ありふれた黒幕で世界最凶   作:96 reito

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「よっと、はーい( ・ω・)ノお馴染みの零斗でーす」
「初めまして前にちょろと出たカインだよろしく頼む」
「アーチャーのエミヤだよろしく頼む」

「前回はハジメ達の訓練が終わったのとハジメの告白だったな」
「とても初々しかったですね」
「今の高校生というのはあの様な者なのか?」
「さぁ?」
「「さぁ、て」」
「知らんもんは知らん」

「今回はちょっとした事件だ」


「そろそろ行ってみる?」

「「了解した」」

「それじゃ、せーの!」


「「「お粗末な悪意と断罪!」」」


お粗末な悪意と断罪

 Side 零斗

 

 ハジメの告白が成功し、白崎との交際がスタートしてから丸一日……今までの反動なのか脇目も振らずにイチャイチャしている。 

 

「ハジメくん!」

「何?香織さん」

「呼んでみただけ!」

「そ、そっか……」

 

 はい、朝っぱらからこんな感じに存分にイチャイチャしてくれやがっています。ブラックなハズのコーヒーが甘ったるく感じる程に甘い雰囲気が二人の間に漂っている。ま、これはコレで弄るのが楽しいけどネ! 

 

「ハジメ、白崎そろそろ行くぞー準備しとけー」

「「はーい」」

 

 明日は王国にいるクラスメイト達と合同で行う『オルクス大迷宮』での対魔物の戦闘訓練だ。今日の所は『宿場町 ホルアド』で前日泊する事となっている。

 

「カルデアの外にシャドウボーダーが待機してあります。他の方達はもう外で待っているので早く行きますよ」

「……そっちの口調に戻すんだ」

「えぇ、こちらの方が色々と楽ですからね」

 

 何時もの砕けた口調から地球に居た頃の優等生キャラの口調に切り替える。外聞的には優等生キャラを演じていた方が良い事が多いのでなるべくこっちの口調にしている。

 

「ほら、早く行きますよ……これ以上他の方を待たせるのは流石に気が引けますからね」

 

 ハジメと白崎を急かしながら、カルデアの外に向かう。外に出ればシャドウボーダーの搭乗口の前で他のメンバーが雑談していた。

 

「お待たせしましたね……さ、行きましょうか」

 

 全員に声を掛け、シャドウボーダーに乗り込んでハイリヒ王国に向かって発進する。

 

 ──────────────────────ー

 

 シャドウボーダーを走らせること数時間、やっとハイリヒ王国に到着した。早速、ギルガメッシュ王のいる執務室に向かう。執務室の前にはシドゥリさんが立っていた。

 

「お久しぶりです、シドゥリさん」

「えぇ、お久しぶりです。レイト様」

 

 シャドウさんは軽く微笑むと執務室の扉を開けて中に案内してくれた。中ではギルガメッシュ王が職務に追われていた。

 

「ギルガメッシュ王、ただいま帰還しました」

「……よくぞ戻ったなマスターよ。して結果は?」

「上々です」

 

 酷く疲れた様相でこちらを見るギルガメッシュ王は今にも過労で死んでしまいだった。その姿を見るだけで心が痛む。

 

「そうか……ではこれからも励むと良い……」

「了解しました」

「ではな……」

 

 そう言ってギルガメッシュ王は職務に戻った。頭を抱えて、コーヒーをがぶ飲みして限界社畜の様な顔をしながら書類と睨み始めた。とりあえずの報告は終わったので、退出しようとした時……

 

「そうだマスターよ……これを受け取れ」

 

 呼び止められて、宝物庫から大きめの風呂敷を取り出すと、俺に投げ渡してきた。それを開けると……

 

「ッ!?これは!」

「そう貴様が前世で使用していた装備一式と貴様が大切にしていたイヤリングとマフラーだ」

 

 風呂敷の中には俺が前世で使っていた装備一式だった。"血狂い"も"エルガー&ツォルン"も似せて作成しただけで性能は格段に落ちている。

 

「何故これを?」

「なに貴様が死んだ後我が宝物庫に入れただけよ、光栄に思うがよい。元より貴様に返す予定だったが時間が無かったのでな」

「感謝します。ギルガメッシュ王!」

「フハハハハハハ!気にするな!マスターよ!」

 

