俺は『なのちゃん』が好きなんだ!   作:思い出して懐かしめ

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日常パート(?)


ヒロイン(たぶん)たちが可愛い

 

 

 

 

フェイトに襲われるイベントが起きるまでは、この世界がとらいあんぐるハート3の番外的な世界だと思っていた。高町家も戦ったりしている感じもなくただの若々しい家族としか見えなかったところについに訪れたHGS事件。俺という異物のせいなのか元からそういう世界なのかわからないが、この世界は俺の知っているとらハ知識が役に立ちにくい世界だ。

 

フェイトに襲われたことでHGSと夜の一族が存在することは確認したわけだけど、フェイトと一緒に襲ってきた夜の一族についてはどうなったかわからないままだ。月村忍に聞ければ良いんだが、あそこには信用するにはまだわからない事が多いままの月村すずかがいる。今が安次郎事件の起こる前なのか起こった後なのかもわからないし、もし月村すずかが安次郎や氷村遊のスパイとかだと最悪こっちが消される可能性だってある。

 

ただの9歳児な俺が戦える手段を持っているわけもないので、なるべく関わらない方向で過ごしつつも何かあった時のために高町家(戦闘民族)の好感度を上げておかねば…

 

そんなある日、なのちゃんから「今日学校終わったら家に来て」というメールをもらったので高町家に行くことにした。なのちゃんとは学校が別になったが、なんだかんだ頻繁に会っているし遊んでいる。高町桃子から教わりながら作ったというデザートをもらって感想を言ったり、学校が楽しいのか「今日はこんな事があったの!」という話を俺の家で聞いたりと様々だ。なのちゃんが来ない日は以前と同じようにこの世界でできた友達と遊ぶ事もあれば最近は図書館まで足を伸ばしてひたすらこの世界について調べ物をしたりもしている。ちゃんとなのちゃんにもそれは話しているし、前みたいに心配させないようにはしているが。

 

「なーのーちゃーん、あっそびましょー」

 

「はーい、上がってー」

 

高町家へとやってきて、勝手知ったるとばかりにリビングへと移動する。どうやらなのちゃんは見せたいものがあるようで手には1枚のDVDを持っており、ニコニコとしている表情からこれからそれを見るのは間違いないだろう。

 

「DVD見るの?なにかの映画?」

 

「ううん、実はね…フェイトちゃんからビデオレターが届いたの!だからみっくんも一緒に見ようと思って」

 

「そっか、手紙もいいけど元気な姿を見られるならそのほうがいいもんね。でもいつの間にフェイトと連絡先の交換してたの?」

 

「フェイトちゃんとお別れする時にうちの住所だけは(リンディさんに)教えてあったから送られてきたの。それにみっくんのおかげでみんなで見ることができるから、あの時一緒にいてくれてありがとうなの」

 

ビデオレターを見るのはわかったが俺のおかげってどういうことだ?今日は高町家のみんなも早い時間で帰ってくる予定らしく、ビデオレターはみんなが帰ってきてからお披露目との事だ。それまでの間に俺が何をしたのか聞いてみることにした。

 

そこでわかったことだが、どうやらHGS事件の中でのフェイトとのあれこれがなのちゃん成長イベントになっていたみたいだ。お互い意見をぶつけあったりそこから友達になってお別れしたり…そういえば目の前にいるなのちゃんはそういうのは無縁でここまできてたわ。唯一のお別れフラグだった高町士郎がまさかの生存しているというせいでフラグが仕事していないんだった。

 

本来の俺が知っている『なのちゃん』は、高町家だけでなく幅広い知り合いがいる。もちろんほとんどが高町恭也に関わる人物たちだけど、その人物たちは海鳴だけでなく世界中で活躍していたりするので別れと再会に慣れているとも言える。だが、うちのなのちゃんはある意味普通の小学生らしい狭い世界で過ごしてきたのでそういう経験がなかったんだった。

 

そんな中で突然HGSや夜の一族という非日常の世界を目の当たりにし、更に聞けばフェイトの母親(製作者)も目の前で身投げしたらしい。なるほど、なのちゃんは今回の出来事で色々とヘビーな経験したんだなぁ…

 

そして肝心の俺が何をしたのかについては大したことはなかった。ただ俺が高町家のみんなに助けを求めた事で、なのちゃんがほんの少し感じていた距離が少し縮まったみたいだった。小さい頃からなのちゃんと俺は常にと言っていいくらい一緒にいた。けれど家に帰れば一人で考えてしまう時間が多かったみたいで、やっぱり何もできない自分の事をやるせなく感じている事があったらしい。

この辺りは晶とレンがいない事による影響だろうな。士郎と桃子、恭也と美由希が仲が良いのはいいが、そこで年の離れた幼いなのちゃんは距離を感じてしまったんだろう。士郎がいない原作の桃子は大黒柱たろうとして気を配っていたし、晶とレンは美由紀よりも年下だったのでなのちゃんと距離が近かったんだと思う。精神年齢的にはなのちゃんのほうが上だったような気もするが…

 

