千手の家。その敷地内に入り、家の主人であるエンマの後ろを歩いては着いていくリアス・グレモリーと愉快な眷属の仲間達。
「随分と広いわね。人間の割には頑張って稼いでるじゃない」
「元々は嫁の豪邸だからな。それを改装し、周囲の森等を開拓して広くした。全部は保護した子供達の為だよ」
リアスの言葉に答えるようにエンマはそう言った。千手の家は元々は此処まで広くない。確かに元から一般庶民では考えられない程の豪邸だったが、エンマが孤児院を開くと決めた時からエンマ1人の手で改装を施し、更には手付かずだった森も開拓して取り込んでは今の姿となったのだ。元々あった豪邸本体である本殿、エンマが1人で作り出し…本殿と渡り廊下で繋がった武家屋敷、そして少し離れた所に始とその妻が暮らしている離れが同じ敷地内に有るのだ。
庭には子供達が安全に楽しく遊べるように遊具も公園並に完備されており、自然を用いて遊べるように森を少し開拓した自然工夫された天然アスレチックも有ったのだ。
「えっ!?」
ふと、庭の方を向いたリアス達は驚く。庭では年頃な彼女達が日頃からテレビやゲームで見たことがある、任天堂の代表格と言えるポケモン達が威嚇しながらリアス達を睨んでいたのだ。
「ぽっポケモンよね!?本物なの!?」
しかし、エンマはリアスの質問には答えない。勿論、このポケモン達は本物だ。あろうことか最新作であるソード&シールドまでに出てくる伝説のポケモン達が勢揃いしており、もしゲーム通りの強さが有るのならリアスは眷属に欲しいと思う。
「ねえ!ポケモン…少し貰って良いかしら?」
「ダメに決まってるだろ」
しかし、エンマの返答は否。当然だ、ここのポケモン達はエンマが全知全能の精霊王グレート・スピリッツで受肉させたとは言え大事な家族なのだ。悪魔なんぞに挙げる理由は1ミリ処かナノミクロン単位で存在しない。
「事前に言っておく。俺は種族差別はお前達と違って持ってないが、過去の経験から悪魔は嫌いだ。
俺の家族を浚おうとし、時計塔と共謀して産まれたばかりの我が子を人体実験した奴らはな。まあ、お前達個人には未だ敵意は抱いていない…そこだけは安心しろ」
しかし、エンマは悪魔という存在が嫌いだ。彼は孤児院を営み、子供達の中には様々な種族の子供達が居る。神器を宿した人間、普通の人間、混血悪魔、妖怪、吸血鬼、妖精、等々沢山だ。
だが…エンマの孤児院に暮らす子供達の7割が悪魔を筆頭とした三大勢力の被害者だ。神器を宿した為に親に捨てられた、親をエクソシストに神器を宿してるだけで殺された、母親が悪魔に強姦されて孕まされて産まれた、姉が悪魔に眷属にされた挙げ句捨てられた、上げればキリがない。
「私達が何をしたのよ!!」
「お前達個人じゃない。折角だ、教えてやる。この孤児院の子供達は三大勢力の犠牲者が沢山だ」
チラッとエンマはとある方向を見る。エンマに釣られるようにリアス御一行もエンマの視線の方向を見ると、そこは孤児院本殿の窓が見えており、その窓越しにはリアス達を見て震える幼子達が映っていた。
「かえれ!!」
「なんで此処に来るの!!」
「お姉ちゃんを返せ!!」
その幼子の一部はリアス達に窓越しで距離があるとは言え、罵声をぶつける。
「お前達はそうじゃかいかも知れない。だけど、あの子達は家族を故郷をバカな貴族悪魔の手で喪った。裏側の事は原則的に表には出ず、警察も検察も動かない。いや、一部の警察や検察は三大勢力から賄賂を受け取っては言いなりになる。
さっきのアホ総理がそうであるように、悪魔と日本政府は良い関係らしい。お前達悪魔からしたら過ごしやすいかも知れないが、此方はたまったもんじゃない」
