「最近出番のない柊人です」
「2度目の登場で嬉しい雫です」
「前回は恭弥の話だったわね」
「毎度思うんだが零斗は何処まで見透とうしているのか. . . 」
「それは私も気になるわね. . . 」
『数年先までくらいなら出来てるぞー』
「「「え!?. . . て気の所為?」」」
「ま、まぁいいわ、今回はハイリヒ王国への帰還とギルガメッシュ王に報告、そして離脱よ」
「それでは行ってみましょうか」
「「「『帰還と報告. . . そして離脱!』」」」
『次回は俺達の目線だぜー』
Side 柊人
迷宮内でのトラブルによって零斗とハジメの二人が行方不明になってから一日が経ち、僕らはホルアドからハイリヒ王国に帰還した。とりあえず今はギルガメッシュ王に迷宮での訓練の結果を報告する為にメルド団長と共に執務室に向かっている。
「……どう報告します?」
「それは……どうしましょうか?」
僕と一緒にメルド団長に付いてきていた恭弥とどうやったらギルガメッシュ王の機嫌を損なわずに報告出来るかを相談し合う。
「ギルガメッシュ王、ただいま帰還致しました」
そうしているうちにギルガメッシュ王の居る執務室に到着した様だった。とりあえずは身なりを整えて、執務室に入る。
「……メルドか。早急に結果の報告をせよ」
「はい……」
メルド団長は意気消沈した様子で迷宮での訓練とそこで起きた事を事細かに報告した。
「そして……っ、湊莉 零斗と南雲 ハジメの二名が迷宮内のトラップにより生死不明となりました……恐らくはもう……」
「もうよい……」
ギルガメッシュ王は一瞬だけ表情を曇らせたが、直ぐに無表情に戻った。メルド団長からすれば零斗とハジメは死んだも同然何だろうけど……ゴキブリ以上の生命力をした零斗がこの程度で死ぬ訳がないし……
「……もうよい、下がれ……だが、そこの使徒二人は残れ」
メルド団長は心配そうに僕らを見た後、直ぐに立ち上がり執務室を出て行った。
「さて、ヴォイドそしてノクトよ迷宮内で何があったのか説明して貰おうか」
「了解です」
──────青年説明中───────
「──────これで以上です」
「そうか……彼奴らしい判断だな」
「全くですよ」
前世から無謀に突っ込んで行くタイプだったからね彼は……(貴─はふざ──い──か!)ん?この声は……
「……ギルガメッシュ王、私達はこれで失礼します」
「あぁ」
執務室を出て声のした中庭に向かう。中庭では刀華が天之河に罵声を浴びせながら掴みかかろうとしている、そんな刀華を羽交い締めにしてどうにか止めている八重樫さんや浩介が呼び掛けている。
「……何をしているのですか?」
「恭弥、柊人!」
とりあえずは近くにいた幸利に声を掛けて事情を聞こうとするが、刀華が怒声を上げた。
「此奴が零斗を裏切り者だと!私達を洗脳していたのだと!」
「「はぁ?」」
恭弥と声が重なる。零斗が?裏切り?刀華達を洗脳?どうしてそんな考えに行き着いたんだ?
「刀華、事情は分かりましたとりあえずそこの天之河バカを捨ててください」
平然と天之河を罵倒する恭弥。正直言えば、今すぐにそこの馬鹿を張り倒してやりたい所だったけど、恭弥のお陰で少し冷静になれた。
「確かに零斗や南雲はあの日前に出て戦ったが、結局は統率性の無い奴だ! 彼らが居たからクラスの皆が死ぬ思いをしたんだ! 恭弥、柊人、刀華、悠花、鏡花悪いことは言わない。俺たちと一緒に世界を救おう。そうしたらきっとエヒト神が俺たちを救ってくれるよ。あんな奴らなんて置いて俺たちと一緒に──」
「「貴様今なんと言った?」」
抑えようとしていた怒りが爆発し、思わず天之河の首を締め上げてしまう。僕の後ろでは恭弥が冷めきった目を天之河に向けながら、こちらに歩み寄ってくる。
「彼が居たからクラスの皆が死ぬ思いをした?それは違う、そもそもお前がトラップに引っかかったせいで転移したのだろう?」
一つため息を零してから恭弥が話を始めた。
「そして君が撤退をしないからメルド団長はベヒモスの足止めを出来ずにいた……それだけに留まらず君の身勝手な行動のせいでハジメの『錬成』のお陰で動きが封じられていたベヒモスが再び暴れ出し、被害が広がったんですよ?」
そう言われたバカ天之河は返す言葉がないのか俯いている。
「柊人、そろそろ離してやりなさい……この現場を教会派の貴族達に見られたら面倒な事になります。それに、ここでの用事は全て終わりましたから早急にカルデアへ戻りましょう」
恭弥にそう言われ、素直に天之河の首から手を離す。天之河は咳き込みながら、その場にへたり込み僕の事を睨んで来る。
「……八重樫さん達はどうしますか?此処に残りますか?それとも僕らについて来ますか?」
「私はついて行くわ」
「俺も」
ちらりと八重樫さん達の方へ視線を向ける。何人かは悩んでいる様子だったが八重樫さん、浩介の二人は迷う素振りも見せずに即決でついて行くと返答をした。その様子に当てられたのか訓練を付けたメンバーの大半がついてくる様だった。
「待ってくれ!」
天之河の声を無視してその場を立ち去る。龍之介だけが、ちらりと天之河の方へと振り返り、悲痛そうな顔をした。
「俺は…俺は勇者なんだ……!」
「っ!?光輝!やめろ!」
天之河が拳を握り、僕の方へ殴り掛かって来た。龍之介が声を張り上げて、静止を試みるが声が届く筈も無く、天之河はこちらへ真っ直ぐと向かって来る。
「ハァ……柊人、御相手をしてあげなさい」
「……了解」
────────────────────────
約五分間天之河の攻撃は続いた。全ての攻撃があまりに大振りで、当たる筈も無く何の駆け引きも無く、欠伸が出る程退屈な時間だった。
「ハァ…ハァ……」
「……もう終わりですか?では僕達はこれで失礼します」
「待て!まだ俺は!」
息も絶え絶えの中、威勢だけは良く再び、拳を握り襲いかかって来たが……
「すまねぇ…天之河……」
「ガッ…アァ……」
檜山が鞘付きの剣を天之河の後頭部に振り下ろした。完全に意識外からの一撃を食らった天之河は為す術も無く意識を刈り取れた。
「……どうゆうつもりですか?檜山くん」
「いやさ……この場に居たら不味いだろ?」
零斗から軽く話は聞いてはいたけど……人間とは一晩でこうも変わるものなのか?
