ポケットモンスター ホウエン地方編   作:とーさかしゅん

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とうとう場面転換の番号振りが1で止まってしまいました(振る意味とは?)。
いよいよツツジさんとのバトルです。張り切りすぎたせいで次のトウキさんが冷や汗かいてますね。私も汗まみれです。

次回は今までやってこなかった「ポケモンたちへのスポット当て」をします。すっかりやり忘れていましたが、ちょくちょく挟みたいですね。それでは、お楽しみくださいませ。


第八話 vsノズパス 最初のジム戦

 

「ねんりき!」

「すなあらしですわ!」

 ラナの呪縛を振りほどき、イシツブテは大量の砂を巻き上げた。ジムの部屋は空調と混ざり、砂の風が吹くフィールドとなった。

 すなあらし。4つ存在する天候を操作する技の1つ。すなあらしの恩恵を受けるのはじめん、はがね、そしていわ。イシツブテの特殊攻撃に対する防御はかなり低いことで知られるが、ツツジさんはそれをすなあらしの効果で補ったのだ。

 

 1 9/6 カナズミシティ

 

「くっ!」

 ラナが苦しそうに目を閉じる。恩恵を受けないポケモンは砂の粒を受けて、ダメージを負ってしまうのだ。俺のポケモンですなのダメージを受けないやつはいない。バトルに出しているだけでダメージを受けてしまうのは、チャレンジャーにとって不利な状況だ。

「攻撃してこないんですの? それではこちらからいきますわ。ロックカット!」

 イシツブテは自らの体に腕を打ち付けて体を小さく削っていく。こうすることですばやさを大幅に上昇させるのだ。

「くっ、ラナはたくだ!」

「追い付けませんわよ。イシツブテ、ころがる!」

 ラナが攻撃をしかけようとしたが、イシツブテが突然体を回転させ始めたせいで近づくこともできない。

 ころがる。自信の体を回転させ続けて相手を何度も攻撃する物理技だ。そして転がれば転がるほど、その威力は倍増していく。

「ねんりき!」

 ラナの呪縛は一瞬だけイシツブテの動きを阻害するが、既にかなりの力が出ているころがるを止めるには至らない。

「そろそろ終わりにしてあげますわ。やりなさい、イシツブテ!」

 地面を転がり続けていたイシツブテがラナに向けて進路を変える。

「避けろ!」

 一度くらいは避けられる。だがこちらからはどうやって攻める?

 ラナはイシツブテの攻撃を、闘牛士のごとく、すんでのところで避けたが、

「無駄ですわ。ロックブラスト!」

 すれ違った瞬間に、イシツブテが大量の石の刺を発射した。いくつかがラナに命中し、ラナはまともな攻撃をしかけていないのにふらふらとしている。

 ダメだ。この人に対してラナは不利すぎる。

「戻れ! そして、ゆけっミズゴロウ!」

 ミズゴロウは2匹目の相手に温存させておきたかったが、状況がこれ以上悪くなる前に出すしかなかった。

「みずでっぽうだ!」

「遅いですわ! ころがる!」

 ミズゴロウの攻撃は、おそらく当たりさえすればイシツブテを一撃で倒せる。しかし、ロックカットですばやさを上昇させたヤツに当てなければ意味がない。水は空を穿ち、フィールドに水溜まりを作った。