 高笑いをしながらまたも職務に戻るギルガメッシュ王。たまには休んでほしいが……俺にはどうする事も出来ないので直ぐにその場を立ち去る。

 

「零斗、そのイヤリングとマフラーは?」

「これは前世の私の弟と妹の遺品だよ……あぁ、何も変わっていない」

 

 前世で着ていたフード付きの外装型の黒いボディスーツ、翡翠が嵌め込まれたイヤリング、血の様に紅いマフラー、何も変わっていないな……

 

「先に中庭に行っていてください。私はこれに着替えてから向かいます」

 

 そう言いハジメ達と別れ着替えるために空き部屋を探す。今来ている服を脱ぎ、ボディスーツを着込む。ボディスーツには必要最低限の装甲が付けられている。フードを巻き込まない様にマフラーを巻き、イヤリングを左耳にだけ付ける。

 

「……あの頃に戻ったみたいだな」

 

 近くにあった姿見の前でくるりと回って全身を確認する。マフラーが風でふわりと舞って、イヤリングがカチャリと音を立てる。そんなくだらない事がどうにも可笑しくて少しだけ笑ってしまう。

 

「っと、ハジメ達を待たせてるだった……はやく行かなきゃだな」

 

 左腰に血狂いを納めて、太腿と腰の後ろに備え付けてあるホルスターにエルガーとツォルンを仕舞い、急ぎ足で部屋を出る。

 

 ●○●

 

 Side ハジメ

 

 零斗と別れて集合場所の中庭に向かう。途中でトイレに行った僕は香織さん達を先に行かせた。少し急ぎ足で中庭に向かっている最中……

 

「ふぅ、そろそろ行かないとな……ッ!?」

「な!?どうして今のが避けれんだよ!」

 

 突然後ろから攻撃をされた。避けられたけど当たってたら確実に怪我をする威力だった。

 

「何か用?」

「あ?調子乗ってる奴を殴ろうとして何が悪いんだよ?」

「そうだ!」

「なんでお前が!」

「俺らより劣ってる癖によ!」

 

 そこに居たのは檜山くんを初めとした小悪党4人組だった(零斗命名)。やっぱり絡んで来たね、零斗達の予想通りだったね。

 

「で?何の用があるの?何も無いならもう行くけど」

「あん、てめぇは何を言ってるのかわかっているのか?雑魚錬成師風情がよぉ!」

「生意気だぞ?ろくに戦闘もできない生産職の癖に!」

 

 ニタニタと気持ち悪い笑う檜山達。僕に戦闘能力がないと思い込んでいる様でゆっくりと近寄ってくる。手には鞘から抜かれた剣に槍が握れていた。本人達はそこまで気にしてないみたいだけど、下手をすれば人を殺しかねない危険な状態だ。

 

「なぁ、檜山。こいつボコした後に白崎の事呼んでよ、こいつの目の前で犯してやろうぜ」

 

 斎藤がゲラゲラと下品な笑い声を上げながら檜山に話し掛ける。檜山はいい考えだとでも思ったのか、斎藤に同調するようにゲラゲラと笑い始めた。

 

「……救いようがないクズ共が」

 

 僕はそう言って近くに居た近藤を殴り飛ばす。すると近藤は訓練場の壁に激突する。檜山達は呆然としていた、だが俺には関係ないその勢いのまま斎藤に回し蹴りを叩き込む。斎藤の顎から鈍い音が聞こえた。檜山と中野は数秒かけ正気に戻り僕に向かい攻撃を仕掛けてくる。

 

「「死ねぇ!」」

「……」

 

 それを躱す。メルド団長達の訓練のおかげである程度戦えるようにはなっているが、元が学生なので技術もセンスもイマイチだし、連携が取れてないから避けるのは簡単だ。

 

「何で避けれんだよ!」

「……」

「ガァ!」

 

 中野は避けられた事に腹を立てたのか抜き身の剣を振りかざしてくる。剣を持つ腕を蹴り上げて武器を手放せて、続け様にアッパーを食らわせて意識を刈り取る。残っているのは檜山だけだ。

 

「……〜〜〜」

 

 檜山は完全にびびってしまっていた。何せ一人で喧嘩した事がないのだ。いつも気弱な奴を選んで脅してるだけの惨めな男だった。抵抗されたら四人がかりでフクロにして言う事を聞かせていたのだったのだろう……

