ポケットモンスター ホウエン地方編   作:とーさかしゅん

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今回はタイトル通りフエンジム戦! サブタイは第31話と対にしました。
フエンジムはホウエン編唯一の「正式ではないジム戦」ということで、内容はガチコンバトルでありながら、互いのことを知るライバル戦っぽくなってます。修行した仲だもん!
また、ここでようやく「あのキャラ」を出せました。もっと遅くしようとしてましたが、流石に遅くしすぎると良くないよね! ということで、ここのチャレンジャーとして登場しました。誰とは言わないよ。名前は出してないから!
というわけで、ハードな10月はこれにて終わり! 次回は砂漠に行きます! 今回もお楽しみくださいませ。


第31話 vsマグカルゴ 対決!シャモ対アスナ

 

 10/20 フエンタウン

 

 昼過ぎ。俺とアスナは3日間のバトル漬けの日々を経て、フエンジムにやって来た。俺はジム戦、アスナは試験。それぞれの目的のために門扉を叩く。

「ん? なんじゃアスナと…誰だ?」

 中から腰が曲がったお爺さんが現れた。

「おじいちゃん、この人はシャモ。チャレンジャーだよ」

「なんじゃ、曾孫ができるかと思ったぞ」

「何言ってんだあんたッッッ!」

 おじいちゃんと聞いてどんなジムリーダーかと思えば、とんでもないセクハラジジイだった。

「儂はカザン! このフエンタウンジムのジムリーダーじゃが、ぶっちゃけバトルはもうできそうにないんじゃ」

「引退のことは聞いています。でも、どうしてもジムバッジを揃えたくて」

「あーあー分かっておる! じゃから儂は考えた」

 カザンさんは屋内へ俺たちを通した。気のせいか昨日よりも湿気が多いというか、暑苦しいな。"えんとつ山"みたいだ。

「アスナの試験用に沸かしておいたが丁度良い。ジムチャレンジも同時に行うとしよう」

 昨日は入らなかったジムの部屋。そこはいくつもの空の籠がロッカーに入っており、真ん中で扇風機が回る部屋だった。洗面台がいくつもあり、ドライヤーや櫛といったアメニティが揃っていた。

 ここはまるで、

「脱衣所?」

「あ、脱がなくていいよ」

「脱ぐか!」

 銭湯の脱衣所のような部屋の奥には、加工されて先が見えなくなっているガラス張りの引き戸があった。

 アスナは当然、この先を知っているのだろう。緊張からか深呼吸をしていた。

 カザンさんは俺やアスナに構うことなく先へ進み、その扉を開いた。

 湯気が俺たちの頬を撫でた。

「なんっだこれ…」

 そこは正しく大浴場。高い天井まで吹き抜けの巨大な温泉だった。

「ここがジムチャレンジの間。挑戦者は温泉の部屋を潜り抜けてジム戦の間に辿り着く! それがここのチャレンジ内容じゃ」

「でもここ、本来なら私がやるんじゃ…!」

「ああ! じゃからお主らにはこれから足を縛ってもらう」

 腰の曲がったお爺さんとは思えない速さで、カザンさんは俺の右足とアスナの左足を縛った。二人三脚、横ムカデみたいな形になってしまった。

 当然、文句を言う。

「はぁ!?」

「どういうこと!」

「2人協力してこの迷路をクリアするんじゃ。アスナと挑戦者の…」

「…シャモです」

「シャモよ! お主らは、既におる別の挑戦者を倒しつつ、儂のいるジム戦の間に来るのじゃ。ちなみに、途中で足を縛るヒモがほどけたらゲームオーバー。アスナに二度と試験は受けさせぬし、シャモは金輪際フエンの地を踏ませんからな」

「そんな、酷いよおじいちゃん!」

「せめて足のヒモは…! バトル中に絶対ほどけてしまう!」

 カザンさんは最後まで聞く耳を持たなかった。ジムチャレンジの間を1人勝手に出ていくと、ガチャリという音がした。

 今、鍵を閉められた?

 それにさっき、既にいる別の挑戦者って…。

「アスナ、もしかして俺たち、閉じ込められた?」

「…ごめんシャモ。これがおじいちゃんのやり方なの。誰かがクリアするまでたぶん開けてくれないよ」

 マジか…。

「ごめんね、私のせいで迷惑かけちゃった」

「いや! 気にするな。俺だってここを乗り越えなきゃリーグに挑戦なんてできないからな。やるからには越えてやるさ」

「…わかった。ありがとう」

 俺とアスナは温泉に足を踏み入れた。

 熱湯が靴の中に入る。深さは大したことがなく、すねが浸るくらい…足湯みたいなものだった。

 ところでこのジムチャレンジは、どこまで行けば良いのだろう。ジムの間、と言うくらいだからこことは別の部屋になるのか…?

