「えっと、檜山大介です?」
「2度目の登場!南雲ハジメでーす」
「前回はハジメと白崎、俺と雫、そして檜山の謝罪だったな」
「改めてすまなかったハジメ」
「もう気にしてないからいいよ」
「そうか. . . 何だか照れ臭いな」
「仲がよろしいことで. . . 」
「さて、今回はトラップの話だよー」
「それじゃ、そろそろ行ってみる?」
「「OK」」
「それじゃ、せーの!」
「「「伝説(笑)の獣!」」」
Side 零斗
はいはい、零斗でーす。今私の置かれている状況を説明すると……
「あんのクソ野郎がぁー!!」
『オルクス大迷宮』の中を走っています。どうしてこうなったか? それはね……あの
と言う感じ。ちょっと分かりずらいからね回想行ってみーよ!
────────────────────────
俺達は今朝『オルクス大迷宮』の正面入口がある広場に集まっていた。メルド団長が野太い声で大迷宮に挑む際の注意点を話していた。
「今日の訓練の目的は地下20階に行き地下21階への階段を見つけたところで終了、地上へと帰還する。お前達の実力なら魔物に関しては大丈夫だろう。一番気をつけなければならないのはトラップだ。トラップ対策として〝フェアスコープ〟というものがある。これは魔力の流れを感知してトラップを発見することができるという優れものだ」
さすが騎士団長抜かりないね!
「────」
「「「──────!」」」
ん?ハジメ達が何かやってるな……四人とも横一列に並んで……?
「出発じゃ!往くぞ!」バァーン!
ハジメが出来るだけ低い声で号令を掛ける。あぁ……あれか、三部の序盤でのワンシーンか。混ざりたかったな……
「バカやってないで早く行きますよ……まったく…… 」
「「「「はぁーい」」」」
ツッコミを入れつつ迷宮内に入る。ほぉー案外明るいんだな。緑光石だったかな?天之河を先頭に隊列を組みながらゾロゾロと進む。しばらく何事もなく進んでいると広間に出た。ドーム状の大きな場所で天井の高さは七、八メートル位ありそうだ。
と、その時、物珍しげに辺りを見渡している一行の前に、壁の隙間という隙間から灰色の毛玉が湧き出てきた。
「よし、光輝達が前に出ろ。他は下がれ!交代で前に出てもらうからな、準備しておけ!あれはラットマンという魔物だ。すばしっこいが、たいした敵じゃない。冷静に行け!」
その言葉通り、ラットマンと呼ばれた魔物が結構な速度で飛びかかってきた。灰色の体毛に赤黒い目が不気味に光る。ラットマンという名称に相応しく外見はねずみっぽいが……二足歩行で上半身がムキムキだった。八つに割れた腹筋と膨れあがった胸筋の部分だけ毛がない。まるで見せびらかすように。
うん、キモイわ何か生理的に受け付けないデザインしてるよg……隣にいる刀華や雫、白崎達も頬を引き攣らせている。
あ、ちなみに
クソ野郎は純白に輝くバスタードソードを視認も難しい程の速度(笑)で振るって数体をまとめて葬っている。その剣お約束に洩れず"聖剣"の名を持つ。光属性の性質が付与されており、光源に入る敵を弱体化させると同時に自身の身体能力を自動で強化してくれるという“聖なる”というには実に嫌らしい性能を誇っている。実際に"聖剣"に"神剣"の類いを見た俺達からしたらただのおもちゃにしか見えないけどネ!
