ポケットモンスター ホウエン地方編   作:とーさかしゅん

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注:R15描写あり

お疲れ様です。いつもありがとうございます。
テッセン戦!言いづらい!そしてこんな明るい雰囲気で語れる回でもない!
別に元々好きではなかったジムリーダーに意外に焦点が当たりそうになると驚きます。別に好きじゃないんだからね!ホウエンで一番好きなのはナギさんです。がっつり書く予定ですよ!
さて、ストックも少なくなってきた第21話、どうぞお楽しみくださいませ!


第21話 vsライボルト そして彼女は

 

 1 10/5 キンセツシティ

 

 試合終了の宣言を聞き、マコトはアサナンを力いっぱい抱きしめた。

「ありがとう! アサナン、ありがとう…!」

 勝ったチームも負けたチームも、全員体から力が抜けていて、俺はおかしな笑顔になっていただろう。

 ジョージはしばらく倒れたラクライを見下ろしていたが、やがてボールに戻して、

「お疲れ」

 と声をかけていた。彼はボールをポケットに突っ込むと、マコトの方へ歩く。

「でんき技で負けるとは思わなかった。認めてやる。非雷組とか言って悪かった」

 悔しそうに歯を食い縛り、全然納得していないような顔だったが、ジョージはそれでもマコトに対して謝罪していた。マコトは返事の代わりに握手を返した。

 ハルカちゃんはユウキに威張っており、ユウキに軽くいなされていた。

 トシマサはただ一言、

「よくやった」

 と残して、さっさと部屋を出ていった。上から目線の言葉で腹が立ったが、同時に少し嬉しいと思ってしまう自分にも腹が立った。

 リョウタは散々捨て台詞を吐いて、何故かタロウと一緒にジムを後にした。

 残るミツルくんはというと、

「負けてしまいました」

 肩を落としていた。

 かける言葉が見つからない。俺が適当に賭けをするようなことを提案して、チームは別れた上ミツルくんを倒してしまったのだから。

 俺が言葉を探していると、ミツルくんの方から話しかけてきた。

「僕、シダケに戻ります」

「そう、か」

「でも絶対に旅をしようと思います。今よりもっと仲間を増やして、もっと強くなって、いつかシャモさんともう一度戦います」

 ミツルくんは肩からかけたカバンを握る手に力を込める。

 彼はとっくに、このジムでの勝ち負けの先を見ていた。

「だから、その、僕と…」

「?」

「ライ…ライ…」

「ライ?」

「な、なんでもないです!」

 言おうとした単語を結局言わず、ミツルくんは逃げ出すように走った。

 俺はそんなミツルくんに『その単語』を投げかける。

「ライバルになろう!」

 背中の小さな少年は、足を止めて振り向いた。

「はいっ!」

 ミツルくん、彼は必ずもう一度俺の前に立つ。

 だけど、その時も俺は絶対に勝つんだ。

 その後、ジム戦を行う順番をテッセンさんに伝えられた俺はオオスバメをポケモンセンターに預けてから眠った。

 

 2 10/6 キンセツシティ

 

