、あれってまさか!」

「来てるんじゃねえか!」

「うぉぉぉ俺の愛しの人ぉぉぉ!」

 一体何の騒ぎだ?

 俺は声のした方へ歩く。そこにはコンサートホールのような建物があり、その出入口の周りに人だかりができていた。覗き込むと、ゴツゴツとした機材も見えた。テレビの撮影でも来てるのか?

「ミラクルルチアの~?」

 マイクを通して、可愛らしい声が響いてきた。

 人の頭の隙間から見えた声の主は、まさしくアイドルだった。

「コンテスト☆スカウト~~!」

「「おおおおおおおお!」」

 少女の一声に、歓声が一段と大きくなった。

 そのエメラルドの長い髪は、宝石のようなものが埋められた髪留めでポニーテールにしていた。白い肌を包む青を基調とした衣装には、雲のような綿が散りばめられており、きっと青空が似合うのだろう。

 ルチアという少女は、服装から大体予想はできたが、どうやらホウエン地方を代表するアイドルだそうだ。そんな彼女が突然カイナシティに現れたから、そりゃ騒ぎにもなる。

 ルチアは細い指を回して周囲を見つめる。そのあざとさは計算か、それとも天然か。どちらにせよ、多くの人が虜になるわけだ。

「ルッチー! 俺を彼氏にスカウトしれくれー!」

 変態だー!

 大の大人が1人の少女に寄ってたかってそんなことを言う光景は中々酷いものだぞ。顔色ひとつ変えないルチアもすごい胆力だが。

 お気の毒に、と余計な心配をしながらルチアを見ると、そのサファイアのような瞳と目が合った。

「あれ?」

 いや、これはアレだ。よくある「今私のこと見てくれた!」っていう思い込みであって、ルチア本人が見ているわけではないわけで。

「そこのアナタ!」

 うわ~~。俺だこれ。おいでおいでとめっちゃ手を振ってるよ。

 そしてスタッフに案内されるままコンサートホールの入り口、つまりルチアの隣まで連れていかれる。視線が怖い。刺すような目線とはまさしくこれのことだった。

「アナタ、お名前は?」

「えと…シャモです」

「おおーっ、シャモくん! いい名前! 美味しそう!」

 感性が独特!

「では! 今日はシャモくんをコンテストの世界に誘っちゃいます!」

「え?」

 スカウトというのは、やはりこのコンサートホールもといコンテスト会場でいきなり参加させられるんじゃないか?

 冗談じゃない。人前でアピールとか絶対無理だ。

「シャモくんにはこれをプレゼントしちゃいます! まず、持っていればコンテストに参加できるようになる『コンテストパス』と、きのみからポロックを作れる『ポロックキット』です!」

 ルチアから手渡されたのは1枚のカードと、プラスチック製の小箱だった。ポロックキット、ジョウトにはないものだ。後で調べてみるのもありだな。

「さて! シャモくんの新たな物語が始まりました。そう、タイトルをつけるなら…『突然の出会い! ミラクル☆アイドルスカウト!』って感じだね!」

 俺が1人考えている内に話は進んでおり、俺は大変な世界に巻き込まれてしまっていた。

 今から強制参加、ってわけではないのが救いか。

「みんな! これからシャモくんの活躍をお楽しみに! 以上、ミラクル☆ルチアのコンテストスカウトでしたー!」

「くるくるー!」

「ルッチーまた来てねー!」

 撮影が終わり、ルチアは再度俺の方を見て言った。

「ポケモントレーナーさんにとっても技を磨く場にもなるから、一度くらいは来てね」

 心を読まれていたのか。

 ルチアが現場を離れると人だかりは徐々に掃けていき(何人かは俺を睨みながら立ち去り)、最後は俺と、途中から来ていたジロウだけになった。

「ジロウもルチアのファンだったのか?」

「っす。羨ましいっすよ! 俺もコンテストやりたいんすけどね」

「え、そうだったのか」

 これは意外だ。てっきりタロウと同じでバトル一筋だと思っていたが。

 そういえば、

「ぬいぐるみとか薬とかきのみとか、バトルの最中には使わないどうぐを買っていたのって」

「そうっす。いつかコンテストに出たときに勝負できるように備えていたっす」

 ジロウ曰く、コンテストパスは基本コンテスト会場の審査員からスカウトされないと貰えないようだ。コンテストへの参加資格だけでも狭き門というのは中々残酷だ。審査でトップアイドルになりたい人も、まずは会場外で審査員の目を射止めなければならないのだから。

 俺は正直、コンテストをやるつもりはない。

 ルチアの言うとおり、技の幅が広がるのは間違いないのだろう。

 だったら。

「ジロウ、これやるよ」

「す?」

「パスの譲渡は禁止されてないんだろ。だからこれを使ってコンテストに出るんだ」

 その夜、タロウを入れた3人で話し合うことになった。

「タロウの兄貴! 俺、ずっとやりたかったコンテストをやりたいっす!」

 ジロウのこの一言から始まった話し合いは、タロウがジロウを一発殴ることで決着した。なんでだよ。

 ジロウとは、カイナシティで別れることになった。

 

