「八重樫です」
「おっす!坂上龍太郎だ!よろしくな!」
「さて、前回はハジメの目覚めとオスカーさんの召喚だったね」
「毎度思うんだけどよ、零斗てマジで多才だよな」
「龍太郎⋯⋯あんなのは零斗の能力のたった一部だよ⋯⋯」
「え?」
「さて、今回はヘルシャー帝国の話だよー」
「ちょっと待ってくれ!柊人、あれが一部ってどういう事だよ!?」
「それはこれが終わってから話すよ」
「き、気を取り直して⋯⋯楽しんでいってください」
「「「帝国と勇者!」」」
Side 柊人
時間は少し遡る。ハジメが人型と零斗がエトと死闘を繰り広げている頃、勇者一行は、迷宮攻略を一時中断しハイリヒ王国に帰還していた。
道順のわかっている今までの階層と異なり、完全な探索攻略であることから、その攻略速度は一気に落ちたこと、また、魔物の強さも一筋縄では行かなくなって来た為、メンバーの疲労が激しいことから一度中断して休養を取るべきという結論に至った。
もっとも、休養だけなら宿場町ホルアドでもよかった。王宮まで戻る必要があったのは、迎えが来たからである。何でも、ヘルシャー帝国から勇者一行に会いに使者が来るのだという。
「まったく⋯⋯また、面倒事は御免ですよ」
「しょうがないでしょ? 顔すら見たことない人達がいきなり"勇者"とか"神の使徒"なんてもてはやさてれたら⋯⋯それにヘルシャー帝国は実力主義なんでしょ?」
⋯⋯解説の必要が無くなったね。
馬車が王宮に入り、全員が降車すると王宮の方から一人の少年が駆けて来るのが見えた。十歳位の金髪碧眼の美少年である。
「皆さん、よく無事で⋯⋯香織さんもお怪我が無くて良かったです」
この場には、白崎さんだけでなく他にも帰還を果たした生徒達が勢ぞろいしている。その中で、白崎さんを特に気にかける様子のランデル殿下の態度を見ればどういう感情を持っているかは容易に想像つくだろう。
ランデル殿下は僕達が召喚された翌日から、白崎さんにやんわりとアプローチを掛けている。と言っても、彼は十歳。白崎さんから見れば『小さい子に懐かれている』程度にしか思っていないだろうし、なんならハジメという恋人もいるからね、彼の思いが実る事はない。面倒見の良さから、弟のようには可愛く思ってはいるようだが。
「ランデル殿下。お久しぶりです」
パタパタ振られる尻尾を幻視しながら微笑む。そんな白崎さんの笑みに頬を赤く染めるが王族としての威厳か何かで精一杯男らしい表情を作ってアプローチをかける。
「ええ、本当に久しぶりですね。貴方が迷宮に行ってる間は生きた心地がしませんでした。怪我はしていませんか? 私がもっと強ければ貴方にこんなことさせないのに……」
ランデル殿下は悔しそうに唇を噛む。彼女としては守られるだけなどお断りなのだが、なんなら守られるのが目に見えているが少年の微笑ましい心意気に思わず頬が緩む⋯⋯わけもない。
「ランデル殿下お気づかい下さりありがとうございます。ですが私なら大丈夫です。自分で望んでやっていることですから」
「いや、貴方には⋯⋯いえ、貴方達女性には戦場は似合いません。それにもっと安全な仕事がある筈です」
「安全な仕事ですか?」
ランデル殿下の言葉に首を傾げる香織。ランデル殿下の顔は赤みを増す⋯⋯これは面白そうな展開になって来たね少しの間は何も言わずに見守って見ようかな、その様子を見て苦笑いする八重樫さんは察しがついたのか、少年の健気なアプローチに思わず苦笑いしている。
「そうだな⋯⋯侍女なんてどうだろうか? 今なら私の専属に推薦出来るのだが⋯⋯どうだろう」