かと言ってなのちゃんと俺ではああいう関係にはなれない。俺は基本なのちゃんを可愛がることしかしていないし、とらハ知識のある累計年齢三十路超えなのでケンカになることもない。高町家では遠慮しているっぽい「今日はこんな事があってね」っていう会話も俺にはよくしてくるし「こういう時どうしたらいいと思う?」って聞かれる事も多い。ちなみに9歳なのにもう将来に悩んでいた事もあった。早すぎるだろと思わないでもないが、どんな道でも専門的な分野であれば早くから未来を見据えて勉強したほうが良い事は知ってる。だから「今のうちから桃子さんに色々と教えてもらったほうがいいよ。何をするにしても料理上手で困る事はないからね」って翠屋二代目店長フラグを立てておいたし、なのちゃんもそれによって桃子から料理などを教わっている。

 

反対に「みっくんは将来何になりたいの?」となのちゃんから聞かれたが、正直なところ何も考えてないので忍者と伝えておいた。まぁなれるかどうかは別としてとらハ世界特有の職種である忍者の資格は取っておこうかとかは考えているくらいだ。なのちゃんは知らなかったみたいだから正義の味方になりたいとかいうような子供を見る目をしながらお姉さんぶった感じで「なれるといいね」って言ってた。実は忍者は立派な国家資格なんだよ?あとになって「ふええ…忍者さんって本当にいたの~?」とかアワアワするがいい。

 

そんな感じでなのちゃんと話していると高町家の面々が続々と帰宅してきた。それぞれに挨拶をしていき、全員がリビングへと集合した後にビデオレターが再生される。そこにはフェイトが映っており、何やら照れくさそうな恥ずかしそうな表情で画面に向かっていた。

 

『なのは、元気にしてる?こっちはみんな良くしてくれて、毎日いろいろと教えてもらいながら勉強したりもしています』

 

やはり今はHGSの施設かどこかで一般常識などを学んでいるところのようだ。なのちゃんはそんなフェイトを見て嬉しそうにしている。御神流の三人もフェイトの事は知っているようで、そんななのちゃんの様子を微笑ましく見ているな。桃子は知らないはずだけど、なのちゃんにビデオレターでやり取りするような友達ができた事を優しい表情で見てるし、俺も同じような表情でなのちゃんを見守っておこう。

 

フェイトの話は最近こんな事があったといった内容が多く、それ以外にもなのちゃんだけでなく士郎恭也美由希も含めていつかまた会えたら…とか、聞かせてもらった翠屋っていうお店にも行けたらいいな…みたいな事も言っていた。ビデオレター自体はそんなに長いわけでもないのですぐに終わったわけだが、そんなフェイトの話の中で俺にとって無視できない単語が飛び出した。クロノとリンディという名前だ。他にもいくつか名前が出てきたんだが、俺の知らない名前だしそれはどうでもいい。だがその2つの名前がなんでHGSであるフェイトから出たのかがわからない。

 

HGSと退魔師と夜の一族と法術はそれぞれ別物だと思っていたんだが、もしかしたらこの世界では全部がどこかで繋がっているのか?そんな事になったら厄介極まりないものになるが…だがそれならフェイトが夜の一族の女と一緒に行動していたのも納得できる。だがそうなるといくら御神の剣士とはいえ一筋縄ではいかないだろう。実はこの世界では恭也がしれっと霊剣である御架月持ってて、美由希も同じく霊剣十六夜持ってて霊力併用御神流とか神咲一灯とか使えるとかなんだろうか…?

 

「ねぇ、みんなでフェイトちゃんにメッセージ送りたいんだけどいいかな?」

 

俺の答えの出ない思考の迷路はなのちゃんからの一言で終了した。それだけはちょっと勘弁してもらえないですかなのはさん。俺も映らないとダメ?いあいあ心の準備が…恥ずかしいとかじゃなくてですね。これどう考えてもフラグじゃないのかとか思って…って、ちょっとなのちゃんビデオこっち向けないで!

 

 

 

なのちゃんの提案で高町家+俺がそれぞれフェイトに向けてメッセージを言っていき、返信用のビデオレターは無事に撮り終わる事ができた。この貸しはでっかいぞなのちゃん!ちなみにお返しは美由希に射抜を見せてもらう事でいいよ!あの眼鏡を外してからの射抜はぜひ生で見てみたいんだ……ちなみに神速は使わないでね?俺じゃ見えないから。

 

「そうだ、みっくん。今度の日曜日って空いてる?」

 

「何も用事ないけど何かするの?」

 

「ほら、みっくんって本を読むのも好きって言ってたでしょ?その事をすずかちゃんに言ったらすずかちゃんも童話が好きでお話したいって言ってたんだ」

 

あー…そういえばそんな事を言ったような気がする。確かいろいろと調べてた時になのちゃんに聞かれて本を読んでたとか返事したわ。しかもどんなのが好き?って聞かれたから「(本当は怖い)グリム童話」とか冗談で言った。それをなのちゃんが月村すずかに言ったのか…それが本音なのか建前なのかわからんが、俺としても月村すずかについては敵なのか判断しておきたいと思っていたので望むところだ。

 

「そっか、別に大丈夫だよ。なのちゃんも一緒に行くんでしょ?」

 

「なのはちょっとやりたいことがあるから行けないの。だからみっくんだけで行ってきてくれる?」

 

「ごめん実はその日は腹痛だから別の日にしてもらってもいいですか?いつがいいかは追って連絡しますんで…」

 

「むー、そんなバレバレの嘘でごまかせるわけないでしょ?みっくんてすずかちゃんには余所余所しい態度するから、何か嫌われるような事したかな?って気にしてたんだよ。よくわからないけど、みっくんにもすずかちゃんも仲良くしてほしいの」

 

前言撤回、やっぱり行きたくないです。なのちゃんが行くのなら別に良かったんだけど二人きりは怖いです。つーか余所余所しい態度を出してるつもりはなかったけどバレてたのか…まぁなのちゃんに対する態度と全然違うからそこを見られたのかな?

