ウマ娘-日本マぱか話-   作:凍傷(ぜろくろ)

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カーボナディウムコイルを使うまでもない長編っぽいご

 なんて思ってたんだけど。

 

「え? え? 足、治った? えっ? 骨折だよ!? なんで骨折が保健室で治るの!?」

「なんでも理事長が足しげく通って説得して雇ったらしいよ? 決め手は三顧の礼だとか」

「わけわかんないよー! だってお医者さんにまだまだ治らないって言われてたんだよ!? それがちょっと診られてちょっと触られただけで、自由に動かせるようになるとか……なにこれー! わけわかんないよー!」

「人のことも診ることはするらしいんだけど、基本はウマ娘専門のお医者さんなんだってさ。いやー、すごいよねー、さすが中央。ウマ娘専門なんて、“研究者”って枠以外じゃ居ないかと思ってたよ」

「ボクは今、あっさり受け入れられてるネイチャにこそ驚いてるよ……」

「だってそんなの前からでしょ? 肌荒れ夜更かしなまけ癖、片頭痛に、果ては太り気味まで。保健室に通えばすぐさま解決。トレセン学園の不思議のひとつとして数えられてるし」

「で、でも骨折だよ? いくらリハビリは開始してたとはいえさぁ……」

「治ったのに不満なの?」

「……知ってたら前回から通ってたって、それだけ」

「あー、なるほどなるほど、なんか悔しいわけだ。あ、ただし、治してくれるなら無茶なトレーニングも出来るーって娘にはとっても厳しいらしいから気をつけてね」

「たはは……さすがに自分から痛い思いをするのは嫌だよ」

 

 物事は案外不思議な方向に話が進んで───

 

『信じられません! 菊花賞を制したのは骨折よりの復帰戦! トウカイテイオー! これで無敗の三冠ウマ娘となりました!』

『復帰戦でここまでの活躍を見せるウマ娘はなかなか居ませんよ。今後の活躍が楽しみですね』

「ふふーん、ここまではまあ当たり前だよねー♪ あっはははは! みんなー! 応援ありがとねー!」

「はぁっ……はぁっ……~……ふぅ。おめでと、テイオー」

「ネイチャも、ほんとに二着とるなんてすごいじゃん」

「やー、ははは。リオナタールには負けない~って意識でやってたからねー。にしても……はぁ、それでも2着かー」

「次は春の三冠だね。ネイチャはどうするの? 参加するの?」

「ん。悪いけど春の三冠はアタシが貰ってくから」

「おー、大きく出たねー。でも1着の座は誰にも譲らないから」

「感覚的な天才じゃあなかなかサブトレさんのトレーニングは吸収できないって分かってても?」

「あれはネイチャが特殊すぎるの! なんであんなよくわかんない言葉が理解できるんだよもー!」

 

 サブトレーナーに教わるままに運動をして───

 

「よーしいいぞネイチャ! もう一回! もう一回やってみよう!」

「くぅっ……ぬぅうっ……! こ、な、くっ……そぉおっ……!」

「ネイチャ待った! 使う筋肉はこっちだ! 意識するのは支え方と呼吸! 例えば熱い湯船に浸かった時、一番熱さを忘れられる瞬間を思い出す! 例えばモノを持ち上げた時、途中の時でもどの姿勢が一番楽かを突き詰める!」

「こほぉっ……っちの、筋肉ぅうっ……のがっ……! 辛い、んですっ……けどっ……!!」

「それはそっちの筋肉が、ものを持ち上げる時に使われてないからだ! 弱いなら鍛える! それまで“支え”に使えたなら、ネイチャの走りはまた一歩前進する!」

「~……簡、単にっ……言ってくれるなぁ、もぉおお……! っしっ……! じゃあっ……ノセられてみますっ……かぁっ……!!」

 

 サブトレーナーはほんとに傍でいろいろ教えてくれて。

 

「次次! 次ボクのこと見てよサブトレーナー!」

「お前はまずその柔らかく柔軟性のある足を支える部分を増やそう。柔らかいってことは、それだけかかりすぎる負荷には弱いってことだ。沖野トレーナーとも相談したことはあったけど、お前に話してみても“これがボクの走りだー”って聞かないんだもの」

「うぐっ……あっ……あの時はそのぉぅっ……! ボ、ボクがまだまだチョーシに乗っちゃってたっていうか……! そのぉぅ……!」

「いや、悪い。今言うのは意地悪だな。じゃあこの120kgの米俵を背負ってロードウォークすることから始めようか」

「なんで!?」

「言ったろー? 支える部分を増やすんだ。体幹はもちろん、走ることで足に行く負荷の全てをいろんなところに逃がす練習法だ。あ、ウマ娘の筋力を前提に組んだ方法だから、現代の人間が真似するととても高い確率で足腰をやる」