「侍女ですか? いえ、すみません。私は治癒師ですから……」
「では、治療院はどうだろう。危険な場所や前線に出ずに治癒師としての仕事はできるだろう?」
ここでの医療院は、国営の病院のことである。そして王宮の直ぐ傍にある。要するに、ランデル殿下は離れるのが嫌なのだ。しかし、そんな少年の少々鈍感な白崎さんには届かない。
「いえ、前線でなければ直ぐに癒せませんから。心配して下さりありがとうございます」
「そうですか⋯⋯」
ランデル殿下は、どうあっても白崎さんの気持ちを動かすことができないと悟り小さく唸る。そこに勇者(偽)こと空気を読まない
「ランデル殿下、香織は俺の大切な幼馴染です。俺がいる限り、絶対に守り抜きますよ」
うわぁー⋯⋯イテェこと言ってんな⋯⋯コホン少し口調が乱れてしまったね。コイツとしては、年下の少年を安心させるつもりで善意全開に言ったのだが、この場においては不適切な発言だった。恋するランデル殿下には⋯⋯
〝俺の女に手ぇ出してんじゃねぇよ。俺がいる限り香織は誰にも渡さねぇ! 絶対にな! 〟
こんな感じに伝わっているだろうね。傍から見れば親しげに寄り添う勇者と治癒師。実に様になる絵である。ランデル殿下は悔しげに表情を歪める。ランデル殿下の中では二人は恋人のように見えているのである。
「香織さんを危険な場所に行かせることに何とも思っていない貴様が何を言う。彼女は私といる方がいいに決まっています」
「え~と……」
ランデル殿下の敵意むき出しの言葉に、白崎さんはどうしたものかと苦笑いし、カスはキョトンとしている。八重樫さんはそんなカスを見て溜息だ。
「ランデル。いい加減にしなさい。香織が困っているでしょう? 光輝さんにもご迷惑ですよ」
ガルルと吠えるランデル殿下に何か機嫌を損ねることをしてしまったのかと、カスが更に煽りそうなセリフを吐く前に、涼やかだが、少し厳しさを含んだ声が響いた。これからもっと面白くなりそうだったのになぁ⋯⋯
「⋯⋯姉上」
「皆さんお疲れなのに、こんな場所に引き止めて……相手のことを考えていないのは誰ですか?」
「⋯⋯ですが!」
「ランデル?」
「⋯⋯皆さん、引き留めてしまってすみませんでした。私はこれで失礼します」
ランデル殿下は軽く謝罪をしてから、その場を去った。
「香織、光輝さん、弟が失礼しました。代わってお詫び致しますわ」
リリアーナさんはそう言って頭を下げた。美しいストレートの金髪がさらりと流れる。
「ううん、気にしてないよ、リリィ。ランデル殿下は気を使ってくれただけだよ」
「そうだな。なぜ、怒っていたのかわからないけど……何か失礼なことをしたんなら俺の方こそ謝らないと」
1人と1匹の言葉に苦笑いするリリアーナ。姉として弟の恋心を察しているため、意中の香織に全く意識されていないランデル殿下に多少同情してしまう。
リリアーナ姫は、現在十四歳の才媛だ。その容姿も非常に優れていて、国民にも大変人気のある金髪碧眼の美少女である。性格は真面目で温和、しかし、硬すぎるということもない。TPOをわきまえつつも使用人達とも気さくに接する人当たりの良さを持っている。
僕達召喚された者にも、王女としての立場だけでなく一個人としても心を砕いてくれている。彼等を関係ない自分達の世界の問題に巻き込んでしまったと罪悪感もあるようだ。
そんな訳で、率先して生徒達と関わるリリアーナと彼等が親しくなるのに時間はかからなかった。特に同年代の白崎さんや八重樫さん達との関係は非常に良好で、今では愛称と呼び捨て、タメ口で言葉を交わす仲である。
