ポケットモンスター ホウエン地方編   作:とーさかしゅん

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このお話を書き始めるに当たって1つ問題がありまして、それがシャモとラナの関係でした。
記憶を失くす前のシャモの手持ちだったラナって、ぶっちゃけシャモのことどう思うの? だってガワだけ同じで中身は違うやん! じゃあ従う義理なんてあるのか、こんな知らない男に相棒を取られて良いのか? そんな心境じゃなかったのかなと。
流れは結局中学版と同じようになったんですが、一時は「ポケモンリーグまで仲違いさせておくか? メガシンカ控えてるし」と思ってました。
じゃあマグマ団アクア団戦、バリバリ喧嘩しながら戦えるのかってなったときに、止めようとなりました。

ラナはオスです。だからシャモに対する愛は種族を越えた何たらってやつではなく、死線を潜り抜けた相棒みたいな感じです。これから手持ちはどんどん入れ替わります。その中で2人の距離はどうなっていかのか。中学版とは違う展開、変えたい場面もあるためどうなるかはわかりませんが、まずは一段落。第29話、お楽しみくださいませ。


第29話 vsバクーダ えんとつ山噴火テロ事件

 

 1 10/15 えんとつ山

 

「コドラ、"とっしん"!」

「ゴクリン、"ヘドロこうげき"!」

 コドラははがねタイプのポケモンだ。どくタイプの技は効かない。

「それは外側の話。えんとつ山の熱で、気化した毒が襲いかかるぞ!」

「ウヒョヒョヒョ! それはあなたも同じでしょうチャイルド!? 自殺に巻き込まないでいただきたい!」

 ヌマクローとオオスバメは、山頂のさらに上にいるかもしれないマツブサのために残しておきたい。だが、まずはホムラだ。勝つために出し惜しみはしない。

「オオスバメ! "かぜおこし"!」

「なぬっ!?」

 気化した毒をオオスバメが風で全てコドラに吹き掛ける。鼻や口から吸ってしまえば、はがねタイプといえどどく状態になるというわけだ。

 ゴクリンの攻撃技はほとんどどくタイプで占められている。だからこそ、こういった工夫が必要だ。オオスバメは無傷でコドラに負担をかけ、ボールに戻る。

「ゴクリン、"たくわえる"!」

 コドラが態勢を整える前に、ぼうぎょを上げる技"たくわえる"で強化する。

「さらに"たくわえる"だ!」

「バカにしてぇぇ! コドラ、"アイアンテール"!」

 コドラの短く鋭い尻尾がゴクリンを襲う。動きが遅いゴクリンは避けられない、いいや、避ける必要がない。

 何故ならゴクリンは、切断に対して絶対の耐性を持つから。

「真っ二つにならない…、一体どういうトリックだ」

「こいつの十八番なんでね、ネタバレ厳禁だ」

 "たくわえる"にはぼうぎょを上げる効果以外にもう1つ、とある特性がある。

「いい加減倒しますよおお! "とっしん"!」

 ゴクリンは口いっぱいにエネルギーを蓄えている。コドラとの距離が縮まり、ゴクリンはしっかり狙いを定めてカウンターの構えになる。

「そんな小さな体でッッ!」

「そんな小さな体に負けるんだ。あんたは」

 その距離、わずか1メートル。

「"はきだす"!」

 蓄えたエネルギーを一撃に収束して解き放つ技"はきだす"。"たくわえる"を使った回数に応じて火力は伸びる。ぼうぎょに自信があり、切断耐性があるゴクリンにはピッタリの必殺技だった。

 正面から、しかもほぼゼロ距離で大技を食らったコドラは、効果はいまひとつとはいえ大ダメージを負っていた。

「嘘でしょう…」

「"りゅうせいのたき"じゃ随分暴れてくれたが、余裕だな。マグマ団」

 俺はヌマクローに入れ替えて、トドメの"いわくだき"をした。

 したっぱとの戦いでコータスが、ホムラとの戦いでゴクリンが体力を消耗しているがまだまだ戦える。俺はヌマクローと共にえんとつ山の最高地点へとたどり着いた。

 そこには、赤と黒の長い上着を着た、背の高い男が立っていた。独特な装飾が付いた眼鏡をかけており、赤い髪を七三に固めており、赤い色に似合わないほど冷めた目をしていた。