「なあアスナ、ここって」

「教えてあげる。ルートは毎回変えられちゃうから、今回の正解ルートは分からないけど、簡単な仕組みだけだけね」

 このジムチャレンジの間は3つの階層といくつもの小部屋からなる空間で、それぞれの部屋に、別の部屋に繋がる段差か、上下階層に通じる昇降盤があるという。

 ジム戦の間は上の階層から通じており、そこへ向かうため、時には下に降りたり、反対方向へ進んだりして攻略する、簡単に言えば「温泉迷路」というわけだ。

「先の挑戦者たちはどこかの階層の小部屋にバラバラにいるんだと思う。当然、ジムトレーナーもいるから、彼らを倒して先に進まないといけないの」

「俺たちはカザンさんに足縛られちゃったけど、2人組というアドバンテージがある。交互にバトルを仕掛けていけば大きく疲弊せずに突破できそうだな」

 仕組みが分かればそれを乗り越えるのみ。俺たちは改めて最初の1歩を進みだ…。

「あべし!」

「あ、ごめんぶふうっっ!」

 急に歩きだしたせいで俺たちはずっこけて温泉に突っ込んだ。意外とこれが一番苦戦しそうだ…。

 

 2 10/20 フエンタウン

 

 バトルも迷路も順調だった。

 ジムトレーナーを1人、他の挑戦者を2人倒して、俺たちは地下フロアに来ていた。

「しっかし暑いな…。温泉とはいえ、これじゃ俺たちの体力も持っていかれるな」

「水風呂部屋でもあれば少し楽になるのかな」

 俺に続いて、アスナは冗談めいたことを呟やきながら昇降板に乗った。俺は下へ降りる途中、不意に肌に冷たい風を感じた。

 温泉で、冷たい風? すきま風でも吹き込んでいるのか。そう思いながら俺は降りたフロアの温泉に足を浸けた。

「つんめたぁぁぁぁぁ!?」

「きゃあああああああ!?」

 温泉は…というよりそこは冷えきった水だった。冷たい風は、この部屋から流れた空気だったのだ。

「アスナさんフラグ回収したな!?」

「ホントにあるとは思わなかったの許して!」

 急に寒暖差がある部屋に来たせいで、湿ったシャツが体から熱を奪っていく。

 長居はできない、そんな場所だというのに。

「他の挑戦者か…」

 部屋には1人、逆立った朱色の髪の少年がいた。

「あんた、ジムトレーナーじゃないな」

「ああ。だから先には行かせない。今日のジムリーダーへの切符はオレのものだ」

 そう言って、少年は1匹のポケモンを出した。巨体の大部分が牙の生えた大口の、スピーカーのような耳を持った紫の怪獣の名は…。

『ドゴーム、おおごえポケモン。タイプ:ノーマル。木造の 家を コナゴナに 吹き飛ばすほどの 大声を 出して 相手を痛めつける。丸い耳がスピーカーの働きをする』

「驚いた」

「ペアで挑戦してるのは訳ありなんだよ」

「そうじゃない。…いや、それもあるが、お前が持つ"それ"だ」

 "ポケモン図鑑"? 確かにオダマキ博士から選ばれなければ貰えないものだし、珍しいものっちゃ珍しいのか。

 すると少年は自分のポケットに手を入れて、

「オレも"そう"なんだ。といっても、お前と違って実力で勝ち取ったものだがな」

 俺の持つポケモン図鑑と全く同じものを取り出した。

「聞き捨てならないな。俺が弱いみたいに聞こえたんだが!?」

「そう取れないなら本当にオレ以外ってことだ。どうせ戦うんだ。証明してやるよ」

「生意気な図鑑所有者だ。やるぞ、ラナ!」

「はいっ!」

 相性は悪くない。ほのおタイプのジムに対して有効打が無いラナには、ここまで何戦も戦ってもらっている。

 今回も一気に片付ける! ここは寒いしさっさと出たいしな。

「ラナ、"サイケこうせん"!」

「"ふみつけ"」

 ラナが右手で打ち出したサイコパワーの拳をドゴームは蹴り飛ばすことで防いだ。攻撃は防がれたが、まだ左手が残っている。

「もう1回!」

「はぁっ!」

「なるほど…!」