「そりゃそうだよ!? ボク200kgのデッドリフトでも筋肉痛で動けなくなるのに、120kg背負って歩くって!」

「昔の腹ペコ人間は言った。“ナスは生る。洗えば食える”」

「成せば為るじゃなくて!?」

「使い古され確立された訓練方法だって、洗ってみれば粗もあれば良さもある。それらからいいものを選んで組み立てるのも鍛錬のひとつだ。つまり、お前なら出来る」

「うゆっ…………しょっ……しょーがないなぁ、ボクなら出来るなんて、ほんとしょーがないなぁ! だよねぇ!? サブトレーナーに断言されちゃしょーがないなー!」

「うし、じゃあ俺は200kgで行こう。同じ距離歩くから、ちゃんとついてこいよー?」

「200!? え……サブトレーナー大丈夫なの!?」

「近年のアメリカンスポーツに傾倒した日本人ならともかく、代々ガキの頃から日ノ本の鍛錬をしてきた日本男児を舐めるな。余裕だっつの。なんなら300でもいけるぞ?」

「むぐぐぐぐ……!! じゃあボクも───」

「お前は段階的にやりなさい。支えのための筋肉も完全じゃないんだから、まずは支えるための筋肉をきっちり意識して動かせるようにすること」

「ぶー……」

 

 なんかいろいろ丸め込まれてるような気もしないでもないけど、それでも確実に、一歩ずつ、ううん、最初の頃は段飛ばしで実感を得て───

 

「よーし次次! サブトレーナー次なに!?」

「お前は休んでるように」

「えー!? なんでさー!」

「言葉の割に椅子に座って動けないからだ」

「そんなことないよ!? “楽になる姿勢”の果てがこれだっただけで、ボク今すぐにでも」

「ほれ」

「動kギャーーーッ!!」

「足を軽く押した程度でギャー言うヤツに発言権なんざ無いの。おーいスペー、テイオーのマッサージ頼むー」

「任せてください! 強さはどのくらいに……?」

「強く押しすぎるのは無しな。硬いものをゆっくりじっくり丹念にほぐすイメージで頼む」

「はい!」

「ま、待ってスペちゃん、ぼぼぼボクはまだやれ───」

「負けん気が強いのはいいけど、休める時には休むこと。当たり前だけど、ウマ娘の最高速度、知ってるかー? お前、あんな速度で何かが体に当たったら怪我じゃ済まないことくらいわかるだろ? ……お前たちは日々、その速度で地面が足に激突してるんだ。いいな、休める時は休め。自覚はなくても、足には常にダメージが蓄積されてるって思え」

「70キロの速度で……地面が足に激突してる……」

「地面、硬いだろ? 倒れたら痛い。ガキでも知ってる。でも、走るようになって、転ぶことを忘れると、誰もがそんな当たり前のことも忘れちまう。……スズカが骨折した時、誰もが思ったと思う。“さっさと止まれ”って。“お願いだから止まってくれ”って。でもな、走ってる奴なら誰もが知ってる。最高速度から急に立ち止まれば、その最高速度のダメージが何処に逃げるでもなく全て足にくる。人間だって走ったなら少しずつ速度を緩めて止まるもんだ」

「うん……」

「止まれるわけねぇよな……あの時のスズカは明らかにウマ娘の限界速度を…………いや。言ってもしゃーないか。とにかく。休める時は休むこと」

「うー……じゃあサブトレーナーがマッサージしてよー。手当、みたいにさー」

「まずは普通のマッサージで休んでからな。負荷と休息をちゃんと認識させてやらないと、体ってやつは成長しないからなぁ……」

「むー……」

「じゃ、頼むなスペ」

「任せてください! それじゃあテイオーさん、いきますよー?」

「う、うん。じゃあ……いっだぁーーーっ!?」

「えぇっ!? ちょっと触っただけですよ!?」

「うぎぎがごがぎぃいい……! な、なんでぇええ……!? 前はこんなの、全然平気……前? ……あーっ! こっちじゃこんな練習初めてだから、使ってない筋肉とかっ……!」

「……スペ、念入りに頼む。ただし強くしすぎないように」

「任せてください!」

「スペちゃんさっきからそればっか───ギャー!!」

 

 一歩ずつ、一歩ずつ……

 

