「初めまして畑山愛子と言います」
「初めましてね園部優花よ」
「前回は使徒との戦闘だったわね、その後は. . . 」
「あぅ、恥ずかしです」
「園部弄るのは辞めてくれ頼むから」
「2人とも顔真っ赤だよ?」
「「辞めてくれ(ください)」」
「ハイハイ」
「それじゃ、行ってみる?」
「「ええ!」」
「それじゃせーの!」
「「「訓練終了と告白!」」」
訓練終了と告白
Side 零斗
沈んでいた意識がゆっくりと浮上する。それに伴い身体の感覚が鮮明になっていく。そして、腕の中に柔らかく暖かい物があるのに気が付くり
「くぅー……くぅー……」
「あーマジか」
昨日、愛ちゃんの事を抱きしめていたら気が付かないうちに寝てしまった様だった……と言うか
「おはよう、零斗」
「あぁ、おはよう刀k……ヴェ!?」
「相変わらず可愛い寝顔だったわよ」
俺の顔を覗き込むようにして、ベッドの傍に置いてあった椅子に腰掛けている刀華。その手にはスマホが握られていて、俺と愛ちゃんの寝顔が激写されている。
「まぁ、事情は知っているからお咎めは無しよ」
「そ、そうか」
「でも今夜こそ覚悟しておいてね?」
「……ハイ」
こりゃ、朝までじっくり絞られるな……夜までにどうにか機嫌を良くしてもらわないと明日の訓練に支障が出る……
「もう皆起きているわ、さっさと着替えて朝食取っちゃいなさい」
刀華はそれだけ言うと部屋から出て行ってしまった。ありゃ、拗ねてるな……機嫌直してもらうのは難しそうだな。とりあえずはベッドから起き上がり、椅子に掛けられた上着を着る。
「すぅ……」
未だに眠りこけている愛ちゃんの頭を撫でながら、起きるのを待つ。
「ぅ……んン……ここは……」
「おはよ、愛ちゃん」
「……おわよう……ございます……湊莉君」
まだ眠いのかぽわぽわしたまま、挨拶を返す愛ちゃん。薄っすらと目を開けて辺りを見渡す。そして今度は俺を見るとそのまま視線を固定する。
「私……昨日……何を────ッ!?!?!」
「……あれしか思い付かなかったんだ……許してくれ」
「うぅ……生徒に情けない姿を……」
昨日の夜起きた事と俺がやった事を思い出したようであぅあぅと悶えている……うーん、可愛い。
「食事は取れそう?」
「は、はい!大丈夫です!」
「そっか、それなら良かった」
病み上がりだから胃に負担が掛からないお粥とかにしておくか……と、その前に
「これ替えの服」
「え?」
「着替え終わったら言ってください外で待機していますから」
「?…………に、にゃにゃぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜!?!」
すまんな愛ちゃん、治療が病衣を着させたんだけど、それ自体ちょっと脱げやすいんだ。たぶん寝て間にはだけちゃたんだな……かなりの露出度だった。しばらくして愛子が部屋から出てきた。
「う〜……」
「なんか……ごめん……」
「生徒にはしたない姿を……」
「とりあえず食堂行こっか……」
顔を真っ赤にしながら頷く愛ちゃん。道中で男性サーヴァントに会う度、少し怯えている。トラウマはかなり根深いものらしい、この様子だと間違いなく男性恐怖症になってしまったんだろうな……
「とりあえず、ここで待っててくれ……直ぐに戻るから」
「は、はい……」
愛ちゃんを席に案内してから、俺はキッチンに入る。キッチン内ではエミヤやブーティカさん達カルデアキッチン組が忙しなく動いていて。
挨拶をして、軽い雑談をしてから愛ちゃん様の朝食を作る。昨日の余り物のうどんを茹で、エミヤ達が取ってくれていた合わせ出汁を少し貰い、それに水溶き片栗粉でとろみを付け溶き卵を入れる。それを器に盛り、愛ちゃんの所に持っていく。