 

例えばこの世界がとらいあんぐるハート4(主人公:俺)の世界だったとして、月村すずかがヒロインの一人であると仮定したとしても穏便に済むとは思えない。HGS枠ヒロインのフェイトの時はいきなり攻撃されたように、夜の一族枠ヒロインの月村すずかも何かしらあるはずだ。もし今の月村すずかが安次郎や氷村遊サイドだったら、良くて魔眼で操られるくらいで済むかもしれないが最悪なんの抵抗もできずに消される。だがなのちゃんがその場にいたら、恭也の妹であり月村忍の義理の妹にもなるから安易に手を出せない最高のお守りだったのに…

 

「……わかったよ。もし俺に何かあったら後の事は任せるね」

 

「何もあるわけないの。というか、どうしてみっくんはそんなにすずかちゃんを怖がってるの?すずかちゃんはとっても優しい良い子だよ?」

 

「うーん…近寄りがたい的な?まぁ図書館なら大丈夫そうだし、仲良くなれるように頑張ってみるね」

 

さすがに「魔眼で操られたり殺されるかもしれないから」とは言えない。なのちゃんは知らないだろうし、何よりも俺が何でそれを知っているのかを答えられない。下手にそれが伝わってしまったら魔眼で自白させられる事だって考えられるし、とらハ知識なんて引っ張り出されたらどう悪用されるかわかったもんじゃない。

 

もしこれが月村邸や人気のない場所なら断固拒否の姿勢を崩さないところだが、図書館ならば公共の場所だし迂闊な真似はしないだろう…と信じたい。これを断ってしまうとなのちゃんだけでなく、恋人の妹に対する態度から恭也からの好感度もダダ下がりする可能性が高い。なので高嶺の花的な回答をしつつ、仲良くなれるようにしないといけなくなってしまった。ちなみに後から聞いた事だが、これは俺たちを仲良くさせようというなのちゃんの計画だったようだ。

 

 

「みっくん、遅れてごめんね。待たせちゃった?」

 

「ううん、ちょうど今着いたところだよー」

 

「良かったぁ。なのちゃんからみっくんが童話とか好きって聞いて、いろいろとお話してみたかったんだ」

 

「俺もなのちゃんから聞いてビックリしたよ。それじゃあ入ろっか」

 

 

まるでデートの1シーンのような「待った?」「今来たところだよ」だが、実際は30分前くらいに到着している。さすがにバカ正直に本当の事は言わないが。図書館に入り、二人で童話コーナーに行っていくつか本を取ってから机に向かう。ただ読むだけならわざわざ二人で来る必要もないので、お互いに感想を言い合ったりそれぞれの視点での考察を話したりしていった。もちろん図書館なので大きな声では話せないが、登場人物ごとの場面に対する心境などを予想したりと何気に結構盛り上がった。読んでいて主人公には感情移入しやすいが、脇役や相手役などの様々な登場人物に対する場面場面の考察がお気に召したらしく、気がつけば1冊の本でかなりの時間話し合っていた。

 

「なのはちゃんから聞いてたけど、本当に本が好きなんだね。こんなにたくさん話したの初めてかも」

 

「今の話に着いてこれるってすずかも結構読み込んでるねー。なのちゃんとはここまで本の事で話さないから、つい思わず熱く語っちゃったよ」

 

「みっくんとのお話がすごく楽しかったからだよ。クラスメートの男の子とかだとそこまで話せないのに、みっくんだと楽しくてたくさん話せちゃった」

 

普通の9歳の男の子ならきっとそんな事を言われたら喜ぶとか照れるとかなんだろう。だがそれを聞いて俺が思ったのは「どこの飲み屋の女のセリフだよ!?」というツッコミだった。これって「自分は普段口下手だったり人見知りするんだけどあなたには色々と話せちゃうわ」っていう初級テクニックだろ?天然なのか計算高いのか判断できないがさすが夜の一族なだけあって人間を手玉に取るのはお茶の子さいさいってか。まぁ途中から夜の一族であることを忘れて普通に話してしまっていたんだけどさ。

 

1冊目の話が終わったので休憩がてらちょっとした雑談をしつつ、話し終わった本を戻そうと席を立つ。月村すずかには何冊か持って来てある本の中から次の本を選んでもらっておきながら俺は話し終わった本を戻すため童話コーナーへ移動していたら、そこには車椅子に乗った女の子が本を選んでいるようだった…んだが、俺はその横顔を見て驚きのあまり名前を呟いていた。

 

「……レン?」

 

「え?」

 

「いや、ごめんね。人違いだったよ」

 

そこにいたのは鳳蓮飛、通称レンだった。いや、良く見れば髪の色も違うし別人なんだけど思わず名前を呼んでしまうくらいに似ていたんだ。とはいえ人違いなのは間違いないので軽く謝ってその場を離れようとしたんだけど、なぜか向こうから話しかけてきた。