 そして昼になった。

 既にトシマサはテッセンさんに勝ち、街を発ったという。次が俺でハルカちゃんは3番目だ。

 ジムに入ると、すぐにフィールドへ案内された。ジムチャレンジのときとは別の部屋で、天井の高い、障害物が何もない土のフィールドだった。

 チャレンジャーサイドの立ち位置に来てしばらくするとテッセンさんが奥の部屋からやって来た。

「ワッハッハ! 昨日は面白い試合をありがとう! 次はワシがお主をひねり潰してくれよう!」

「負けませんよ、テッセンさん」

「意気込みや良し! ワシもまだまだ現役、負ける気はせんぞ!」

 両者立ち位置につくと、審判がルールを説明を始める。

「使用ポケモンは両者3匹、どちらかのポケモンが全て戦闘不能になるか降参した時点で試合終了となります! それでは両者、最初のポケモンを出してください!」

「ヤミラミ!」

「ビリリダマ!」

 テッセンさんが繰り出したのは、少し大ぶりなモンスターボール…に見える、球体のポケモンだ。

『ビリリダマ、ボールポケモン。タイプ:でんき。発電所などに現れる。モンスターボールと間違えて触ってしびれる人が多い』

 まあ実際に並べてこいつを触るヤツはいないだろうが、道端に落ちてたらどうだろうな。

 ヤミラミは地面を跳ねてやる気満々な様子をアピールしている。心強い限りだ。

「それでは、試合開始!」

「ビリリダマ、エレキボールじゃあ!」

 開始早々、テッセンさんが吠えると、ビリリダマは自分と同じくらいの大きさの、球体の雷を生成し投げつけてきた。

「ヤミラミ、おどろかす!」

 ヤミラミはエレキボールに正面から立ち向かい、直前で跳び跳ねることで技を避ける。そして自身の影を飛ばし、影でビリリダマを殴る。

「もう一度おどろかすこうげきだ!」

「ワッハー! スパーク!」

 ビリリダマに飛び付こうとしたヤミラミだったが、電気を纏ったたいあたりを受けて同じ勢いで後ろへ飛んでいった。

「ちっ、ヤミラミ!」

 ヤミラミは飛ばされながらもピースサインで無事を知らせてくれた。そのまま綺麗に着地すると、再びビリリダマに立ち向かう。

「いいぞ! そのままひっかくこうげき!」

「スパークで追い返せ!」

 ビリリダマの方が速い。光の球体となったビリリダマが一直線に獲物を倒しに来た。

「かわせ!」

 闘牛士のように、ギリギリまで引き付けてから避ける。おかげでビリリダマは大きく円を描いてヤミラミを追う羽目になる。

 距離ができればスパークまで少しの間が空く。

「かげうち!」

 今度はヤミラミが先に動き出す。影を投げ飛ばし、ビリリダマの背後からヤミラミの影がなぐりかかる。

 素早いビリリダマはそれさえ避ける。ヤミラミの影が空を切り、ビリリダマが再び突っ込んでくる。

 しかしヤミラミの影は戻ってこなかった。それどころか、投げ出した影はさらに伸びてビリリダマに追い付くだけでなく、巨大化し、真っ黒な額でビリリダマを思いきり頭突いた。

 かげうちとは違うこうげきだ。俺は図鑑でヤミラミのページを見てみる。

 おどろかすでもない、かげうちでもない、影を使うゴーストタイプの技は、

「ナイトヘッド!」

 ヤミラミは命令と勘違いしたか、影を体に戻してから再度影を正面へ投げ飛ばし、その巨大な虚像の頭で球体を殴った。

 前後から連続で攻撃を受けたビリリダマは怯んでしまい、上手く攻撃が出せなかった。

「このヤミラミ、やりおるのお!」

 テッセンさんは感心しているが俺も驚かされている。ヤミラミの新技は、確実に大きな戦力になる。

「ヤミラミ、ナイトヘッドだ!」

 ヤミラミは調子に乗って攻め込む。だがそれを簡単に許さないのがジムリーダーだ。

「スピードスター!」

 ゴーストタイプには効果が無い技を意味なく使うわけがない!

