ありふれた黒幕で世界最凶   作:96 reito

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「よっと、はーい (・ω・)ノ毎度お馴染み、零斗でーす」
「ハジメでーす」
「. . . ん、ユエ」

「前回は柊人達がベヒモスとマハナーガを倒してたな」
「悠花さん、強すぎじゃない?」
「ん、確かに」
「まぁ、筋力だけだと俺より強かったな」
「「. . . ゴリラじゃん」」
「せやなぁ…」

「さて、今回はユエがメインの話だな」
「私の活躍を楽しんでいって」

「「「姫の実力!」」」


姫の実力

 Side 零斗

 

「だァァァ! クソ!」

「数多すぎじゃない!?」

「頑張って」

「君は気楽でいいな!」

「ハハハ. . . 」ニガワライ

 

 現在、俺たちは猛然と草むらの中を逃走していた。周りは百六十センチメートル以上ある雑草が生い茂りハジメの肩付近まで隠してしまっている。幼女状態のユエなら完全に姿が見えなくなっているだろう。

 

 そんな生い茂る雑草を鬱陶しそうに払い除けながら、逃走している理由は. . .

 

「「「「「「「「「「「「シャァアア!!」」」」」」」」」」」」

 

 二百体近い魔物に追われているからである。

 

 

 俺達は準備を終えて迷宮攻略に動き出したあと、十階層ほどは順調に降りることが出来た。ハジメの装備や技量が充実し、かつ熟練してきたからというのもあるが、ユエの魔法とディンリードの使役する魔物が凄まじい活躍を見せたというのも大きな要因だ。全属性の魔法をなんでもござれとノータイムで使用し的確に援護し、ディンリードの魔物が広範囲を纏めて片付けている。

 

 ただ、ユエは回復系や結界系の魔法はあまり得意ではないらしい。〝自動再生〟があるからか無意識に不要と判断していったのだろう。ま、ハジメには神水が、俺は自前の再生能力があるからなんの問題もなかったが。

 

 そんな俺達が降り立ったのが現在の階層だ。まず見えたのは樹海だった。十メートルを超える木々が鬱蒼うっそうと茂っており、空気はどこか湿っぽい。しかし、以前通った熱帯林の階層と違ってそれほど暑くはないのが救いだろう。

 

 ハジメと俺とで階下への階段を探して探索していると、突然、ズズンッという地響きが響き渡った。何事かと身構える二人の前に現れたのは、巨大な爬虫類を思わせる魔物だ。見た目は完全にティラノサウルスである。

 

 但し、なぜか頭に一輪の可憐な花を生やしていたが……。

 

 鋭い牙と滾る殺気が議論の余地なくこの魔物の強力さを示していたが、視線を上に向けると向日葵に似た花がふりふりと動く。かつてないシュールさだった。

 

「なんなんだよ. . . あれ」

「さ、さぁ?」

「ん、可愛い」

「そ、そうか?」

 

 やっぱりウチのユエちゃんちょっとズレてるよ。雑談混じりで観察していた所、此方にティラノサウルスもどきが咆哮を上げ突進してくる。

 

 ハジメは慌てずドンナーを抜こうとして……それを制するように前に出たユエがスッと手を掲げた。

 

「〝緋槍〟」

 

 ユエの手元に現れた炎は渦を巻いて円錐状の槍の形をとり、一直線にティラノの口内目掛けて飛翔し、あっさり突き刺さって、そのまま貫通。周囲の肉を容赦なく溶かして一瞬で絶命させた。地響きを立てながら横倒しになるティラノ。

 

 そして、頭の花がポトリと地面に落ちた。

 

「. . . なんと言うか、哀れだな」

「. . . うん」

「そうだな」

 

 最近、ユエ無双が激しい。最初は援護に徹していたはずなんだが、何故か途中から前衛の俺に対抗するように先制攻撃を仕掛け魔物を瞬殺するのだ。

 

「なぁ、ユエ。張り切るのはいいが、途中で魔力切れ起こして倒れないでくれよ?」

「. . . ん、私役に立つ」

「もう十分に役立ってるよ。ユエの魔法が強力な分、魔力の消費を激しいし、接近戦は苦手なんだから後衛を頼むよ。前衛は僕達の役目だからさ」

「. . . ハジメ. . . ん」

 

 ハジメに注意されちょっとだけ落ち込むユエ。ハジメはそんな彼女を見て居た堪れなくなったのか、彼女の柔らかな髪を撫でる。それだけで、ユエはほっこりした表情になって機嫌が戻ってしまうのだから、ハジメとしてはもう何とも言えない。

 

「あー、雰囲気ぶち壊す様で済まないが団体様が此方に来てるからその殲滅するぞ」

「「ハ、ハイ」」

 

 十体ほどの魔物が取り囲むように此方の方へ向かってくる。統率の取れた動きに、二尾狼のような群れの魔物か? と訝しみながらハジメ達を促して現場を離脱する。数が多いので少しでも有利な場所に移動するためだ。