「熱いから気を付けてな」
「ありがとうございます」
ゆっくりと食べ始める愛子。天職の料理人の効果で作った料理には回復効果がある。更には技量も上がるのか、麺の硬さは程よく、たまごも外はふわふわで中は半熟の丁度いい火入れ具合になっている。普通に作ったたまごうどんでもかなりの絶品になっている。
「すごく美味しいです!」
「そりゃよかった」
するすると食べ進めていく愛ちゃん。作った側の人間としても美味しいと言って食べてくれるのは大変嬉しい物だ。そんな事を思っているといつの間にか、愛ちゃんはたまごうどんを完食していた。
「ご馳走様でした!」
「はいお粗末様でした。どう?体に違和感はない?」
「大丈夫です!」
「良かったちゃんと効いたみたいだな」
「どうゆう事ですか?」
「あぁ、気にしないでくれ」
作ったたまごうどんには精製した俺の血をちょっとだけ入っていたのだ。あ、精製すると回復効果と滋養強壮の効果しかないから安全だからな安心してな。
「それじゃ俺はハジメ達の訓練があるから、ここらで失礼するよ」
「訓練?何をするんですか?」
「戦闘訓練だ。俺の技能にある召喚魔法で実戦形式でな」
「見学してもいいですか?」
「別にいいけど」
「ありがとうございます」
2人でシュミレーション室に向かう。シュミレーション室に入ると、既にハジメ達が待機していた。
「おはようさんハジメ、幸利、浩介」
「「「おはよう零斗」」」
「今日からは能力の制御と完全な喰種化の訓練だ基本は戦闘ばかりになるからなちゃんと付いてこいよ」
「「「わかった」」」
シミュレーターを起動しようと操作端末に手を置いたタイミングで愛ちゃんが声を上げだ。
「ちょ、ちょっと待てください! 南雲くんに遠藤くん、清水くんなんですか!? 身長も顔付きも変わっていませんか!?」
「もちつけ、俺の強化細胞を移植した影響だから」
「強化細胞?移植?な、何を言って?」
「俺の技能のR-Ⅰ型強化細胞だよ俺の容姿もこれが原因でこうなってるけど普通に黒髪黒目になれるから大丈夫だ」
「……プシュー」
「情報量が多かったみたいだなショートしてら」
あ、ハジメ達の容姿を軽く纏めるとハジメは俺と同じように白銀色の髪で目は赤くなっている。浩介は髪が白のメッシュがあるだけでほとんど変わらないが背丈は176cmと10cm近く伸びた。1番変わったのは清水だな適正率が高かったことも相まって俺に近い容姿になっている髪は白銀色に青みがかった黒のメッシュがある背丈も181cmとかなりの高身長イケメンになっている。うーむ……変わり過ぎでは?ま、これで要らんやっかみはない……かな?
「そんじゃ始めるか」
改めてシュミレーターを起動しながらそう言う。場所は見通しのいい荒野に設定する。すると、辺りの景色が一変し、設定した通りの荒野へと変わった。
「よし、ここでいいか」
軽くストレッチをして、戦闘準備をする。
「そんじゃ、やるとしますか。『召喚魔法』『上級、中級、下級』『天使、悪魔、アンデッド』」
そう言うと半径1kmに大量のモンスターが出現する。やっべ魔力込め過ぎたわ。うーむ、まだ使用してなかったから勝手がわからんな……ま、余裕だけどな
「『命令・全力で殺しに来い』」
「「「グオオオオオオオー!!」」」
召喚したモンスターが殺意の篭った咆哮が上がる……俺は異空間収納から太刀"鬼灯"を取り出す。そして……
「我流剣術 "八咫烏"」
挨拶とばかりに我流剣術の"八咫烏"を放つ。八つの斬撃が先陣を切って来たやつをバラバラに斬り飛ばす。
「動きが速いやつにゃ、これだ」ドパン!