龍太郎は、空手部らしく天職が〝拳士〟であることから籠手と脛当てを付けている。これもアーティファクトで衝撃波を出すことができ、また決して壊れないのだという。龍太郎はどっしりと構え、見事な拳撃と脚撃で敵を後ろに通さない。無手でありながら、その姿は盾役の重戦士のようだ。
「「暗き炎渦巻いて、敵の尽く焼き払わん、灰となりて大地へ帰れ──〝螺炎〟」」
二人同時に発動した螺旋状に渦巻く炎がラットマン達を吸い上げるように巻き込み燃やし尽くしていく。「キィイイッ」という断末魔の悲鳴を上げながらパラパラと降り注ぐ灰へと変わり果て絶命する。気がつけば、広間のラットマンは全滅していた。他の生徒の出番はなしである。どうやら、光輝達召喚組の戦力では一階層の敵は弱すぎるらしい。
「ああ~、うん、よくやったぞ! 次はお前等にもやってもらうからな、気を緩めるなよ!」
生徒の優秀さに苦笑いしながら気を抜かないよう注意するメルド団長。しかし、初めての迷宮の魔物討伐にテンションが上がるのは止められない。頬が緩む生徒達に「しょうがねぇな」とメルド団長は肩を竦めた。
「それとな……今回は訓練だからいいが、魔石の回収も念頭に置いておけよ。明らかにオーバーキルだからな?」
メルド団長の言葉に鈴と恵里の魔法支援組は、やりすぎを自覚して思わず頬を赤らめるのだった。
そこからは特に問題もなく交代しながら戦闘を繰り返し、順調よく階層を下げて行った。そして、一流の冒険者か否かを分けると言われている二十階層にたどり着いた。現在の迷宮最高到達階層は六十五階層らしいのだが、それは百年以上前の冒険者がなした偉業であり、今では超一流で四十階層越え、二十階層を越えれば十分に一流扱いだという。
「次は南雲パーティーの番だ!」
「ハジメ出番ですよ」
「うん」
ハジメのパーティーはハジメ、浩介、幸利、白崎の4人だった。前衛が1人だけなのは心もとないが……問題はない。何故かって?
「……」ドパァン!
「ギャウン!」
重々しい破裂音と共に一筋の閃光が魔物の身体を貫き、そのまま背後の魔物にも着弾する。その光景を見たメルド団長は俺の肩を掴み、ガクガクと揺さぶりハジメの方を指差しながら説明を求めてくる。
「あ、あれは……なんだ!?」
「あれは銃と言う武器です。私達の居た世界の武器です、かなり小型ですが弓やクロスボウ以上の連射性能に中級魔法程度の威力があります」
「な!?そんな物が!?」
「ですが、余り量産は出来ません」
ハジメが自作のリボルバー型の拳銃"ドンナー"を使い浩介が捌ききれなかった奴を対処するからだ。幸利は闇魔法で魔物の意識を奪ったり、一時的に魔物を操っている。白崎は完全にヒーラーなので戦闘には参加していないが近づいた奴は持っている杖で殴り殺すので問題はない。
ものの数分で魔物が全滅する。
「なかなかいい連携でしたよ」
「あれだけ零斗に扱かれればね……」
まぁ、そりゃひたすらトライ&エラー繰り返せばアイコンタクトぜすに連携ぐらい出来るようなるよな!
「南雲ォ!」
「……ハァ」
「何をするんだ零斗!」
「どうせハジメに掴みかかるつもりだったのでしょ? それを止めただけです」
「南雲!卑怯だぞ!」
「は?」
卑怯?何を言ってるんだ?ハジメは自分の武器を使用して戦っただけなのに……本当に理解出来ない。
「銃なんて使ってんじゃない!正々堂々戦え!」
「君は何をバカな事を言っているんだ?大体戦闘に卑怯もあるものか……」
「そんなものは関係ない!」
「では魔法や弓も卑怯と言う事になりますが?」
「そんな事は言っていない!」
「遠距離から攻撃するのが卑怯なのでしょう?君が言っているのはそう言うことです」
「ッ!」
これだから嫌なんだよコイツ……何かあればイチャモン付けて来るからよ。
「ほらさっさと自分のパーティーに戻ったらどうですか?」
「ッ!!」
ほらほら、さっさと尻尾巻いて逃げな負け犬風情がよ!というか文句言う為だけにこっちに来たのかよ……
「零斗、お前は参加しないのか?」
「ええ、あメルド団長後ろ危ないですよ」パァン!
「うぉ!?」グギャ!