 

 円状に包囲しようとする魔物に対し、ハジメは、その内の一体目掛けて自ら突進していった。そうして、生い茂った木の枝を払い除け飛び出した先には、体長二メートル強の爬虫類、例えるならラプトル系の恐竜のような魔物がいた。

 

 頭からチューリップのような花をひらひらと咲かせて。

 

「. . . かわいい」

「. . . 流行りなのか?」

「ワケガワカラナイヨ」

「私が攻略した時はあんな魔物は居なかったはず. . . 」

 

 ユエが思わずほっこりしながら呟けば、俺はシリアスブレイカーな魔物にジト目を向け、有り得ない推測を呟く、ハジメはキュゥべえ化し、ディンリードは困惑して様子で呟く。

 

「シャァァアア!!」

 

 ラプトルが、花に注目して立ち尽くす俺達に飛びかかる。その強靭な脚には二十センチメートルはありそうなカギ爪が付いており、ギラリと凶悪な光を放っていた。

 

「. . . 遅いな」ヒュパン

「クルルルゥア!?」

 

 ちょっととした好奇心から頭の花を切り落とす。するとラプトルは一瞬だけ痙攣して倒れ込み、サッと立ち上がる。そして足元に落ちた自分に付いていた花を、それはもうめちゃくちゃ踏みつけていた。

 

「. . . イタズラされた?」

「んな、小学生じゃねぇんだから」

 

 一方で、ラプトルは花を踏みつけ終えて、仕事終わりに居酒屋に行くオッさんの様な清々しい顔をしている。「いい仕事をしましたなあ〜」と顔が語っている。そして、ふと気付いてこちらへ顔を向けると、ビビった様に一歩下がった。

 

「え? 気が付いてなかったのかよ」

 

 ラプトルは暫く硬直したものの、直ぐに姿勢を低くし牙をむき出しにして唸り一気に飛びかかってきた。

 

「. . . やっぱり遅ぇな」

 

 "血狂い"でラプトルを輪切りにする。

 

「. . . 虐められて、斬られて、可哀想」

「イジメから一旦離れようか、ユエ」

 

 魔物てこんなに統率がとれたものなのか? そう思案しているとハジメが肩を叩いて北を。

 

「どした?」

「魔物、大量に来てる」

「数は?」

「50~60体くらい」

 

 気配感知を使用すると、50体以上の魔物が接近してきていた。しかも、ハジメ達を囲む様にだ。そして、飛び出してきたラプトル達を射殺する為に俺もハジメは銃の引き金に指を掛け構えるが硬直する。魔法の発射準備に入っていたユエも硬直した。

 

 なぜなら. . .

 

「なんでどいつもこいつも頭に花咲かせんだよ!」

「そう言う、ファションなんじゃないかな?」

 

 全ての魔物が頭に花が生えているのだ。

 

「ユエ、殺れ」

「ん、〝凍獄(とうごく)〟!」

 

 ビキビキッと音を立てながら瞬く間に蒼氷に覆われていき、魔物に到達すると花が咲いたかのように氷がそそり立って氷華を作り出していく。

 

「. . . やっぱり可笑しいな」

「? どうゆう事?」

「弱すぎる」

 

 俺の言葉にハッとする3人。確かに、ラプトルも先のティラノも、動きは単純そのもので特殊な攻撃もなく簡単に殲滅できてしまった。それどころか殺気はあれどもどこか機械的で不自然な動きだった。花が取れたラプトルが怒りをあらわにして花を踏みつけていた光景を見た後なので尚更、花をつけたラプトル達に違和感を覚えてしまう。

 

「考えられるとしたら. . . 」

「. . . 寄生だね」

「恐らくだがな」

 

 気配察知が反応する。数は. . . ざっと200と少々だ。

 

「とんでもねぇ数の魔物がこっち来てんな」

「. . . 逃げる?」

「いや、本体をぶっ殺す」

 

 

 そして冒頭。

 

 ハジメ達は現在、200近い魔物に追われていた。草むらが鬱陶しいと、ユエは魔力補給の為にハジメの血を吸ったのにも関わらず背中から降りようとしない。

 

 後ろからは魔物が、

 

 ドドドドドドドドドドドドドドドッ!! 