「ホムラを倒したか」

「あんたがマツブサか」

「いかにも。私がマグマ団のリーダー、マツブサだ。キミという邪魔者はつい先日までいなかったのだが、アクア団に雇われでもしたのかな?」

 無表情のままだが、意外と話してくる。

「アオギリも"いんせき"を使って悪事を働こうとしていたが、お前らの好きにはさせない」

「悪事…? 私はあくまで、人類の未来を想って事を起こしているというのに。子供のキミや、単細胞のアクア団にはわからなかったか…」

「"えんとつ山"を噴火させると、どうなるかわかってんのか? 最悪、ホウエン地方の街がいくつも滅びるんだぞ!?」

「承知の上だ。…なるほど、キミはそれを悪事だと言うわけだな」

 俺は気づいた。

 マツブサは何故余裕ぶって俺と話している? 自分の計画を遂行するなら、とっくに俺と戦っているはずだ。

 もう、準備は終わっているんだ。

「そこをどけ」

「ほう、気がついたか。頭の良い子供は嫌いじゃない」

「コータス、"ひのこ"!」

 マツブサの背後にキャリーケースくらいの大きさの機械があった。コータスはそこ目掛けて炎を吹く。

「ゴルバット」

 短く、一言告げるだけで。

 大口を開いたコウモリのポケモンが炎を切り裂いた。

『ゴルバット、こうもりポケモン。タイプ:どく、ひこう。どこからともなく近づいてくる。するどいキバを使ってかみつくと同時に血を吸いまくる』

「これ以上は、ものの1秒でも楯突けば、このマツブサ、容赦はしない」

「そっちの方が単純でいいな! 元々そのつもりだったしよ!」

 コータスは指示なしで"とっしん"を繰り出す。ゴルバットはひらりとそれを避けて、次の攻撃に繋げる。

「"どくどくのキバ"」

「コータス、"ひのこだ"!」

 ゴルバットは"ひのこ"を物ともせず突っ込み、コータスの首に食らいつく。

 速い。ズバットの何倍も。

「コータス!」

「"エアカッター"」

 空気を掻き回し、つむじ風で攻撃する技"エアカッター"。本来制度が低い技だが至近距離で撃たれるため全て命中してしまう。

 コータスは怯んで動けない。

「"どくどくのキバ"」

「っコータス"こうそくスピン"!」

 慌てて指示を出し、何とかキバの拘束から逃れる。僅かではあるがダメージは与えられた。

 しかし、コータスの様子がおかしい。"こうそくスピン"の動作が止まらない。

「ふっ、"どくどくのキバ"でもうどく状態になったか。長くは保たんぞ、そのコータス」

「くそ…」

 コータスはさらに回転する。やがて熱を帯びた体から炎が上がり…。

 炎が上がり、回転している…。

 コータスまさか。

「ここにきてレベルアップか」

「でかしたコータス。"かえんぐるま"!」

 地面に黒煙を噴射する勢いで回転する体を宙に飛ばし、ゴルバットへ向かって突撃する。

「"エアカッター"!」

 迎撃が間に合わず、ゴルバットは地面に叩きつけられ戦闘不能になる。一緒に地面に落ちてきたコータスもまた、どくのダメージが蓄積し気絶していた。

「少しはやるようだな。だが、まだここは通せんぞ。マタドガス」

 大小2体のドガースがくっついたような見た目をしたポケモンってことは、その進化系か。

『マタドガス、どくガスポケモン。タイプ:どく。双子の体を交互にしぼませたり膨らませたりして毒ガスを混ぜている。混ぜるほど毒素が強まり臭くなる』

 マツブサは俺とポケモンバトルしているだけで良い。時間になって退散すれば作戦は成功する。そのことを忘れてはならない。

 少しでも時間を稼がれてはならない。速攻で叩く。

「ヌマクロー、行くぞ!」

 背後の機械は今は意識せず、まずはマタドガスを倒す。

「"みずでっぽう"!」

「"ヘドロこうげき"」