 ここですなあらしが収まるが、イシツブテのころがるは変わらず迫る。

「みずでっぽう!」

「どういうつもりですの?」

 1回目はイシツブテがみずでっぽうを避けるために直前で軌道を変えて避けきる。イシツブテは壁に激突し、バウンドして再度こちらに向かってくる。

「みずでっぽう!」

 2回目はミズゴロウの体がイシツブテに向ききっていなかったのが原因で、命中せず、イシツブテは速度を落とさず突撃してくる。

「受け止めろ!」

 ミキエちゃんとの戦いでもやった、いわくだきを実行すべく、ミズゴロウはイシツブテの体を正面から受け止める。

 しかし弾かれる。イシツブテの回転は止まらない。

「万策尽きたようですわね。イシツブテ、ロックブラスト!」

 イシツブテは対象の周りを転がりながら、石を発射してくる。あらゆる方向からの攻撃は、何発か命中し、ミズゴロウを苦しませる。

「みずでっぽう!」

「ミズーッ!」

「くどいですわね!」

 3回目、これもまたイシツブテに避けられる。

 4回目、5回目、6回目。ミズゴロウは攻撃を外し、相手の攻撃を最小限に押さえ続けた。

「ジリ貧、ですわ」

「いいや、『問題ない』」

 突然、イシツブテが転んだ。

 ころがるではない。態勢を崩したのだ。

「⁉️」

 いつの間にか、フィールドには無数の水溜まりができていた。

「この部屋、結構涼しいですよね。それとバトルのときだけでしょうが、水はけも良くない。みずでっぽうでできた水溜まりがそのままぬかるみになっている」

 イシツブテのころがるは、ミズゴロウが何発も外した水溜まりに足を(この場合は腕か胴体?)を取られて、転んだのだ。

 すなわち、ころがるの威力倍増が止まる。

「よくやった、ミズゴロウ。そして、ゆけっ、ラナ!」

「はっ!」

 素早くポケモンを交代して、俺は再びラナを繰り出した。僅かだが回復もできただろう。

「イシツブテ、しっかり!」

「さてと、お返しだ。ねんりき!」

 動きを封じられたイシツブテは、簡単に攻撃を受けて跳び、別の水溜まりに突っ込んだ。

「チャームボイス!」

「~~~アッ!」

 技は、動かない的にクリーンヒットし、イシツブテは目を回して倒れた。

「イシツブテ、戦闘不能!」

 審判の宣言で、俺は一瞬肩の力が弛んだが、すぐに気を入れ直した。まだ、終わっていない。

「交代を駆使してわたくしのイシツブテを攻略するとは…中々やりますわね」

「それは、ありがとうございます」

「ですがもうあなたを褒めたりしませんわ。するのは慰めの言葉だけ。わたくしの2匹目が、あなたのポケモンたちを完膚なきまでに叩き伏せて差し上げますわ! ノズパス!」

 ツツジさんが投げたボールからはごとり、と重たいものが落ちたような鈍い音とともに、四角形のポケモンが現れた。

 正確には全体的に四角形を寄せ集めたようなモアイ。巨大な赤鼻が目立ち、手足はとても小さい。

 これがツツジさんの切り札、ノズパス。

『ノズパス、コンパスポケモン。タイプ:いわ。磁石の鼻を北に向けたまま全く動かないと言われていたが、1年に1センチ移動していることが観測された』

「ポケモン図鑑の説明はあくまで野生のノズパスに限った話」

「ラナ、チャームボイス!」

 俺は嫌な予感がして、慌ててラナに指示を出した。

「わたくしのノズパスは、ちゃんと飛びますわよ?」

 ノズパスが浮く。見た目に反して軽いのか?