この国はエンマが思うに終わりだ。元から日本を守ってきた筈の退魔組織も三大勢力と仲が良く、政治家は悪魔と大の仲良し。悪魔は好き勝手に眷属を増やして、不要に成れば眷属をはぐれ悪魔として処理する。堕天使は危険な神器持ちを暗殺し、有用な神器持ちは拉致して味方に率いれる。天界も危険な神器持ちを暗殺し、追放する…日本では無いが人体実験も行ってるそうだ。
悪魔が好きにしても、政治家は悪魔と仲良くして美味しい蜜を啜る為に日本人に悲劇が降り注いでも助けない。この国は昔から悪魔の支配下に有ると言えるだろう。残念だが、何時の時代も犠牲に成るのは弱い存在ばかりだ。
すると、本殿の方からピンク色の髪をした中学生程の女の子が走って出てきた。
「あら、可愛い」
リアスの女王である朱乃は女の子に向かって可愛いと言うが、その女の子はリアスの前まで来ると…リアスの腹部を渾身の力で殴った。
「うぐ!?」
普通…人間の腕力では一部の例外を除き、悪魔にダメージを与える事が出来ない。しかし、彼女の拳はリアスにダメージを与えたのだ。ライフル射撃さえびくともしない悪魔にダメージを与える拳、リアスはそこまで大きなダメージを受けては無いが驚き…リアスに衝撃を与えた事を知った彼女の下僕達は戦闘態勢に入る。
「返してよ…ナナのパパとママを返してよ……お姉ちゃんを人間に戻してよ!!お姉ちゃんを目の前で犯し、悪魔に変えて捨てて化物に変えたくせに!!」
女の子は叫ぶ。涙を流し、過去に受けた怒りをリアス達にぶつけるように腹から叫んだ。
「よせナナ」
エンマは女の子をナナと呼び、女の子を下げる。
「コイツらに言っても、お前の両親は…お姉さんは帰ってこないんだ。ごめんな、俺が間に合わなかったから」
このナナという女の子。過去に両親を亡くしている。そして姉も目の前で喪った。
「でも、おじさん!!」
「お前の怒りはマトモだ。だけど、この3人に怒りをぶつけても意味がない」
エンマはナナの頭を撫でて告げる。
「この子はもう、10年位前か。この子のお姉ちゃんは偉い美人さんでな、地元でも有名だったらしい。だが…とある貴族悪魔に眼を付けられた。
その貴族悪魔はこの子の両親を真っ先に抹殺。その後、帰宅したこの子の姉を犯し、姉は舌を噛んで自殺したが、貴族悪魔は連れ去り…悪魔に変えた」
貴族悪魔は欲しい眷属候補が居れば、悪魔に変える。それが普通の事だ。眷属の外見が美人であること、眷属の戦闘力が凄いこと、眷属が優秀であれば優秀であるほど貴族悪魔のステータスに成るのだから。
「この子は押入れに隠されて全てを見ていた。まあ、そのお陰でその貴族悪魔からは気付かれなかったけどな」
そんな悲劇をこのナナという少女は押入れの中に隠された為か、殺されなかったが悲劇を全て眼にしていた。両親が殺される様を、姉が犯される所を、動かなくなった姉が連れ去れる所を全て嫌でも見ていたのだ。見付からないように、声と気配を殺してだ。
「俺は魂が無事なら死者を蘇生できる。肉体着きでな」
「「「死者を蘇生!?」」」
エンマの言葉を受けてリアス達は驚く。悪魔の駒でも同じ様な事は出来るが、悪魔の駒で蘇生させる為には肉体が必要であり1度しか出来ない。だが…このエンマは魂さえ無事なら何度でも蘇生させる事が出来るのだ。
「だが…この子の両親は出来なかった。理由は単純、魂が壊されたからだ。悪魔の駒の蘇生なら、魂は関係ないみたいだけどな」
しかし、エンマの蘇生は弱点がある。それは魂が壊されたなら蘇生は出来ないのだ。そのお陰か、エンマはナナの両親と姉は助けることが出来なかった。
「貴方!死者の蘇生が出来るの?素晴らしいじゃない!!私の眷属に成らないかしら?もし、成るなら我がグレモリー家で孤児院の子供達も全員、面倒見るわ!!どう?別に良いでしょ?」