 マタドガスの攻撃は進化してるだけあって、火力はゴクリンよりも高い。ヌマクローの技が少し押される。

 相殺するだけじゃダメだ。押し切らないと、勝負に勝てても、負ける。

「もっと勢いを付けろ! "みずでっぽう"だ!」

「何度やっても同じだ。"ヘドロこうげき"」

 "みずでっぽう"の火力を上げるには、より鋭い一撃にするか、より太い一撃にするしかない。ヌマクローは1回目よりも多くの水で火力の底上げをした。

 "ヘドロこうげき"を相殺する。それだけでなく。

「辺りをぬかるませたか」

「走れ!」

 マタドガスが追い付けないほど速く移動して、マタドガスよりも多く攻撃をして倒す。

 相手は時間稼ぎをするために、少しでもマタドガスを長く温存してくるはずだから…。

「"じばく"」

「あ」

 ヌマクローがマタドガスの背後を取った直後だった。

 閃光と共に衝撃波が俺とヌマクローに襲いかかった。そこへさらに追撃が俺の腹にのしかかる。空気を絞り出され、そのまま後ろへ転がってしまう。

 やがて光が止み、目を開くと、俺にぶつかってきたのは、それはすでに気絶していたヌマクローだった。

「カ…ハッ。しっかり、しろ…」

「もろに受けたのだ。休ませてやれ」

 まずい。マツブサの勝利条件を見誤った。

 どうして俺が勝てる前提で考えていたんだ!

 奴の方が強ければ、容赦なく手持ちを切るなんて想像できたハズだぞ!

「ごめん、ヌマクロー」

 残りはゴクリンとオオスバメ。ホムラを倒したときの戦法で、マツブサの残りのポケモンを倒すしかないのか。

「貴様に絶望をくれてやる」

 そう言うと、マツブサは3体目のポケモンを繰り出した。

 真っ赤な体、どっしりと構えた4足歩行のポケモン。背中に火山を背負ったような姿をしたそれの名は、

『バクーダ、ふんかポケモン。タイプ:ほのお、じめん。体の中に火山を持つポケモンだ。体にたまった摂氏1万度のマグマを時々背中のコブから噴き上げている』

「バクーダよ。全て粉砕せよ」

 

 2 10/15 えんとつ山

 

 もう少しで山頂に到着する。このタイミングで"テレポート"を覚えられたのはとても幸運だ。これでどうか、間に合ってくれ!

「俺は良い! 後で追い付くから置いていけ!」

「わかった、ありがとう!」

 このまま使えなくなるまでテレポートして、山頂まで一気に…!

 

 3 10/15 えんとつ山

 

 負けた。

 オオスバメもゴクリンも、まるで歯が立たなかった。

「邪魔者は消すつもりだったが、実はまだ計画の最終段階が済んでいなくてね。最後の一手間を終えてからにしよう」

 ここまで、なのか。

 アクア団の計画をこれまで何度も阻止してきた。だから、心のどこかで油断していたのか。

 アオギリたちが来る様子は無い。そもそも俺が勝たないと結局アクア団の計画が遂行されるから、どのみち負けだ。

 詰み、か。

「まだだ!」

 今の声は…、

「まだ負けていない!」

 オオスバメが倒された時点で、薄々期待してしまっていた。

 どうして来たんだ。どこにもヒントなんて無かった。2日かけて、ここまで辿り着いたんだ。

「僕が残っているッッ!!!!!!」

「人の言葉を話す…いや、伝えるという言い方が正しいか。面白い」

 ラナ。俺を騙そうとしていたヤツが、こんなところまで来るか? "りゅうせいのたき"でもそうだ。俺たちを助けに来るか?

 もう一度、信じて良いのか?

 …でも、ラナに頼らないと勝負にならないのは事実。

 いや!

 いつまで意地を張るつもりだ、シャモ!

「頼む、ラナ!」

 こいつは俺のために来たんだ。そう信じて良いだろうが! 損得勘定で利用しようとするなよ!

「俺と闘ってくれ!」

 ラナは俺のパートナーなのだから!