 そしてラナの音波攻撃を容易く避けきり、高速移動で接近してくる。

「ラナ、カウンターではたく!」

「ノズパス、いわおとしですわ!」

 ノズパスが、巨大な赤鼻から岩を生成しラナに投げつける。ラナは避けきれず技を食らってしまい、

「たいあたり」

 そのたいあたりは、もはやのしかかりのようなもので、ラナは目を回して倒れた。

「ラルトス、戦闘不能!」

 ここまで何も出来ていない。あのノズパスに対して完全に遅れを取っている。

 後がない。

「ゆけっ、ミズゴロウ!」

 イシツブテのときはすぐに思い付いたが、今回やつは浮いている。水溜まりの作戦が効かないのだ。

「ミズゴロウ、みずでっぽう!」

「ノズパス、かたくなる!」

 ミズゴロウの攻撃は、ノズパスに確かに直撃している。しかしノズパスが回転しながらかたくなるを使っているせいで、水が弾かれ大きなダメージになっているとは思えない。

 遠距離攻撃はああやって流されてしまうのか。では接近すれば? 岩を投げつけられる。ここを攻略しなければ、ノズパスを倒すことなんて不可能だ。

「ミズゴロウ、突撃だ!」

「おや、諦めましたか? いわおとし」

「みずでっぽうで打ち砕け!」

 ミズゴロウのパワーではまだ砕けない。多少威力が落ちた岩が、まだ向かってくる。

「いわくだき!」

 ようやく岩を破壊し、ノズパスとの間を詰めることができた。

 しかし、すでにノズパスは浮遊しながら移動をしており、ミズゴロウが直接攻撃できない位置にいた。

「ちぃ!」

「いきますわよ、たいあたり!」

「こっちもたいあたりだ!」

 ミズゴロウとノズパスが、正面からぶつかり合う。

「とでも思いましたの⁉️」

 いわおとし。

 赤鼻から射出される一撃を、ミズゴロウは、

「読んでたよ!」

 いわくだきで粉砕する。威力が乗る前の岩は簡単に砕けちり、さらにノズパスへ一撃が届く。

 ゴン! と、初めてノズパスに一撃を与えた。

「やりますわねッ」

「褒めないんじゃなかったんですか?」

「いわおとし!」

 真下に岩を射手し、ノズパスは浮上して距離を取る。

「みずでっぽう!」

 そこへ追撃のみずでっぽう。ノズパスが打ち落とされる。

「決めるぞ! ミズゴロウ、いわくだき!」

 よろけたノズパス。ミズゴロウは飛びかかり、最後の一撃を与えようとする。

 しかし、俺の目に写る世界が、突然遅くなった。それは俺がとんでもないミスをしてしまったから。

 皿を落とすとき、野球でボールが取れなかったとき、決定的な瞬間、世界がまるで時間を止めたかのように遅くなり、その時を見せる。

 この時、俺の目はミズゴロウよりもノズパスを写していた。その鼻。まばゆい光を解き放ち、まるで溜め込んでいた何かを放出するような光景だった。

「あ」

「でんじほう、ですわぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!!」

 目の前に雷が落ちたと思わせるような光と音が目と耳を襲い、しばらくして俺はミズゴロウの様子を確認しようと辺りを見回した。

 ミズゴロウは、耐えていた。

 でんじほう。でんきタイプ最強格の特殊技の1つであり、命中率は不安だが、当たれば必ずマヒ状態にするという大技。至近距離まで引き寄せて放った技は、見事に命中し、ミズゴロウはがくがくと痙攣しながらもその4本足で立っている。

「ミズゴロウ!」

「さて、耐えたのであればトドメを刺すまで」

 これ以上、これ以上技を食らって大丈夫なのか? 俺の身勝手な、「強くなりたい」という願望に、このポケモンを振り回していいのか? 指示が出せない。進ませればいいのか、退かせるべきか。

 だんだんミズゴロウのことを直視できなくなってきた。

 しかし。

 顔を、目線を下に下ろす瞬間、俺は見てしまった。

「……ッ!」

「ミズゴロウ」

 笑っている。

 ミズゴロウは顔をこちらに向け、口からは血の筋を垂らしているが、それでも笑っている。

 獰猛な笑み。俺がまだ見たことのないあいつの一面。

 俺は、ついさっきまで恐れていたことなんか忘れて、あの笑みに応えないといけない、そんな風に思ってしまった。

 腰のボールが揺れる。ラナのものだ。

(彼、待ってますよ)

 頭に声が聞こえる。

(ああ、わかった)

 ミズゴロウ、いいんだな。

 俺は再び前を向く。ミズゴロウと一緒に闘うために前を向く。

「良い覚悟ですわ。全力をもってあなたを倒して差し上げますわ!」

「ミズゴロウ、たいあたり!」

「ノズパス、いわおとし!」

 ノズパスが射出した岩をミズゴロウが全身で打ち砕く。ノズパスは2射目を構えるが、

「みずでっぽう!」

 ミズゴロウは、岩を生成される直前に攻撃を仕掛けこれを防ぎ、ノズパスにダメージを与える。

 荒い息を吐いている。とっくに限界に達している。早く勝負を決めないと。

「ノズパス、たいあたりですわ!」

「ミズゴロウかわせ!」

 しかし避けきれない。足をもたつかせてバランスを崩し、ノズパスの攻撃を受け止めてしまう。

「決めて差し上げますわ。でんじほう!」

「ッ!」

 ノズパスが一撃を放つ直前に、ミズゴロウはノズパスに飛びついき、相手の鼻を押さえている。

「構いませんわ、放ちなさい!」

「押さえ込めミズゴロウォォォォ!」

 ボゴムッ! とくぐもった音が、ノズパスの鼻から鳴り、ミズゴロウはノズパスから手を離し、ゆっくりと後ろに下がった。

「ミズゴロウ、戦闘不能!」

 審判がそう判定した直後、

「ミズマーッッ!」

 ミズゴロウが雄叫びをあげ、全身を輝かせた。

 その体躯が一回り大きくなり、その姿は大きく変貌した。

『ヌマクロー、ぬまうおポケモン。タイプ:みず、じめん。水中を泳ぐより泥の中を進むほうが断然早く移動できる。足腰が発達して2本足で歩く』

 泥の中を走らせれば、あの浮いているノズパスに届くか?