 スピードスターはヤミラミの体を通過して背後の壁に突き刺さった。ヤミラミにダメージは無いが、ビリリダマは今の攻撃に何の意味があるのか。

「チャージビーム!」

 直線的に走るヤミラミに向けて、一直線の電撃光線が放たれた。

 ヤミラミの走るコースを絞り、チャージビームを覚らせないための攻撃だったようだ。

 直撃する。それでもヤミラミは倒れない。電撃を受け止めながら影を伸ばし、虚像を生み出しビリリダマを押し潰した。

 やがて電撃が途切れ、それからヤミラミは影を取り込んだ。

「ビリリダマ、戦闘不能!」

 チャージビームは、チャージしてビームという意味ではなくチャージするビーム。撃つ度に自身の特殊技の威力を高める技で初弾はかなり弱い威力だ。

 そのためヤミラミは長い間受けていたが、意外と体力が残っているようで、へらへらしていた。

「やるのうチャレンジャー! じゃがそなヤミラミの快進撃もここまでじゃよ、レアコイル!」

 続いて繰り出したのは一つ目の磁石が3体集合したようなフォルムのポケモン。俺も見覚えがある、コイルの進化系だ。

『レアコイル、じしゃくポケモン。タイプ:でんき、はがね。3つのコイルは強い磁力で結びついている。そばに寄ると強い耳鳴りに襲われる』

 ヌマクローがいればどれほど心強いか。俺はその思いを、頭を振って打ち消した。ヤミラミは成長している。レアコイルとの相性も悪くない。

 俺はこのままヤミラミで戦うことにした。

「ナイトヘッド!」

「レアコイル、10まんボルトじゃ!」

 3匹のコイルが分裂し、集合する。その勢いが凄まじい電気を発生させ、ヤミラミに襲いかかる。

 ガカァ! という音を轟かせてヤミラミの体を貫く一撃は、スパークの比じゃなかった。

 しかしヤミラミも負けていない。電撃を受けながらも影はレアコイルを補足し、しっかり攻撃を当てていた。

「詰めるぞ、かげうち!」

 ヤミラミがよろめく体にむち打ち、レアコイルの背後に回る。黒い腕で頑丈な体を切りつける。

 決め手にはならない。だが爪痕は遺させてもらう。

「スパーク!」

「かげうち!」

 ヤミラミが至近距離でスパークを受けてしまう。まひ状態になりかげうちが放てなかった。

「ここまでのようじゃの! 10まんボルト!」

「頼むヤミラミ、ナイトヘッドだ!」

 ヤミラミはニタリと笑うと、やけくそ気味に影を爆発させた。今までよりも大きな虚像は、ヤミラミ自身とレアコイルを丸ごと包み込み、10まんボルトの光は闇に呑み込まれた。

 影が薄れ、中からは目を回したレアコイルが出てきた。

「レアコイル、戦闘不能!」

「な、なんと!」

 ヤミラミは薄ら笑いを浮かべながら、脱力しきっていた。

 よく見ると既に気絶しており、やがてふらりと後ろへ倒れると、審判が続けて宣言した。

「ヤミラミ、戦闘不能!」

 よくやってくれた。本当に。

 こっちは残り2匹。テッセンさんはラスト。数の差で押し切ってみせる。

「本当にやってくれたわい。じゃがまだ勝負はこれからよ! ライボルト!」

「頼むぜゴクリン!」

 俺はゴクリンを、テッセンさんは青い体に稲妻のような金色のたてがみが特徴の4足歩行のポケモンを繰り出した。

『ライボルト、ほうでんポケモン。タイプ:でんき。たてがみからいつも放電しているため火花で山火事を起してしまうことも。戦いになると雷雲をつくりだす』

 大きく逆立った金のたてがみは、さぞかし多くの静電気が含まれているのだろう。レアコイルは機械的なでんき技が強力だったが、こっちはこっちで、力強い一撃が飛んでくるはずだ。

 ゴクリンは斬撃に対しての耐性があるが、電気はさすがに厳しい。ここは、遠距離からどくタイプの技で攻めるべきだ。

「ゴクリン、ヘドロこうげき!」

 ゴクリンは大きな口からヘドロの塊を吐き飛ばす。ライボルトはフィールドを縦横無尽に駆けてこれを避ける。

「どんどん毒を出すんだ、ゴクリン」

「厄介な技は避けるに限る! ライボルト、10まんボルト!」

 たてがみから電撃が放たれる。それはヘドロと相殺し爆発する。煙の下をライボルトは駆け抜けて、一気にゴクリンのところへやって来た。

「どくガス!」

 続いてゴクリンは、口の閉じた隙間から黒い煙を吐き出した。どくガスは相手をどく状態にする技だ。

 対するテッセンさんは、

「ほのおのキバ!」

 ライボルトを突っ込ませて、どくガスに噛みつかせた。

 ライボルトの口から火炎が吹き出し、どくガスに包まれたゴクリンに引火する。

 どくの空気は大爆発を引き起こし、ゴクリンはあっけなく飛ばされてしまった。

「ゴクリン!」

「まだ耐えているようじゃのう!」

 空中を飛ばされているゴクリンは、でんきタイプのライボルトの、格好の餌だ。

「10まんボルト!」

 正確に撃ち抜かれたゴクリンは地面へ撃墜され、目を回していた。

「ゴクリン、戦闘不能!」

 手も足も出なかった。このライボルト、レアコイルよりもはるかに強い。

「すまないゴクリン。活躍させられなかった」

 俺も次で最後の1匹、手持ちは残り2匹。しかも、そのどちらもでんきが弱点のポケモンだ。

 

