ポケットモンスター ホウエン地方編   作:とーさかしゅん

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ハルカと初めてのバトルをすることになったシャモ。パートナーになったミズゴロウが使える技を知るために101番道路で特訓していると…。


第二話 vsキモリ 捕獲、バトル、頬の傷

 

 1

 

 ハルカちゃんと戦うのは次の街、コトキタウンだ。俺は101番道路にいた。

 ポケモン図鑑を開く。これは多くの博士が研究のために作成したツールで、野生のポケモンを登録していくことで、生態系や分布を解明していくのだ。

 博士にとっての図鑑とは、ポケモンの生態系を知る手がかりとなり、俺のようなポケモントレーナーにとっての図鑑とは、バトルの時に相手の情報を知る役目を担う。互いにウィンウィンになるから、博士は「選び抜いた」「才能がある」人を「図鑑所有者」として協力を要請し、トレーナーも応じるのだ。

『ミズゴロウ、ぬまうおポケモン。タイプ:みず。頭のひれで水の流れを感じて周りの様子を知る。岩を持ち上げる力持ち』

『ラルトス、きもちポケモン。タイプ:エスパー、フェアリー。人の感情を察知する力を持ちトレーナーが明るい気分のときには一緒になって喜ぶポケモンだ』

 二匹の情報が明らかになる。

 今はハルカとのバトルだ。相手を知る前に、まず自分のポケモン…特にミズゴロウ…について知らなければならない。

 俺はミズゴロウをボールから繰り出して、試しに指示を出した。

「ミズゴロウ、みずでっぽうだ」

「ミズッ!」

 ミズゴロウは口から勢いよく水を吹き出して、草むらにかけた。すると、中からもそりとポケモンが這い出てきた。赤く図体が長いポケモンで、身体中に柔らかそうなトゲが生えている。

 図鑑をポケモンに向ける。

『ケムッソ、いもむしポケモン。タイプ:むし。森や草むらに生息。敵に襲われたときは、お尻の毒のトゲで抵抗する』

 むしタイプの他にどくタイプがあると言ってもいいんじゃないか?

 しかし、何にせよ、このタイミングで野生のポケモンが出てきてくれたのは僥倖だった。みずでっぽうは対象がいなくても試すことができるが、次の技は撃つべき相手がいる。

「ミズゴロウ、ケムッソにたいあたりだ!」

「ミズーッ!」

 ミズゴロウがその体を相手の顔にぶつけると、ケムッソは目を回して倒れた。

 その隙を見逃さずに、俺はモンスターボールを投げつけた。

 ボムッ、という音とともにケムッソの体は拳程度の大きさのボールに収まった。何回か抵抗するような揺れの後、小さな星が瞬いて動かなくなった。

 ケムッソをゲットしたのだ。

「ホウエン地方で初めて捕まえたのはケムッソか。どんなポケモンに進化するんだろうな」

 むしポケモンは進化が早い。俺はその姿に期待しつつ、コトキタウンへと向かった。

 

 101番道路を抜けて、コトキタウンへ入った少年を見ていた影がひとついた。

 その男もまた、次の街へ向けて歩き出す。

 

 2

 

「すごい、もうポケモンを捕まえたんだ! あ、でもこれじゃあ教えることないじゃん。がっくし…」

 ハルカちゃんは喜んだり落ち込んだりと表情がころころ変わる女の子だった。ついでに言うと、自分の感情を口にするタイプだった。

 俺とハルカちゃんはコトキタウンで落ち合い、ポケモンセンターやフレンドリィショップの使い方を教えてもらった。

 ポケモンセンターはポケモンを無料で預けて回復してくれる施設で、街によってはトレーナーも宿泊できるところもある。俺はミズゴロウとケムッソを預けて、ラナだけを手持ちに入れた状態でフレンドリィショップへ行った。

 フレンドリィショップはポケモントレーナーにとっての必需品を揃えており、俺たちにとって無くてはならない施設だ。フレンドリィショップは小さな街には無い場合もあるので、買うべき場所でたくさん買っておかないといけない。ここで俺は、きずぐすりとモンスターボールをそれぞれ5個ずつ購入した。

 フレンドリィショップを出たタイミングで図鑑の通知が鳴り、ポケモンセンターに預けていたポケモンが回復したことを知らせてくれた。

「お預かりしたポケモンたちは、みんな元気になりましたよ」

 またのお越しをお待ちしております、と定型文をいただいて俺は外で待っているハルカちゃんのところへ向かった。

(医療系の人がまた来てくださいってどうなんだろう?)