 

 と、地響きを立てながら迫っている。背の高い草むらに隠れながらラプトルが併走し四方八方から飛びかかってくる。それを迎撃しつつ、探索の結果一番怪しいと考えられた場所に向かいひたすら駆ける。ハジメが射撃でユエは魔法を撃ち込み致命的な包囲をさせまいとする。

 

 カプっ、チュー

 

「ユエさん!? さっきからちょくちょく吸うの止めてくれませんかね!?」

「. . . 不可抗力」

「嘘だ! ほとんど消耗してないでしょ!?」

「. . . ヤツの花が. . . 私にも. . . くっ」

「何わざとらしく呻いてるんですかねぇ。ヤツのせいにしない。ていうか余裕だね、まったく」

 

 ちょっとキレ気味にハジメがユエを注意する。ハジメて割かし腹黒なんかな? そんな風に戯れながらもきっちり迎撃し、俺達は二百体以上の魔物を引き連れたまま縦割れに飛び込んだ。

 

「シャアアァァアア!!」

「てめぇはシャイニングのジャックかよ!」

 

 割れ目に顔を突っ込んできたラプトルの頭を粉砕し、ハジメの錬成で閉じる。その後、道なりにしばらく進むと、大きな広場の様な場所に出た。その奥には下に続く階段があった。気配感知を使用して周囲に魔物がいないか確認をしながら、三人は階段の方へ進んでいく。

 

 中央付近までやってくると、全方位から緑色の球体が飛んできたが、魔法で焼き払った。

 

「奴さんがおいでなすったな。周りに何か見えるか?」

「こっちには何もいないよ」

「こちらもだ」

「. . . 」

「ユエ?」

 

 返答の無いユエに呼び掛けるが反応が無い。俺はユエの方へ振り向くとユエは、ピシッ! となりながら、猫が驚いている表情の顔を貼っつけた様な顔をしている。

 

 すると、突然、ユエの頭に先程のラプトルやティラノの頭に生えていた花が生えてくる。そして、ユエは此方に向けてに魔法を発動させる。

 

「. . . 逃げて!」

「おいおい、マジか」

 

 ユエの放った魔法を横っ飛びで回避する。

 

「ディンリード、お前は大丈夫なのか?」

「問題ない」

 

 俺とハジメには耐性があったがユエには無いようだった。ディンリードが何故無事なのかは知らん。

 

 ハジメはユエの隙を見てドンナーを撃とうとするも、銃口を向ければ、ユエを操り花への射線上にユエが当たる様にしてきたり、ユエの手をユエの顔に向けるといった行動を取るのでなかなか厄介だ。

 

 それを繰り返してると、奥の縦割れの暗がりから何かが現れた。それはアルラウネやドライアドの様な人間の女性と植物が合成された様な魔物だ。この手の魔物はRPGなどによくいる。もっとも、神話では美女の姿で敵対しないや大切にすると、幸運をもたらすなどの伝承がある、しかし、目の前のエセアルラウネにはそんな印象はまるでない! 

 

 確かに女性の姿をしているのだが、問題は顔だ。まるで、心の醜さを表現したかの様な魔女の様な顔である。素直にキモイ。

 

「零斗、ハジメ! . . . 私はいいから. . . 撃って!」

 

 何やら覚悟を決めた様子でハジメと俺に撃てと叫ぶユエ。俺達の足手まといになるどころか、攻撃してしまうぐらいなら自分ごと撃って欲しい、そんな意志を込めた紅い瞳が真っ直ぐこちらを見つめる。

 

 そんなこと出来るはずないだろう! 必ず助けてみせる! 普通はこんな熱いセリフが飛び出て、ヒロインと絆を確かめ合うシーンだ。一般ピープルならそうしただろう。だがしかし、そんな期待を裏切るのが黒幕(フィクサー)クオリティー。

 

「え? いいのか、助かるわ〜」

 

 ドパンッ!! 

 

 広間に銃声が響き渡る。

 

 ユエの言葉を聞いた瞬間、何の躊躇ためらいもなく引き金を引いた。エセアラウネはユエを盾にしようとしたが"弾道操作"でエセアラウネの腕を吹き飛ばす。広間を冷たい空気が満たし静寂が支配する。そんな中、くるくると宙を舞っていたバラの花がパサリと地面に落ちた

 

「惚けている場合じゃないだろ?」

 

 そう言ってエセアルラウネの目の前に瞬間移動する。エセアルラウネが顔を上げるが、俺が"エルガー"に手をかける方が早かった。

 

Jack Pot!(大当たり!)

 

 そう言ってトリガーを引いた。エセアルラウネの頭部が緑色の液体を撒き散らしながら爆砕した。そのまま、グラリと傾くと手足をビクンビクンと痙攣させながら地面に倒れ伏した。やっぱ、銃での決めゼリフはこれに限るな! 

 

「大丈夫か? ユエ」

「. . . 撃った、迷いなく撃った!」

「え? 撃っていい言ったじゃん」

「. . . 頭皮、ちょっと削れたかも」

「弾道操作してるから心配するだけ無駄だぞ」

 

 ユエは「確かにその通りなんだけど!」と言いたげな顔で腹をポカポカと殴る。丁度傷口のある場所をピンポイントで殴ってくる。

 

 

 

 

 




零斗くんの弾道操作は『ウォンテッド』をイメージしてくれると分かりやすいと思います。感想お待ちしております。
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