ポケットモンスター ホウエン地方編   作:とーさかしゅん

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こんにちは。
今回もシャモを曇らせますよっと。ここからえんとつ山までどう明るい雰囲気出していかねばと、今は苦戦しております。
お話的にはそうでもないのですが、私自身ポケモンバトルを久しぶりに書く話だったので、コータス戦は第2章の肩慣らしみたいな戦いになっております(10/3現在「こんな集団戦になるとは思わないって」)。
後半ではイッシュ出身25歳との出会いで過去を明かされるシャモ、さてどうする? 今回もお楽しみくださいませ!!

また、10月は5と10の付く日に投稿したいと思います。何故なら10月だから! ストックは勿論無いよ! どうなる!?


第26話 vsフライゴン プラズマ団の爪痕

 

 1 10/11 ほのおのぬけみち

 

 コータスはヌマクローに対して相性が悪い。しかし、中々攻撃を当てることができなかった。

 理由は2つ。

 1つはこのトンネルという環境によるものだ。狭いトンネルではヌマクローは地面を泥に変えても機動力に欠ける。相手も元々足の遅いポケモンだが、こちらからも攻められないのだ。

 そしてもう1つ。

「ちっ、また"えんまく"か!」

 コータスが甲羅の頂上から黒い煙を吐き出す。熱気に包まれた"ほのおのぬけみち"全体が真っ黒な靄にかかり、視界が遮られる。

「"みずでっぽう"!」

 ヌマクローが、先程までコータスがいた場所へ攻撃するが、既に移動していたコータスには当たらない。

 遅いことを理解しているからこその戦法。命中率を下げる"えんまく"を連射してくるため、こちらの攻撃が当たらないのだ。

 そこへ攻撃。

「来るぞ、ヌマクロー!」

 注意を喚起したと同時にコータスが煙の中から現れ、ヌマクローに"とっしん"した。ヌマクローは反応が遅れ、直撃を受けるが、そこから体を押さえつけることに成功した。

 相手との距離はほぼゼロ。これなら攻撃を当てられる。

「ヌマクロー、"マッドショット"!」

 攻撃により、顔面に泥を被ったコータスはふらふらと後退する。

 今がチャンスだ。俺はモンスターボールを投げる。ボールはコータスに向かった真っ直ぐ飛ぶが、しかし捕らえるには至らなかった。

 "こうそくスピン"。

 甲羅に四肢を収め、コマのように回ることでボールを弾いたのだ。

「ははっ」

 厄介。予想外の動きをするため捕獲が難しい。

 だったら。

「戻れヌマクロー、そして、ラナ!」

 エスパータイプのラナであれば、"ねんりき"で拘束することができる。

 俺が指示を出す間もなく、ラナはコータスを縛る。負けじとコータスは"えんまく"で視界を潰しに来るが、動けない相手がいくら目眩ましをしたところで場所はわかっている。

 今度こそ、俺はモンスターボールをコータスにぶつけた。

 何度かの小さい揺れの後、星が瞬いた。

「コータス、ゲット!」

 俺は、7つ目のボールラックに、コータスを入れたボールを入れた。

 通常、手持ちポケモンは6匹までだが、俺は未だにホウエン地方のパソコンと繋がっていないため、コータスのボールを転送できない。

 いい加減、何とかしないといけないな。いかに自分が1年でリーグ出場を考えていないのか痛感させられた。

 熱気に包まれた"ほのおのぬけみち"を出ると、空は茜色になっていた。俺は熱すぎるトンネルではなく、外で一夜を明かすことにした。

 

 2 10/11 111ばんどうろ

 

