前置きの有名な狂気スポットを除くと基本はユウリ視点です。
時系列的にはユウリがバッジ0で初めてワイルドエリアに入った時になります。
【注意】
ポケモンが人を襲ったり、「カイリュー、破壊光線」みたいなダイレクトアタック描写あるので苦手な方はブラウザバック推奨
皆さんはワイルドエリアをご存知であろうか?
ガラル地方に存在するオープンエリアであり、かなりの広さを有した場所だ。
マックスレイドバトルと呼ばれるダイマックスしたポケモンを倒して捕獲したり……
ポケモンキャンプをして手持ちのポケモンと交流したり……
オンラインでインターネット接続すると他のプレイヤー達がワイルドエリアに出現し、アイテムをお裾分けして貰ったり……
ロトムラリーというタイムアタックをやったり……
ワイルドエリアでやれることは沢山存在する。
特に、一番人気のスポットはワイルドエリア内のハシノマ原っぱという場所にある育て屋さんだ。
毎日数多くのトレーナー達が、育て屋さんにポケモンを預けてはタマゴを貰えるまで育て屋さん周辺を、自転車で円を描くように回転している暴走族も真っ青な狂気の場所である。
きっとガラルで暴走族がいないのは彼等のせいに違いない。
毎日平均10人近くの自転車乗ったトレーナー達による育て屋前で一斉に回転し続ける様はパレードかなと思った位だ。
何せ色んな色の自転車が通った後には様々なエフェクトと言える輝きが迸るからだ。
因みにロトム自転車にはターボ機能があるので急加速されるのでむやみに近付くと危険なので注意。
偶にタイミング間違えて育て屋さんの店や店員に激突するトレーナーが続出している。
3人近くの自転車によるジェットストリームアタックを受けても平然としている育て屋さんの店員にコクトがドン引きしたのは余談である。
このポケモン世界に転生したコクトはワイルドエリアに潜る前、事前に情報収集を行っていた。
何故ならこの世界はゲームの世界ではなく、人とポケモンがきちんと生きてる世界故にゲーム感覚で生きていると痛い目に遭うことを身を持って知っていたからだ。
そしてワイルドエリアにはある恐ろしい事実が存在する。
ワイルドエリア内での新人トレーナー死亡率1%
これはとある才能に溢れた天才少女が不運を引いたが故にワイルドエリアの洗礼を受けたお話である……
「ハッ!?…ハァ、ハァ……夢、かぁ……」
とある深夜、飛び上がるように目覚めたユウリは呼吸が乱れていた。
そして夢だと自覚して何とか呼吸を整える。
夜のポケモンセンターの宿泊施設にあるベッドでユウリは寝ていたのだ。
「どうしよう……ワイルドエリアから戻って来たのに……まだ怖いよ……」
身体を抱くように震えながらユウリは思い出す。
それは自分が初めて訪れたワイルドエリアでキテルグマに殺されかけた時のことだった……
ユウリの冒険はワイルドエリアまでは順調だった。
一緒にポケモントレーナーになった友達のホップとポケモンバトルをしても勝ったし、今までの旅で戦ったトレーナー達にも一度も負けたことがない。
ホップが自分の兄であるチャンピオンのダンデさんを越えたいというような目標は私にはない。
ただホップに誘われたから流されてポケモントレーナーになった程度である。
けれどそれで良かった。
確かに今の私には何の目標もないが、それでも勝ち続けてきたし、旅を続けていけば何か大きな目標が見つかるかもしれない。
だからまずは自分のポケモンと一緒に強くなれば良いんだと思ってた。
それが楽観的かつ愚かだと思い知るまでは……
最初に貰った初めてのポケモンであるヒバニーや旅の途中で捕まえたポケモン達と一緒にワイルドエリアに一歩踏み出した。
そして幼馴染のホップは強いポケモンを探す為に先に進んだ。
そして私も負けないぞ!という気持ちでワイルドエリアで新しいポケモン探しをしていたのだ。
今まで見たことのない新しい野生のポケモン達、広大な湖、空は雲一つない爽やかな晴れだったから気分は最高であり、気付けばかなり奥地まで進んでいた。
そうして奴は現れたのだ。
つぶらな瞳で長い牙も鋭い爪もない着ぐるみの熊のような見た目の大きなポケモンであるキテルグマが……
目の前のキテルグマは明らかに私へ向けて駆け出しており、私はヒバニー達でキテルグマを倒そうとするもレベルが違い過ぎたのか一撃で手持ちのポケモンを倒されていく。
ホップが言っていた強いポケモンが多いと言う言葉が頭によぎって私は今になって思い知らされた。
「そんな……、私が手も足もでないなんて……」
私のポケモン達は全滅した。
私は敗北したショックで目の前が 真っ暗に なった!