 

「あ、その本…」

 

「これ?今から戻すところだったんだけど、もしかして探してた?」

 

「ううん、そうやなくて私もそれ読んだことあるんよ」

 

「そうなんだねー。今この本の感想とかをもう一人の子と言い合ってたところだったんだけど、まだ別の本でも話すから良かったら参加する?」

 

「え?でも悪いんやない?」

 

「俺は別に構わないよ?君の都合が良ければだから無理にとは言わないしね」

 

レンとは少し違い京都訛りっぽい話し方をする女の子も読書家のようで、それならと今月村すずかとやっている読書感想会に誘ってみる。理由はいろいろあるが、この子が話したそうにしているように見えたからだ。決して夜の一族の事を思い出して誰かを巻き込もうと思ったわけじゃない。

 

車椅子の子も参加してくれるみたいなので後ろから押してあげて一緒に移動し、月村すずかにも「参加者を連れてきたよ」と軽く紹介しておいた。どうやら二人は面識こそないもののお互い図書館でその姿を見かけたことはあったらしく、それがわかってから仲良く話していた。ちなみに俺の姿も見られていたようで「難しそうな本を読んでる子がおるなって思っててん」との事だったが、俺はまったく覚えがなかった。たぶんこの世界について調べている時に見られていたんだろうな。夜の一族や龍とか御神などの裏の事はわからないにしても、HGSやCSSとか忍者などとらハ世界では一般的なものについてなどは情報を得られるはずと思って読み漁ってたしな。それでもわからない事が多すぎて、気分転換に童話やら冒険小説などの空想物語を読んでたわけだし。

 

車椅子の子は八神はやてという名前の同い年の女の子で、車椅子を使用しているところからわかる通り足が悪く学校にも行けていないそうだ。そのため友達もおらず、こうやって図書館などで本を読んで過ごしている事が多いらしい。だからというわけではないが、ここに同い年くらいの子がいるのを何度か見て友達になりたいと思っていたということだった。

 

とらハ世界は初期設定が孤独なキャラ多くね?孤独というよりは人を避けてるって言ったほうが正しいのかもしれないけど…まぁ結構な割合で人外がいるから仕方ないのかな?八神はやてについては…たぶん主人公関係に絡まないその他大勢の一般人キャラの中の1人なんだろう。学校にいる友達とかと同じく、事件に巻き込まれたりする心配がないから遠慮なく普通の友達付き合いができるわけだ。

 

「なぁみっくん、次はどの本の感想言い合うん?」

 

「そうだなぁ…2人はこれ読んだことある?」

 

「「うん」」

 

「じゃあ次はこの物語について話そうか」

 

八神はやては友達がいないらしいが人懐っこい性格のようで、月村すずかがそう呼んでいるからと俺の事を同じように呼ぶようになっている。月村すずかもなのちゃんがそう呼んでいるから同じように呼んでいるわけで、大元はなのちゃん…ではなく俺の両親だな。だが俺が呼んでいる「なのちゃん」って呼び方はなぜか浸透していないが…

 

今度は3人で1つの童話に対してお互いに感想を言い合っていき、気づけば結構な時間になっていた。キリが良いので「そろそろお開きにしようか」と提案し揃って片付けていくが、話し足りないのかわからないが彼女たちは「またやりたい」と同じ事を言ってお互い笑っていた。

 

「それならそのうちまたやろうか」

 

「うん、すごく楽しかったよ」

 

「うちもや。どうせならもっと早う声かければ良かったわ」

 

「連絡先も交換したしいつでも言ってよ。たぶんすずかが塾とかで一番予定が詰まってるだろうから、そこに俺とはやてが合わせる感じになるんじゃないかな?」

 

「そうやね。うちとみっくんはそうでもないやろうから、すずかちゃんに合わせるわ」

 

「2人ともごめんね。でも近いうちにまたやろうね」

 

「そういえばさ、はやては1人で帰るの?なんだったら送ろうか?」

 

「大丈夫や、もうちょっとしたら家族が迎えに来てくれる事になっとる。そやから心配せんでもええよ」

 

「そっか、じゃあここで解散だね」

 

八神はやてという普通の女の子がいることで安心した俺は、2人の要望に応えてまた読書感想会を開催することにした。八神はやては学校に行っていないとの事だったが、好んで読書をしているからか知識や教養に不足はなさそうで話していて日頃家か図書館にいるとは思えなかったほどだ。その場で解散し家に帰る道すがら今日の事を振り返るが、八神はやては言うに及ばず月村すずかも普通の女の子のように見えた。俺の知っている月村忍や綺堂さくらという夜の一族は『どこか人間に対して一線を引いている』というイメージがあるので、それがないということはまだ夜の一族というものを教えられていないとかなんだろうな。

 

「ただいまー、ってなのちゃん来てたんだね」

 

「あっ、おかえりー。どうだったか気になって待ってたの。みっくん、すずかちゃんとお話できた?」

 

「どうなったか気になったって…もしかしてなのちゃん、わざと今日来なかったの?」

 

「えへへ…すずかちゃん良い子だから、みっくんもちゃんとお話したらわかってくれるかと思ったの」

 