「ありがとうございます、檜山くん」
「いいさ、礼なんて……」
酷く沈んだ声色でそう零す檜山に何故だか申し訳ない気持ちが湧いてきた。
●○●
Side 恭弥
ハイリヒ王国からカルデアに向かう、シャドウボーダーの中で不意に柊人が言葉を零す。
「サーヴァント達にはどう説明しましょう?」
「はぁ…その問題がありましたね……」
かなり重要な問題があった。どうしたものでしょう?素直に伝えたらカルデア中が阿鼻叫喚になるのは確実でしょうし…… かと言って伝えずにいたら……先が思いやられますね。
「もう覚悟を決めるしかありませんね」
「……最悪の場合はホルアドにでも逃げましょう」
柊人が頭を抱えながらそう言う。さて、本当にどうしたものでしょうか……零斗とハジメが行方不明、探すにしても余りにも情報が少なすぎる。先ずは情報収集を……いや先に八重樫さん達の訓練を再開して戦力の底上げを……
『…こ……き………お……』
「ん?通信?」
懐に入れていた通信機が何故か稼働し何者かの声が微かに聞こえた。通信機を取り出し、回線をオープンにすると……
『こちら、零斗。聞こえたら返答を頼む』
「零斗!?」
『お、繋がったか。ちょいと通信が不安定でな手短に話そう』
妙に落ち着た様子の零斗の声が鼓膜を揺らす。思わず通信機を取り落としそうになったが、何とか堪える。そして次々に疑問が湧き出し、矢継ぎ早に零斗へと疑問を投げ掛ける。
「今は何処に!?ハジメとは一緒ですか?!怪我は!?何故今になって通信を!? 」
「落ち着きなさい!恭弥!」
「ヘブッ!」
刀華の鋭い手刀が脳天を直撃する。脳が揺れて意識が飛びそうになるが、それを何とか堪えて深呼吸をする。
『あぁー……とりあえずは俺もハジメも無事だ。現在地は……恐らくだが、オルクス大迷宮の最下層……の筈だ』
「そ、そうですか……無事なら良かったです」
一先ずは安心の出来る返答が返ってくる。もう一度深呼吸をしてから零斗に問い掛ける。
「救援を向かわせますか?」
『いや、必要無い。それに、今そっちに戻っても面倒な事になりそうだ。しばらくは身を潜めつつ戦力の増強と情報収集に徹する』
「……了解。こちらは何をすれば?」
『そうだな……恭弥と鏡花は冒険者として各地を巡って情報収集を頼む。柊人と悠花はハイリヒ王国で教会の連中の監視と他のクラスメイト共のお守りをしてくれ。刀華はカルデアに待機しながら二組から得た情報の整理を頼む』
「了解」
零斗の指示に異議を申し立てる者はいない様だった。とその時、シャドウボーダーの後部の方で休んでいた八重樫さんが顔を覗かせた。
「……ねぇ、零斗君」
『八重樫か……どうした?そんな不安そうな声をして』
「……帰ってくるのよね?」
胸元で手をギュッと握り、今にも消え入りそうな声で零斗に問いかけた。零斗は返答に困った様子のようで数瞬黙った後に……
『あぁ、必ず帰るよ、ハジメも連れて……な』
彼女を安心させるためか、とても穏やかで優しい声色で返答をした。その声に八重樫さんは安心したのか、ふわりと笑みを零した。
『それじゃ、指示通りに頼むぞ。期待してる』
「えぇ、分かりました……ご武運を」
『ハッ!誰に向かって言ってんだ?俺は天下無双の
その言葉を最後に通信は途切れてしまった。
「……これから大変になるわね、恭弥」
「えぇ、そうですね……でも、期待には応えないとですね」
「全く、無茶ばかり押し付けて来るんだから……」
刀華は不貞腐れたような態度でそう言い座席の背に体重を預ける。
今回もちょっと短め。感想お待ちしております。