野生においてそれがどれだけ危険な行為なのかを知らなかった。
ショックで呆然としていた私にキテルグマから振り下ろされるメガトンパンチを喰らうまでは……
「がはっ!?」
身体が、くの字に曲がって吹き飛ぶ。近くに壁が無かったので激突することは無かったものの、地面を転がりながら吹き飛ぶ羽目になる。
受け身の仕方なんて知らなかった当時の私は地面を転がったせいで身体中が擦り傷だらけになっていた。
「ッケホ、ッケホ……」
咳き込みながらも何とか立ち上がる。痛みに呻いてる暇はない。
何故ならここには自分一人で今も尚、自分目掛けて迫りくるキテルグマがいるのだから……
「だ、誰か……誰か、助けてぇ!」
私は助けを叫ぶしか無かった。
そうしなければ目の前のキテルグマに嬲られ殺されると子供ながらに理解せざるを得なかったからだ。
だが私の周囲に人影は見当たらず、キテルグマは誰か来るまで悠長に待つつもりはなく、大きな手で攻撃を仕掛けて来る。
命からがら走ってキテルグマから逃げ出す。
何とか入口まで戻ればきっと助かるという淡い期待を抱いていた。
そしてキテルグマから逃げていた私の前に何か大きな影が現れる。
「いやっ……嘘っ……」
それは人影などという希望なんて展開ではない。
私が叫んだことで近くに人間がいると理解した二体のキテルグマであった。
逃げるつもりが囲まれてしまったショックと走り続けていた疲労から地面に崩れ落ちる。
前方には二体のキテルグマ、後方から追い掛けて来るのは先程まで私を襲ってた一体のキテルグマ。
ポケモンもいない……いや、いたとしても、キテルグマに一撃で倒される程度のポケモンが何匹いようが同じであった。
「いやぁ……死にたくないよぉ……お願いしますぅ…誰か助けてぇ……」
それでも私はもう助けを求めるしか無かった。後方のキテルグマが追い付き、三体のキテルグマに囲まれる中で私は恐怖から思わず目を瞑ってしまう。
「エーフィ、サイコキネシス!ポリゴン2、ほうでんだ!」
ブォン!と風切り音と共に後方にいたキテルグマが真横へ吹き飛ぶ。
バチバチバチ!
そして前方にいた二体のキテルグマへ向けて、私とキテルグマの間に入ったポケモンがほうでんを放って、キテルグマ2匹へ電撃を放った。
グマァ!!