死者の蘇生が出来、その上…ポケモン等の空想の存在を現実の存在に出来る。これ程、優れた存在は先ず居ない。何としてでもリアスはエンマを眷属に欲しくなってきたのだ。その上、リアスは孤児院の子供達の面倒をグレモリー家で全部見ると言ったのだ。確かに、それは魅力的だろう。グレモリー家はソロモン七十二柱の貴族の中でも有力な権限を持っており、魔王を排出した名家。財力も悪魔の中でも非常に高いのだ。
「ね?悪くないでしょ?」
だが…その瞬間、エンマを支点に大地に亀裂が入り、大地処か空間にさえ亀裂が入ったのだ。空間が悲鳴を挙げ始め、リアス達の身体にプレッシャーが襲い掛かる。もし、変な事を起こせば自分達が殺される事が本能で理解できてしまったのだ。
「ふざけてるのか?悪魔の軍門に下れと?」
「えっ!?嫌なの!?」
「当たり前だ。その話は2度とするな、滅ぼすぞ?」
エンマはそう告げ、力を緩める。すると、空間の亀裂は無くなり、リアス達は胸を撫で下ろした。
「てか、ナナ。学校は?」
「イナバが大きな気配を感じちゃって…一緒に帰ってきちゃった」
そしてナナは再び帰ってきたイナバ共々、再び学校に飛ばされた。
応接間。
「アレン。ハーゲンダッツかけようよ。エンマ先生ぶちギレるに1票」
「じゃあ、僕はエンマ先生とっくにぶちギレたで」
「あっ、それ無し…アホ総理にキレたからね。てか、さっきキレたよね?」
応接間と書かれた扉の前には2人の男が立っていた。1人は我等が敏腕弁護士である五条始、エンマからの召集命令を受けて東京の職場から戻ってきたのだ。
もう一人はと言うと…白髪に童顔の顔立ちをした青年であり、左手には手袋をはめて初夏だと言うのに長袖の衣服を着ている。そして…D.Gray-manの主人公アレン・ウォーカーそっくりだ。
彼の名前は千手アレン。そこはウォーカーではない。彼は神滅具の1つ英雄ヘラクレスの必殺 直死の首絞めで死んだ伝説の怪物…ガイアの怪物テュポーンの息子 ネメアの獅子が封じられた神器 獅子王の戦斧を宿している…いや宿していたのだった…過去形だ。
彼は4年前の事件が始まるほんの少し前、恐らく中学二年生だった彼は何者かの手で殺された。その後、その神器である獅子王の戦斧だけが悪魔に転生されて貴族悪魔と共に失踪。だが…神器は実はと言うと魂と密接にくっついており、神器が肉体から喪われると魂に大きな損傷を受ける。その結果、遺されたアレンの魂はズタズタに損傷…結果、記憶の大半と左腕を喪ったのだ。エンマの蘇生でも左腕と記憶は治らず、アレンがアレン・ウォーカーそっくりだと見たエンマがアレンの名前を与えたのである。
なお、喪った左腕はエンマの気紛れでD.Gray-manのアレン・ウォーカーの左腕である対悪魔武器ことイノセンスが移植されている。魔獣創造おそるべし。
「アレン。ヨーロッパどうだった?」
そして始の問い通り、アレンはついさっきまで海外に居たのだ。4年前に教会を辞めた最強クラスのエクソシスト、アレンと同じく3年前に記憶を喪った(アレンと始が主な原因)ヤベー真祖(半分死徒)の少女、元最強で人の天敵だったマスコットと共に海外に居たのである。そこで旅をしながら多くを見てきた…勿論、嫌な現場も。
「日本より末期ですね。日本は悪魔や堕天使だけですけど、海外じゃ天界が大きな力を持ってます。まあ、エクソシストが居る分、悪魔はおとなしめですかね?それでも大きな被害が出てましたけど」
欧州では悪魔の他に天界や教会も大きな力を持っている。エクソシストが日頃から異端を狩り、信徒を悪魔等の神に仇なす存在から守っているのだ。しかし、天界も欧州の政治に口出しを行っているのだ。
「はは、どっちがましかね?いやマジで」
「ですね」
一方の応接間。そこではリアス・グレモリー御一行はエンマと話を行っていた。
「で?お前達はどうしたいんだ?」
「私は婚約を破棄したいのよ…総理から聞いてると思うけど、私はライザー・フェニックスと結婚したくないのよ」
