ポケットモンスター ホウエン地方編   作:とーさかしゅん

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今回はたくさん番号で振り分けて、多くの視点から書こうと思いました。ツツジの掘りがまだまだ弱いですね、うーむ。ラナは敢えてまだ掘らず、「何かある」という感覚を付けようとしました。
次回はムロジムへ行きます(早い)。中学版とは違って楽に勝てないシャモの前に立ちはだかるのは?
それではお楽しみくださいませ。


第九話 vsドジョッチ 共闘

 

 1 9/6 カナズミシティ

 

 外に出ると多くの市民に囲まれた。俺ではなくツツジさんにだ。俺は巻き込まれる形で円の中心に閉じ込められてしまった。

「ツツジさんどうしましょう!」「あっちで人が倒れてる!」「デボンの建物が襲われて」「何やら荷物が奪われて!」「市民が人質に…」「噂では火事も起きてるって」「ツツジさん」「ツツジさん何とかしてください!」「ツツジさん!」「僕らはどうすれば!」

「一度落ち着きなさい!」

 ツツジさんはピシャリと言い放った。俺は思わず肩をすくめた。市民たちも押し黙る。

「まずわたくしは市民とポケモンの安全確保に向かいますわ。身も蓋もない、混乱から生じた噂には基本耳を貸さないこと。敵の罠かもしれませんから。ただし人命に関わることであれば大人数で現場に向かいましょう。そこのあなた」

「はい!」

「人質、というのは?」

「はい、海賊みたいな奴らが市民を人質に取っていて」

「要求は?」

「え、ええと。…そうでした! 『抵抗しなければ危害を加えない』と叫んでいました」

「では彼らが暴れない限り、事態は大きくなりませんね。人質にはわたくしが動くなと言っていたとお伝えください」

「はい!」

「わたくしは人々の避難に力を注ぎます。できる限り街にいるポケモントレーナーには、わたくしたちに協力して貰えるようにしてください」

「「はい!」」

 街の人たちはツツジさんの指示を聞くと、一切文句も言わず、迅速に駆け出した。ポケモンを持つ者は海賊服の連中…おそらくアクア団であろう奴らの所へ向かい、ポケモンを持たない大人たちは、子どもを連れて避難を始め、子どもたちは自分たちですでに避難を始めていた。

 ツツジさんの手腕なのだろう。騒ぎが少しずつ小さくなっていく。

 ツツジさんは俺に向かって言う。

「シャモくん。あなたは事件の首謀者を追ってください。わたくしはこの街を守ります。ですがどうか無茶をしないで」

「わかりました。ではお願いなんですが」

「なんでしょう?」

 俺は腰のボールラックからモンスターボールを2つ取り出して、ツツジさんに差し出した。

「ヌマクローとラナ…ラルトスをポケモンセンターに預けて貰えませんか? 今からこいつらに頼るわけにはいかないので」

「わかりましたわ。わたくしが責任を持ってこの子たちを預かりましょう」

 俺はツツジさんに別れを告げると海賊服の男の一人に向けて走り出した。

 男はボールを取り出そうとするが、驚きのあまり取りこぼしてしまう。

 いちいちポケモンバトルなんてしない。俺はボールの1つを真上に投げ、男に飛びかかって馬乗りになった。右手で相手の腕を封じ、もう片手で頬を押さえる。タコのような口になった男に向かって俺は叫んだ。

「アクア団だな⁉️」

「ぅむ! ぅむーっ!」

 男は全力で首を縦に振った。そのタイミングでスバメが飛び出した。

「スバメ、つつくの構えだ」

「スバッ」

「ぅむむむーっっ⁉️」

「デボンから何かを盗ったか? そしてもしそうなら、それを持ってる奴はどいつだ?」

「もぐもごむぐっ」

「既にジムリーダーが動いている。お前らの計画は失敗だ。ここで無駄に殴られるよりさっさと吐いた方がいいだろう?」

「むぐっ、ゆむー、いうぁらあなひて!」

 俺はようやくアクア団の男の口から手を離した。

 男は街の東側の出口の方に向かった団員が、デボンのにもつを奪ったと話した。

 街のアクア団は、多くが倒されて捕縛されていた。

 たくさんのイシツブテを侍らせたツツジさんは、アクア団員を一網打尽にしていた。

「ツツジさん、俺は東側に行ったアクア団たちのところへ行きます」

「わかりましたわ。わたくしも彼らを警察に引き渡したらすぐに向かいますわ」

 再びツツジさんと別れた俺は、スバメとともに街の東に向けて走りだした。

 