「キャウン!!」
ウィンチェスター式のショットガン"リベリオン" で寄ってきたやつを撃つ。撃たれた魔物の身体は穴だらけになり、地面に転がった。
「──────────!」
物言わぬ天使に向かいナイフを投擲する。ナイフは吸い込まれるように天使の額に突き刺さった。投げたナイフは俺自身の血を混ぜ血統武器作成で作成した物なのですぐに手元に戻ってくる。
「グガァァァァ!!」
一心不乱に向かてくるアンデッドを繰糸"マリオネッタ"で拘束し、即座に切り刻む。
わずか数秒で100匹程の敵を屠る。この調子なら4〜8分位で終わるな。適当に音楽でも聴きながら殺るか……ヘッドホンを付け、スマホで音楽をかける。そして、異空間収納から大鎌の『ファイス』を取り出し、肩に掛ける。
「
─────────────────────────────
「ふぅ……終わったな」
思ったより時間掛かったな……訓練したとは言え全盛期には遠く及ばんな。こりゃ早めに鍛え直して、カンを取り戻さないとなぁ……
「……ホントに参考にならない事ってあるんだね」
「そうか?これぐらいは余裕なんだかねぇ」
出した武器を全て異空間収納に入れて、ハジメ達の目の前に立つ。軽くスパーリングをして、いよいよ本格的に始めようとした時に……
「うぅ……あれ?ここは?」
「起きたみたいだな」
ショートしていた愛ちゃんが目を覚ました。
「おはようさん愛ちゃん先生」
「え?おはようございます?」
「よし、ハジメ達は俺より数減らしてやってみるか途中でアドバイスするかもだからな。それ以外は基本自由だ……それが終わったら俺と模擬戦な」
「「「了解!」」」
「ほい『召喚』」
先程込めた魔力よりも大分減らして魔法を行使する。ざっと200体くらいか……まぁ、行けるだろ。
「……なぁ、零斗。少し敵の数が多過ぎやしませんかね?」
「大丈夫だ、そこまで強くねぇし」
「そういう問題じゃないよ!!」
3人は悪態を付きながら戦闘を始めた……このペースなら10分くらいで終わるな。俺は即席で高台を作って、愛ちゃんを抱えてそこに移動する。高台からはハジメ達が悪戦苦闘している様子が良く見える、俺はそれを肴にスポドリを飲む。
「私が意識がない間何があったんですか?」
「んー、俺があれの100倍近い敵と戦闘してた」
「え!?」
隣でハジメ達を見ていた愛ちゃんの質問になんとなしに答えたら、かなり驚いた様子だった。
「そんな驚くことか?」
「怪我は無いんですか!?何か体に異常は!?」
「落ち着け、なんともないから大丈夫だ」
俺の身体をぺたぺたと触って傷が無いかのチェックをしてくる愛ちゃんの頭を撫でて宥める。
「そ、そうですか……南雲くん達は大丈夫なんですか?」
「大丈夫だろ危なくなったら止めに入るし」
「それなら安心ですが……」
「ちょっと話をしようか」
「え?」
「この世界について……ね」
そこからはノイントから得た情報と吸血した使徒(零斗は吸血した時に相手の記憶を知ることが可能となってます)から奪った情報を愛子に伝える、話終わった頃には愛子の顔色が真っ青になっていた。
「大丈夫か?」
「この世界はそんな惨状に?」
「あぁ……」
「……全員生きて帰れるのでしょうか」
愛ちゃんは不安な面持ちで下を向いてしまった。だが、ここで何か優しい言葉を掛けるのはあまり宜しくない。下手に希望を与えてしまえば、それが覆った時の絶望は酷いものになる。
「まぁ、無理だな」
「な!?何故!?」
「確実に天之河が無理な行動をするからだな。それに振り回されるのが確定しているし……」
実際、アイツのせいで危うくクラス全員が戦場の最前線に立たされかけたんだしな……あれがこのまま、勇者として祭り上げられれば歯止めが効かずに暴走してしまうだろう。
「そ、そんな……」
「安心しろそうならない様に対策を練る事はできるし、エヒト程度のエセ神だったら速攻で潰せるが……クラスの連中がどうなるかは分からんな。もしかしたら、魔人族に寝返る奴も出るかもな」
「もしもクラスの中から裏切り者が出たら?」
愛ちゃんが心配そうにこちらを見上げてくる。俺は愛ちゃんから視線を逸らして、なるべく平坦な抑揚の無い声色で告げる。
「殺すだけだ」
「な、何故ですか!?」