 翌日、111ばんどうろの北側に辿り着いた俺は、奇妙な光景を目にした。

 ホウエン地方は自然豊かな所だ。木々が生い茂り、街の中でも青々とした光景が見られる。

 だが、幹が途中で不自然に台座のように展開していて、その上に大量のツルと葉っぱで覆われたログハウスを見たのは、これが初めてだった。

「おっ、ヨオー」

 唖然として見ていると、ツルとツルの間(もしや窓なのか? いやいやまさか)から赤い帽子を被った老けた男が顔を出した。

 青年は帽子が落ちないよう頭を押さえながら、一度ログハウスの中へ引っ込み、尻からログハウスを出た。そして救助隊が使うような縄梯子を器用に降りて、赤い上着を翻した。

「俺の名はギリー、イッシュ地方出身の25歳!」

 老けたように見えたのは、目の下の隈と剃られていない髭のためか。

「この"スーパーひみつきち"が気になるようだな」

「はぁ、まあ」

「恥ずかしがることはない! 秘密基地、それは男の子の永遠のロマンなのだから!」

 よくもまぁ恥ずかしがる様子もなく言い切れるもんだ、と俺は目を反らした。

 とはいえ興味がないと言えば嘘になる。野宿当たり前の旅において、衣食住の住が確保できるかもしれないのだ。

「ホウエン地方は自然豊かな所だ。人が入れそうな小さな洞穴に、誰が作った訳でもないのにイグルーみたいになった草の山。そしてこいつみたいに、蔦が伸び枝葉が生い茂ったツリーハウスにもってこいの木! 温暖な気候だからこそ成り立つ、この"あやしいポイント"はひみつきちを作るのにピッタリなのさ」

「そもそもひみつきちって、何のために作るんですか?」

「いーい質問だ」

 それほど良い質問でもないだろ。

「何のために? そりゃあ、ロマンだからだよ。そりゃ雨風を凌げるポイントとして使えるがァ、ひみつきちに、そんな合理性を求めてはいけない!!」

 ギリーはひみつきち馬鹿という奴だった。

 ひみつきちが好きで好きでたまらなく、そこに何か理由があるわけじゃない。

 ただ好きだから、ひみつきちを作る。

 誰に見せる訳でもなく、己のためだけに作るのだ。

 しかし、あの見た目でひみつきちを作り続けていると言うと、1つ疑問が生じる。

「ギリーさん」

「ギリー、だ」

「ギリー、あんた仕事は?」

「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………ひみつきちを広める、慈善事業、的な?」

 要は無職じゃないか。

「冗談はさておき、ヒワマキシティでひみつきちの布教をする雑貨店をしているぞ。1週間くらい閉じてるけど」

 本人のひみつきちモチベーションが高すぎて、店にいられないんだろうな。

 俺はギリーのひみつきちに案内された。ツリーハウスの中はまだ作られたばかりなようで、簡素なものだった。ポケモンセンターにもあるような、パソコンと、その横に小さなフラッグ、それから1匹のドラゴンポケモンの壁紙があった。

「パソコンの中には俺が収集しているひみつきちの内装に必要なグッズがたっぷりと収納されている。ポケセンのパソコンのグッズ限定版ってとこだな」

「便利なものだな。電気とかはどうしてるんだ?」

「充電式だ。デカイ蓄電池からコード引っ張ってるから、長居はできんぞ」

「え、それじゃあ」

「そう! ひみつきち界隈は世知辛いのだ…」

 とことん苦労してるな。

「フラッグには自分のマークを描くんだ。ここは俺のひみつきちだぞ! ってな。同業者に会ったことはないが」

「じゃあ描く意味」

「ロマンだよ。ひみつきちが作れる場所は制限はあるが色々家具を置くことだってできる。机や椅子に始まり、明かりや音楽プレーヤー、ぬいぐるみやパーティーグッズも置けるんだ。ここは長居する気はないから、壁紙だけだがな」

 壁紙に描かれたポケモンは緑色だった。赤いゴーグルのようなものに覆われた瞳、先端が3つに分かれた大きな尻尾、羽は菱形に近いのが特徴か。

『フライゴン、せいれいポケモン。タイプ:じめん、ドラゴン。羽ばたきで起こす砂嵐の中から歌声のような羽音だけが聞こえるためフライゴンは砂漠の精霊といわれた』

 図鑑が反応した。つまりそれほど精巧な作りの壁紙…いやこれは、写真なのか。

「俺の相棒だったやつさ。見たことあるか?」

 ギリーが懐かしむような声で訊いてきた。

 緑色のドラゴン。目立つ色と綺麗な瞳は、おそらく1度見たら忘れないだろう。

「見たこと無いな。ホウエンにはいるんだろ?」

「イッシュにもな」

 声のトーンが、落ちた。

「本当に見たことがないのか? お前は」

「俺はジョウト出身だ。イッシュ地方のことは多少知識がある程度で知り合いは…いない」

 一瞬言葉が詰まったのは、ニューキンセツでのことがあったからだ。

 プラズマ団を名乗る不審な男、俺に対して溢したいくつかの固有名詞。

 そして、俺のことをこう呼んだ。

「そういや、お前は戦いにしか興味がないって話だったな。プラズマ団のサーティーン」

 何故だ?

「あんた何でその単語、をッッッ!?」

 言葉が途切れた。ツリーハウスのひみつきちから追い出されたのだ。巨大な塊に突っ込まれて。

 くそ、まさか誘い込まれていたってのか!?