 3 10/5 キンセツシティ

 

 ジム戦前夜、俺たちは試合に向けて作戦を練っていた。

 とはいえ、テッセンさんのポケモンは何一つわからないため対策なんてほとんどできない。

「問題は俺の手持ちポケモンだ。でんきタイプに対して強く出られるポケモンがいないんだ」

 ヌマクロー、オオスバメはポケモンセンターに預けており、ラナはその付き添いを希望している。現状俺がジムで使えるのは4匹で、その内2匹がでんき弱点だ。

「アゲハントとメノクラゲ、どちらか、あるいはどちらも試合に出なきゃいけないかもしれないんだ」

 俺の言葉に、一時的に戻っていたラナが続く。

「ソーちゃんは最終進化としてのポテンシャルがありますが、でんきを受けるにはレベルが不安。一方でクラ姉さんはレベルは僕らの中で一番ですが、進化していないところが不安、というわけですね」

「そうなんだよな。どちらかを切り札にしなきゃならないんだが、ラナはどう思う?」

「僕はクラ姉さんが良いかと。進化していないとはいえレベルは高いので、もしかしたら進化できるという可能性もあります」

 俺は風呂桶に浸っているメノクラゲを見た。アゲハントとこいつのどちらかを、きつい戦いに合わせないといけないのは、正直辛い。

「俺としちゃ、ここで負けても次に繋いで、来年出ればいいわけだし。そこまで無茶をさせる必要はないよな」

「ダメですよ」

 珍しくラナが反抗した。

「スーさんは明日勝ってほしいという一心でジムチャレンジを戦い抜いたんですから。トレーナーはポケモンの想いを汲むべきです」

「そういうもんか」

 そういうお前はどう思ってるんだ? 俺は声に出さなかったが、ラナは少し顔をそらした。心を読んだようだ。

 すこし気まずい時間が流れたが、俺はこれを破るためにも大きな声で宣言することにした。

「よし! 明日はメノクラゲ。お前たちと勝つことにしよう! なあに、ヤミラミ辺りが調子乗って全部倒してしまえばいいだけのことよ!」

 これが駄目だった。

 俺の無責任な言葉が、この場にいた全員を縛り付けてしまった。

 そして、俺はそれに気がつかない。

 気づいたときにはもう、手遅れだった。

 

 4 10/6 キンセツシティ

 

