三咲町。20年の時が流れてもその町は変わらない。そこそこ発展した地方都市であり、商店街も人気は20年程前と比べると人出は少なくなったが、人々が商いや買い物にせいを出している。あの時…エンマがアザゼルに1度殺されて覚醒したあの頃と違うとすれば遊園地が廃園に成ったこと位だろう。
いや、大きく変わった点がもう1つ。それは丘の上に建っていた豪邸が大きな孤児院に変化した点だろう。その豪邸は元々、久遠寺財閥のご令嬢が暮らしていた豪邸であり、奇妙な事に高校生の頃から第5の魔法使い、魔獣創造、山育ちの青年と同居人が増えていった思いでの場所なのだ。しかし…その豪邸は今では孤児院に改装されており、敷地の規模も大きく今日も沢山の子供達が遊ぶ声が響く。
その孤児院の名前は千手の家。千手エンマが創設した孤児院であり、此処には様々な子供達が暮らしている。神器を宿していた為に家を追い出された子、親戚を盥回しされた子供、様々な分け有って親元を逃げ出した子供、等々の複雑な理由を持つ子供達や職員が居るのだ。種族は人間だけかと思えば人間だけではない、妖怪、妖精、中には三大勢力の種族の混血の子供も居るのだ。
「いやー、今日も平和で何より」
そんな孤児院千手の家。エンマはハンモックに寝転がり、庭でJUMPを読みながら子供達が危なくないか見守っていた。
「ギエー!!」
「ピカチュウ!!」
「ポケモン達も元気で何より」
だが…この孤児院千手の家は唯の孤児院ではない。普通に暮らす子供達や職員からしたら、非常に安全で過ごしやすい孤児院だ。しかし…此処は魔境。庭には全種類のポケモンが遊んでおり、中には神々さえも真っ青な力を誇る伝説のポケモン達も中には居るのだ。もし、子供達に危機が迫っても聡明なポケモン達が助けてくれるので身の安全は大丈夫である。
「影分身には悪いが、平日の真っ昼間からゆっくり出来るのは良いな。いや、面倒事が起きる可能性が有るしな」
今日は平日。しかし…エンマは仕事を影分身に任せて孤児院でのんびりと過ごしていた。と言うのもこれには訳がある。
総理はリアス・グレモリーの婚姻破棄を手伝えとしつこく言ってきており、更には悪魔政府と仲良くしたい政治家の皆様もエンマ宛に電話で「リアス・グレモリーお嬢様」を助けろと色々と言ってくるのだ。その内、彼等の行動はエスカレートしていき、孤児院に悪魔を引き連れてやって来る可能性が高い。だからこそ、エンマは仕事を影分身に任せて孤児院に居るのだ。
「貴方は考えすぎよ。悪魔だって、この孤児院に手を出せば殺される事を理解してるわよ。まあ、彼等の知能が普通っと考えればの話だけどね」
その声が聞こえ、エンマはJUMPを閉じて声の方を見る。エンマが寝そべるハンモックの側には、髪がミドルヘアー程の十代後半程の少女が立っていた。しかし…この少女、少女ではない。こう見えてエンマと同じ年なのだ。
彼女の名前は久遠寺アリス。名字は別だが、エンマの嫁でありこの孤児院の子供達の母親だ。財閥の娘であり、同時に優れた魔術師でもあるが時代に取り残された魔女であり歳は取れない。故に、高校生の頃から肉体が成長しないし老化もしない。一応、エンマとの間に実子は居るが…体質上
「普通じゃない。それが悪魔にとっての普通だ。サクラ革命とかの激シブガチャで最高レアキャラが10連で8体同時に当たるような確率で、人間と共存出来る貴族悪魔が居るぐらいだな」
三大勢力は普通じゃない。己の目的を達成するためならどんな事もやるだろう。ましてや、今の日本政府は悪魔政府の配下と言っても良い。悪魔に媚を売りまくり、悪魔の恩恵を受けられるなら喜んで日本人の事は見捨てる。日本人が悪魔の駒等で犠牲になっても、悪魔との友好関係を選んだのだ。だが…それは友好関係ではない。一方的な従属的関係に過ぎない。
「それもそうね…」
「お父ちゃーんただいま!!」