 フライゴンは、写真で見るより遥かに狂暴な顔をしたやつだった。

「ガッあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!???」

 背中から落ちた。そこへフライゴンが追撃をするべく迫る。俺が全力で横へ転がると、フライゴンの爪が地面をえぐった。

「知らねえ、か。知ってたなら聞いた上でボコったが、知らねえと来ちゃあ、ぶっ殺すしかねえな!」

 わけが、わからなかった。

「なぁサーティーン。俺と戦ったことも忘れちまったか? 5年前のことだ!」

「何言ってるのかわからねえよ! 5年前なんて俺は…! 俺は」

 記憶が、ない。

 俺の記憶は、5年前から始まっている。

 知らなくて当然、じゃない。5年前から始まっていることと、ギリーの怒りに関連性がないとは思えない。

 プラズマ団はサーティーンとかいうヤツの裏切りで大ダメージを受けたようなことを、あの男は言っていた。

 他人の空似? そんな訳がない。

 全く知らない2人の男から指摘されたのだ。

 確信まではいかずとも、想像は容易にできた。

「俺が、サーティーン…?」

 ドゴン! と目の前で激しい衝突音が鳴った。

 ラナがフライゴンの一撃を受け止めた音だった。

「落ち着いてください。彼は何も覚えていない!」

「"解放"し過ぎて小物の俺らのことなんか一々覚えていないってか!?」

「そうではなく! 本当に記憶がないんです」

「!?」

 今にもラナに噛みつこうとしていたフライゴンがボールに戻された。代わりにギリーが接近し、俺に掴みかかった。

「どういうことだ」

 知らねえよ。

 どういうことだは、俺の台詞だよ。なぁ、ラナ。

 どうせ今も俺の心の声を読んでいるんだろ。

「全ては知りません。僕も知らないことはあります。でも、」

 ラナは両手を俺とギリーの体に当てた。

「これが、サーティーンと名付けられた彼の過去です」

 

 3 ??? ????

 

 脳内に映像が写し出された。

 これは掘り起こされた俺の記憶か?

「シャモは7年前、プラズマ団の一員に拉致され、少年兵として鍛え上げられました。当時の組織には、ポケモンバトルができる人員が少なかったためです。100人近くの拉致された子供たちは、イッシュ地方の、顔が知られていない地域で多くのトレーナーと戦わされました。そしてポケモンを解放した」

 ポケモンの解放? ギリーも言っていたが、一体何をしたっていうんだ。

「無理やりポケモンを、トレーナーから引き剥がす

ことだ」

 ギリーの声がした。ラナを通じて意識がリンクしているのか。

 というか、ラナはそんなことができたのか。記憶がある5年間、1度も知ることはなかった。

「プラズマ団は新興宗教みたいな団体で、最初はトレーナーのエゴにより囚われたポケモンを解放して、ポケモンの真の幸福を騙る連中だった。教徒がいくら呼びかけても、実際解放する奴なんていなかった」

「でも、"王"と呼ばれた、教祖に近い一部の教徒は"七賢人"という称号を授かった者が現れ、彼らが人々に教えを説き始めると状況が変わりました。サクラを使いつつ言葉巧みに人々の心を掴み、社会を混乱させたんです」

 映像では、"ニューキンセツ"で戦った男の他に、同じ格好の老人が人々に何か話しかけていた。町の人には涙を流してポケモンをボールから出す者、さらにそのボールを破壊する者もいた。

 ポケモンと人は相容れない。人がボールという枷でポケモンの幸せを縛っている。それは1つの意見だ。そこで解放する人はいただろうし、当然逆らう人もいただろう。

「これは建前だ」

 ギリー忌々しそうな声でそう言った。

「プラズマ団には裏の顔があった。実際に解放されたポケモンはどうなったと思う?」

 野生に返されたんじゃ、無かったのか…。

「七賢人が、1匹残らず再捕獲し、プラズマ団のポケモンにした。一部のトレーナーは、無理やりバトルをしかけ、負けた者から巻き上げるという形でな」

 フライゴンが何者かに敗れる映像に切り替わる。そこでフライゴンは、キルリアがさらに大きく成長した姿…おそらく進化系のポケモンだろう…に薙ぎ倒されていた。

 フライゴンを倒したポケモン、それを使っていたのは1人の少年だった。

 鋭い眼光で年上のトレーナーを見下し、ポケモンをボールに戻す。

『行くぞサーティーン。彼のポケモンはこれで解放できた』

『ああ』

 同年代の少年に声をかけられ、その子供はギリーのフライゴンを手に立ち去った。

 その少年、サーティーンと呼ばれていた彼こそが。

「シャモ。実力だけなら七賢人以上と評されたプラズマ団最強のトレーナー、"ナンバーズ"の1人」

「彼はその実力を持ちながら、組織を裏切り、そして粛清された」

 ずきりと、頬の傷が疼いたような気がした。

「粛清したのは同じくナンバーズの1人、オウバラという方です。奇しくもその日は、イッシュ地方のジムリーダーに加え各地のトレーナーが一斉に討ち入りした日でした。頬を傷つけられ、手持ちを奪われ、崖の下へ叩き落とされたシャモは、その衝撃で記憶を失ったのです」