キテルグマ2匹は電撃を浴びながらも大きな手で攻撃を仕掛けてくる。
「ポリゴン2、受け止めろ!」
二体がかりの攻撃をポリゴン2と呼ばれたポケモンは一歩も引かずに受け止める。
もしここで避ければ後ろにいる私に攻撃が当たるからだ。
ポリゴン2と呼ばれたポケモンは頑丈なのか、キテルグマ2匹からの同時攻撃を受けても一歩も後退せず受けきった。
そしてポリゴン2が受けてくれたタイミングでキテルグマの一匹が隣のキテルグマへ高速で吹き飛んで激突する。
ピンク色の猫のようなポケモンが放ったサイコキネシスでキテルグマを攻撃しながらもう一匹に激突させることで私とポリゴン2から距離を空けてくれたのであった。
「良くやったポリゴン2」
そしてやって来た少年はポリゴン2の頭を優しく撫でるとポリゴン2は嬉しそうに鳴いた。そして少年は私に向けて言う。
「もう大丈夫!助けに来たよ」
私を安心させる為にはっきりとした口調で少年は笑顔で言う。その言葉に私は安堵したのだった。
その出会いが、後の師匠になる人との出会いだった。
そうしてキテルグマを倒した少年は私をポケモンセンターに連れて行き、応急手当を行った。
ポケモンセンターではポケモン以外にもポケモントレーナーが怪我を負った際の緊急医療が出来るようになっており、そこで私も手当てして貰ったのだ。
そして手当てが終わり、医務室から出た際に少年がいた。
「念の為に確認だが、大丈夫かい?」
「はい、助けていただきありがとうございました!」
私はお礼を言って頭を下げる。
「あの、ところでお名前は?」
「俺の名前はコクトだ。世界各地を旅するポケモントレーナーだ。君の名前は?」
「私はユウリです。コクトさんが助けてくれなかったら私……」
「いや、君は運が良かっただけさ。あのワイルドエリアは高レベルのポケモンもうろつく危険な場所。
少ないとはいえ、新人トレーナーの1%は命を落とすと言われているからな」
「1%……」
コクトさんの言葉に私は思わずゾッとする。普段の私なら少ないんですねと楽観視してただろうが、先程までその1%に遭遇していたからこそ他人事では無かった。
「ワイルドエリアには強いポケモンが多いから、野生のポケモンは避けて通れとか、単独行動するなとか言われなかったかい?」
「いいえ……言われなかったです……」
首を横に振って答える私にコクトさんはため息を吐く。だが当時の私は旅での連戦連勝に浮かれていたのだろう。
ホップやソニアさんは確かに言っていたのだが、話半分にしか聞いていなかったのだと後になって知ったのである。
「ここの安全対策が杜撰だな。せめてどちらかを実行してればキテルグマに囲まれる事態は避けれただろうに……」
コクトさんの言葉に私は確かにと共感する。
もし野生ポケモンを避けて通るようにしていればキテルグマと遭遇することは無かっただろう……
もし単独行動せずに他のポケモントレーナー達と旅をしていれば、協力し合うことだって出来ただろう……
新人トレーナーなのに一人前だなんて慢心してたから命を落としかけたのである。
「今日は安静にしておくんだ。俺も今日はここで泊まってるから何か困った時には訪ねてきて構わないよ」
「ありがとうございます」
そうして私はコクトさんと別れて自分の部屋に戻る。そうして一人になり、眠りにつくと思い出すのはキテルグマに襲われる光景。
とてもじゃないが、一人で眠れる気がしなかった……
手持ちのポケモン達も戦闘不能だった為に今は別室で休んでいるからこそ、頼れない。
私は助けてくれたコクトさんに縋っていたのだろう。
気付けばコクトさんの泊まる部屋に来て、コンコンコンとノックをした。
そして扉からはパジャマを着て寝ていたコクトさんが出てきた。
「んっ……ユウリか、どうしたんだいこんな夜遅くに……」
「あの、コクトさん。一緒に……寝てくれませんか?」
「んんっ!?」
いきなり何を言うのかと思ったコクト。
深夜だったから眠気ながらのつもりが一気に目が覚めてしまった。
だがユウリの表情を見てコクトは色めきだった話とかではなく、不安や恐怖を抱えた一人で眠れないものだと理解する。
何よりかつての自分も同じような時があったからこそ共感出来たというのもあった。