「ふむ、カメレオンタイプの魔物ですか……ムグッ」
「な、何をしている!?」
メルド団長を背後から襲おうとした魔物を撃ち殺す。そして、殺した魔物を喰う。うーん不味い、肉自体が固いしめっちゃ獣臭いなこれ。
「……不味いですね」
「おい今すぐ吐き出せ!魔物の肉は人間の体には毒だ!」
「問題ありませんよメルド団長」
鈍い痛いはあるが前世での改造手術よりかはマシだ。一応ステータス何かも確認しておくか……
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湊莉 零斗(レイト・アルバート) 18歳 男 レベル:ERROR
天職:
称号:英霊の寵愛を受けし者
適正率 100%
筋力:ERROR
体力:ERROR
耐性:ERROR
敏捷:ERROR
魔力:ERROR
魔耐:ERROR
技能:天体観測・全事象耐性・英霊憑依[+詠唱破棄][+使用魔力減少]・衝撃波・魔具精製・血統武器作成[+複数作成][+必要血液減少]・威圧・瞬間移動・影移動・異空間収納[+付与][+有機物][+無機物]・敵意感知・悪意感知・気配察知・全魔法適正・全武器適正・剣術[+明鏡止水][+極一意思]・銃術[+弾道操作][+オートリロード]・闘術[+獣術][+鬼術]・棍術・繰糸術[+変幻自在]・槍術・抜刀術[+抜刀速度上昇][+因果両断]・暗殺術・交渉術・念話[ 刀華、恭弥、柊人、鏡花、悠花、ハジメ、造介、幸利]・天歩[+空力][+縮地][+豪脚][+瞬光]・自己再生・昇華魔法・変成魔法・魂魄魔法・召喚魔法[悪魔・天使・アンデッド]・全魔法適正・喰種化[+部分変化][+部位強化]・R-Ⅰ型強化細胞・吸血[+生命力][+魔力][+記憶]・複合魔法・剛力・縮地[+重縮地][+震脚][+無拍子]・天眼・千里眼・超速魔力回復・リミットブレイク・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・言語理解
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色々増えてんな……ってか称号ェ……寵愛て……いや、まぁ嬉しいけどね?なんか小っ恥ずかしいわ……
「体に異常は無いのか?」
「ええ、大丈夫です」
「ならいいが……あまり心配させないでくれよ?」
「はい」
うーんやっぱりいい人やなぁ。
「よし、お前達。ここから先は一種類の魔物だけでなく複数種類の魔物が混在したり連携を組んで襲ってくる。今までが楽勝だったからと言ってくれぐれも油断するなよ! 今日はこの二十階層で訓練して終了だ! 気合入れろ!」
メルド団長のかけ声がよく響く。
「香織、なに南雲君と見つめ合っているのよ?迷宮の中でラブコメなんて随分と余裕じゃない?」
雫のからかうような口調に思わず顔を赤らめる白崎。白崎は雫の事をポカポカと叩きながら雫の言葉に反応をする。
「もう、雫ちゃん!私はただ、ハジメ君の側にいたいだけだよ!」
「それがラブコメしてるって事でしょ?」
と、雫は追撃した。
「雫ちゃんだて零斗くんの事見てたじゃん!」
「ソ、ソソ、ソンナコトナイワヨ?」
雫は見るからにキョドりながら否定する。説得力皆無やな. . . あ?何だ?この視線は?ねばつくような、負の感情がたっぷりと乗った不快な視線だな……誰が見てきてんだ?
「……チッ」
視線を向けてきた主に悟られぬ様に探る……
「よし、休憩は終わりだ! 移動するぞ!」
メルド団長の声に合わせ移動を開始する。ハァ……この先思いやられるわ……
迷宮の各階層は数キロ四方に及び、未知の階層では全てを探索しマッピングするのに数十人規模で半月から一ヶ月はかかるというのが普通だ。現在、四十七階層までは確実なマッピングがなされているので迷うことはない。トラップに引っかかる心配もないはずだった。
二十階層の一番奥の部屋はまるで鍾乳洞のようにツララ状の壁が飛び出していたり、溶けたりしたような複雑な地形をしていた。この先を進むと二十一階層への階段があるらしい。そこまで行けば今日の実戦訓練は終わりだ。神代の転移魔法の様な便利なものは現代にはないので、また地道に帰らなければならない。一行は、若干、弛緩した空気の中、せり出す壁のせいで横列を組めないので縦列で進む。
すると、先頭を行く光輝達やメルド団長が立ち止まった。訝しそうなクラスメイトを尻目に戦闘態勢に入る。どうやら魔物のようだ。
「擬態しているぞ!周りをよ~く注意しておけ!」