 

 4 10/15 えんとつ山

 

 ラナの体が輝き出す。ここに来るまでに余程体力を削り、そして経験値を積んだのだろう。

 過去の映像を見せてもらったとき、そこに写っていたポケモンが今、俺の目の前に姿を現した。

 ドレスのような装飾をなびかせた、胸の赤い角が特徴的なそのポケモンの名は、

『サーナイト、ほうようポケモン。タイプ:エスパー、フェアリー。サイコパワーで 空間を ねじ曲げ 小さな ブラックホールを つくりだす 力を 持つ。命懸けで トレーナーを 守る ポケモン』

 ははっ、図鑑に言われてるな。

 サーナイト。一目見てすぐにわかった。

 このポケモンは、とてつもなく強い。

「キミのポケモンは爆発的に力を伸ばす。危険な存在だ。すぐに消そう、バクーダ」

「行くぞサーナイ…ラナ!」

「はい!」

 駆ける。ラルトスよりキルリアより速く。

 バクーダに正面から接近する。

「愚かな、"がんせきふうじ"」

「ラナ、"ねんりき"!」

 バクーダが足踏みして飛ばす岩石を、ラナはサイコパワーで軽々と砕いてみせた。

 それだけではない。

「"サイケこうせん"!」

 腕に貯めたサイコパワーを拳に乗せて打ち出す、ラナオリジナルの"サイケこうせん"が、バクーダの額に叩き込まれる。

 最終進化、ラナの個々の能力が格段に上がっている。

「"マジカルシャイン"!」

 光の衝撃波で相手を攻撃するフェアリータイプの技、"マジカルシャイン"。ほのおタイプのバクーダには効果はいまひとつだが、目眩ましと同時に距離を取れる。

「"やきつくす"!」

 ラナがつい今までいた場所に向かって、バクーダが炎の球体を吹き出す。しかし、ラナは既にそこから離れており、

「"かげぶんしん"、そして」

 それだけでなく、十数体に分裂したラナが既に技の構えに入っていた。

「おのれ…」

「"サイケこうせん"!」

 全方位から繰り出される、遠隔からの"サイケこうせん"。バクーダは一方的にどんどん攻撃を受ける。

「"ふんえん"!」

 マツブサの声がだんだん荒いものになっていく。

 攻撃の手を緩めるな。おそらくこれがマツブサの切り札だ。バクーダを倒して、アクア団よりも早く計画を止める。

「決めろ、ラナ!」

「バクーダ、"やきつくす"!」

「"サイケこうせん"!」

 両者の攻撃が交差する。ラナも攻撃を受けて、腕に火傷を負っていた。

「ラナ!」

「いけます!」

 俺たちは高揚していた。

 だから、ポケットの中で発する熱に気がつくのに遅れた。

「なんだこれあっつ!」

 ミチルさんの婚約者さんから貰った、石だったよな。

「余所見とは余裕だな」

「危ない!」

 バクーダから火炎の攻撃。反応が遅れた!

 ラナが庇ってくれなかったら焼かれていた。それよりも!

「おい大丈夫か!」

「この程度ならまだまだ行けます。それよりどうかしたんですか?」

 俺は手に取った光る石を見る。

 貰ったときはただの綺麗な石としか見ていなかったけど、何か秘密が?

 石には力が宿ると言う。ポケモンに当てることで進化する力を持つものもある。

 石を握ってみる。何か、引力のようなものを感じる。それは少しずつ前へ前へと引かれていて、まるで。

「ラナに、引かれている?」

「え?」

「何をこそこそと、私を倒すのではなかったのか?」

 バクーダが迫る。時間はもう無い。

 一か八か、この石に賭けるか。

「ラナ、これを持ってろ」

「え、あっはい!」

「バクーダ、仕留めてやれ。"ふんえん"!」

 ラナは石を手に取り、握り込む。

 そしてバクーダの元へ走り、

「"サイケこうせん"!」

 握り込んだ拳にサイコパワーを乗せ、バクーダに解き放った。

 石の効果か、はたまたラナの力か。これまで以上の火力を出したラナの"サイケこうせん"は、ズガン!! という轟音と共にバクーダを一撃で倒した。

 技を放った直後のラナは、先程までよりも白く発光しているようで、熱気のようなものが身体中から流れ出ているようだった。

 同時に、俺の体にも異変が起きた。

 体力を、何かに吸い上げられていく、そんな感覚だった。

「ハッ!」

 まだ倒れるな。マツブサはポケモンを全て失い、幸運なことにバクーダの下になっている。

 マツブサの後ろ、火口ギリギリの所にある機械まで走る。

 止め方はわからない。だったら!