愛ちゃんの表情が絶望に染まり、カタカタと震えている。目には涙を浮かべ、今にも泣き出してしまいそうだった。
「……裏切った奴を許した所で改心するかと言われたら必ずしもそうとは限らない、ましてや裏切った奴を許せるほど、俺は甘くは無い」
「で……でも!」
悲痛な叫びと共に、涙を流し始めてしまった愛ちゃん。小さく嗚咽し、『何故、生徒たちがこんな目に』とこぼして、ぺたりとその場に座り込んでしまった。
「……だけどそうならない様に努力はするけどな」
「私……私は……どうすれば?」
「貴方はそのままでいいんだ」
俺は愛ちゃんの頭に手を置いて、どうにか落ち着いてもらおうと、なるべく優しく頭を撫でる。
「……でも」
「これに限っては適所適材だからね……」
苦笑いをしながら、愛ちゃんの手を引いて立ち上がらせる。愛ちゃんの泣き腫らしてしまった目に温かくしたタオルを当ててやる。
「零斗ー!終わったよー!」
高台の下の方からハジメの声がした。下を見ると、生傷だらけのハジメ達がいた。とりあえずは高台から降りてハジメ達の傷を治す。
「お疲れさん、どうだ能力使った感覚は?」
「うーんやっぱり難しいね」
「これに限っては慣れて行くしかない」
能力の制御さえ覚えれば後は完全な喰種化と能力を最大限に引き出せるかだな……喰種化は一度出来れば案外楽に出来るようになるが能力を最大限引き出せるかは本人の実力と経験が重要になってくるんだよなぁ。
「よし、じゃ連戦で悪いが俺と模擬戦だな」
「組み分けはどうするの?」
「3対1でいいぞ」
俺の発言にハジメ達が困惑していた。高台にいた愛ちゃんも上から声を張り上げて、心配していた。
「そんな!無茶ですよ!」
「大丈夫、俺最凶だから」
「「「「文字違くね(ませんか)!?」」」」
「そうか?」
色んな意味で合ってるよね?だってあの人27歳児じゃん公式も言ってるかんね。
「さあ、かかって来い」
「「「本当に大丈夫なの(か)?」」」
「もちろん!んじゃ愛ちゃん先生合図頼む」
「愛ちゃんじゃありません!畑山先生です!」
「すまんすまん(笑)」
「むぅー!!はぁ……行きますよ?」
それぞれが得意とする武器を構える。俺は武器も持たず、構えもせずにただ腕組みをしながら待機する。
「始め!!」
「「「ッ!!!」」」
三方向から同時に攻撃を仕掛けてくる……が──ー
「遅いな」ギィン
「「「は!?」」」
三人の得物を素手で受けて止める。三人とも目の前で起こった事が理解出来ないようで唖然としていた。
「ほれ惚けている場合じゃないだろ」ブン
「「「ウワァ!」」」
「ほれほれどうした?」
掴んだ得物を軽く振るとハジメ達は吹き飛ぶ。ゴロゴロと地面を転がり砂だらけになりながらも何とか体制を立て直し、得物を構え直した。
「さ、時間は無制限だ幾らでも来ていいぞ」
「ちょっと舐めすぎたな」
「「そうだね(な)」」
「あ、ちなみに最初の10分間は何もしないからねー10分過ぎたらカウンター入れていくから」
「「「マジかよ……」」」
そこからは酷い物だった。攻撃するが当たらずカウンター喰らって吹き飛ぶすぐに起き上がって再度攻撃するがカウンターて吹き飛ぶの繰り返しだった。そして1時間がたった頃にはハジメ達はボロボロだった。
「ハァ. . ハァ. . 」
「ゼェ. . ハァ. . 」
「ヒュー. . ヒュー. . 」
三人とも肩で息をして、地面に横たわっているハジメ達。何度も吹き飛ばれ、地面を転がったせいでさっき以上に傷だらけになっている。
「おいおい大丈夫か?」
「カヒュ……これ……が……大丈夫……ゲホそうに……見える?」
「こりゃ失敬、で……まだやるかい?」
俺が挑発する様に言うと、三人とも起き上がり再度構えを取る。目にはギラギラとした闘志を滾らせ、全身に活を入れて、再び俺に向かってくる。
「「「当然!」」」
「意気やヨシ!どんどん来い!アドバイス位はしてやる!」
三人とも、磨けば光る原石だ。今からどんな風に成長するかが非常に楽しみだ。ハジメ達の将来に胸を躍らせながら、ハジメ達の攻撃を防いで、カウンターで地面に叩きつける。
──────────────────────────
「「「……」」」チーン
「……ちょっと、やり過ぎたな」