メルド団長の忠告が飛ぶ。その直後、前方でせり出していた壁が突如変色しながら起き上がった。壁と同化していた体は、今は褐色となり、二本足で立ち上がる。そして胸を叩きドラミングを始めた。どうやらカメレオンのような擬態能力を持ったゴリラの魔物のようだ。
「ロックマウントだ!二本の腕に注意しろ!豪腕だぞ!」
メルド団長の声が響く。光輝達が相手をするようだ。飛びかかってきたロックマウントの豪腕を龍太郎が拳で弾き返す。光輝と雫が取り囲もうとするが、鍾乳洞的な地形のせいで足場が悪く思うように囲むことができない。龍太郎の人壁を抜けられないと感じたのか、ロックマウントは後ろに下がり仰け反りながら大きく息を吸った。そこ直後……
「グゥガガガァァァァアアアア────!!」
部屋全体を震動させるような強烈な咆哮が発せられた。
「ぐっ!?」
「うわっ!?」
「きゃあ!?」
体をビリビリと衝撃が走り、ダメージ自体はないものの硬直してしまう。ロックマウントの固有魔法“威圧の咆哮”だ。魔力を乗せた咆哮で一時的に相手を麻痺させる。まんまと食らってしまった前衛組が一瞬硬直してしまった。
ロックマウントはその隙に突撃するかと思えばサイドステップし、傍らにあった岩を持ち上げ白崎達に向かって投げつけた。見事な砲丸投げのフォームで!咄嗟に動けない前衛組の頭上を越えて、岩が白崎達へと迫る。白崎達が、準備していた魔法で迎撃せんと魔法陣が施された杖を向けた。避けるスペースが心もとないからだ。しかし、発動しようとした瞬間、白崎達は衝撃的光景に思わず硬直してしまう。
なんと、投げられた岩もロックマウントだったのだ。空中で見事な一回転を決めると両腕をいっぱいに広げて白崎達へと迫る。その姿は、さながらル○ンダイブだ。「か・お・り・ちゃ~ん!」という声が聞こえてきそうである。しかも、妙に目が血走り鼻息が荒い。魔物でも性欲てあるんだな。白崎も中村も谷口も「ヒィ!」と思わず悲鳴を上げて魔法の発動を中断してしまった。
「危ないですよお嬢さん方」ドパァン!
「グゴォオ!?」
投げつけられたロックマウントの頭を撃ち抜く。白崎達は、「ありがとう!」とお礼も言うものの相当気持ち悪かったらしく、まだ、顔が青褪めていた。そんな様子を見てキレる若者が一人。正義感と思い込みの塊、我らが勇者(笑)天之河 光輝である。
「貴様……よくも香織達を……許さない!」
どうやら気持ち悪さで青褪めているのを死の恐怖を感じたせいだと勘違いしたらしい。彼女達を怯えさせるなんて! と、なんとも微妙な点で怒りをあらわにする天之河。それに呼応してか彼の聖剣が輝き出す。
「万翔羽ばたき、天へと至れ──〝天翔せぇ「!? 何をしている!」げふぅ!」
咄嗟に天之河を殴り飛ばす。そんな威力の大技でこの空間が崩落したらどうするつもりだ!?アホなんじゃねか!?
「君はこの階層を吹き飛ばす気か!?下手をしたら全員生き埋めだったんだぞ!」
「ッ!すまない……」
「ハァ、次はありませんよ」
あっぶねぇなホント……心臓に悪いったらありゃしねぇ……
「あれ、何かな?キラキラしてる……」
白崎の指差す方に全員が目を向けた。俺ももう一度そちらをみる。するとそこには、青白く発光する鉱物が花咲くように壁から生えていた。まるでインディコライトが内包された水晶のようである。 白崎を含め女子達は夢見るように、その美しい姿にうっとりした表情になった。
「グランツ鉱石だね。言わば宝石の原石みたいなもので特に何か効能があるわけではないけど、その輝きが貴族のご婦人ご令嬢方に大人気で、加工して指輪・イヤリング・ペンダントなどにして贈ると大変喜ばれるらしい。求婚の際に選ばれる宝石としてもトップ三に入る代物だね」
「ほぉ、坊主よく知っているな」
「えへへ」
ハジメはメルド団長に褒められながらワシャワシャと頭を撫でられ気持ち良さそうにしている。傍から見ると何か親と子供みたいだな……
「素敵……」
白崎がうっとりとした声色でそう言う。
「白崎さんあれを誰かに送って欲しそうですねぇ?」
「ふえっ、れれれれ零斗くん!? べ、別にそんなことは……」
「香織あれが欲しいのかい? なら俺が取って来るよ!」
俺が白崎をからかってると、唐突にそう言って動き出したやつがいた。天之河だ。あのカス野郎は、グランツ鉱石に向けてヒョイヒョイと崩れた壁を登っていく。途端に慌て始めるメルドさんと騎士の方々。
「こら!勝手なことをするな!安全確認もまだなんだぞ!」
「撃ち落としますか?」
「いや、それは流石に……」
俺の提案にメルド団長が悩んでる間に、聞こえていないのかカスはとうとう、鉱石の場所に辿り着いてしまった。