「やっぱりか…どうりで一緒に来なかったわけだよ。ちなみにその時に新しい友だち増えたんだけどさ…」

 

家に帰ったらなのちゃんが来ていて迎えてくれたわけだが、今回の月村すずかとの件はなのちゃんの采配だったということだった。善意100%ということはわかってるし、月村すずかと話をする直前までは少々ビクビクしてたのは事実だが結果は穏便に終わったから良しとしよう。それに新しい友だちもできた事だし、せいぜい自慢させてもらうことにして羨ましがらせてやる。今日は俺の家でご飯を食べていくらしいので、食事中なのちゃんに八神はやての事を教えてあげてまた図書館で読書感想会を開催することになった事を伝えた。

 

「そうだったんだね~。みっくんもすずかちゃんと仲良くなれて良かったの。あとなのはもはやてちゃんって子と仲良くなりたいな」

 

「次に会った時にでも聞いてみるよ。はやては断らないだろうけど、学校に行けないくらいの症状なら一応確認しておいたほうがいいだろうからさ」

 

「うん!楽しみにしてるからちゃんと聞いておいてね。そういえばフェイトちゃんに送ったビデオレターのお返事が届いたの。後で一緒に観ようね」

 

なるほど、なのちゃんが家に来てたのはビデオレターが届いたっていうのもあったのか。たまたま俺と月村すずかが図書館へ出かける日と返事が届いた日が同じだったって、すごい偶然もあるものだな。食事も終わって俺の部屋でなのちゃんと一緒にフェイトからの返事を観るんだが…うん、フェイトはどうやら愛情に飢えているみたいだ。どうやらこれは俺宛てのビデオレターが別で同封されていたらしく、なのちゃんはそれを持ってきてくれたので高町家のみんな宛てのは別であるとの事だ。

 

『ミツキ。返事ありがとう。わざわざミツキ宛てを別に撮ったのは、その、謝りたかったのと、恥ずかしかったからで…』

 

ちなみにミツキってのは俺の名前だ。3月生まれの三月って書いてミツキ、愛称はみっくんだ。だがみっくんっていうのが浸透してしまっているせいか、名前で呼ぶのは恭也と士郎くらいじゃないだろうか。なのちゃんを筆頭に桃子も美由紀も月村家の面々も愛称で呼ぶし、あとアリサは名前で呼んでいたな。

 

『それでね、なのはが友達になりたいって言ってくれた事はすごく嬉しくて、その後にミツキは何も言ってないのに愛情をくれるって言ってくれて…でもだからこそやっぱりちゃんと謝っておきたかったの。私が怪我させたせいで病院で入院したって聞いて、ほんとに…ほんとにごめんなさい!ほんとはちゃんと会って謝りたいけど、今の私じゃまだそれは許されないことだから…だから、ちゃんと許してもらわないと愛情を受け取る資格がないんじゃないかなって思って…それで…』

 

ふむ、フェイトの言いたいことがわからん。確かに襲われた後は許さないっていう気持ちがあった事は間違いないが、クローンHGSなんていう生まれたての赤子みたいな存在に復讐しようとするほどちっちゃくないつもりだぞ。もちろんこれはとらハ知識のある俺だからこそなのかもしれないけど、リスティはじめトライウィングスたちとかもみんなそうやって育っていったんだ。そして生まれへの復讐として人を助けるようになっていったっていう話があるわけで、だからそんなに気にする必要はないんだが…今回も返事するだろうからそこらへん言っておいたほうがいいのかもしれないな。

 

なのちゃんはそのビデオレターをニコニコ見てたり頬を膨らませてたり悲しそうにしてたりと、これはこれで見てて飽きないくらい表情がコロコロと変わっている。というか、俺はなのちゃんに出会った時から愛情注ぎまくってるよ?未だに出会えてないけど、ここに久遠がいれば愛情2倍になる自信があるよ?

 

この世界がどういう繋がり方をしているのかまだ確信が持てないけど、高町家がいる以上とらハ3は確定のはずだ。美由紀繋がりで神咲那美と久遠もいるはずなんだが、なぜか美由紀が那美と遊んだりしていないのが不思議なんだよな。一番大きい差異は高町士郎…いや、不破士郎の生存なわけだが、そのバタフライエフェクトにしては繋がりが見えなさすぎる。リンディやクロノがいることからリリカルおもちゃ箱も繋がっているのは理解しているが、今なのちゃんが首からかけてるものがレイジングハートであるなら、それは本来リンディのものだしクロノとの一連のイベントが終わったんであればS2Uをなのちゃんが持っていないのもよくわからない。

 

『…今はまだリンディさんたちに任せるしかできないけど、またきっと会いに行くから。だから、その時はいろいろ教えてね』

 

「むぅ…みっくん、いつの間にフェイトちゃんとここまで仲良くなったの?」

 

「ここまでって言われても、なのちゃんもフェイトの事知ってるんでしょ?フェイトが言うような怪我させられた事を怒ってもいないし、フェイトのこれからを考えたら一番いいと思う対応をしたつもりなんだけど…」

 

「それはわかってるの。でもお母さんが浮気は絶対にダメって言ってたの」

 

桃子はなのちゃんに何を教えてるんだ…いや浮気はダメなのは賛成だけど9歳の子供に教えることじゃないだろう。そういえばクロノともう出会っているのならイデアシードを巡って敵対してたり、日常パートでは正体に気づかず甘えたりしてないんだろうか?俺は一度も聞いたことがないけど隠してるって感じもしないしなぁ。