 俺はメノクラゲを繰り出し、最後の戦いに挑んだ。

「メノクラゲ、ちょうおんぱ!」

「かわして10まんボルトじゃあ!」

「みずのはどう! 右だ!」

 ライボルトが右に逃げる。それを見てみずのはどうの向きを指示した。ちょうおんぱを避けたライボルトは、避けた先で攻撃に当たった。

 だが同時に10まんボルトも飛んできている。メノクラゲは技に使っていない触手を使って地面を蹴った。電撃はメノクラゲの直前に落ち、僅かにだが当たってしまう。

「どくばり!」

「かみなりのキバ!」

 ライボルトは、今度は避けなかった。低威力のどくばりを受けたのを気に留めずメノクラゲに突っ込む。メノクラゲは避けられなかった。

 手痛い一撃、だがメノクラゲもまた負けていない。

「まきつく!」

 噛みつかれたそばから触手をライボルトの身体中に巻き付けて締め上げる。軽く刺さっていただけのどくばりを深々と挿し込み、ライボルトをどく状態にした。

 さらにまきつくによる締め付けダメージがライボルトに襲いかかる。順調に攻撃できている。

「ほうでん!」

 ライボルトが体の中心から電気を轟かせた。巻き付いていたメノクラゲは当然、全身に大ダメージを受けて触手を手放してしまった。

 直接攻撃に出たのは噛みつかれたからであって、本来は接触なんてしたくなかった。至近距離からの電撃は本当にまずい。

「メノクラゲ!」

「離してやれ。でんこうせっか!」

 ようやくかみなりのキバから解放されたメノクラゲは宙に放り出され、でんこうせっかの一撃で地面に叩きつけられた。

「大丈夫か!」

 メノクラゲは返事の代わりに、触手で地面を殴った。

 何度も何度も殴りつけて、砂を掴む様は、まるで悔しがっているようだった。

 メノクラゲは、まだ諦めていない。

「メノクラゲ、バブルこうせん!」

 地面に向けて大量の泡を吐き身を包む。ライボルトは警戒して動かない。

 そして泡のなかから、目映い光が溢れだした。

 土壇場でのレベルアップ。それがメノクラゲを新しい姿へと変える。

『ドククラゲ、クラゲポケモン。タイプ:みず、どく。頭の赤い玉が光るとき激しい超音波があたりに発射される。そのとき海面が激しく波打つという』

 ドククラゲは、メノクラゲに比べて触手が増えて、大きく成長した姿をしていた。

 ジム戦は未だに大ピンチ。だが、まだ諦めない。

「ドククラゲ、ようかいえき!」

 ドククラゲは数十本の触手を束ね砲台のように構える。そして大量のようかいえきを、まるでみずタイプ最強格の技ハイドロポンプのように放った。

「毎度毎度どく技ばかりじゃのう! でんこうせっか!」

「ドククラゲ、みずのはどう!」

「避けろ! 10まんボルト!」

 互いに避けきれない。

 ライボルトは、10まんボルトを放った直後にドククラゲのみずのはどうが当たり、後ろへ吹っ飛ばされ、ドククラゲは10まんボルトを正面から受けてしまう。

 蓄積するダメージを物ともせず、ドククラゲは触手を使って地面を這ってライボルトへ迫る。

「やる気出しすぎだろ…。バブルこうせん!」

「接近するとは舐められたものじゃな、かみなりのキバ!」

 両者激突。

 激しい稲光が周囲の地面を焦がし、嫌な匂いが発せられる。

「どくづき!」

「噛みついたまま10まんボルト!」

 ドククラゲが噛みつくライボルトの顎を無数の触手で殴りつけて離れる。しかし、下から放たれた10まんボルトは上へ突き抜けた後、再びドククラゲに降り注ぐ。

「ドククラゲ!」

「ほのおのキバ!」

「動いてくれッみずのはどう!」

 焼けたキバを開いて迫るライボルトの口の中へ、直接みずのはどうを叩き込む。

「ほうでん!」

 水を噛み潰して睨み付けるライボルトは、身体中にから電気を解き放ちドククラゲを攻撃した。

 バシュッ! と嫌な音と共に赤黒い液体が吹き出て、両者の地面に滴った。

 ドククラゲのものだ。

「ドククラゲ! まずいこれは」

 俺は自分がバトルに没入し過ぎてドククラゲのことを考えられなくなっていたことに気づいた。

 このままではドククラゲの体が壊れる。そう思い、慌てて試合を止めようとするが、

「(やめて頂戴!!!!)」

 知らない女性の声。違う。声なんて聞こえない。

 これは、

「ラナの、サイコパワーッッ!?」

「(私は、まだ、負けてない)」

 女性の声とドククラゲの呼吸が重なっていた。

 つまり、この声の主はドククラゲということか。

 ラナを介して、ドククラゲの感情が頭に流れているのだ。

 信じられない現象だが、だとしてもこれ以上ドククラゲを戦わせるわけにはいかない。

「戻れ、ドククラゲ!」

 ドククラゲにボールをかざすが、

「(まだ、戦える!)」

 ドククラゲは無理やり体を動かしてボールに戻るのを拒んだ。