メルド団長は、止めようと天之河を追いかける。同時に騎士団員の一人がフェアスコープで鉱石の辺りを確認する。そして、一気に青褪めた。
「団長!トラップです!」
「ッ!?」
しかし、メルド団長も、騎士団員の警告も一歩遅かった。カスがグランツ鉱石に触れた瞬間、鉱石を中心に魔法陣が広がる。あの宝石輝きに魅せられて不用意に触れたやつへのトラップってとこか! "美しい薔薇に棘がある"てか!? 魔法陣は瞬く間に部屋全体に広がり、輝きを増していった。まるで、召喚されたあの日の再現だ。調べてみりゃあ、術式は転移用のものだ。
「くっ、撤退だ!早くこの部屋から出ろ!」
メルド団長の言葉に生徒達が急いで部屋の外に向かうが……間に合わなかった。
「クソ!"英霊憑依"キャスター"メディア"!」
間に合うか!?ギリギリか?考えてる時間は無いな、さっさと宝具で転送陣を破壊しねぇと!
「術理、摂理、世の理、その万象……一切を原始に還さん『
メディアの宝具を発動するが間に合わず転送されーーー
「!?何故俺だけ?」
俺以外のクラスメイトと騎士達が転送された。恐らくは転送陣に変に干渉したせいだろう。
「クソ!念話で行けるか?『恭弥!今何処に居る!』」
『零斗!恐らくだかかなり下の階層、そして橋の上だ! だが確実に不味い状況だ……ッ!』
「『どうした!?』」
『ベヒモス? とか言う魔物と骸骨の魔物に挟まれた……今すぐ撤退する!』
「『分かった!俺もそっちに行く!しばらく耐えてくれ!』」
念話を切り、恭弥達のいる位置の特定を始める。
「『
音の反響を利用して探る。65階層か!
「よし!」
その場を離れ恭弥達のいる65階層まで急ぐ。そして回想前に戻る。
────────────────────────
はい!回想終了!現在は58階層まで降りてきた。
「『恭弥!今の状況は?』」
『天之河が邪魔をするせいでベヒモスの足止めが出来ない!』
「『クソ野郎がァ!こんな時まで足引っ張りやがって!』」
あぁ!クソ!時間がねぇ……しゃねぇ、階層ごとぶち抜く!
「"これは外法の技なり。これは全てを破壊する一撃なり。砕けろ! 『
●○●
Side 恭弥
零斗と2度目の念話を切り『トラウムソルジャー』の掃討に意識を向ける。クソ! かなり数が多い! (原作の倍以上の量が沸いています)
(ドゴォォォォォン!)
「来た!」
「全員撤退準備!」
私達の背後に出現した十メートル級の魔法陣からは体長十メートル級の四足で頭部に兜のような物を取り付けた魔物が威容を放っていた。もっとも近い既存の生物に例えるならトリケラトプスだろうか。ただし、瞳は赤黒い光を放ち、鋭い爪と牙を打ち鳴らしながら、頭部の兜から生えた角から炎を放っているという付加要素が付くが……メルド団長が言うにはあれは"ベヒモス"らしい。まさか旧約聖書に出てくる獣の同名とはな……もっともあれよりもチープだな。
「グルァァァァァアアアアア!!」
「ッ!? 光輝、お前達も早く階段へ向かえ!」
「待って下さい、メルドさん!俺達もやります! あの恐竜みたいなヤツが一番ヤバイでしょう!俺達も……」
「馬鹿野郎!あれはベヒモスだ。今のお前達では無理だ! ヤツは六十五階層の魔物。かつて、“最強”と言わしめた冒険者をして歯が立たなかった化け物だ!さっさと行け! 私はお前達を死なせるわけにはいかないんだ!」
メルド団長の鬼気迫る表情に一瞬怯むも、「見捨ててなど行けない!」と踏み止まる光輝。どうにか撤退させようと、再度メルドが光輝に話そうとした瞬間、ベヒモスが咆哮を上げながら突進してきた。このままでは、撤退中の生徒達を全員轢殺してしまうだろう。そうはさせるかと、ハイリヒ王国最高戦力が全力の多重障壁を張る。
「「「全ての敵意と悪意を拒絶する、神の子らに絶対の守りを、ここは聖域なりて、神敵を通さず──〝聖絶〟!!」」」
二メートル四方の最高級の紙に描かれた魔法陣と四節からなる詠唱、さらに三人同時発動。一回こっきり一分だけの防御であるが、何物にも破らせない絶対の守りが顕現する。純白に輝く半球状の障壁がベヒモスの突進を防ぐ! 衝突の瞬間、凄まじい衝撃波が発生し、ベヒモスの足元が粉砕される。橋全体が石造りにもかかわらず大きく揺れた。撤退中の生徒達から悲鳴が上がり、転倒する者が相次ぐ。
「クソ! 捌ききれん!」
「キャ!」
「!? 園部さん!」
「あ……」
倒したと思ったトラウムソルジャーの一体が突然起き上がり近くにいた優花に剣を振りかぶり斬り下ろそうとしていた。
「……?」
「大丈夫ですか? お嬢さん?」
「「「「零斗!!」」」」
やっと来たか!よしこれなら行ける!