ボロ雑巾の様になったハジメ達が地面に転がっている。三人ともピクリとも動かず、屍の様だった。まぁ、死なない程度にボコボコにしてるから大丈夫か。
「三人とも戻って来てください!」
愛ちゃんは三人の身体を必死に揺さぶり、偶に頬をペシペシと叩いて起こそうと躍起になっている。それでもハジメ達は動かずにぐったりとしている。
「……とりあえずは各自のマイルームに運んでやるか」
愛ちゃんを落ち着かせてから三人を肩に担いで、シュミレーターの電源を落として、部屋を出る。
─────────────────────────────
それから約1ヶ月後ハジメ達はかなりの成長を遂げていた。手加減しているとはいえ俺に攻撃が当たるようになってきた。喰種化も習得し能力もかなり使えるようになってきた。明日で3ヶ月が過ぎる……そう
明後日は『オルクス大迷宮』で実施訓練と言う予定らしい。今日の夜にはハイリヒ王国で他のクラスメイト達と合流する手筈になっている。明日の昼頃には宿町『ホルアド』に移動らしい。今日の訓練は無しで確実に自由行動を言い渡してある、何故かって?
「ハジメくん!」
「はい!?なんでしょうか!白崎さん!?」
食堂でゆっくりと夕食を食べていたハジメの背後から、ぬるりと白崎が姿を現してハジメの肩に手を置いた。訓練の影響で白崎は気配と足音を完全に消せる様になっているせいか、浩介並の認識のしずらさを物にしていた。
「今日、この後さ……予定ある?」
「別にないけど?」
「じゃあさ私とデートしてくれない?」
「え!?」
白崎が顔を赤くしながらデートのお誘いをした。ハジメの方も顔を赤くして口をパクパクさせている。うーむ、健全な男女の関係ですねぇ……
「ダメ……かな?」
「そ、そんな事ないよ!」
「本当に!!やったー!」
白崎は心底嬉しそうに笑ってハジメの手を握った。手を握られたハジメは首まで真っ赤になり、キャパオーバー寸前だった。
「……二人とも、良さげな雰囲気な所申し訳ないんだかな……ここ食堂なんだわ」
俺の言葉で自分達のした事の重大さに気が付いたのか恥ずかしくなったのか二人して顔を赤くして俯いてしまった。食堂内には未だに職員やサーヴァント達が居る……つまりはこの場に居た者全員がハジメ達の青春劇を目撃したのだ。
「デートなら、ハイリヒ王国で花火大会やるから行ってこい……こいつも持っていけ……天之河にバレると面倒だろ?」
ハジメ達に小さいな御守りを渡す。渡した御守りには認識阻害の魔術が付与されている。これを身に付けていれば周りの人間からの認識を少しだけずらしてハジメ達をハジメ達と認識できなくなる。二人は小さく頷いて、食堂を後にした。
ちなみに花火大会は日本系のサーヴァントが『夏の風物詩は花火だ!無いなら作る!』って感じで作ったらしいが……飛んでもねぇ文化侵略だよな。
●○●
Side ハジメ
零斗の地獄の訓練が終わって、食堂でご飯を食べようとした時に白崎さんにデートに誘われた……そして今現在は二人で一緒にハイリヒ王国のお祭りに参加して食べ歩きをしながら、花火の開始時間まで時間を潰していた。
(認識阻害のアクセサリーは……うん、ちゃんと動いてるみたいだね)
腰に付けた御守りに手を当てると、ほんのりと温かくなっていた。そんなことを考えていると、白崎さんに手を引かれる。
「ハジメくん!あそこの屋台の料理美味しそうだよ!」
「……うん、そうだね!」
白崎さんはホントに楽しそうに歩いている。何時もは下ろしている髪を後ろでお団子にして、服装も紫陽花の描かれた浴衣姿だった。
(……楽しいなぁ)
こんな時間が続けばいい、僕はふと思った。
────────────────────────────
やがて空は赤から紫へと霞がかっていく。アナウンスが流れ、大通りは人だかりでいっぱいだった。花火の見やすいエリアまで移動した。このエリアは花火を見やすいのだがその反面登る必要があり非常に辛いという難点がある。そのためわざわざ来る人はいない。しかしハジメと香織は違う。強化細胞の移植により獲た身体能力で楽々と登ることができた。
「零斗が言ってたのはここだよね?」
「そうみたいだね」
しばらくの間沈黙が流れた。花火が打ち上がる時間になるまではまだ少しだけ空きがある。
(気、気まずい!何か喋った方がいいのかな!?どうすればいいの!?)