「せぇい!!」

 バキン! と"いんせき"を固定していた器具を破壊し、"いんせき"を引き剥がした。

 これは持っていてもアクア団に悪用される恐れがある。だったらいっそ、

「よせ!」

「ガキンチョ、テメェッッ!」

 マツブサとアオギリの悲痛な叫びが重なる。

 ざまあみろ、これでお前らの野望も終わりだ。

 "いんせき"を火口に投げ落とす。

 直後だった。

「はっ?」

 後ろから強い衝撃。マツブサに押された…のか?

 いいや、押したのはアクア団のしたっぱ。

 誰だ? 知らない顔…ヒノキやリンドウではない、初めて見る顔だ。

「ここにいたか、裏切者」

『裏切者は…』

 その顔を、俺は覚えていなかった。

 だけど、心が、その声を覚えていた。

『裏切者は消えろ!』

 俺は、抵抗する体力なんて残っていない。

 ポケモンたちも、戦う力は残っていない。

 今度こそ、おしまいだ。

 

 5 10/13 りゅうせいのたき

 

 カガリはマグマ団幹部の1人だ。アクア団の女したっぱの特攻にも近い一撃で、滝壺に落ちていたが、運良く生きていた。

「あの女、本当にしたっぱの実力者なの? ドラゴンポケモン、それも最終進化したやつの攻撃なんて予想できるかっての」

 水から上がり、濡れた制服を脱いでキュウコンに乾燥させる。

 戦いは終わっていた。しかし、違和感が残っていた。

「あれだけの混線があったのに、ここまで早く撤退できるというの? ウチの馬鹿ホムラはともかく、アクア団の単細胞連中まで?」

 作戦では"いんせき"を奪った時点で囮を使って逃げる手筈だった。女したっぱに落とされた時点はカガリは捨てられるものだと思っていたから、捜索はもちろんいない。

 死者は死んだと思われたカガリ以外はいないにしても、怪我人は絶対いただろう。彼らを洞窟から出すのはかなりの手間が掛かるのではないか?

 それが、たった数十分で人っ子1人いないだなんて、そんなことはあり得るのか?

 下着姿で炎を見つめながら、カガリは1人考え込んでいた。

 だからこそ、それの接近には気がつかなかった。

「あれ、生きてたの?」

「あんたッッ…ガッ!?」

 "りゅうせいのたき"は美しい光景を売りにした観光スポットとして有名だが、同時にある噂が流れるパワースポットとしても名が知れていた。

 1人で行った旅人が帰ってこない。隣にいた連れがいつの間にか消えている。

 曰く、『神隠し』の噂。

 

 6 10/15 えんとつ山

 

 酷い悪臭と灼熱と耳をつんざく金切り声が、俺の意識を現実に戻した。

 俺はオオスバメの上に乗っていた。

 片方の翼を焼き、絶叫を上げながら、それでも必死に飛んでいた。

「オオスバメ!!」

「落とせ! ヤツを!」

「二度と私の計画の邪魔をされないよう、確実に消すのだ!」

 マグマ団の連中が俺に向かって一斉に攻撃を仕掛けてきた。大火傷をしているオオスバメに避けるなんて芸当はもうできない。

「すまんオオスバメ、少し重くなる!」

 瀕死のヌマクローを、それでも叩き起こして指示を出す。

「"みずでっぽう"!」

 降り注ぐ炎や岩をヌマクローは必死に打ち落とし打ち返し、オオスバメと俺を守った。

 だが、オオスバメに上昇するだけの力は無い。やがて火口の縁に接近していった。

「やつら、放っておいても死にます!」

「そうか…。わりぃなガキンチョ、ここまでのようだ」

 ヒノキがアオギリに何か話しかけていた。やがてマグマ団からの攻撃も薄くなり、俺たちは岩肌へと激突した。

 そう、見せた。

 自滅したと見せれば奴らからの攻撃は来なくなる。ゴクリンのヘドロこうげきで壁を溶かし、ヌマクローが毒を洗い流し、俺たちはびしょ濡れになりながら岩の窪みに逃げ込んだのだ。