 

「そういえばなのちゃん、ビデオレターで名前が出てきてたけどクロノやリンディの事は知ってるの?」

 

「うん。みっくんはフェイトちゃんの事情とかも知ってたから、やっぱりクロノくんの事もリンディさんの事も知ってるんだね」

 

「ん~…隠してるわけじゃないんだけど、説明するのが難しいというか…言えるようになったらちゃんと話すね」

 

「うん、隠し事をしないって約束だもんね。なのはも守ってるから、みっくんもちゃんと守ってね」

 

ちょっとクロノやリンディについて知ってるのか聞いてみたら思わぬところに飛び火したわ。確かに隠し事をしないって約束したけど、それって俺にとっては久遠と出会ったらすぐに教えてねって意味だったんだけどな…

 

「あら、みっくんも一緒に戻ってきたの?」

 

「うん、なのちゃんの事だからフェイトへの返事をまたすぐに撮るだろうと思ったんで一緒に来ました。そのほうが二度手間にならないでしょ?」

 

「ふふ、なのはったら『みっくんにも知らせてくる!』って飛び出して行ったものね。電話すれば済むんじゃない?って思ったんだけど、それくらい早く知らせたかったのね」

 

「そういえばなのちゃんと電話で話すことってあんまりないね。いつも会ってるからかな?」

 

「お母さんもみっくんも早くこっち来て!みんなもう集まってるよ!」

 

俺宛てのビデオレターは見終わったので、次は高町家宛てのほうを一緒に観ようと2人でなのちゃん家に行ったら桃子が出迎えてくれた。ちなみに俺がなのちゃんに次いで高町家の中で仲が良いのは桃子だ。出会った最初の頃のほうは士郎が意識不明で入院していて、このまま未亡人ルートだと思っていたから頑張って励ましたりしていた。最初は「桃子お姉ちゃん」ってあざとく呼んであげたら喜んでくれてたんだけど、さすがにそれはうちの親に矯正させられたので今は桃子さんって呼んでる。いつかは高町家の居候ズみたいに「桃子ちゃん」って呼んでみたいのがちっちゃな目標だ。意図したわけじゃないんだけど恭也と美由紀を兄ちゃん姉ちゃんって呼んでたら思いの外喜んでいたらしく、なのちゃんの面倒を見てくれているっていう事と合わさって結構好感度が高かった自分にビックリしたもんだ。なのちゃんは俺との約束を家族に話しているようで、士郎や恭也などは「なのはに何かあれば本人が言いにくくても、それが必要な事なら三月経由で情報が入ってくるから安心だ」とまで言われていたし、実際にHGS事件の時は知らせてあげたので役には立ってるんだろう。というかもっとコミュニケーションがんばれよ御神の剣士。

 

フェイトからの返事をみんなで一緒に観て、案の定全員でそれに対して返事の撮影をすることになったので前回同様各々がフェイトへの返事をカメラの前で言葉にしていく。俺はどうしようかな…とりあえず怒ってないってことを伝えておくか。

 

「さて俺の番だね。フェイト、元気そうで何よりだよ。俺から言いたいのは2つだけなんだけど、まず1つ目は『俺は怒ってないし気にしてもいない。あと謝罪もちゃんと受け取ったからフェイトももう気にしないでほしい』って事だね。きっといろんなもの(思惑)が絡み合って積み重なった結果だから、次は振り回されないようにしてくれれば俺は満足だよ。2つ目は『また会える事を期待しているから、守ってくれるのを期待しているよ』って事だね。それじゃあまた返事もらえるのをなのちゃんと一緒に待ってるよ」

 

フェイトへの返事はこんな感じでいいだろう。フェイトとの再会がいつになるのかわからないが、大人になってから再会って事はないはずだ。HGSの教育ってのがどれくらいの期間必要なのか知らないけど一般常識や教養だけなら数年かからないと思う。こういう時にリスティとかフィリスがいれば聞けるかもしれないし、もしかしたらさざなみ寮で引き取るみたいな展開だって有り得たはずなのにもったいないなぁ。HGSヒロイン(のはず)のフェイトを愛でながらとらハ2のヒロインたちに囲まれる光景とか…いやフェイトがさざなみ女子寮に染まったら大変な事になるか。リスティですら仁村真雪の影響で豹変したわけだし、フェイトも同じHGSだしそうならないとは言い切れない。うん、フェイトは今のままのほうがいいね。

 

返事も撮り終わって帰ろうと思ったら恭也が送ってくれるらしい。すぐそこだから大丈夫なんだけど、わざわざ送るということは何か話したいことがあるんだろう。俺は空気を読める子供なのだ。

 

「三月、フェイトの件を教えてくれて礼を言う。なのはが遠慮して言わなかったら何も知らないままだった」

 

「なのちゃんももっと(御神の剣士を)頼ればいいのにね。恭也兄ちゃんも見守るだけじゃダメだよ?今はもう大丈夫だろうけど、子供にそんなのわかんないんだからさ」

 

「ああ、そうだな。しかしなぜかわからんが、たまにお前がなのはと同い年とは思えない時がある。そんなお前がなのはを見ていてくれるから、俺たちもそれに甘えてしまっていたんだろうな」

 

「おかげで俺は思う存分なのちゃんを愛でられたわけだから、俺としては結果オーライなんだけどね」

 

恭也が言いたかったのは「HGS事件が起きた事を教えてくれてありがとう」ってことか。まさか発端がなのちゃんに行くとは誰も予想できないから仕方ないと思うけど…そうか、なんでなのちゃんが御神の剣士と一緒に行動しようとしたのかわからなかったけど、なのちゃんからしてもフィアッセや久遠と接してないから、HGSや霊関係の事件が起こった時になんて言っていいのかわからなかったんだな。俺の「なのちゃんを愛でる」って言葉に関しては苦笑していたようだが、それはどういう意味の苦笑だったんだろうな?