「っ……はぁっ!!」

「はっ……はっ……はぁっ……!! くっそー! なんでだよー!!」

「はぁっ、はぁっ、はぁっ……! はぁっ……んっぐ……っ……はぁっ……! ~~……っし!」

「なんつー末脚……模擬レースとはいえテイオーに勝っちまった……。最近伸びてきてるとは思っていたが……おいお前、ナイスネイチャにどんなトレーニングさせてんだ……?」

「どうって。贔屓にならないように、同じメニュー……の筈なんですけど。要領がいいのか、それとも相性がいいのか、俺が教えることを面白いくらいに吸収してくれるんですよね。そしたらもう伸びがすごいのなんの……」

「~……あーこりゃ、大阪杯はどうなるかわからんな……。テイオーは九冠を目指す、なんて言ってはくれたが……ここにきて伸びてくるヤツが居るなんてなぁ……」

「……でも。俺はああやって、テイオーが感情剥き出しにしてるの、なんか嬉しいです。悔しいのに悔しいって言えないヤツ、期待がある分多いの、分かりますから」

「ん、んん……まあ、なぁ。実は俺もだ。模擬レースであんなに悔しそうにされると、正直なんて声かけてやりゃあいいのか分からん」

「フツーでいいんだと思いますよ。ていうかトレーナーなんだから、もっと踏み込んでくださいよ沖野さんは」

「いや、だってなぁ。あいつ確実にお前の方に懐いてるだろ」

「それは指示出したら基本ほったらかしの沖野さんが悪い」

「っぐ……! 言い返せん……!」

「けど、こうして一歩一歩積み重ねて、敗けも勝利も味わっていけばきっとテイオーは───」

「うあぁあああ~~~っ! サブトレーナ~~~ッ! さぁぶとれぇなぁあ~!! っく……ざぶどれーだ~……! 敗けっ……んぐっ……ボグッ……あ゙~~あぁああ~……!!」

「「ガチ泣きしとるーーーっ!!」」

「いやぁあばばばばばどどどどうしたテイオー! おまっ……泣くなー!」

「落ち着いてください沖野さん! てっ……テイオー? これ、模擬だからっ、なっ!? 無敗って……無敗……ぃゃ……ま、敗けは敗け、か……?」

「ばおまっ!?」(“馬鹿っ、お前っ”の略)

「あぁああああああーーーーっ!!」

「「さらにガチ泣きしたーーーっ!!」」

「ていうかだな! なんで抱き着いてっ……おいっ……テ、テイオー?」

「最低でも7冠っ……無敗でっ……うえっ、ひぐっ、あぁあああ~~~っ……!!」

「いやこれG1どころか模擬だからっ……なっ? なっ、テイオー? テ……あ、あ……あー……沖野さぁん……」

「いーからお前は抱き着かれてろぉ……ったく。……っと、おうナイスネイチャ、見事な1着だったな、おめでとさん」

「っふぅ、ふぅ……はぁ………………あ、どもっす。いやー……まさかこんな日が来るとはーって感じですけど。はぁ、テイオー? 負けるのなんて今さらでしょー?」

「ひぐっ……うっく……今度こそはっておもったのに……! 誰にも負けない無敗の……無敗……あ~ぁああああ~……!!」

「……テイオー。勝ちたいって思うならやることなんて一つでしょ。アタシももう、3着で“自分にしてはよく頑張ったー”なんて思いたくないから」

「うー……」

「テ、テイオー? ほら、ネイチャもこう言ってるし……な?」

「~……サブトレーナーが悪いんだからね……? ボクだけの専属になってくれてたら、ボクだけがパワーアップしてたのに……」

「無茶言わんでくれ……」

 

 敗けを知って、悔しさを思い出して、

 

「ぜっっっったいっ、おかしいっ!」

「見ていれば分かりますし、自分でも理解していますわ」

「ボクたちどーしちゃったの!? なんか頭の中に子供っぽい自分が居るみたいでやだー!」

「恐らくは経験の浅い頃の自分と、時間を戻る前の自分との処理が上手くできていないのでしょう。わたくしも、なんというかテイオーのことをテイオーさんと言いそうになりますし」

「そーなの!?」

「時折同じチームであったかも疑問に思う始末ですわ……。その、テイオー? シリウス、というチームを知っていますか?」

「しりうす? んーん、知らないけど……」

「ですわよね……何故かわたくし、そこでリーダーをしていたような、妙な夢を見る時があって。前リーダーがオグリさんで、トレーナーは……中々歳のいった殿方。その後任がサブトレーナーさんで……んん、よく分かりませんわ」