ふと、新たな声が響いた。その瞬間、アリスの隣にアリスと瓜二つの顔立ちをした男の子…いや男の娘が降り立った。ノーモーションでの空間転移での登場故に、飛雷神か始と同じく空間操作での転移だろう。だが…空間操作でのノーモーション転移は空間操作出来る始か伝説のポケモン パルキアしか出来ない。ならば、飛雷神だろう。
「イナバ。学校は?」
「休み時間だから飛雷神で帰ってきちゃった!」
てへ、とエンマの質問に答えたアリスそっくりな男の娘。この子はエンマとアリスの実子であり、久遠寺イナバ。名字が千手ではないのはアリスは一人っ子であり、後々に久遠寺財閥を継ぐ可能性が高いからだ。
「でもさ、お父ちゃん。学校て行く意味有るの?始の兄ちゃん、司法試験受かってるじゃん」
「始が天才だから。そもそも学校は社会性を学び、他者と過ごす方法を勉強するところだ。勉強めんどくさくてもメリットばっかりだから行け。虐められてる訳じゃないだろ」
「はいはーい、戻りますよ」
エンマの言葉を受けてイナバは飛雷神を用いた転移で消えた。どうやら、学校に向かったのだろう。
だが……突如、エンマの表情が険しくなる。
「エンマ?」
「アリス、子供達を屋内に戻せ。そして東京の法律事務所から始を呼び戻せ。アレン達も連れ戻せ。戦闘可能な職員には戦闘配備準備、急いでくれ」
そう告げ、エンマはハンモックから降りて、物凄い速度で駆け抜けた。
千手の家の正門前。
「リアスお嬢様。此処にお嬢様と眷属の皆様を鍛えて下さる神器を宿した人間が居ます」
そこには悪魔政府と仲良くしたい、日本国民より貴族悪魔への要請を優先して国を豊かにしようとする総理が居たのだ。総理は数名の若者を連れており、その若者は今頃…駒王の駒王学園で勉学に励んでいる筈のリアス・グレモリーとその眷属の皆様であった。
「そうね。期待しておくわ」
「しかし…総理。良く彼から許可はとれたな」
いや、リアス・グレモリー御一行だけじゃない。リアスに何処か似たイケメンが銀髪巨乳のメイド、そして新撰組の羽織を羽織った男を連れていたのだ。
イケメンの名前は魔王サーゼクス・ルシファー。最強の悪魔であり、その強さは世界さえも滅ぼせる。リアスの兄であり、三大勢力最強とは彼の事である。
銀髪巨乳のメイドはグレイフィア・ルキフグス。サーゼクスの女王であり、最強の女悪魔の称号を持っている。
では新撰組の羽織を羽織った男は誰なのか?サーゼクスの騎士であり、悪魔最強の騎士である沖田総司である。とは言え、彼は厳密には沖田総司ではない。魂が抜けた沖田総司の遺体をサーゼクスが悪魔の駒で悪魔に変え、悪魔の駒が魂の代わりに肉体を動かしている元女の子、現男の沖田総司(悪魔)…悪魔沖田である。
「はい!!当然でございましょう!!」
彼等はリアス・グレモリーの婚約破談を決定させる為に、リアス・グレモリーの修行をエンマの手で行わせようとしているのだ。勿論、エンマは許可を貰ってないが、総理は許可を取っている事にして彼等を連れてきたのである。
「俺は許可を出してないがな」
そして…万華鏡の瞳を発動させたエンマが彼等の前に立ちふさがる。
「千手!!だって「パルキア、このアホ総理をエンマワールドドドリアン畑に転送しろ」ひっ!?」
その突如、総理は何処かに飛ばされた。
「総理!?」
「保護者3人は帰れ。少女達、話だけは聞いてやる。もし、保護者3人が入ってきたら、孤児院に襲撃を仕掛けてきたと判断して交戦する」
「……分かった…そうしよう」
サーゼクスはそう告げ、自分の部下を連れて転移で消えた。
「少女御一行。俺は許可を出していない。話は一先ず聞いてやる」
「…分かったわ」
リアス・グレモリー御一行。千手の家に足を踏み入れる。それと同時に、千手の家は臨戦態勢を解除した。
次回…エンマとリアス・グレモリー御一行の話し合い。
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