 

俺の家はすぐ近くなのでほんの少しの時間だが、恭也としても今回の事件は思うところがあったんだろう。とか思っていたら、どうやら本題はこれじゃなかったらしい。家に入る前に恭也に言われた「すずかちゃんとも仲良くしてやってくれ」って言葉…それが言いたかったのかよ。そりゃ月村忍と恋人ってことは誓いを交わしたんだろうけど、俺は御神の剣士みたいに強くないからどうすればいいのかわからんのが本音だ。もし仮に月村すずかが正真正銘月村忍サイドだったとしても、仲良くなっていった後に待ってるのは「共に生きるって誓うか忘れるか選べ」っていう二択なんだぞ?これでも図書館でお話する程度には仲良くやってるんだからそれで許してくれないかな。一応「すずかとはまた図書館でお話する約束もしてるし、お互い楽しかったと思うから結構仲良くなれてると思うよ」って返事しておいたが、それに対する答えが「そうか」ってだけじゃ何を考えてるのかわかんねーよ。そういうキャラだって知ってるけどさ、できればもうちょっと内心を出してもらえると俺が助かります。

 

その日の夜にすずかから次回の読書感想会のお誘い連絡が来た。タイミング的に恭也から月村忍に連絡が行ってすずかに伝わったんじゃないだろうか…日時は問題ないし、はやてのほうも大丈夫らしい。俺のほうも別に予定があるわけじゃないから大丈夫だが…恭也にああ言ったすぐ後に連絡が来ると外堀を埋められてる気がしてソワソワするな。だがもし本当にそういう根回しがあったんだとすれば、あの月村忍がそういった情報を流す程度には気を許しているんだろう。これだってあくまでも仮定の話だからいくら考えたところで答えなんて出ないんだけどさ。もしかしたら恭也からなのちゃんに話が行ってるかもしれないけど、一応俺からもなのちゃんに伝えておくことにしよう。忘れないうちにメールしとこうかな。

 

 

『なのちゃんへ、すずかから連絡があり今度またはやてと3人で図書館に行くことになったよ。その時になのちゃんの事も伝えておくから楽しみにしててね。おやすみ』

 

『はーい、わかったの。その日はみっくんの家でお泊り会するからその時に聞かせてね。おやすみなさい』

 

 

あれ?いつの間にお泊り会することになってたんだ?というか、お泊り自体は別に珍しいイベントでも何でもないと思うんだけど…晶とレンがいないからってわけじゃないけど、それなりの頻度でお互いの家を行き来してるからね。まぁなのちゃんとしても結果報告はすぐに聞きたいんだろうし、俺も友好を深めるためにいくつか童話を読み直しておこうかな。

 

 

 

「おまたせー。まだ待ち合わせ時間の前なのにすずかもはやても早いね」

 

「そういうみっくんも早いやんか。うちらも今着いたところなんよ」

 

「うん、少し早いかなって思ったんだけど、はやてちゃんが移動大変かもって思って迎えに行ったんだ」

 

「あー、そういえばそうだったね。すっかり忘れ…あんまり気を遣うとはやてが逆に気にすると思ってさ」

 

「ふふ、本音ダダ漏れやね。でもそうやって普通に接してくれるほうがありがたいわ」

 

「だろ?こういうさりげない気遣いがポイント高かったりするんだよね」

 

「みっくん、それって私が気遣いできてないって言ってる?」

 

「いやいや、すずかのは気遣いじゃなくて優しさだよ。どっちが良いってのははやてが決めることだと思うんだ、うん」

 

「うちはどっちも嬉しいわ。迎えに来てくれるすずかちゃんの優しさも、車椅子やからとか気にせんと普通に接してくれるみっくんの気遣いも、どっちがじゃなくてどっちもありがたいと思うとるんよ」

 

「ふふ、みっくん、今のは冗談だよ?ごめんね、ちょっとからかっただけなの」

 

「すずかもそんな冗談言うんだね。大人しいお嬢さんかと思ってたけど、お茶目な一面を見た気がするよ…そんな冗談にしっかり答えてくれたはやてから一言どうぞ」

 

「2人とも仲ええなぁ」

 

約束の時間の10分前に待ち合わせ場所に着いたら2人がいたから声かけただけなのに、危うくすずかを怒らせるところだった…のか?どこまでが冗談かわからんけど、はやての締めの言葉で和やかな雰囲気のまま図書館へと向かうことにした。前から思ってたことだけど、はやてのおっとり京都訛りの言葉遣いは周囲の空気を柔らかくする効果がある気がする。見た目が2Pカラーみたいな感じなのに、レンの話す話し方とは全然違うんだな。