 

「……もう終わり?」

「テメェェェェ!」

「うるさいなぁ……」

「グッア!」

 

 檜山の鳩尾に拳もめり込ませる。鳩尾に重い一撃を食らった檜山は胃液と血の混じった物を吐き出した。

 

「南雲!お前何て事を!」

「あ?」

 

 倒れた檜山を見下ろしていると、背後から天之河が近寄って来て、胸ぐらを掴んできた。

 

「南雲!お前はやっぱりそういう奴だったんだな!」

「……離せよ」

「は? お前は自分のした事を理解していないのか!?」

離せって言ってんだろ! 

「ッ!!」

 

 天之河は僕の怒号に怯み手を離した。乱れた服装を軽く整えて、その場を離れようとした時だった……

 

「……これはどうゆう状況ですか?」

 

 王宮の方から険しい表情をした零斗が歩いて来た。零斗は倒れている檜山達を見て、深いため息をついてから僕に話し掛けてきた。

 

「……ハジメ、これは君が?」

「うん、檜山達から襲われたから軽くあしらっただけだよ」

「嘘を言うんじゃない!」

「貴様は黙っていろ」

 

 零斗が天之河くんを威圧して黙らせる。零斗の目が僕を真っ直ぐに射抜く。

 

「怪我は?」

「一つも無いよ」

「それなら安心です。さ、皆さん待っていますよ行きましょう」

「待て!南雲がやった事を見逃すのか!?」

「これは明らかな正当防衛でしょう、檜山達の手には抜き身の剣に槍……明らかに殺意を持っての行動と見て取れるでしょう。ならハジメが行ったのはただの正当防衛でしょう?」

 

 零斗はそれだけ言うと、僕の背中を押して中庭の方へ移動しようとしたが、天之河が行く手を阻んでくる。

 

「そんな言い訳は通らない! 南雲は自分自身の罪を償うべきだ!」

「罪?ハジメが一体何をどうして?」

「檜山達に暴行を振るった事だ!」

 

 天之河と零斗の議論は平行線のままだった、どちらのボルテージが上がって行き、今にも殴り合いの暴力沙汰になりかねなくなってきた。

 

「だいたい何なんだ!その薄汚れたイヤリングにマフラーは!1度洗った方がいいじゃないか?」

あぁ?

 

 天之河の一言で零斗の堪忍袋の緒が切れた。身体中を刺す様な殺気が零斗から漏れ出した。天之河は零斗の殺気に耐えきれなくなり、その場で尻もちをついてしまった。

 

 

 ●○●

 

 Side 三人称

 

 中庭で待機している、零斗達を除いたメンバーは久しぶりに会ったクラスメイト達と互いに訓練の事を話しながら、全員が集合するのを待っていた。

 

『ッ!!?』

 

 楽しそうだった空気は一変し、その場に居た者の大半が今までに感じたことの無い程の恐怖を感じてガタガタと震え出した。

 

「刀華!」

「えぇ、分かってる!」

 

 恭弥の声に刀華が呼応し、事態の収集に向かう。向かった先は異常な気配を放つ存在の元……零斗の元である。

 

「零斗!!」

 

 刀華が零斗達の元に到着する。その目に写ったのは天之河の首を掴み今にも天之河を殺してしまいそうな零斗とそんな零斗を必死に止めようと声を掛けているハジメだった。

 

「零斗!一度落ち着きなさい!」

「…………」 

「ゲホッ……ゴホッ……零……斗……お前っ!」

 

 刀華の静止の声で漸く零斗は天之河を離した。天之河は力無く項垂れ、しばらく咳き込んだ後零斗を睨みつける。そんな天之河を零斗は感情の篭っていない冷たい視線を向けている

 

「……ハジメ、ここで何があったの?詳しく説明してちょうだい」

「うん……」

 

 ハジメは刀華に事の経緯を話し始めた。刀華の表情はハジメの話を聞いていくうちにどんどんと険しい物になっていった。話を聞き終わった刀華は深くため息をついた。

 

「ハジメ、メルド団長を呼んできて頂戴……零斗の事は私に任せて」

 

 刀華の言葉を聞いたハジメは急いでメルド団長の元へ向かった。それを確認した刀華は零斗の顔を引き寄せて唇を重ねた。

 