「そうだな。確かにあんな目に会えば、一人は怖いよな。良いよ、一緒に寝ようか」
「し、失礼します」
部屋にユウリを入れてポンポンと自身のベッドへユウリを招き入れるコクト。
「ユウリ、手を握っても良いか?」
「は、はい……」
ユウリはおずおずとコクトの手を握る。
「俺も最初に旅をして怖い目にあった時に手を握って貰ったんだ」
「コクトさんも私と同じような目に遭ったんですか?」
「そうだよ。まあ俺の場合は、運良くボロボロになっても街まで一人で逃げ切れたんだけど……」
「助けは……来なかったんですか?」
自分のように誰かが助けに来てくれたのではとユウリは思ってしまってたので思わず尋ねてしまったのだ。
「ううん、そんな都合良く人は来なかった。おとぎ話のようにヒーローでも来てくれれば良かったのにね」
「でもコクトさんは……私のヒーローでした……」
「残念ながらヒーローとは真逆かな。俺は強いポケモンを厳選してただけだから」
「厳選?」
「そう、同じポケモンでも強いポケモンと弱いポケモンは存在する。強いポケモンを俺は探し続けてたんだよ」
「強いポケモン……」
「命を落としかけたことで分かったのは、本当に命の危機に直面した際、頼れるのは強いポケモンだってことだ……」
「確かに……そうですね……」
私はその言葉に共感していた。先程私が手も足も出なかったキテルグマ達相手にコクトさんのポケモン達は圧勝していた。
サイコキネシスでキテルグマを一撃で倒し、ポリゴン2は二体がかりの攻撃を同時に受けても耐えきる耐久力を備えていた。その頼もしさは強いポケモンでなければ実現しなかったであろう。
「コクトさんもジムチャレンジですか?」
「いや俺は違うな。俺はホウエン地方の元チャンピオンだからガラル地方のポケモンリーグに参加するつもりはないよ」
「元チャンピオン……コクトさんは凄いんですね…」
「ありがとう。と言っても俺はチャンピオン職に興味が無いからすぐ辞退したんだけどね」
「チャンピオンって凄いじゃないですか!」
「いやチャンピオンとか変人ばかりだよ。石収拾して会議サボる御曹司とか、考古学者なアイス狂いとか、トレーニングサボってたせいで厨二病に敗北する爺さんとか、フラダリクソゴラグランプリとかやらかす女優とかな」
「チャンピオンって変人ばかりなんですね。ダンデさんもそうなんでしょうか?」
「デパートの迷子のお知らせで呼ばれる大人をまともとは呼びたくないなぁ……」
「その光景はビックリですね」
私はその光景を浮かべて思わずクスクス笑う。先程までの恐怖の感情は和らいでいった。そうしてコクトさんと話していると眠気が出てきたのでそろそろ眠ることにする。
「おやすみユウリ」
「おやすみコクトさん」
そして二人は眠りについたのであった。
そして私が勝手に部屋を抜け出してたので、ジョーイさんに迷惑をかけてしまい、
朝一でコクトさんと一緒にお説教を受けたのは余談である。
ワイルドエリア
…本作ではワイルドエリアのトラウマにポイントを当てた。
ワイルドエリアは新人トレーナーの1%が命を落とすと言われる危険地帯。
この1%は高レベルポケモンの他にエリアを跨ぐと切り替わる悪天候による遭難事故なども含まれる。一歩超えると砂嵐とか濃霧に切り替わるとか大した冒険知識ない新人トレーナーじゃあ危険である。
死亡率が低いのはコクトが言った通り、
・ワイルドエリア内では野生ポケモンとの戦闘を避ける。
・単独行動せずトレーナーの複数行動をする。そうすれば一対一じゃなく、一対ニとかも可能な為。
このどちらかを行うことで最低限ポケモンの全滅を避けられる為に1%で済んでいる。
本編で先輩トレーナーが同行するのは野生で全滅すると人生のゲームオーバーになる為、割と常識的だったりする。
今回はユウリが天才少女故に先輩トレーナーに当たるソニアやダンテの忠告を話半分に聞き流してたのが原因だったりする。
下手に才能ある奴程、危険の見極めが甘いという例である……
作者のトラウマは固定シンボルのイワーク。
野生のポケモンでレベル上げしようと思ったらレベル20前後のイワークだったのに驚愕し全滅させられました。