僕かまそんな事を考えていると. . . 白崎さんが沈黙を破ってゆっくりと話し始めた。
「南雲くん。どうか明後日の迷宮の探索に参加しないでくれないかな?」
「……それは僕が足手まといになるかもしれないから?」
「そうじゃ、ないんだよ! 南雲くんがこれまで頑張ってきたのは誰よりも私が知ってる! けど……ただ怖いの」
「怖い? 何が?」
白崎さんの顔は真剣なものだった。真剣に僕を思って、震えている。今にも泣きそうなほど白崎さんは迷宮を恐れている。
「……毎日夢を見るの。南雲くんが暗闇の奥に消えていく夢を。ただ一人、奥に消えていく夢を」
「……僕が、消える?」
思わず呆気に取られてしまう。そんな僕を他所に白崎さんは懇願するみたいに話を続けた。
「うん……夢だって分かってる! それでも……ハジメくんが心配で心配で仕方がないんだよ。だから……どうか……」
一時の静寂がその場を満たした。その合間に白崎さんが何を思ったのか、今の僕には推し量ることができない。それでも白崎さんの心配は痛いほどに分かった。
「ごめん……それは無理だよ」
それでも僕は白崎さんの願いを聞くことは出来ないり
「……理由を聞いてもいいかな?」
「理由……えぇっと、君と対等な立場になりたいからかな?」
「?どうゆう事?」
「えーと……」
白崎さんは僕の言葉の意味が分からないみたいでキョトンとしていた。
「逃げたくないんだよ。僕ってさ……何をやるにも零斗達に劣ってて、それでいつも『なんでお前があの人達と一緒にいるのか』みたいな事を言われ続けて来たからそれを見返してやりたいて気持ちもあるんだよね」
「そっか…… 変わらないねハジメくんは」
「僕が……変わらない?」
白崎さんの言葉の意味がよく分からなくて、白崎さんを見つめることしか出来なかった。
「知らなくても当然だよ。でも私の中では南雲くんは……誰よりも強い人だよ」
「強い……そうかなぁ?僕、勝負事とか相当弱い自信があるんだけど」
「そんな強さじゃないんだよ。南雲くんは誰よりも心が強いんだ」
「心……が?」
「うん! 心が!」
すると白崎ざはどこか懐かしそうに空を見上げた。既に空は紫一色。いくつもの星が瞬いている。
「あれは、私が中学生の頃だったの。あるおばあさんと男の子が悪い人達に絡まれてたの。その悪い人達、男の子にタコ焼きでズボン汚されたからってクリーニング代をおばあさんに要求してたんだよ。だけどその人達はクリーニング代どころかおばあさんの財布ごと取ってたの」
「あ」
それは僕の記憶にもあるハプニングの一つだ。
男の子が不良連中にぶつかった際、持っていたタコ焼きをべっとりと付けてしまったのだ。男の子はワンワン泣くし、それにキレた不良がおばあさんにイチャもんつけるし、おばあさんは怯えて縮こまるし、中々大変な状況だった。偶然通りかかったハジメもスルーするつもりだったのだが、おばあさんが、おそらくクリーニング代だろう──お札を数枚取り出すも、それを受け取った後、不良達が、更に恫喝しながら最終的には財布まで取り上げた時点でつい体が動いてしまった。
といっても喧嘩など無縁の生活だ。厨二的な必殺技など家の中でしか出せない。その時ハジメが仕方なく行ったのは……相手が引くくらいの土下座だ。公衆の面前での土下座はする方は当然だが、される方も意外に恥ずかしい。というか居た堪れない。目論見通り不良は帰っていった。その一部始終を思い返していると白崎さんは僕の顔を覗き込んで「思い出してくれた?」と嬉しそうに笑った。僕は「……見てたの?」と思わず聞いてしまった。勿論、白崎さんは頷いた。