「……ん……少しは落ち着いたかしら?」

「…………えぇ、お陰様で」

 

 若干顔を赤くした零斗は頬を掻きながら、檜山達の方を見た。零斗ほ異空間収納から縄と取り出して、檜山達を縛り上げて地面に転がした。

 

「零斗……お前だけは……絶対に!」

 

 項垂れていた天之河がやっとの思いで立ち上がり、零斗を指差しながら怨嗟の声を上げた。そこでやっとメルド団長がやって来た。

 

「零斗!光輝!お前たちは何をしているんだ!」

 

 開口一番に零斗と天之河に怒号を飛ばす。零斗は少し気まずいなったのか視線を逸らしてしまう。一方で天之河は何故自分が怒られたのかが理解出来ていない様だった。

 

「……そこで縛り上げられている檜山達はどうしたんだ?」

「ハジメに対して集団で喧嘩を売った様ですが、返り討ちにあったそうです」

「ハァ……また、問題事を引き起こしたのか……」

 

 どうやら檜山達は前々から王国の貴族に対して神の使徒と言う立場を利用し金品を奪っていたらしい。

 

「……私と天之河はどちらが責任を負うべきかの言い合いになり、ヒートアップしていき天之河が私のマフラーとイヤリングを貶す様な発言をした為、彼に少しだけお灸を据えてやろうと思いまして……」

「そのマフラーとイヤリングはお前にとってどういった物なのだ?」

「……私の家族の遺品です」

 

 零斗の言葉でメルド団長は眉間に皺を寄せて、ため息をついた。そして、零斗の肩に手を置いて話し始めた。

 

「それがお前にとって大切なものだというのは理解した……だが、貶されたとはいえ暴力で解決しようとするのはダメだ……いいな?」

「……善処します」

 

 メルド団長に諭されて、バツが悪そう頭を搔く。その後ろで天之河が何か騒いでいるが刀華達によって押さえつけられている。

 

「天之河、そこまで納得がいかないのなら……私と1対1の勝負をして白黒ハッキリ付けよう」

 

 零斗が冷めた声で天之河に提案をする。それに天之河は嬉々として頷いた。そして、自分が正義の味方かの様な発言をし始めた。

 

「良いだろう……だが、俺が勝ったら南雲が檜山達に暴力を振るった事を認め謝罪する事、そして香織に雫、刀華は置いていって貰う!お前たちのような野蛮な奴らには相応しくない!」

 

 その場に居た全員が固まる。天之河の発言を聞いた零斗は収まりかけていた怒りが再び湧き上がってくる。それを抑えようともせずに天之河に向ける。

 

「随分と強気な発言だな、だがな……何故お前が主導権を握った気でいるんだ?

「ッ!?」

 

 零斗の威圧で僅かに後退る天之河。だが直ぐ様何時もの調子を取り戻し、零斗に噛み付き始める。

 

「やはりお前の様な野蛮な奴には彼女達には相応しくない!」

「……好きな様に言えばいいさ」

 

 零斗はそれだけ言うとメルド団長の方に視線を向ける。視線を向けられたメルド団長は額に手を当てて、また深いため息を付いた。

 

「この先の訓練所にアリーナがある……そこでお前達の決闘を行うとしよう」

 

 この数分だけで少しだけ老けた様に見えるメルド団長。零斗達は既に胃痛案件になってしまった様だ。

 

 

 ────────────────────────

 

 

 訓練所の一角にあるアリーナ……その観客席にはハジメや白崎達の他にも王国に残ったいたクラスメイト達や貴族達……多くの人が今か今かと、二人の登場を待っていた。

 

「……事の経緯を知らない人からすれば良い見世物よね」

 

 八重樫が苦々しい顔で呟く。それもそうだ、恐らくはこの世界唯一の勇者である天之河と実力不明の零斗の決闘だ、事情を知らぬ人からしたら一時の娯楽に過ぎないのだろう。

 

「……では、これより湊莉 零斗 対 天之河 光輝の決闘を始める!双方舞台に上がれ!」

 

 メルド団長の号令に伴い、観客席からは歓声が上がる。その大半が天之河に向けられた物であり、零斗には冷ややかな声が投げつけられていた。

 