 2 9/6 116番道路

 

 夕方になると、雲行きが怪しくなってきた。

 結局、アクア団の連中を掴まえることはできなかった。逃げ足が速いのかどこかに隠れているのか分からないが、街を出てから一度も姿を見つけられていない。

 それにしても、この道路は少し変わっている。

 道として完成はしているはずだが、何故か資材のようなものがあちこちに置いたままになっている。こういった障害物もまた、アクア団の格好の隠れ場所になっているのだろう。

 日が沈み、やがて雨が降り始めたので、俺はなんとか雨宿りできないとこが無いか探した。

 東に歩くと、やがて洞窟が見えてきた。俺は洞窟で雨をしのいで一晩過ごすことにした。

「こういうとき、ほのおタイプのポケモンがいると楽なのかなあ」

 と、声を投げかけるが返事はない。しまった。ラナをツツジさんに預けたことをすっかり忘れていた。

 壁に手を置いて、一歩ずつ慎重に足を進める。

「そういえば、母さんがランタン入れてくれたんだっけ」

 俺はリュックに手を入れて、手の感触だけで探しだした。だんだん目が慣れてきたから、途中からは普通に目で見つけることができた。

 出てきたのは電球の付いたランタンではなく、ろうそくに火を灯すタイプのものだった。

「マジか」

 またしてもラナにリアクションを求めるような独り言をしてしまった。

 俺は祈るような想いでマッチを擦る。なんとか火が付いて、辺りを灯すことができた。

 少し、奥を探索してみるか。俺は暗くなっていた道の先を照らすと、

「あ」

「あ」

 縞々の海賊服がいた。傍らにはアタッシュケース。間違いない。こいつがデボンの荷物を奪ったやつ!

 アクア団のしたっぱが尋ねてくる。

「お前、何者だ?」

「カナズミシティから来たトレーナーって言えば、察してくれるか?」

 したっぱはすぐに後ろに飛び退いて、モンスターボールを投げた。中からは青と灰色のドジョウのようなポケモンが出てくる。

『ドジョッチ、ひげうおポケモン。タイプ:みず、じめん。体がヌルヌルの膜で覆われているので敵に掴まれてもヌルリと逃げ出せるのだ。ヌルヌルが乾くと体が弱ってしまう』

 直接攻撃に強い、ホエルコみたいなやつか。だったら、

「ゆけっ、アゲハント!」

「先手必勝だ! ドジョッチ、みずでっぽう!」

「アゲハント、かわしてかぜおこし!」

 アゲハントは羽ばたきを利用してみずでっぽうをひらりと避けて、その勢いで風を扇ぐ。

 ドジョッチは壁にぶつけられるも、負けじとアゲハントに飛び付いてくる。

「どろかけ!」

 どろかけ、みずでっぽうで濡れた地面を掘り上げて弾としてぶつけてくる。しかしアゲハントはひこうタイプ。じめんタイプの技は通用しない。

「相性くらい覚えなさい! すいとる!」

 すいとるはくさタイプの技。じめんとみずの両方に対して効果は抜群。ドジョッチはあっという間に倒された。

「くそ、こんな強いやつが来るとは思わなかったぞ! それに俺だけ置いてけぼりだなんて、なんてついてないんだ。くそっ」

 ドジョッチをボールに戻しながら、アクア団のしたっぱは悪態をついた。作戦の重要人物を置いていくとは、よほどカナズミシティのトレーナーたちの反撃で混乱したようだ。全く恐ろしい。

「だが、俺にも秘策はある! こいつを見ろ!」

 したっぱは岩の影から何かを取り出した。俺が慌てて身構えるが、すぐにその正体はわかった。

 ポケモンだ。

「このキャモメ。カナズミを出るときにじーさんから奪ってやったんだよ。どうだ、一般人のポケモンの命がかかっているんだ。見逃してくれるよなぁ?」

 

 3 9/6 カナズミシティ

 