「零斗!ベヒモスの方を頼む!トラウムソルジャーは私達で対応する!」
「了解した!」
零斗はそう言いメルド団長のいる方向へ駆けていく。頼んだぞ……
●○●
Side 零斗
園部に剣を振り下ろしたトラウムソルジャーを吹き飛ばす。
「零斗!ベヒモスの方を頼む!トラウムソルジャーは私達で対応する!」
「了解した!」
恭弥達がトラウムソルジャーに対して奮戦している中、ベヒモスは依然、障壁に向かって突進を繰り返していた。障壁に衝突する度に壮絶な衝撃波が周囲に撒き散らされ、石造りの橋が悲鳴を上げる。障壁も既に全体に亀裂が入っており砕けるのは時間の問題だ。既にメルド団長も障壁の展開に加わっているが焼け石に水だった。
「ええい、くそ!もうもたんぞ!光輝、早く撤退しろ!お前達も早く行け!」
「嫌です!メルドさん達を置いていくわけには行きません! 絶対、皆で生き残るんです!」
「くっ、こんな時にわがままを……」
メルド団長は苦虫を噛み潰したような表情になる。この限定された空間ではベヒモスの突進を回避するのは難しい。それ故、逃げ切るためには障壁を張り、押し出されるように撤退するのがベストだ。しかし、その微妙なさじ加減は戦闘のベテランだからこそ出来るのであって、今の天之河には難しい注文だ。
その辺の事情を掻い摘んで説明し撤退を促しているのだが、光輝は〝置いていく〟ということがどうしても納得できないらしく、また、自分ならベヒモスをどうにかできると思っているのか目の輝きが明らかに攻撃色を放っている。まだ、若いから仕方ないとは言え、少し自分の力を過信してしまっているようである。戦闘素人の天之河達に自信を持たせようと、まずは褒めて伸ばす方針が裏目に出たようだ。
「光輝、メルドさんの言う用に撤退しよう!」
龍太郎は状況がわかっているようで天之河を諌めようとしたが……聞いてはいない。
「メルド団長!階段までの通路が後少しで開けます!」
「零斗!?いや……よくやった!よしお前たち、撤退戦に移るぞ!光輝!わがまま言わずに撤退しろ!お前たちが居ては逃げきれない」
「っ〜メルド団長!俺はまだ……」
「下がれぇ──!」
戦える!そう言おうとしてメルド団長を振り返った瞬間、その団長の悲鳴と同時に、遂に障壁が砕け散った。舞い上がる埃がベヒモスの咆哮で吹き払われた。そこには、倒れ伏し呻き声を上げる団長と騎士が三人。衝撃波の影響で身動きが取れないようだ。
「クソ!龍太郎、谷口、恵理!直ぐにここから離れろ!」
「「「了解!」」」
「ハジメ!『錬成』でベヒモスの足を止めろ!」
「もうやってる!」
矢継ぎ早に指示を飛ばす。ハジメが『錬成』で橋の一部を操作してベヒモスの片足を絡め取り、一時的に動きを封じた。
「神意よ!全ての邪悪を滅ぼし光をもたらしたまえ!神の息吹よ!全ての暗雲を吹き払い、この世を聖浄で満たしたまえ! 神の慈悲よ!この一撃を以て全ての罪科を許したまえ!「ッ!!おい、光輝!それはーーー!」──〝神威〟!」
詠唱と共にまっすぐ突き出した聖剣から極光が迸る。先の天翔閃と同系統だが威力が段違いだ。橋を震動させ石畳を抉り飛ばしながらベヒモスへと直進する。
「貴様!何をしでかしてくれた!」
「俺は勇者としての責務を果たしただけだ!」
その行動はベヒモスを更に刺激するだけだと理解出来ていない様だった。そんな中、徐々に光が収まり、舞う埃が吹き払われる。