リアスは語りだす。ご存知、リアス・グレモリーはライザー・フェニックスと結婚する事が実質的に決められている。これは親同士が決めた婚姻であり、リアスには拒否権は存在しない。
リアスは自分の兄である魔王サーゼクスがそうだったように、自由に恋愛結婚して幸せに成りたいのだ。だが…貴族というしがらみ故かそれは許されない。しかし、リアスの事が可愛くて可愛くて仕方がない魔王サーゼクスはリアス・グレモリーに救いの手を用意した。それはご存知、リアスとライザーで悪魔の娯楽であるレーティング・ゲームを行い、リアスがライザーに勝てば婚約は無事に白紙であり、リアスは幸せに相手を選ぶ権利があるのだ。
だが、リアスの実力ではライザーには勝てない。ライザーはそのレーティング・ゲームを何度か経験しており、恐ろしい事に全勝。期待の悪魔として有名だ。だが、対するリアスは駒王に攻めてきた醜い怪物に変貌したはぐれ悪魔としか実戦経験がない。正に負けレース…どう足掻いても無理だ。
「その為に鍛えて欲しいの!出来れば助っ人として出て欲しいのよ!!」
リアスが自由に成るためにはライザーを倒すしかない。しかし、今のリアス達はそれは不可能であり、彼女達は総理の伝でエンマの所にやって来たのだ。
リアスとライザーのゲーム開始までは数日の猶予が有り、リアスはその間に自分とその眷属を強くしてライザーを倒せるレベルまで強くなる…或いはライザーを倒せる人材を助っ人として用意するしか無いのだ。その助っ人orコーチとして総理が進めた人材こそ、エンマだったのだ。
だが…エンマの答えは。
「俺にはメリットは無い。だから無理だ」
助っ人にもコーチにも成るつもりは全く無い。
「だが…提案ならある。婚約を破棄させる手段ならある。先ず1つ、お前達がグレモリー家を家出すれば良い。そうすれば自由だ」
「そんなのは無理よ!!」
リアスがグレモリー家を出れば婚約は関係ない。しかし、リアスはそれが出来ない。いや、したくないと言った方が良いだろう。そうすればリアスは莫大な財産と地位を失うのだから。
「じゃあ、2つ目。ライザー・フェニックスを暗殺及びフェニックス家の男児を子供達も含めて皆殺しにする。そうすればお前はフェニックス家と結婚しなくて良い」
「冗談じゃない!!そんなのやったら、秘薬であるフェニックスの涙が作れないじゃない!!」
フェニックス家の男を皆殺しにする。そうすればリアスはフェニックス家と結婚しなくて良い。だが、そうすれば最終的にフェニックス家は断絶してしまうだろう。当然、リアスはそれも拒否。
「じゃあ、3つ目。ライザー・フェニックスを同性愛者にするか」
「同性愛者?」
「阿部さんのおホモフレンズにするんだよ」
「ヤらないか?所で見てくれ、俺のキンタマをどう思う。フフフ、沈黙は肯定と捉えるさ」
その日の夜。フェニックス家に
「悪い!リアス…俺は素晴らしい愛人が出来たんだ!!ウホッ!!良い男!!」
ライザー・フェニックスは新しい世界に誘われ、男の愛人が出来てフェニックス家側から破談が言い渡された。
そしてリアス・グレモリーは代償として、男に婚約者をネトラレタ哀れな女性として語られる事に成るのだった。
2巻…秒で終る(笑)因みにナナちゃんは無能のナナの柊ナナちゃんイメージで
次回から3巻。
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五条先生の青い春(スラドク+月姫)
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孤児院の日常
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エンマの青い春(魔法使いの夜)
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