 僕たちは今カナズミジムにいます。ジム戦でゴロくん(勝手にそう呼んでいます)が、口から血を出したときはびっくりしたけど、どうやら口を切っただけのようで一安心です。

 治療が終わってもトレーナーの迎えがないポケモンは、ベッドルームに移されますが、さっきツツジさんが迎えに来てくれて、僕たちにご飯をくれました。ゴロくんは怪我のことなんか忘れてもりもり食べています。多分、進化のときにエネルギーを消費しているからかもしれません。ところでヌマクローに進化したゴロくんを、これからなんと呼びましょう。これからも勝手にあだ名で呼ぶのは、ちょっと失礼かと思うので、訊いてみましょう。

「ねえ、ゴロくん」

 反応はありません。どうして?

「あのー、ゴロくん?」

 2回目で反応しました。

「もしかして、俺のこと?」

「あ、うん」

 しまった。勝手に呼んでいただけだから、ゴロくんは自分をミズゴロウ(ヌマクロー)だと呼ばれいるものだと思っていたのですね。

「ゴロくんねー」

「あ、すみません。つい」

「いいよ。仲間なんだし、そういうあだ名とかもあるでしょ。それにラナの方が先輩だし」

 先輩。センパイ。いい響き。でも、

「僕は先輩とか後輩とか、そういうのはいいかな。確かに手持ちになるのには順番があるけど、レベルは今はゴロくんの方が上でしょ?」

「む、確かに」

「というか、そうじゃなくて。僕がゴロくんに話したいことはゴロくんがヌマクローになったから、ミズゴロウのゴロくんから別のあだ名にしようかなって思ったんだよ!」

 ん? なんか、自分でも何言ってるか分からなくなってきたよ?

「とにかく! ヌマクローとなったゴロくんの命名式を行います!」

「俺はゴロくんでいいんだけど」

「良くない!」

「なんで⁉️」

「今日から君はヌマくんです!」

「ヌマくん、ヌマくんねえ。いいんじゃないの?」

「閉会!」

「はやいよ」

 かくしてゴロくんはヌマクローになってヌマくんになりました。

 話し合いが終わると、今度はヌマくんが訊いてきました。

「そういやラナってなんでラナっていうんだ? ラはラルトスのラなんだろうけど」

 そういえば、別に名前の意味とか教えたこと無かったですね。

「僕の最終進化系ってサーナイトって言うんですよ。そこから一文字とってラナです」

 なんか、そのまんまな名前ですね。ヌマくんもそうですが。

「シャモはラナの進化系は知ってるんだな」

「そりゃまあ昔…、おっと、昔から一緒にいるからね」

「? それもそうだな」

 危ない危ない。言ってしまうところだった。

 彼の昔話は誰にも広めないって決めたんだから。

 もう口を滑らせまいと誓っていると、突然、僕の胸の辺りがズキリと疼いた。

「うっ」

「お、おい」

 唐突のことだったからうめき声を出してしまった。ヌマくんが心配してこちらに寄ってきた。

 痛んだのは胸の辺り。感情をキャッチする頭の突起から、受信した巨大な感情を一度に受け止めたからだろう。

 何か、嫌な予感がする。

 

 4 9/? カナシダトンネル

 