「……呑気な物ですね」

「零斗!お前だけは必ず倒す!」

「……『弱い犬ほどよく吠える』とはよく言ったものですね」

 

 天之河を煽る様に話す零斗。天之河は顔を真っ赤にさせて今にも襲い掛かりそうになっている。

 

「双方準備は?」

「問題ありません」

「大丈夫です!」

「そうか……ではルールを確認するぞ。1、魔法の使用制限は無し。2、相手が気絶した場合は10秒カウントで勝利とする。3、相手を殺す事は禁止。以上だ!何か不明な点は?」

 

 両者とも首を横に振る。それを確認したメルド団長は片手を挙げて、開始の準備を進める。

 

「よし……双方構え!」

「……」

 

 天之河は刃引きされた剣を上段に構えている。訓練のお陰で隙が少なく、実用的な構えになっている。天之河がしっかりと構えている一方で零斗は……

 

「…………」

 

 腕を組み、ただその場に立っていた。

 

「お前は巫山戯ているのか!?さっさと武器を構えろ!」

「……貴様程度の相手なら素手で十分だ」

 

 零斗の見下した発言が気に触った天之河は開始の合図を待たずに突撃しようとするが、メルド団長に止められる。

 

「……零斗、ホントに良いんだな?」

「えぇ、このままで構いません」

「そうか……では…………始め!

 

 天之河はメルド団長の合図をしたのと同時に零斗に向かって突貫する。構えられた剣を振り上げて……

 

「オオオォォォォ!」

 

 その勢いのまま袈裟斬りをする。強化させれた身体能力により、常人では反応が出来ない程の速度の袈裟斬りだった。幾ら刃引きされた剣であっても当たり所が悪ければ死んでしまうだろう……だが、それはあくまでも()()の話だ。

 

「……先ずは一回」

 

 零斗は振り下ろされた剣をいなして、天之河の胸に手を当てる。天之河は自分の攻撃がいなされた事に驚愕して目を見開いている。だが、直ぐに気を持ち直していなされた剣を振り上げ逆袈裟を行う。

 

「……これで二回」

 

 零斗は逆袈裟を軽々と躱し、今度は天之河の背後に周り、首に手を賭ける。

 

「どうした?もう終わりか?」

「ッ!!まだまだ!」

「……」

 

 その後も天之河の攻撃を意図も容易く躱し、いなす零斗。段々とイラつき始めた天之河は戦闘中にも関わらず動きを止めて怒声を発する。

 

「さっきから何をしているんだ!」

「……無駄口を叩く暇があるのか?」

「ッ!!ふざけた真似を!」

 

 観客席からも零斗に向けて、貴族連中から罵声が飛ばされる。ハジメや白崎達はそれを冷ややかな目で見ていた。

 

 ────────────────────────

 

「ハァ……ハァ……」

「……これで百回」

 

 天之河は持っていた剣を落とし、肩で息をし呼吸を整えている。それを零斗は呆れた様子で観察している。そんな零斗は息一つ乱していない。

 

「このカウントの意味を教えてあげよう、天之河」

 

 零斗は天之河の目の前まで歩み寄る。そして、首を掴んで無理矢理視線を合わせる。

 

「……貴様が()()()()()数だ」

「な……に……?」

「さらに言うなら軽傷が863回、重傷が601回、戦闘続行不可の怪我が396回、四肢の欠損が298回だ……貴様と私には越えられない壁がある」

 

 そう言って零斗は天之河の首を掴んでいた手を離し、投げ飛ばす。天之河は数度地面を転がる。天之河はどうにか立ち上がると、零斗を睨み付けた。

 

「デタラメだ……!」

「デタラメも何も……貴様の攻撃は一撃も私に掠っていないでは無いか」

 

 零斗の言葉で天之河は押し黙る。それを見た零斗はつまらなそうな目をして、天之河を見つめる。

 

「もうこれ以上、貴様の愚行を許す訳にはいかない。一撃で終わらせる」

 

 殺意の籠った声で告げる零斗。それを聞いた天之河は恐怖に染まった顔を零斗に向ける。零斗は再度天之河に近ずいて、胸に拳を当てる。

 

「……フッ!」

 

 零斗は発勁で天之河を場外まで吹き飛ばす。吹き飛ばされた天之河はアリーナの壁に叩き付けられ、気絶した。

 