「私ね、あの時動けなかったんだ。警察に電話することも思いつかなかった。ただ誰かの助けを待って、ずっと見てただけ」
「白崎さん……」
「だから私の中では自分よりも強い人を相手に誰かを守ろうとした南雲くんは……誰よりも強いんだよ」
僕はあんな所を見られていたのか、と恥ずかしく思うと同時に白崎さんの過大評価ともいえる僕への思いに照れくさく思えた。そして今まで白崎さんが僕に話しかけてきた理由がその一件にあったのかと理解した。
すると白崎さんは何かを決意したように頷く。そしておもむろに僕に近づいてくる。
ヒュルルルーと花火が上がるその時、白崎さんは言った。
「ハジメくん私は貴方のことが「ごめん白崎さん」. . .ごめんやっぱり迷惑だったよね 」
「そうじゃなくてねそこから先は僕に言わせて欲しくて」
「え?」
「白崎香織さん僕は貴方のことが好きです……僕と付き合ってください」
僕は自分の心の内を白崎さんに伝えた。そして白崎さんの答えは……
「はい!喜んで!」
「やっっったァ!!」
YESだった。それがとても嬉しくて思わず白崎さんに抱き着いてしまった。
その瞬間花火が夜空を彩った。花火は何度も上がり、夜空を瞬く。白崎さんの瞳の色と花火の色はよく似ていた。
「あ!あとその呼び方、やめようよ!」
「じゃ、じゃあ。何て呼べば……」
「香織」
「……え゛?」
「香織って呼んでくれないかな? 私はハジメくんって呼んでるから。……うん、それでいこう!」
「ま、待って白崎さ……」
「香織」
「えっ、でも……」
「香織」
「……香織さん」
「香織」
「今はこれで勘弁してください! 香織さん!」
さすがに名前呼びはハードルが高いよ!僕らさっき恋仲になったばっかりだよね!?
「……うーん、まあいいか! あ、花火上がってるね! 見ようよ!」
「うん!」
「後、ハジメくん!」チュ
「な……!?」
「エヘヘ、キスしちゃたね」
「……」プシュー
「あれ?」
初めてのキスの味はよく分からなかったけどとっても幸せな気分でした……悔いは無い……
●○●
Side 零斗
「お、お帰りハジメ、白崎」
「「ただいま、零斗(くん)」」
「その様子だと晴れて恋人同士て訳か. . . おめでとさん」
「「!?ど、どうしてわかったの!?」」
「え?だって白崎のリップバームがハジメの唇に付いてるし」
「え?う、嘘っ? は、ハジメ君、く、唇ふくからちょっとじっとしてて……」
「か、香織さん?」
香織がハジメの唇を優しくハンカチで拭いていると赤面し初めた。ハジメの唇を見ていた香織はさっきのキスの感触が蘇ってきてしまったようだ。
「ハイハイごちそうさん」
「「うー恥ずかしい……」」
「ほれもうすぐ夕食できるから手洗ってきな」
「「はい……」」
ハジメ、白崎おめでとう。さて後は天之河、檜山をどう始末するかだな……檜山辺りは不祥事を起こすだろうからそれの余罪を引き出して殺るか。天之河はかなり難易度高いな……
そんな物騒な事を考えながら夕食の仕上げをする。明後日の迷宮での訓練が心配だな……白崎も予知夢らしき物を見たらしいからなぁ、どうすっかねぇ?
かなり長くなってしもうた. . . 感想お待ちしております。
あ、後零斗の技能のR-Ⅰ型強化細胞はかなりの高性能なので容姿の変更や性別の変化なんかもできます。