 何かが落ちた。

 次に目を覚まし、始めに感じたのは頭の鈍痛、そして左頬の焼けるような感覚。なんとか上半身を起こして、立ち上がろうとすると今度は右足に激痛を感じた。

「起きたか」

 暗闇から俺とは別の声が聞こえた。

「ここ、は?」

 俺は近くのゴツゴツしたものに背中を預けて、声の主を尋ねた。

「覚えていないのか? 俺とお前でバトルしていたら雷が落ちたようでな。立て続けに壁に攻撃が当たったせいかトンネルが崩落したんだ」

 崩落? ここはトンネルの中なのか。俺は頭を回転させて、必死に記憶を辿る。

 確かあいつに騙されて追い詰められた俺は、彼のコマタナに顔を殴られて崖から…。アクア団のしたっぱからデボンのにもつを取り返し。ラナがあいつの道具で。

 おかしい。変な情報が、知らない話がある気がする。

 思い出した。俺はデボンのにもつを奪ったアクア団を追って、雨宿りのために入った洞窟でしたっぱを見つけてバトルをした。そして。

「ッ!」

「おい、動くんじゃあねえ。応急手当はしたが今は激しく動いちゃダメだ」

「なんで助けた」

 俺はアクア団の男を睨み付ける。

「お前は敵だが、見殺しにするつもりもねえってだけだ」

 アクア団の男は特に気にしていないような口ぶりだった。こんな奴がどうしてカナズミシティを、デボンを襲ったんだろう。

 彼は再び話しかけてきた。

「情報を伝える。今は9月7日、時間はもうすぐ夜明け。途中までしか掘られていないトンネルの崩落で俺らは腹を空かせながら閉じ込められている」

「戦えるポケモンは俺はスバメとアゲハント、お前のポケモンは?」

「一応ひんし状態のドジョッチの他にズバットが1匹。ただしあり得ないくらい弱い」

「キャモメはどうした?」

「無事だが、話を聞いてくれない」

「当然だろ」

「んだと?」

 険悪なムードが漂うが、お互いすぐに打ち消した。そんなことをやってる場合じゃないと思ったからか。

「俺は何もできないぞ。お前のポケモンは何ができる?」

「アゲハントじゃこの壁を突破できないだろうし、スバメも、難しいな。ヌマクローがいればなんとかなったが」

「お前のランタン、というかろうそくは崩落に巻き込まれて紛失。ポケモンは攻撃できない。飯もない。俺らは詰んだようだな」

 ズバット。確かこうもりのようなポケモンだったような気が…。

「おい?」

 返事が無かったことが気になったのか、暗闇の中から促す声がした。

「いや、ズバットってどんなポケモンか知りたくてさ。出してくれないか? …あ、つーかポケモン図鑑があるのか」

 今までポケモン図鑑を図鑑としてしか見なしていなかった俺は、図鑑を開いて、画面を外に向けた。

 淡い光が洞窟を僅かに照らす。

『ズバット、こうもりポケモン。タイプ:どく、ひこう。両方の目が存在しない。口から超音波を出して暗闇を飛び回る』

 閃いた。

「作戦がある」

「なに?」

 とはいえここで素直に全部話すのは、なあ。

 そのままデボンのにもつを持ち逃げされるのは嫌だし。

 だけど、俺はすでに手当てをしてもらうという「借り」がある。さて、どうしたものか。

「あんた、さっき腹を空かせたって言ってたよな?」

「あ? 言ったか?」

「言った言った。この非常食をやるよ」

 アクア団の男は首を傾げながらも、俺の非常食(ハルシオンさんからもらった干しきのみ)を受け取り、そして食した。

「じゃあここから出る方法を教える代わりに、デボンのにもつを返してもらおうか」

「は? ダメだ。そもそもお前、俺が手当てした借りがあるだろうが」

「でも、今返しただろ?」

 アクア団はキョトンとし、自分の口についたきのみの色を拭って、あ、と声を出した。

「お前…」

 低い声で睨んできたが、俺は知らんぷりした。

「だがダメだ。手当てのことは貸し借り無しだが、俺が協力しないとお前も出られないんだ。プラマイゼロだろ」

 チッ、一回騙したからか鋭くなってる。

 こうなったら力ずくで奪うしか手は無いのかなあ。不本意なんだが。

「おい」

 俺がいつまで経っても脱出方法を教えないため、男が痺れを切らして急かしてきた。

「お前の条件を飲む」

 なんと。

「だけどこのメモリーに情報をコピーしてからだ」

「はあ? それだと結局意味ないだろうが!」

「にもつ自体は返ってくるからいいだろ。それとも一緒に生き埋めになるか?」

 …くやしいが、これは俺の負けだな。

 俺はアクア団のしたっぱに作戦を伝えた。

 テロリスト紛いの奴と共闘なんてごめんだが、今だけは自分の命もかかっているんだ。

「足引っ張るなよ」

「こっちの台詞だ。ポケモンは俺の仲間の方が強い」

 

 

 

レポート

九月七日 カナシダトンネル

 

 

手持ち

 

LV12  アゲハント

 

LV9  スバメ

 

図鑑

19匹(新:ドジョッチ、ズバット)




中学版との違い
ツツジの掘り無し
カナシダの崩落無し
ユウキは新キャラ
(もうだいぶ違う…)
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