 

3人で図書館へと入り、せっかくだからみんなで選ぼうということで童話コーナーに一緒に行くことにした。俺としても今回1つ確認してみたい事があったので、すずかとはやてが選んでいる間にファンタジー小説から1冊持ってきておく。

 

4人用の机に座り、まずは2人が選んだ童話の話をしていくんだが…前回の読書感想会があったからなのか、2人は結構深いところまで読み込んでいたようだ。言っている感想も主観だけでなく俯瞰で見ていたり、その場面や背景事情などを想像してよく考えている。

 

「2人ともかなり読んでるみたいだねー。話していてビックリしたよ」

 

「前の時にみっくんの感想がすごかったから、私もあれ以来この時はどう思ってるのかな?とか色々と考えながら読むようになっちゃったんだ」

 

「うちも同じ感じやなぁ。あとはやっぱり童話好きとしては負けられんなって思ったのもあるわ」

 

「こういうのは楽しんで読むものだからね。本人が楽しかったって思えたらいいと思うよ。たまたま俺がこういう考察みたいなのが好きなだけだからね」

 

「でもみっくんの感想を聞いて確かにそうだなって思う事がいっぱいあったし、主役だけじゃなくて脇役にもまた別のストーリーがあるのかなとか考えちゃうよね」

 

「すずかちゃん、それすごいようわかるわ。主人公の引き立て役やなくて、その人にはその人の人生があったんやなとかつい考えてしまうもん」

 

何やら意気投合しながらそんな会話をしているが、俺としては2人が楽しそうで何よりといった感じだ。主人公ってのはやっぱり主役なだけあって描写が多いわけで、端役ってのは大きく描かれないから不透明な部分が多くなる。そういったところを空想して脳内で描写したものを文字にしたのが二次小説とかだったりするからな。2人にも勧めてみようかな…

 

そんな話をしていた時に、どうやらはやては俺が持ってきた本が気になったようだ。何を持ってきたのかと聞かれたので、軽く本のあらすじを説明していく。これは童話ではなくファンタジー小説で、ヴァンパイアが人間を襲い人間は生きるためにヴァンパイアと戦う物語だ。ある王国の姫が吸血鬼に拐われて、騎士が助けに行くという場面もある。本の紹介をしながら吸血鬼という単語の時にはすずかの表情を注意して見ているんだが、拍子抜けしたと言えるような結果になった。

 

「「へぇ~」」

 

2人揃って感心したような声を出しているが、もしかして月村すずかは自分が吸血鬼って事も知らないのか?俺が細心の注意を払って見抜こうとしていたのは無駄な努力だったのか?

 

「ちなみに2人は吸血鬼がいたらどうする?」

 

「ん~…血を吸われるのは困るかなぁ。でも、拐われるのは嫌だけど騎士が助けに来てくれるってちょっと憧れちゃうよね」

 

「わかるわぁ。助けに来てくれるんがわかってたら囚われのお姫様ってやってみたい気もするわ」

 

なぜか2人してお姫様願望を語りだした…なんかもう俺がヒヤヒヤしながら行動してたのがバカみたいだな。今のところ『月村すずかは夜の一族の事を知らされていない』ってのが有力かもしれない。それなら月村すずかに対してはそこまで考えなくても大丈夫だろう。

 

「今日も楽しかったわ。2人ともありがとうな」

 

「私もすごく楽しかったよ。今から次が楽しみなくらい」

 

「そうだねー。そういえばはやてにちょっと聞いておきたかったんだけどさ。俺の幼馴染の女の子がはやてとお話してみたいって言ってたんだけど、そのうち連れてきても大丈夫かな?」

 

「うちは全然ええよ。友達が増えるんは大歓迎や」

 

「なのはちゃんを呼ぶならアリサちゃんも呼ばないとね。後で知ったら『仲間外れにするんじゃないわよ!』って怒られちゃうよ?」

 

なのちゃんを呼ぶ事は問題ないみたいだし、なのちゃんには良い報告ができそうで何よりだな。すずかはそれならとアリサも一緒に呼びたいようだし、アリサに友達が増えるのは俺としても嬉しい事だ。同一人物ではないんだろうが、とらハ3というかリリカルおもちゃ箱においてアリサという少女はとても可哀想な女の子だったからな。そんなアリサとの出会いによって後々悲しい出来事も大切な記憶だとなのちゃんは知る事になるんだけど、できればあんなイベントはないに越したことはない。しかし『仲間はずれにするんじゃないわよ!』か…そういうところはやっぱりアリサなんだな。

 

今日はすずかがはやてを迎えに行ったので、帰りもはやてを送っていくとの事で見送ってから帰る事にした。一緒に送ると言われたが、すずかが推定白だったとしてもお付きのメイドまで白とは限らないので遠慮しておく。今日はなのちゃんが家に泊まる予定だからお迎えに行ったりしないといけないっていう立派な大義名分もあるしね。

 

 

次回はなのちゃんとアリサも加わって賑やかになりそうだなぁ……なんて思ってたんだけど、そんな微笑ましく終わるような世界じゃなかったんだったよ。

 

 

 

「すまないが貴様の魔力をいただく」

 

 

 

 

 

 

 

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