 いや、ポケモントレーナーにとってバトルによる怪我は日常茶飯事だから、また来るんだろうが。

 俺とハルカちゃんは街の北に進み、103番道路へ進んだ。もっともそこは、途中で川に二断されたことで道というより草むらのある広場のようであった。

「じゃあ、この辺りでやろうか!」

 ハルカちゃんは、小さな水溜まりの前でボールを構えた。俺はそれに応じるように自分のボール…ミズゴロウが入ったそれを構えた。

「キモリ、ゴー!」

「ゆけっ、ミズゴロウ!」

 ハルカちゃんのポケモンはキモリ。たしかオダマキ博士が用意していた3匹のポケモンの一角。赤い腹と巨大な緑の尻尾が特徴的な、二足で立つトカゲだ。

『キモリ、もりトカゲポケモン。タイプ:くさ。足の 裏には小さなトゲがたくさんついているので壁や天井を歩くことができる』

 かざした図鑑がキモリの情報を伝える。

 ミズゴロウはみずタイプ。みずタイプは優秀なタイプの1つで、弱点がでんきとくさの2つしか存在しない。

(よりにもよってくさを弾くか)

「攻撃しないならこっちから行くよ。キモリ、にらみつける!」

「ミ⁉️」

 ビカリとキモリがミズゴロウを睨む。にらみつけるは相手を睨むことで怯ませ、あるいは驚かすことで防御を下げる変化技だ。

 今攻撃されるのはまずい。しかしハルカちゃんは止まらない。すぐに次の指示を出す。

「はたく攻撃!」

「よけろミズゴロウ!」

 ミズゴロウは四本脚で駆け出すが、しかしすぐに二足で駆けるキモリに追い付かれ、大きな尻尾で叩かれる。ミズゴロウは元いた位置まで飛ばされる。

「動けないところにすいとる攻撃!」

 続いて遠隔攻撃のすいとる。淡い緑の光がミズゴロウの周辺に漂ったかと思うと、いきなりミズゴロウの体が大きく跳ねた。対象の体力をすいとる攻撃技。みずタイプのミズゴロウに効果は抜群だ。

 防御が下がったところに立て続けに攻撃を受けて、ミズゴロウは気絶したかのように思えた。

 しかし、ミズゴロウはなおも立ち上がった。

「まだ動けるの⁉️」

「よくやった、ミズゴロウ」

 キモリは素早さが高く、ここにはいないアチャモは攻撃力が高い。

 そしてミズゴロウは防御に長けている。

「なきごえ!」

「ゴローッ!」

 これは攻撃力を下げる技だが、今回はそれ以外に、キモリを怯ませるという意味もある。

「たいあたりだ!」

 キモリのお腹に向けて、ミズゴロウは一心不乱に飛び込んだ。不意を突かれたキモリは大きく跳ね飛ばされた。

「キモリ、はたく!」

「みずでっぽうで弾きとばせ!」

 キモリが尻尾を振って飛びかかってきたのを、ミズゴロウは尻尾にみずでっぽうを当てて防ぐ。キモリはまだ倒れない。空中で体制を戻したキモリは、ミズゴロウに狙いを定める。