 土砂降りの中、全身を青紫の装束を身にまとった少年がいた。大きなフードを深く被っていて顔は見えないが、背丈からしてまだ10歳くらいの子供だろう。彼は崖を背に立ち、黒ずくめでベレー帽を被った男に追い詰められていた。追い詰めている側の男の胸には、青い刺繍のエンブレムが付いていて、それは少年の側にも付いていた。

『裏切者は、消えろ!』

 男が手元から繰り出したのは、全身が刃物でできたような恰好をした人型のポケモン。ポケモンは少年に飛び掛かる。少年はそれを回避しようと身をひねるが、ナイフのような爪が頬を捉え、

『っ‼』

 少年は崖の下へ落ちていった。

 

 4 10/11 111ばんどうろ

 

 映像はそこで止まった。

 ギリーは、複雑な面持ちをしていた。

「どうして裏切ったんだ」

「プラズマ団は当時、"王"と七賢人の思想のずれから分裂していました。七賢人は王の思想を利用し、ポケモンを独占しようと画策していましたが、一部の団員が反旗を翻したのです。それが…」

「こいつって訳か」

 もう何も覚えていない俺の代わりに、ラナが全てをギリーに教えた。ギリーはしばらく考える素振りを見せ、それから俺に言った。

「お前を憎んでいるが、やったのは『お前』じゃない。そもそもサーティーンは裏切ったって言うしな。何か事情があったんだろ」

「それは…俺にもわからない」

「そう、わからねえんだ。わからねえものを責めても仕方がねえ。だからお前をボコるのはやめだ」

「…映像にいたフライゴンは、今のやつとは別の子なのか?」

「子供だ。お前の顔を見るなりぶちギレていたのは、あの時進化前の状態で見ていたからだ。先代だけ解放されたってのが、またプラズマ団の裏の顔の悪いところだな。今はどこにいるかわからねえ」

 この旅が終わったら、イッシュ地方に行かないといけない。まだ俺には罪があるはずだ。ギリーのフライゴンは今も行方知れず。ひみつきちはフライゴンを探すための旅で得たスキルだったわけだ。

 ラナがギリーの所へ行く。

「いるかは分かりませんが、プラズマ団が空中分裂した際、一部の団員はホドモエシティに移ったそうです。"王"派の方々で、解放したポケモンのトレーナーを探しているとか」

「それって」

「フライゴンがいるかは、わからないです。僕もその時にはもうジョウトにいたので」

 ギリーは即座に動いた。ひみつきちの中へ飛び込み、中からパソコンと蓄電池、フラッグと壁紙持ったまま飛び出してきた。

「イッシュに戻る。会えるかもしれねえなら、行くっきゃねえ!」

 俺はラナとギリーの会話に入れなかった。

 何か、言うべきことがあるはずだ。

「ギリー!」

「あん?」

 かける言葉も見つからないまま声をかけてしまった。

「あ」

「謝るなよ、お前じゃねえんだ。だが! フライゴンに再会した暁にはお前にもう一度リベンジするために舞い戻る! ポケモンリーグで!」

 全ての目標はポケモンリーグに集う。俺にはギリーの拳を受ける義務がある。

 こんな形で、ポケモンリーグに行かないとならない理由ができてしまうなんて、想像していなかった。

「ギリー、やっぱり俺は謝らないといけない」

「だからいいって」

「だから、また来てくれ。俺とバトルしてくれないか!」

「もちろんだ」

 ギリーはキンセツシティの方角へ走った。カイナシティまで行けば船で別の地方へ行くことができる。

 また会わないといけない。

 俺は過去の自分を知り、次の町へと歩みを進めた。

 そして、

 

 

 

 レポート

10月11日 111ばんどうろ

 

 

手持ち

 

LV25  ヌマクロー オス

 

LV20  アゲハント メス

 

LV25  オオスバメ メス

 

LV24  ヤミラミ オス

 

LV20  ゴクリン オス

 

LV15  コータス メス

 

図鑑

51匹(新:フライゴン)




中学版との違い
・思ったよりギリーがぶちギレてた
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