「むゆうびょー、ってやつ?」

「意味そのものが違いますっ!」

「ん-……でもそういえば、ボクもトレーナーってあんなだっけー? とか思う時があって、自己嫌悪するときがあってさー……」

「トレーナーさんはいつでもあんな感じでは? ……いえ、でも……サブトレーナーさんこそトレーナーさんに近かったような……、……はぁ、はっきりしませんわね」

「まあでもその内すっきりするでしょ? 今は……ぅぅ」

「テイオー、あなたそんなに涙もろかった?」

「だからー……! なんか敗けたことがすごくすっごく悔しくて悲しかったんだよー……!」

「子供のようにビワーと泣き出して、サブトレーナーさんに抱き着くほどに、ですか?」

「むぅうぅぁぁ~~~っ!! だってしょーがないじゃん! すっごく悲しくなって、サブトレーナーならこんな悲しさをなんとかしてくれるって思ったんだもん!」

「はぁ……まるでターボさんですわね」

「ペアブラスター師匠?」

「ツインターボさんですわ」

「……今のボク、そんなに子供っぽいこと言ってる?」

「自覚がないんですのね……」

 

 不思議なことに首を傾げて、答え合わせをしようとしてもズレていって。

 

「っ……ぁあああああああああああっ!!」

「はぁっ! はぁっ! けはっ! はっ! っ……~っ……!! 敗ぁああけるかぁあああああっ!!」

『いよいよ最終コーナー! 先頭を競うのはやはりこのウマ娘! トウカイテイオーとメジロマックイーン! 大阪杯、天皇賞(春)を押さえたナイスネイチャは現在7番手! やはり三冠の壁は高いk───い、いや! 踏み込んでいく! 駆けこんでいく! 一気に加速! どこまで足を溜めていたのか! 速い速い! 現在6、5、……メジロライアンを抜いて3番手! 競い合うトウカイテイオーとメジロマックイーンに迫る! 迫る! ……並んだ! いやっ───抜いたぁああっ!!』

「そんなっ!」

「っ!? ネイチャッ……~~~っ……あぁああっ!!」

『ナイスネイチャ! ナイスネイチャだ! トウカイテイオーとメジロマックイーンの二強だと思われていた宝塚記念! 今! ナイスネイチャが1着でゴォオールインッ!! 春の三冠の栄誉を手にしました!!』

「はっ……はっ……は、はぁっ……、ぇ……? ア、タシ……? え……いつの間に、ゴール……え?」

「はぁっ……はぁっ……! ~……落ち着けボク……っ……はぁ……! 敗ける悔しさはもう知ってる……! でもっ……最低でも7冠、なんて大口叩いておいて……! ~……っ……はぁ……! …………ていうか、2、3着が同着って……はぁ、盛り上がらないなぁ……」

「はぁ……ふぅ…………んっ。……テイオー? わたくしとしましては、この宝塚をあなたと競えただけでも十分ですわ。天皇賞(春)以降、腑抜けた顔を見せるでもなかったわけですし。前は7冠取っていたのだから、どれほど不貞腐れるかと思いましたけど」

「うっ……うるさいなぁ。前回とは違って、ボクだって成長したんだってば。……負けちゃったけどさ。不貞腐れてるって言葉だって否定はしないよ……今のボク、自覚出来るくらい心が子供っぽい気がしてるし」

「ふふっ……結構ですわ。悔しいと思える気持ちを無くさなければ、いつまでも走っていけます。そして……おめでとうございます、ネイチャさん。見事な走りでしたわ」

「う~……おめでと! ネイチャ!」

「テイオー……マックイーン……。ぇ……、ア、アタ、シ……ほんと…………? ……~……やっ…………~……たぁあああああああっ!!」

「あーあ~……G1三回連続でネイチャに敗けた……他のレースだったら敗けなかったのに、G1の時だけ……」

「あら。それはつまり、後方から研究され続けていたのでは?」

「ボクだって研究したってばー! したのに、G1に出る度、末脚がおかしいってくらいスゴくなってるんだってば! 全然イメージと一緒にならないんだからしょーがないじゃん! これなら勝てる~って距離でスパートかけて抜かれるなんてどうしろってのさ!」