 3 10/4 カイナシティ

 

「それでは俺、ジロキチは、ここで失礼するっす。タロウの兄貴、そして短い間でしたがシャモの兄貴! お世話になりゃーっした! あざっした!」

 コンテスト会場の北から次の街に繋がるどうろが伸びているため、俺たちは会場の前で別れることにした。

「ジロウがいなかったら、水族館の襲撃からクスノキ館長を守れなかった。助かった、ありがとう」

「いえ、俺は何の役にも立たなかったっすよ。もっと強ければ」

「いや、ジロウはタロウを説得できたろ。充分強いよ」

「兄貴…!」

 俺はタロウの方を見た。タロウは黙ったままだった。

「タロウの兄貴は、何も言ってくれないんすね」

 しばらくの沈黙の後、タロウは重い口を開いた。

「テッペンを取るまで、お前のコンテストは見に行かない」

「…っ! っす! あざっした!!」

 ジロウは満足し、満面の笑みで深々と頭を下げた。俺とタロウは北のゲートからカイナシティを後にした。

 ジロウは姿が見えなくなるまで頭を下げていた。

 110ばんどうろに入ると、タロウはようやく口を開いた。

「こういうセリフ言ってみたかったんすよね」

「感動を返せ」

 

 4 10/4 110ばんどうろ

 

 タロウは早速ゴーリキーに覚えさせた技を使いたいようで、ポケモンを探していた。

 俺が何人かのトレーナーと戦い、タロウのところへ戻ると、彼は野生のポケモンと戦っていた。

 黒い球根のような見た目で頭から大きな葉が生えた植物ポケモンだった。

 俺は図鑑を開く。電子音声がポケモンの名前を知らせてくれる。

『ナゾノクサ、ざっそうポケモン。タイプ:くさ、どく。栄養たっぷりの土を探して埋まる。昼間土に埋まっているときには足が木の根っこのような形をしているらしい』

 くさタイプだがどくもある。かくとうタイプの攻撃がいまひとつになってしまうため、ゴーリキーは相性が悪いな。

 しかしタロウは不敵な笑みを浮かべていた。何か策があるのだろうか。

 ゴーリキーは大きく息を吸い込み、体を膨らませた。

「ゴーリキー、かえんほうしゃ!」

 タロウは技マシンを多く買い込んでいた。その中の1つが「かえんほうしゃ」だったのだ。

 炎袋という器官を持つほのおタイプのポケモンと比べて威力は下がってしまうが、相性が不利な相手に対して意表を突くことができる。

 予想外の攻撃を受けたナゾノクサは目を回して倒れた。捕獲のチャンスだ。

「タロウ、これ使え!」

 タロウはモンスターボールを一切買ってなかった。俺はタロウにボールを投げ渡した。

「兄貴?」

「ゲットするんだよ。ゴーリキーの仲間を作るんだ!」

「なるほどっす!」

 タロウはボールを構えてナゾノクサに向けて投げた。あまり投げないためか変な投げ方で飛ばされたボールは緩やかな弧を描き、しかしナゾノクサを確実に捉えてぶつかった。

 3回程揺れた後、ボールは動きを止めて星が瞬いた。

 捕獲できたのだ。

「お、お、これ、俺が、ゲットしたっすか?」

「ああ! やったなタロウ!」

 思わず、2人して捕獲にはしゃいでいた。

「俺、初めてっすよ。自分で捕獲したの!」

 ボールを両手で持ち、目を輝かせるタロウは、まるで子供のようだった。

 そこで俺は我に返り急に顔が熱くなった。

 咳払いをして、先輩ぶったことを話しだす。

「んん! タロウ、ゴーリキーを強くするのはバトルの上で大事だ。だけどゴーリキーだけじゃ太刀打ちできない相手も出てくることだってある。そういうときに手持ちの数がものを言う。ナゾノクサも仲間に入れれば、多くのタイプの相手をできるようになる」

 ま、どちらもエスパータイプの技がバツグンだからそこを何とかしないとな。例えばあくタイプのポチエナとか。

「なるほどっす。兄貴! 俺一度ポケモンセンターで回復させてくるっす。そしたらもう一度野生のポケモンとバトルするっす!」

 本当に。

 タロウの向上心はすごいものだ。うかうかしていると、そのうち抜かされるんじゃないだろうか。

 俺とタロウは一度別れて、それぞれポケモンを育てることにした。

 110ばんどうろはサイクリングロードで有名な道路だ。専用の入場ゲートから入った先が、巨大な高架橋にコースが張り巡らせてあり、プロ·アマチュア問わず自転車を走らせ、また、ポケモンバトルをしている。