 今度はしっかりドゴームに命中し、相手は少しだけ後退した。体格がデカい分打たれ強いのだろう。

 一撃で突破ができないのであれば、連続で攻撃をするまでだ。

「拳で"サイケこうせん"を放つとは珍しいな」

「そうか?」

「普通は遠隔攻撃だろ」

「そう固くならなくたって、やりやすいようにすりゃいいだろ!」

「いいや、距離を取ることは大事だ。ドゴーム、"エコーボイス"」

 ちっ、距離詰めすぎたか!

「ぐうっ!」

「本来サーナイトはとくしゅ技を得意とする。わざわざ接近する必要なんかないんだよ」

「そこ守らなきゃダメか!? "ねんりき"!」

 ラナが自身のタイプの技ばかり使うのは、ラナが遠距離で済むことを近距離で使うのは、俺の実力不足なんだろうな。

 全盛期のサーティーンは違ったのだろうか。

 考えても仕方がないが、俺がこの3日間で考えていたことだ。

「"チャームボイス"!」

「"エコーボイス"」

 俺はポケモンが普通できないことを、アイデアで使えるように指示することはできる。マルノームの新技が良い例だろう。

 だが、まだできることはあるはずだ。まだ使えるものがあるはずだ。

 俺はこれまで、真面目にポケモン図鑑を見たことがなかった。頭にある知識と、あったはずの記憶、そしてポケモンの可能性を感じて、使える技を考えていた。

 強くなるには、父さんに勝つには、過去の自分を越えるには、取説の1つ、ちゃんと読まないとな。

「見落としていた。俺は図鑑所有者だ」

「あ?」

「ちゃんと見てるあんたからしてみりゃ、確かに俺は格下だな」

「何言ってるかわからんが、そろそろ倒すぞ」

 俺は、ラナが自身のタイプであるエスパーとフェアリー以外に、別のタイプの技を既に使えることを知った。

「というかこの部屋ホントに寒いな!」

「どうしたんだ。急に」

「だからさ、炎なんかどうかな?」

「何っ!?」

 それはサイコパワーを圧縮することで熱エネルギーに変換し、空気を焼く技。

「ラナ、"マジカルフレイム"!」

 ラナは両手で円を作り、その中で力を込める。限界まで圧縮されたサイコパワーは炎を発し、ラナは火の玉となったそれをドゴームに投げつけた。

 強力な圧縮から解放された火の玉は、ドゴーム目掛けて爆炎となり、その体を包み込んだ。

「決まった…!」

「やった…!」

 俺とアスナの喜ぶ声が重なる。対して、図鑑所有者の少年は拳を握りしめ黙っていた。

「よくやった、ラナ。休んでてくれ」

 やがて少年はドゴームの元へ行くと、

「このッ役立たずが!!」

 と、突然ドゴームを蹴りつけた。

「えっ!?」

「おい!」

「トウカのときも今回も、何一つ活躍しないなお前は! オレの期待に応えろよ! おい!」

「止めろ!」

 俺は少年が振り上げた拳を、腕を掴んで止めた。

「図鑑所有者なら…いや、ポケモントレーナーなんだろ! 仲間に手を揚げるな!」

「お前には関係ないだろうが。オレはやり方で勝ち続けるんだ!」

「ポケモンはあんたの道具じゃない! それがわからない限り、あんたは勝ち続けられない!」

「お前…ッッッ!」

 少年はしばらく抵抗したが、そこまで腕力がないからか、やがて諦めた。ドゴームをボールに戻すと、俺たちが入ってきた昇降版に乗った。

「…覚えたぞ、お前の顔」

「だったらどうした」

「次は勝つ。オレのやり方が正しかったことを、知らしめてやる…」

 少年は名乗りもせず、部屋を後にした。

 ポケモンを道具のように扱うトレーナーは、確かに少なからず存在する。おそらく、サーティーンが所属していたプラズマ団も、そういう顔を持っていた。

 だが、図鑑を託されたトレーナーに、そんな人間がいるなんて思っていなかった。本当にオダマキ博士に貰ったトレーナーなのか? あいつは。

「あの、シャモくん」

「ん?」

 しばらく放ったままだったアスナが、焼けた紐のようなものを見せてきた。

 …紐?