「グルルルルゥ……」
その先には……無傷のベヒモスがいた。低い唸り声を上げ、俺達を射殺さんばかりに睨んでいる。足を固定していた床は天之河の一撃により砕けてしまっていた。と、思ったら、直後、スッと頭を掲げた。頭の角がキィ──という甲高い音を立てながら赤熱化していく。そして、遂に頭部の兜全体がマグマのように燃えたぎった。
「ボケッとするな!逃げろ!」
メルド団長の叫びに、ようやく無傷というショックから正気に戻った全員が身構えた瞬間、ベヒモスが突進を始める。そして、俺達のかなり手前で跳躍し、赤熱化した頭部を下に向けて隕石のように落下した。天之河達は、咄嗟に横っ飛びで回避するも、着弾時の衝撃波をモロに浴びて吹き飛ぶ。俺は血狂いを床に突き刺し、吹き飛ばされないように身体を固定する。
天之河達はゴロゴロと地面を転がりようやく止まった頃には、満身創痍の状態だった。どうにか動けるようになったメルド団長が駆け寄ってくる。他の騎士団員は治療の最中だ。ベヒモスはめり込んだ頭を抜き出そうと踏ん張っている。
「お前等、動けるか!」
「ハジメ!そこのバカを抱えて下がりなさい!」
「了!」
メルド団長が叫ぶように尋ねるも返事は呻き声だ。先ほどの団長達と同じく衝撃波で体が麻痺しているのだろう。内臓へのダメージも相当のようだ。
「メルド団長!私が足止めをします!」
「クソ……あぁ、頼んだぞ零斗!」
「ああ。時間を稼ぐのはいいが. . . 別に、アレを倒してしまっても構わんのだろう? 」
「ああ!手加減は要らん!」
「了解した、"英霊憑依"アーチャー"エミヤ"
メルド団長達を引かせベヒモスの足止めに入ろうとする……が、光輝が呻き声を上げた瞬間「俺はまだ戦える!」そう叫んでハジメを振り解いた……加減をせずに振り解いたせいで……
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「!?ハジメェェエエ工!」
体制を崩したハジメは橋から転げ落ちてしまった。その様子が見えていないのか天之河は聖剣を握り直して、再びベヒモスに向かって行った。
「──〝天翔閃〟!」
天之河が叫び再びベヒモスに天翔閃放つがやはりダメージを与えた様子はない。それどころかベヒモスの頭がめり込んでいた場所を粉砕する。
「クソっ!全員今すぐここから離れろ!」
悪態を付きながら指示を飛ばす……
「
ベヒモスを宝具で串刺しにハジメが落ちた方向を覗く……よし!まだ姿は見える!まだギリギリ戻れる!
「ハジメェェエェェエッ!!! 」
ハジメの名前を叫びながら落ちていく。
「零斗!!」
ハジメに向かい手を伸ばす……よし!掴んだな!
ローブに付けていたワイヤーフックを橋に向かい投げる……ガチン届いた!…… ッ天之河!?
「……」
ワイヤーで支えられた俺とハジメを見た天之河は暗い笑みを浮かべた。そして、ワイヤーフックの鉤爪を蹴って俺達を奈落の底に落とした。
「……いい度胸してんな」
俺はやっと見えた天之河の本性に呆れながら、落下していく。身体を打ち付ける風を感じながら、ただただ落ちて行く。
「借りは必ず返す……だが、先ずはハジメの分だ」
ホルスターからエルガーを抜き、天之河の顔面に向けて撃つ。着弾したかは確認出来ないが恐らくは掠ってはいるだろう。地上に戻ったら覚えてやがれ……
零斗とハジメが天之河の裏切りで奈落に落ちましたね。感想お待ちしております。