「……まあ、そうですわね。大阪杯も天皇賞(春)も、あっさりと取られてしまいましたし」

「大体マックイーンの場合あのー……ダイ、ダイ? サンゲン? とかいうのを意識しすぎてるからじゃん。もっと気にする方向があったと思うなーボク」

「仕方がありませんわっ!? 以前の時はよもや敗けるなど……! ……あら」

「むー……」

『これは……ネイチャコールです! 大阪杯、天皇賞(春)、そして宝塚記念! 見事その三冠を手にしたナイスネイチャに、ネイチャコールが贈られます!』

「アタシが三冠っ……んぐっ……ひっ……! 諦めないでよかった……! 頑張ってみてよかった……! 追い続けてっ……よかったよぉおっ……!!」

「……あーもー……ほらネイチャー? 勝ったのに泣いて俯いちゃだめでしょー?」

「まったくですわ。胸を張って、見てくださるファンに応えてあげてくださいませ」

「ていおー……ひっく……まっくいーん……」

「ほらほらー? 三冠制した時の手の形はー? そうして、それをどうやるんだっけー?」

「んっ……やるっ、やるから急かさないでっ……! ~……すー、はー……ヨシッ。───んっ!!」

『ワァアアアアアアアアアアッ!!』

『今、ナイスネイチャの三本の指が掲げられ、ここに春の三冠ウマ娘が誕生しました!』

「うおおおおお! ネイチャちゃーん!! うおおおおおっ!!」

「ぶびぇええええ!! ネイちゃんが……! 俺らのネイちゃんがぁああっ……!!」

「ネイちゃんは商店街のっ……俺達の誇りだぁあああああっ!! うおおおおおおっ!!」

「頑張ったねぇ! 頑張ったねぇネイチャちゃん! あたしゃっ……あたしゃもう胸がいっぱいでっ……!!」

「うわっはー……これは次商店街行くのが怖いなぁ……あ、あー、あのー? 確かに嬉しいけど、胸いっぱいで、気を抜いたら号泣しそっ……んぐっ……~……ひぐっ……すー、はー……な、泣いちゃいそうだけど、ほんと、ただ遊びに行っただけでいろいろ持たせるのはやめてねー……?」

「うおおおお! ネイチャちゃーーーん!!」

「うおおおおおー!!」

「……聞こえてない、ていうか聞こえるわけないか。あ、あはー、ですよねー……~……だったら、さ。だったら……こんな呟きも、聞こえないよね。……ほんと、こんなアタシを……3着4着ばっかで輝けもしなかったアタシを……ずうっと応援してくれて、アリガト……っ……ぐしゅっ、ああもう泣くな泣くなー!」

「……はぁ。しょーがないか、あんなに喜ばれちゃ、悔しさ飲み込んでサイドを盛り上げるしかないじゃん」

「G1で三度続けて、というのも……これは確かに悔しいものですが…………これを何度も味わったのですものね、ネイチャさんは」

「……おなじみ3着って言う気持ち、どんなんだったんだろって……ボク、ちょっと思った。思ってみたら……あれだけの身内みたいな人に応援されてさ、ずっと3着で……1着の横でライブやってさ。……悔しくないわけないよね。期待に応えられなかった、なんて思ったことなんて一度や二度じゃないと思う」

「ええ。そして……今がどれだけ嬉しいかも、分からないわけがありませんわ」

「うん」

「ネイちゃぁあああん! こっちこそありがとうねぇええっ! ネイちゃんは、わたしたちの誇りよぉおおっ!!」

「ってなんで聞こえてんですかちょっとー!?」

「接客続けてると、ボソボソ呟く系お客様がなんて言ってるかくらい、口の動きでわかるのよー!!」

「ネイチャちゃん……! ありがとうなんてこっちの台詞だバッキャロー!!」

「そんな風に思っててくれたなんてなぁ……! 応援なんてあったりまえだぁああっ!!」

「うおおおお! ネイチャちゃあああんっ!!」

「アンタさっきからそればっかじゃないか! ちゃんと応援しなっ!」

「けどよう! だってよう! うおぉおおんおんおんおん!! 俺ゃあ……俺ゃあ嬉しくってよぉおお!!」

「泣かないでよ……泣かないでよもー……! こっちがっ……必死に我慢してるのに……! もうっ……もー……! もー!!」

「……テイオー。全力で盛り上げますわよ」

「あったりまえじゃん。悔しいからって手なんて抜くもんか」

「そして、秋の三冠はわたくしが頂きますわ」

「いーや、今度こそボクが獲る。やっとサブトレーナーの練習のコツが分かってきたんだから」

 

 ボクらの二度目の日々は、とても、とっても輝いていた。

 誰一人骨折に苦しむこともなく、誰一人欠けることなくターフを蹴る。

 これでもかってくらい本気になっても勝てなくて。これでもかってくらい練習を積んでも足りなくて。

 でも……そんな“がむしゃら”って言葉が似合うような日々を走っているのが、たまらなく楽しくて。

 ただ……ちょっとずつ、ボクらの知らないソレは、ボクらが前よりもトレーニングに打ち込んでいる内に、迫って来ていたんだ。

 

 

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