「ヌマクロー、一面にみずでっぽうを撒き散らせ!」

 ケムッソ、カラサリスのときは感じられなかったが、ポケモンの進化はすごい。みずでっぽうの威力も量も、ミズゴロウの時とは大違いだった。土のフィールドはあっという間に泥の間に変わり、ヌマクローは好戦的な笑みを浮かべながら、泥の上で跳ねている。今からウォーミングアップをしているつもりだろうか。

「進化しようと、あなたのヌマクローの体力はもう限界なはず。ノズパス、これで終わりにしてあげましょう! いわおとし!」

「砕け、いわくだき!」

 ノズパスが岩を発射する。ヌマクローが採った行動は簡単だ。

 岩を砕き、衰えることのない勢いを、ノズパスに叩き込んだ。

「ノズパス!」

 浮いていたノズパスを泥に落として、ヌマクローはトドメの一撃を構える。

「使えるか? ヌマクロー、マッドショット!」

 ヌマクローは口から泥の粒を無数に発射し、間近のノズパスに全て命中させた。

 マッドショット。数少ないじめんタイプの特殊攻撃技。泥の粒を飛ばす攻撃だから、遠くの敵にも対応ができる。至近距離で打ち込まれたノズパスが耐えているはずがなかった。

「ノズパス、戦闘不能! よって勝者、チャレンジャーシャモ!」

 宣言の直後、ヌマクローがふらふらと倒れそうになった。

「ヌマクロー!」

 俺は声をかけて、ヌマクローに駆け寄り体を支える。

「よくやってくれた。本当にすごかったぞ…」

「本当に、よくもやってくれましたわね」

 俺の言葉を使い回すようにして、ツツジさんが声をかけてきた。

「ジムはボロボロ、わたくしの自慢のポケモンたちがみんなやられてしまって、本当に参りましたわ」

 ツツジさんは呆れたようにため息をつき、

「正々堂々とわたくしとポケモンたちを見事倒した、あなたとあなたのポケモンたちを称え、その実力を認めましょう。…、あれを」

 審判に向けて指示をすると、審判は小さな箱を持ってきた。俺は中身を察して、ヌマクローの手を一度握ってからボールに戻し、立ち上がった。

 ツツジさんが箱を受け取り、中の物を取り出した。

 ペアルックの指輪だった。

 俺はポカンと口を開いて、ツツジさんは顔を真っ赤にした。

「バッジを持ってきなさい!!!!」

「はっはい!すみません!」

 反対に顔を真っ青にした審判は、大慌てで走り去り、しばらくした後、似たような箱を持ってきた。これは間違えるよ。

「な、な、な、何ですの??」

「強がらなくていいですよ?」

 今時は女性から渡すものなのか、でもペアルックみたいなのだとそういうのもありそうだ。

「えー、ごほん。き、気を取り直して。あなたの実力を認めて、このストーンバッジを授けましょう」

「ありがとうございます。今日のバトルを次にも活かします」

「是非そうしてください。あと半年しかありませんが、ポケモンリーグへの挑戦も考えているんですの?」

「いえ、今年は俺にできることをやるだけやってみるって感じです。来年は出たいと思っています」

「そう。それも良いですわね。さて、外に出ましょう。生徒たちが待っていますわ」

 俺はツツジさんの後ろに着いていき、ジムの部屋から出ようとした。しかし、2人が部屋を出る前に、部屋に先ほど闘った生徒…カツオとミキエが血相を変えて入ってきた。

「ツツジ先生、大変!」

「テロリストだ! 街でヤバいやつらが暴れてる!」

「何ですって⁉️」

 俺を置いてツツジさんは駆け出し、すぐに俺のことを思い出したようで、

「あなたは旅人でもあります。ですのでわたくしたちに協力する義務はありません。しかし、よろしければ」

「もちろん、俺も行きます!」

 断るわけがない。こんなところで騒動を無視して街を去るほど非情な人間じゃない。

 俺とツツジさんは騒ぎが起きた街に飛び出した。

 

 

 

レポート

九月六日 カナズミシティ

 

 

手持ち

 

LV11  ラルトス

 

LV16  ミズゴロウ→ヌマクロー

 

LV11  アゲハント

 

LV8  スバメ

 

図鑑

17匹(新:ノズパス、ヌマクロー)




中学版との違い
・ツツジが強すぎる()
・ツツジの一面を見せる指輪シーン
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