 高架橋に入るには自転車が必要だ。俺もタロウも自転車を持っていないため、高架下の草むらで戦っている。高架の柱の影からポケモンが飛び出てくるので対応は厄介だが、いい訓練になる。

「スバメ、つばさでうつこうげき!」

 スバメの一撃がナゾノクサを襲う。しかし、ナゾノクサは上から振り下ろされた翼をひらりとかわした。

 そろそろ体力に限界が来ているか? スバメの残り体力を気にしていると、スバメはその身を反対にひねった。振り下ろした翼を、今度は真上に伸ばした。

 口もとを殴られたナゾノクサは吹き飛んできぜつした。

「スバメ、今のは…?」

 俺は図鑑からスバメが覚える技を検索してみる。スバメは野生のポケモンとのバトルでレベルが上昇していた。

「つばめがえし」、それが新しくスバメが習得した技だった。翼で二度攻撃を仕掛けることで確実に命中させる、強力な技だ。

「やったな! スバメ」

 俺はスバメの首もとを指で撫でる。

 しかしスバメの体力はだいぶ消耗させている。それにナゾノクサは結局一撃で倒してしまったが、本当は新しい仲間が欲しいところだった。次はヤミラミを鍛えつつ、新しい戦力を探すとしよう。

 さらに北へ歩くと、今度は緑色の不定形なポケモンと出会った。

『ゴクリン、いぶくろポケモン。タイプ:どく。体のほとんどが胃袋でできているので自分と同じ大きさのものものみ込む。特殊な胃液でなんでも消化するぞ』

 緑色の膨らませた水風船のような体から小さい手に大きな口が備わっており、頭頂部からは黄色のうちわのような触手が生えたフォルムだった。

 ゲット、するか。

「ヤミラミ!」

 ヤミラミは飛び出すと、いきなり「かたいいし」を投げつけた。

 行儀が悪いから止めなさい。対人戦でやったら普通にルール違反だろ、これ。

「説教はおいおいするとして、みだれひっかき!」

 ヤミラミはゴクリンの顔に爪を何度も突き立てた。爪は深々と突き刺さり、その顔が切り裂かれた。

「待て待て待てやりすぎだ!」

 なんて猟奇的な絵面にしてんだこの宝石ポケモンは! ヤミラミは原型を留めてないくらいぐちゃぐちゃにしてしまった。

 頭を抱えていると、ゴクリンの体に異変が起きた。

 裂けてぐちゃぐちゃになったゴクリンの顔が傷口を塞ぐように再生していったのだ。

 呆気に取られているところへ、ゴクリンは口を大きく開けて黄土色の液体を吐きかけてきた。ヘドロこうげきだ。

「ヤミラミ、かわせ!」

 俺とヤミラミは左右に飛び、猛毒の液体を避ける。

 面白いポケモンだ。ゲットしたいな。ただ切る技が通用しないようだから何か考えるべきだな。

 ラナに交換するのもありだが、ここは。

「ヤミラミ、まだあるんだろ? 投石してやれ!」

 ヤミラミは一度目を見張った(目の宝石周りが大きくなったので多分見張ったのだろう)が、すぐに口の端を上げて笑みを浮かべた。

 かたいいしを次々ゴクリンへぶつけていく。ゴクリンはどくの塊を吐いて応戦するが、そこに隙ができる。俺はそこを突いてボールを投げつけた。

 ボールはゴクリンを収納して地面に落ちる。抵抗の揺れが起きるが、やがて星が瞬いてゲットできたことを示した。

 落ちたボールを拾い、ボールラックに入れようとしたが、そこで気がついた。

 ラックのスペースが足りなかったのだ。

 参ったな。そういえば、常に持ち歩ける手持ちのポケモンは6匹までだった。夢中で気がつかなかった。

「さて、と。どうするものかね」

「おーい!」

 誰をどうしようか、リュックにひとまず入れようか、ポケットに入れておこうか試しているところに、懐かしい声が聞こえた。

 赤いリボンが特徴的な、ミシロタウンのお隣に住んでいる女の子。

「や、シャモくん!」

「ハルカちゃん。久しぶりだね」

 110ばんどうろの橋の下。そこで、俺たちは再会した。

 

 

 

 レポート

10月1日 110ばんどうろ

 

 

手持ち

 

LV24  キルリア オス

 

LV22  ヌマクロー オス

 

LV20  アゲハント メス

 

LV21  スバメ メス

 

LV27  メノクラゲ メス

 

LV21  ヤミラミ オス

 

(LV17  ゴクリン オス)

 

図鑑

36匹(新:ナゾノクサ、ゴクリン)




中学版との違い
・アオギリの勧誘(海のような懐を見せたかったのよ!)
・ジロウ離脱(僕の中では半年以上一緒でしたが皆さんの中では感動もくそもねぇな! ちなみに当初からコンテスト堕ちは頭にありました。タロウはバトル一筋だから、安心して!)
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