「勝者……湊莉 零斗!」

 

 服に付いた砂を払いながら舞台を降りる。零斗からすれば当然の結果だろう。幾ら天之河がチートスペックでも前世と今世での血の滲む様な訓練と強化細胞の恩恵もある零斗に勝利するのは不可能だ。

 

「お疲れ様。零斗」

「少し強めにやり過ぎじゃないか?」

「あれくらいしないと怒りが収まらなかったので」

 

 アリーナの出口で待っていたハジメと刀華が零斗に労いの言葉を掛ける。ちなみに現在の天之河のステータスはこうなっている。

 

 ========================

 

 天之河光輝 17歳 男 レベル:16

 

 天職:勇者

 

 筋力:800

 

 体力:900

 

 耐性:700

 

 敏捷:500

 

 魔力:600

 

 魔耐:600

 

 技能:全属性適正[+光属性効果上昇][+発動速度上昇]・全属性耐性[+光属性効果上昇]・物理耐性[+治癒力上昇][+衝撃緩和]・複合魔法・剣術[+無念無想]・剛力・縮地[+爆縮地]・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破[+覇潰]・言語理解

 

 =======================

 

 この世界の基準で測るなら、天之河は人類最強クラスの実力だろう。少なくとも並大抵の相手には負ける事は無いだろうが、零斗からすれば赤子同然だ。

 

「……零斗」

「メルド団長……どうかしましたか?」

「イヤな……お前達はオルクス大迷宮での訓練に本当に参加するのか?」

「そのつもりですが……」

 

 メルド団長は困った様な顔をしながら零斗を見る。零斗の実力を目の当たりにしたメルド団長は彼らに鍛えられたハジメ達の実力も相当の物だと思った様で訓練に参加しなくても大丈夫だろうと判断したのだろう。メルド団長の予想通り、ハジメは天之河以上のチートスペックになっている。

 

 ========================

 

 南雲ハジメ 17歳 男 レベル:67

 

 天職:黒幕(フィクサー)の弟子・錬成師

 

 適正率:100%

 

 筋力:17150

 

 体力:18250

 

 耐性:16870

 

 敏捷:18550

 

 魔力:20980

 

 魔耐:21980

 

 技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成][+圧縮錬成][+高速錬成][+自動錬成][+イメージ補強力上昇][+消費魔力減少][+鉱物分解]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・剣術・棍術・闘術・銃術・抜刀術・夜目・遠見・気配感知[+特定感知]・魔力感知[+特定感知]・熱源感知[+特定感知]・気配遮断[+幻踏]・毒耐性・麻痺耐性・恐慌耐性・全属性耐性・先読・金剛[+部分強化][+集中強化][+付与強化]・豪腕・威圧・念話(零斗、造介、幸利、香織)・追跡・高速魔力回復[+魔素集束]・魔力変換[+体力][+治癒力]・限界突破・言語理解・R-Ⅰ型強化細胞・喰種化

 

 ========================

 

 既にハジメを含んだ、強化細胞を移植したメンバー全員が人外の領域に至っている。だが、あくまでもステータスだけであり、戦闘技術も知識もまだまだ荒い部分がある。

 

「私の方では、対人訓練ばかりしていましたから……対魔物の訓練はあまり出来ていないんです」

「そうか……そういう事なら……」

 

 メルド団長は何処か納得していないながらも零斗達がオルクス大迷宮での訓練の参加を許してくれた。

 

「……メルド団長、檜山達の処遇はどうするつもりで?」

「ここは被害者のハジメが決めたらどうかしら?」

「へ?」

 

 急に話を振られたハジメは一瞬だけキョトンとするが、軽く考えてから喋り始める。

 

「……正直、どうでもいいかな」

「そういう事なら、こちらで罰を与えておこう」

 

 メルド団長はそう言うとその場を離れ、縛られたまま放置された檜山の元に向かった。残った零斗達も白崎達の元に向かいながらハジメが言った言葉に疑問を呈した。

 

「本当に良かったんですか?」

「うん、事ある毎に突っかかって来るのはめんどくさかったけど……これで清々したよ」

 

 満面の笑みで語るハジメに零斗と刀華は背筋に冷たいものを感じた。




長くなった. . . ハジメがちょっと魔王化してましたね。感想お待ちしております。
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