「これ、どうしよう」

 俺は自分の足を見た。

 さっき、何故俺は少年のところまで行けた?

 答えは簡単。

 俺とアスナの足を縛っていた紐が、ラナの攻撃で焼き切れたのだ。

 

 3 10/20 フエンタウン

 

 失格、なんだろうか。

 カザンさんに訊くこともできないため、俺たちは次の部屋から昇降版を伝い、さらに1階上へ進み、ジム戦の間の前にやって来た。

 迷路はクリア、なんだけど…。

「来たか、チャレンジャーたちよ」

 部屋の奥でカザンさんが待ち構えていた。

「あの、おじいちゃんこれ…」

「なんじゃ、千切れてしまったか。それは残念」

「バトルの最中に、仕方がなかったの! だから…」

「んじゃ、ジム戦を始めるぞい」

 俺たちはこれで失格に…って、あれ?

 カザンさんは何食わぬ顔でバトルコートの端へ行き、他の審判にあれこれ指示を出していた。

「え、紐が切れたら失格って…」

「そんなこと言ったか?」

「いや、あれ、え?」

「わし、ただ2人がきゃっきゃウフフなことにならんかと期待してただけじゃが」

「くそジジイ!」

 最初足に意識回していたのがバカらしいな! だけどまだ疑問が残っている。

「カザンさんはなんで審判の場所にいるんですか!?」

「いや、わしもう引退だし」

「じゃあシャモのジム戦はどうするのよ!」

「お前がやれ、アスナ」

 あるいはカザンさんは、始めからそうするつもりだったのだろう。

 俺とアスナをペアで挑戦させれば、2人同時にゴールし、俺はすぐにジム戦ができる。

「これはジム戦であり、アスナの試験でもある。ジムリーダーになるのだ。気の知れたチャレンジャーの1人くらい、はね除けてくれんとなぁ」

「おじいちゃん…! それじゃ私かシャモのどっちかが負けたら…」

「なんじゃ、怖いか?」

 このじいさん、エロじじいかと思えばとんでもない最低じじいだ。俺たち2人に、この試練を与えたいがためにペアを組ませたんだ。

 カザンさんは気にする素振りを見せない。審判の旗の振り方を練習すらしていた。

 本気だ。本気で俺たちを戦わせようとしている。

「アスナ」

「…シャモくん、私」

「ごめん。本気でやる」

 でも、ここで俺は手を抜けない。

 アスナのためじゃない。俺は俺がリーグに行くために、あらゆるライバルを倒し続けなければならないのだから。

「わかった」

 アスナは歯を見せて笑った。

「やろう! 本気の戦い!」

 

 4 10/20 フエンタウン

 

 俺とアスナはバトルコートを挟んで向かい合った。

 お互いのポケモンは一部を除いて理解している。だから勝負は互角、自分の力をいかに活かすかで勝敗は決するだろう。

「使用ポケモンはそれぞれ3匹、どちらかが全て戦闘不能になった時点で試合終了とする。それでは、両者ポケモンを繰り出せい!」

 カザンさんの声で俺たちは一斉にボールを投げた。

「マルノーム!」

「マグカルゴ!」

「試合開始!」

 共に修行をしたポケモン同士の戦い。アスナのマグカルゴの特徴は何といってもその回避能力だ。

「"ヘドロこうげき"!」

「かわして!」

 足元のマグマを薄く広げて、攻撃地点から逃れるように本体を滑らせるのだ。

 数日前まではそれだけだった。

「収縮!」

 アスナの掛け声と共にマグカルゴは広げたマグマの体を本体にかき集めた。直後、先程まで薄いマグマが張られていた場所にヘドロが落ちる。

 薄く伸ばしたマグマもまたマグカルゴの一部だ。そこに攻撃が当たれば、本体には大したダメージが行かないが、どく等の状態は伝わってしまう。

 アスナのマグカルゴは広げた体を収縮させることで、完全に攻撃を避けられるようになったのだ。

「攻撃が当たらなければダメージはナシ! 3日間の修行で身につけたこの回避力を見てよ!」

「特訓してきたのは俺たちも同じだ、マルノーム! お前の新しい技を見せてくれよ!」

(マルノームは前に"たくわえる"からの"ヘドロこうげき"で技の範囲を拡散してきた…。でも、前に使った時は、ゴクリン自身も気絶するくらいの反動があったよね…。だったら、)