「いえ、天之河さん。ランデルのことは気にする必要ありませんわ。あの子が少々暴走気味なだけですから。それよりも……改めて、お帰りなさいませ、皆様。無事のご帰還、心から嬉しく思いますわ」
ふわりと微笑むリリアーナ姫。美少女が身近にいるクラスメイト達だが、その笑顔を見てこぞって頬を染めた。リリアーナ姫の美しさには洗練された王族としての気品や優雅さというものがあり、多少の美少女耐性で太刀打ちできるものではなかった。まぁ、僕には悠花がいるからあまり魅力的には見えないけど。(辛辣やなぁ⋯⋯この子)
「ありがとう、リリィ。君の笑顔で疲れも吹っ飛んだよ。俺も、また君に会えて嬉しいよ」
さらりとキザなセリフを爽やかな笑顔で言うカス。お前が言った所でキモイだけなんだよなぁ⋯⋯よく『イケメンに限る』とか言うけどコイツには通じない気がするんだよね。
「⋯⋯そうですか」
ちなみにリリアーナ姫はカスを嫌っている。え? なんでかって? どうやらリリアーナ姫はハジメに好意を寄せているらしく、カスが『彼らが居たからクラスの皆が死ぬ思いをしたんだ!』とか言っていた事が有るだろう? その発言をリリアーナ姫は聞いてひどく憤慨した⋯⋯まぁ、簡単に言えば『好きな人の悪口を言うし、ロクな事をしない厄介者』だから嫌っている⋯⋯ってとこだろうね。
「⋯⋯とにかくお疲れ様でした。お食事の準備も、清めの準備もできておりますから、ゆっくりお寛ぎくださいませ。帝国からの使者様が来られるには未だ数日は掛かりますから、お気になさらず」
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迷宮での疲れを癒し、居残り組にベヒモスの討伐とマハ・ナーガの討伐を伝え歓声が上がったり、これにより戦線復帰するメンバーが増えたり、愛ちゃんが一部で〝豊穣の女神〟と呼ばれ始めていることが話題になり彼女を身悶えさせたりと色々あったが白崎さん達はゆっくり迷宮攻略で疲弊した体を癒した。
「ふぅ⋯⋯四日ぶりのベットですね」
「そうだね!」
「⋯⋯何故、此処に?」
「えっと⋯⋯その⋯⋯」
何故かベットに潜り込んでくる悠花に少し困惑しながら、尋ねる。
「今日は⋯⋯その⋯⋯一緒に寝たいなって⋯⋯ダメ⋯かな?」
ギュン! 「⋯⋯いいですよ」
「やった!」
「着替えるので少し待ってくださいね」
「うん!」
何時もの戦闘用の服から寝巻きに着替える。
「⋯⋯で? 悠花今日はどうしたんですか?」
多方わかっているがちょっと意地悪したい気分なので少しだけ焦らす。
「ふえ?」
「"一緒に寝たい"だけでは無いのでしょう?」
「ちっちちっ違う! 別に期待なんかしてないしぃ?!」
「へぇ? じゃ、おやすみ」
「うぅぅぅぅ⋯⋯」
悶える悠花を横目にベットに潜り込む。ふかふかだぁ⋯⋯少しづつ意識が微睡み始める。
ユサユサ「⋯柊人」
「なに?」
モジモシ「その⋯⋯シタイです」
「なにを?」
「エッチしたいです⋯あぅ⋯⋯恥ずかしい⋯」
⋯⋯僕の彼女可愛すぎ。
「よく言えました」
「むぅ、意地悪⋯⋯でも好き」
「⋯⋯今日はどっちがいい? 僕じゃなく、
耳元で誘う様に囁くと、顔を真っ赤にして俯く。フフッホントに可愛い彼女ですね。
おっと、ここからは未成年には見せられないよ。
え?ランデルくんとリリィの設定が無理矢理だって?何の違和感も無いよなぁ?(威圧)
それと光輝くんの味方は誰一人としていません。感想お待ちしております。
窯出しとろけるプリンが食べたい。