「すいとる!」

 遠隔攻撃で効果が抜群の一撃をもらえば、いくらミズゴロウでも耐えられないだろう。しかしキモリの攻撃に弱点があるとすれば、

「ミズゴロウ、一直線にたいあたりだ!」

 ミズゴロウはキモリが着地する場所に向けて走り出す。キモリの攻撃は先程まで対象がいたところで光って、しかし何も起こらなかった。外したのだ。

「まずい、キモリっ、はたく!」

 キモリのすいとるは、狙った一点だけに命中させる範囲の狭い技だった。だから狙った場所から外れればかわしやすくなるというわけだ。

 そしてハルカちゃんのキモリは、どうやら技に集中していたようで、指示に一歩遅れて動いた。

 既に攻撃モーションに入っていたミズゴロウには間に合わない。

「ミズゴッ!」

 キモリは、顎をぶつける形でたいあたりを食らって、目を回した。

「うわぁあ、負けちゃった。シャモ君のミズゴロウタフだね! シャモ君も指示が的確で、反応できなかったよぉ」

 ハルカちゃんはオーバーに悔しがる仕草をした。ハルカちゃんは俺をそう評価するが、

「ハルカちゃんも、最初の間髪入れない連続攻撃はキモリと相性が良くて大変だったよ」

「ホント! いっぱい練習したんだよ。にらみつけるはたくすいとる、にらみつけるはたくすいとる、にらみつけるはたくすいとる! ってね」

 あれは状況に応じて出していた訳じゃなかったのか…。だとしたら、あの早口言葉は状況がさっきみたいに動くと予想して用意していたのか。だとしたら恐ろしいな。

「ポケモンの捕まえ方はもう分かるみたいだし、私が教えることは無いね。よし、研究所に戻ろう! おー!」

「お、おー!」

 彼女の明るい声に、俺もつい釣られてしまった。

 研究所に向かう途中で、俺とハルカちゃんは色々な話をした。

 好きな食べ物、ポケモン、時間帯、フィールドワークで起きた面白かったこと、ジョウト地方の名所、等々。

 最後にハルカちゃんは聞いてきた。

「その、さ。答えたくないならいいんだけど」

「ん?」

 その視線と躊躇う感じで、何となく察せられた。

「左頬、何があったの?」

 ああ、これ。と俺は左頬にある、中指の長さに匹敵する切り傷をさする。痕になっているだけで痛みは無い古傷だ。

「これは、n年前に崖から落ちたときについたんだよ」

「崖⁉️」

「よく覚えていないんだけどね。もう痛くないから、気にならないよ」

「そ、そうなんだ。…触ってもいい?」

「だめ」

 そんなの恥ずかしくて嫌だ。

「そ、うだよね。ごめんね、たはは」

 そう言うハルカちゃんはどこか申し訳なさそうな様子だった。そんなつもりじゃないんだけどね。

 ハルカちゃんは研究所に戻るまで、俺の頬を気にしながら会話した。

 

 3

 

 研究所でバトルの話をしたあと、俺は自宅に帰った。母さんが晩御飯を用意してくれているからだ。

「今日はシャモの好きな肉じゃがよ」

 肉じゃが。どうやら、俺の好物らしい。

 じゃがいも、にんじん、玉ねぎ、こんにゃく…順番に食べていく。美味い。母さんの料理は美味い。だけど、これは俺の好物なのだと言い聞かせながら食べる肉じゃがは、どこか味気ない。

 引っ越して初めての風呂を済まして、俺は二階の自室に入った。ベッドに体を投げて、物思いに耽る。

 俺には記憶がない。5年より前の記憶がすっかり抜け落ちている。旅先で崖から落ちたせいだと父さんから言われているが、だとしたら俺の左頬の切り傷はどう説明したらいいのだ。ラナは俺が初めから持っていたポケモンだが、父さんは知らなかったし、ラナが俺のポケモンだったのか確証が得られない。持ち主が誰もいない上、何故か俺に懐いていたから、そのまま俺のポケモンになったのだ。故郷のジョウトで記憶を取り戻そうとしたが叶わず、既にホウエンでジムリーダーとして暮らしていた父さんに呼ばれ、新天地に引っ越すことになった。

 ジョウトにいたときは誰が知り合いで、友人なのかが一切思い出せなかったことが不安でならなかったから、誰もが知り合いでないホウエン地方に越してきたのは嬉しかった。

 記憶が無いのは不安だ。だけど、俺は思い出したいのだろうか。

 今の俺はとても楽しい。期待に胸を膨らませている。

 でももし記憶が戻ったら、これまでの俺はどこかへいってしまわないだろうか? 忘れてしまわないだろうか?

 気がつけば眠りに落ちていた。また、夢の中で何かに追い詰められ、切りつけられ、崖から落ちた。

 

 4

 

 翌朝、俺は母さんに見送られてミシロタウンを発った。

「疲れたらいつでも帰ってくるのよ!」

「わかったよ母さん。いってきます!」

 101番道路に入り、コトキタウンへ向かう。

 その途中でポケモンに襲われた。黒い毛並みに覆われた、子犬のようなポケモン。昨日博士を襲っていたやつと同じ種類か。

 ミズゴロウのボールを投げようとすると、ラナが内側からごとごととボールを揺らした。

「どうしたんだ?」

 俺はラナを繰り出して、訳を聞いた。

「あのポケモン、昨日博士を追いかけてた子です」

「え?」

「どうやら僕にリベンジしたいようで。いいですか?」

 ラナがそう言うならいかせてやるべきだ。相手がどんなタイプだろうと、俺と少なくともn年は一緒にいたラナなら大丈夫だ。

『ポチエナ、かみつきポケモン。タイプ:あく。動く ものを 見つけると すぐに かみつく。獲物がヘトヘトになるまで追いかけ回すが反撃されると尻ごみすることもある』

 ラナ、ラルトスはエスパータイプだ。あくタイプとは相性が悪い。それでもなんとかやってみよう。

 

 

レポート

 

九月一日 101番道路

 

 

 

手持ち

 

ラルトス   LV6

 

ミズゴロウ  LV7

 

ケムッソ   LV3

 




一年ぶり!!!?これからは投稿頻度を上げて頑張らねば(自らへの戒め)。


訂正(2022/07/10ナットレイの日):3記憶喪失の設定を時系列整理中のn年前のままにしてあった。→記憶を失ったのは5年前。
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