(何回か避けてから攻撃すれば、確実にトドメを刺せる。そう思ってるんだろうな)

 3日間という時間に加えてマルノームに進化したという条件もあるんだ。舐めてもらっては困る。

「マルノーム、"たくわえる"!」

「来たっ」

 完成させた新技、通称"かくさんヘドロこうげき"にはまだ致命的な難点が1つある。それがこの「溜め」の時間だ。この時間に攻撃されると、例え"たくわえる"状態であっても辛い。

 だが、この3日でアスナはマグカルゴに「回避」の技術を研かせた。偶然の産物、タイミングが噛み合っただけ、それでもこの修行は最大限活かす。

 アスナとマグカルゴは身構える。マグカルゴは体積を伸ばして、いつでも避けられるようにしている。

 避けられないとも知らずに。

「"かくさんヘドロこうげき"!」

「マグカルゴ、避ける…。…なっっっ!?」

 マルノームが攻撃を開始する。それは莫大の量の汚水であり、触れたものを毒で侵す、回避不能の一撃。

 避けた先でさえ射程圏内、回避の準備ではなく防御を上げるなりしていればあるいは耐えられたのかもしれない。

 3日間の修行が、アスナに防御を取らない判断を採らせた。

「マグカルゴ、戦闘不能!」

 今後の対戦で負の影響が大きいとされ、バトルフィールドはサイドから吹き出してきた温泉で洗浄され、毒の湖はきれいさっぱり無くなった。

 アスナはマグカルゴに代わる2匹目を繰り出した。

「マグマッグ!」

 進化前、修行には出なかった個体だろうか。

「ごめんマグカルゴ。私が判断間違えた。マグマッグ、仇を打つよ」

「マルノーム、このまま頑張ってくれよ」

 ただ、向こうがどこまで予想しているかは定かでないが、マルノームもまた大きく疲弊している。体内の物質を"たくわえる"を使うことでより多く消費しているから当然だ。あと2、3回攻撃を受ければ戦闘不能になってしまう。

 それまでに、マグマッグには確実に負荷を与える。修行に出てない個体だったら、まだ未知数のポケモンなのだから。

「マグマッグ、伸長!」

「マルノーム、"どくガス"こうげき!」

 互いの指示が交差するが、

「はぁ?」

 直後、俺は間の抜けた声を出してしまった。

 マグマッグが体を大きく後ろに引き延ばし始めた からだ。広く拡散したマグカルゴに対して、マグマッグの溶岩は一直線を描いていた。

 "どくガス"は当然当たらない。

 限界まで引き伸ばしたマグマッグは、その体勢のまま硬直していた。

 …引き伸ばした?

「まさか、マルノーム、"たくわえる"!」

「行っっくよぉぉぉおおおお! "とっしん"!」

 マグマッグは体を後ろに引き伸ばしていた。体をゴムのようにしていたのだ。それを解放し、前方へ"とっしん"するとどうなるか。

 ドッゴン! とマルノームの腹に、ようがんポケモンが流星のような速さで突っ込んだ。下がった体力を"たくわえる"で補強しようとしたが、まるで通用しなかった。

「お姉ちゃんは高速アタッカーなんだ。誰にも止められないよ」

「マルノーム、戦闘不能!」

 まさか、進化系のマグカルゴの方が末っ子だとは思わなかったよ。今日一番の驚きだ全く。

 だが、一度パチンコのように跳べばしばらくは溜めが必要になる。ヌマクローで"みずでっぽう"しながら押さえ込めば戦えるだろう。

「行くぜ、ヌマクr

 ボールを投げようとした瞬間、俺の腰から何かが飛び出して、マグマッグの前に立ちはだかった。

「行くっすよぉぉ~~! チルット!」

 ヌマクローを出すはずだったが、突然チルットがボールから飛び出してしまった。

 流石にやり直しだよな? 無効になるよな?

「それでは、勝負開始!」

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 俺は、チルットを捕獲したことを後悔した。せめて明日、いや、ジム戦が終わってからにすれば良かった…。

 誰が予想できるってんだ!

 

 

 

 レポート

10月20日 フエンタウン

 

 

手持ち

 

LV31  サーナイト オス

 

LV29  ヌマクロー オス

 

LV28  マルノーム オス

 

LV28  コータス メス

 

LV27  チルット オス

 

 

図鑑

65匹(新:ドゴーム)




中学版との違い
・シンク登場
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