「オオスバメ、大丈夫…なわけないか」

 ひとまずアクア団、マグマ団からの難は去った。しかし、奴らが放っておいても問題ないと思われるくらい、俺たちはピンチだった。

「ラナ、俺とお前を持ち上げて上にいけるか?」

「もうそんな体力はないですね。すみません」

「さっきの石に色々持ってかれたっぽいな。役に立ったとはいえ、今度はこれで偉い目に遭ってるぞ…」

 ぼやいていても仕方がない。一番力が残ってるのは俺だ。みんなに助けられて、それで俺が何もしないのは嘘だ。

 だが、人間は非力だ。

「みんな、力を貸してくれ」

「具体的にどうすれば」

「まずヌマクローは俺の背中に乗って、壁を壊していってくれ。足場と、掴む場所の確保をする」

「無茶だ。ヌマくんを背負って壁を登るなんて!」

「わぁーってるよ! だからラナには、残ったサイコパワーで俺が掴む補助をしてくれ。…もちろん登りきるなんてできると思ってないさ。今からコータスにはずっと"えんまく"を使ってもらう。狼煙の役目だ」

 普通の"えんとつ山"から出るはずの無い煙が出続けていれば、怪しむ人が登ってくるかもしれない。時間差で登り始める俺を見つけて、引っ張り上げてくれるかもしれない。

 かもしれない、には頼りたくないけれど。

「オオスバメの火傷は一刻を争う。今から少し休むのだって惜しい。時間になったら速攻行くぞ」

 ヌマクローを背負い、拳で穴を空けてもらいそれを掴む。火口ギリギリの所から始めるため熱い。汗が止まらない。

 嫌なことに、体は異常に寒いと感じている。震えが止まらない。ラナのサポートはあくまで掴む力に対してで、俺が汗で手を滑らせてしまうと一貫の終わりだ。

 多くの命を抱えている。その思いが体を強ばらせている。

 下を見るな。足場がどこにあるかは感覚で記憶しろ。

 半分くらいまで来たか? だがもう限界だ。ラナからの補助もどんどん弱くなってきてる。

 どれだけ時間が経った? あとどれだけかかる? 助けは来るのか? みんな無事か?

「おーい! ダイジョブかーい!」

 ついに、上から声がした。女性の声だ。

 誰かに気づいてもらえた、それだけで涙腺が緩みかけてしまった。まだ堪えろ。

「引っ張り上げてほしい! 何か、縄みたいなのはありますか!」

「"あなぬけのヒモ"! これに掴まり!」

 俺は降ろされたヒモを掴み、引き上げてもらった。山頂に戻ると既にアクア団とマグマ団はその場から消えていた。

「修行中の私がコータス使いで良かったな! すぐにわかった!」

「助かった…、本当にありがとう…!」

「うえええっ!? 泣いとる! というか一体何事!?」

 まだ倒れるわけにはいかない。残った体力を振り絞り、足を動かして"えんとつ山"を降りる。

「なぁ、名前は?」

「…シャモだ。キミは」

「アスナ! フエンタウンに住んでる未来のジムリーダー!」

「そりゃ本当に運が良い。俺もフエンタウンに行こうとしてたところだったんだ。案内をお願いしてもいいかな」

「もちろん! あたしがバッチリ連れてってあげる」

 修行中だと言っていたのに本当にありがたい。

 俺はアスナに連れられて、ようやくフエンタウンにやって来た。

 

 

 

 レポート

10月15日 えんとつ山

 

 

手持ち

 

LV30  キルリア→サーナイト オス

 

LV28  ヌマクロー オス

 

LV29  オオスバメ メス

 

LV23  ゴクリン オス

 

LV20  コータス メス

 

 

別行動

 

LV21  アゲハント メス

 

LV25  ヤミラミ オス

 

 

図鑑

61匹(新:ゴルバット、マタドガス、バクーダ、サーナイト)




中学版との違い
・アクア団団員に紛れていた「あの」プラズマ団団員
・火口に落とした人間(中学版ではマツブサがやった。ざけんな)
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