「(私は、あんたをリーグに連れていく。どれだけ多くの仲間が傷付いても、あんたを必ず勝たせる)」

 うやむやにした昨日の会話。

 あれはラナではなく、ドククラゲの意見だったのか。俺は適当に返して、その場を収めたつもりでいたが、ドククラゲの、彼女のなかでは何も収まっていなかった。

「ドククラゲ、でも、お前」

「(今のあんたじゃリーグには辿り着けない。今年は、じゃなくて来年以降も。行くなら今年、行くなら何を切り捨てても行くの!)」

 俺はポケモンの言葉を汲んでやりたい。

 だけど、それは、ドククラゲの命の保障が取れない、最悪の選択肢を取ることになる。

「シャモ。試合を取り止めようかの」

 テッセンさんがそう言ってくれた。

 ぐるぐると嫌なことを繰り返し考えてしまう。

 俺は、責任が取れないことを恐れているのか。

「(あんたが何も言わなくても、私は動くわ)」

「まて…ドククラゲ!」

「(ああああああああああ!!)」

 ドククラゲは指示を無視してバブルこうせんを放った。ライボルトは慌てて飛び退きこれをかわす。

「まだやるようじゃのう。だったらこれで終わらせてやろう! ライボルト、10まんボルト!」

「ちっくしょおおおおおおおおおおお! みずのはどう!」

 10まんボルトとみずのはどうが交差し、両ポケモンに命中する。

 まだ、耐える。

 トレーナーである俺が、もう倒れてくれなんて思ってしまっている。

「ほうでん!」

「ドククラゲ、もういい!」

「(まだよ!)」

 またもボールを拒絶したドククラゲは、ライボルトのほうでんを正面から受け止めた。

 ドククラゲの目の前には、エネルギー体の壁ができていた。ドククラゲの技か? ひかりのかべ、リフレクター、いや、そんな技は覚えていない。

「(お返しするわよ…)」

 ドククラゲの声がする。何をしようとしている。一体何の技だ、あれは。

「ミラーコートか!」

 テッセンさんが驚きの声をあげて、ライボルトをドククラゲから離す。

「(逃がさ、ないわよぉ…!)」

 ほうでんのエネルギーを貯めた薄い壁。ドククラゲはそこへ自身の体を突っ込ませた。

「ばかものッッ!」

「ドククラゲッ!」

 俺とテッセンさんがドククラゲを止めようとする。ミラーコートはその場で大爆発をし、解き放たれたエネルギーがライボルトの方へ流れだし、ライボルトは倍返しの一撃を浴びるはめになった。

 バジュウッ! と黒煙のなかから、何か弾ける音がした。

 ライボルトは部屋の壁まで飛ばされていたが、なんとか耐えており、対するドククラゲは、

「あ」

 千切れた無数の触手が散らばった地面は、彼女の真っ赤な体液を浴びていた。綺麗だった、頭にある2つの赤い水晶のようなものは、右側が粉々になっていた。そしてドククラゲの本体、その右半分がぐちゃぐちゃに崩れていた。

 審判もテッセンさんも俺も、頭が真っ白になっていた。静寂になったジムを破ったのは、ドククラゲだった。

 ぺちりと、残ったわずかの触手で地面をはたし始めたのだ。

「(…だ)」

「ドククラゲ!?」

「(まだ、おわってない)」

「もういい! 俺は降参する。いや、お前はもう戦えないんだ!」

 取り返しのつかない選択。それは、俺が何もしなかったことだった。

 鼻が痛い。涙が止まらない。

 1回のジム戦にここまで体を、命を張る意味がわからない。

「どうして、こんなになるまで戦おうとするんだ…」

「(夢を、彼の夢を叶えたい、から。絶対に、リーグに行って、それで、私は)」

「俺の夢はそんなに大それたものじゃない。お前を殺してまで叶えたい夢じゃない!」

 俺は試合中だということなんて忘れてフィールドに駆け出していた。傷に触れていいかもわからず、ドククラゲを抱えるしかない自分を呪う。

「マイク」

 テッセンさんが何か言っていたが、俺には聞こえなかった。

「わしゃあ、降参する」

 いつの間にかジム戦は終わっていた。

 俺は、目の前が真っ暗になった。

 

 

 

 レポート

10月6日 キンセツシティ

 

 

手持ち

 

LV20  アゲハント メス

 

LV24  オオスバメ メス

 

LV34  メノクラゲ→ドククラゲ メス

 

LV24  ヤミラミ オス

 

LV18  ゴクリン オス

 

図鑑

48匹(新:ビリリダマ、レアコイル、ライボルト、ドククラゲ)




中学版との違い
テッセン戦メンバー

シャモ ドククラゲ、ヤミラミ、ポチエナ
→ドククラゲ、ヤミラミ、ゴクリン
テッセン ビリリダマ、コイル、レアコイル
→ビリリダマ、レアコイル、ライボルト(ホウエンポケモンをエースにしたかったもので)

結末は中学版と同じです。彼女はどんなシャモでもこの決断をしていました。
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